リアジェット35
リアジェット35(Learjet 35)は、ゲイツ・リアジェット社が開発したリアジェットシリーズの1つであるビジネスジェット機。シリーズ初のターボファンエンジン搭載モデルである。
本項では長距離型のリアジェット36についても記述する。
概要
ギャレット(現ハネウェル)社によるTFE731ターボファンエンジンの開発により、小型ジェット機メーカーも従来のターボジェットエンジンより燃費が良く騒音も少ないターボファンエンジンを採用することが可能になった。これを受けゲイツ・リアジェット社は1機のリアジェット25の左側エンジンをTFE731-2に換装した試験機を1973年1月に初飛行させた。続く改修2号機では両側のエンジンが換装され、これがリアジェット35の誕生へと繋がった。その初号機は同年8月22日に初飛行し、翌年夏に形式証明を取得した。
機体は形態こそ翼端に燃料タンクを装備した直線翼の主翼とT字尾翼という従来のシリーズと同じものだが、リアジェット25より胴体が0.33m、主翼が1.22m延長され、ペイロードや航続距離が向上している。乗客8人乗りの短距離型であったリアジェット35と並行して、乗客6人乗りで燃料搭載量を増やし大西洋横断を可能とした長距離型リアジェット36も開発された。ただし多くの顧客がそれほどの航続力を必要としなかったため、製造機数はリアジェット35の方が大幅に多い。
主翼の改造により最大離陸重量が増えたリアジェット35A/36Aは1976年から売り出され、リアジェットシリーズ中最大の販売数を記録する決定版となった。軍用としてもアメリカ空軍がC-21Aの名称でリアジェット35Aを採用し幕僚輸送や傷病兵輸送などに使用したほか、日本やUAE及びスイスなど西側諸国の多くの国の軍において連絡や特殊任務に使用されている。
生産は1990年代半ばに終了し、生産数は35が66機、36が17機、35Aが609機、36Aが43機、合計で730機を超えている。
採用国(軍用)
日本での運用
海上自衛隊がUP-2Jを代替する艦隊訓練支援機としてリアジェット36AをU-36Aの名称で採用。P-1が登場するまでは海上自衛隊唯一のジェット機であった。1985年に輸入された後新明和工業で改修作業を受け1987年から第81航空隊(現第91航空隊)に6機配備された。事故での損耗により、現在の運用機数は4機。
艦隊訓練支援機として使用するために、胴体下部にHPS-103気象・航法レーダーを装備し、主翼下に標的曳航装置やECMポッド、チャフポッド用のパイロンを増設、翼端燃料タンクの先端には左翼側にミサイルシーカー・シミュレーター、右翼側に評価・記録用テレビカメラを搭載している。これらの装備により、U-36Aは自らをミサイルに見立てて飛行し艦隊への対艦ミサイル攻撃をシミュレートする他、標的曳航機として艦隊の対空射撃訓練を支援する。
事故
年月日 | 所 属 | 機番号 | 事故内容 |
---|---|---|---|
1991.2.28 | 第81航空隊 | 9203 | 岩国航空基地で飛行訓練中、着陸に失敗して滑走路をオーバーラン、滑走路北側の水路に突っ込み、機体が損壊、乗員5名が重軽傷を負った。 |
2003.5.21 | 第91航空隊 | 9202 | 連続離着陸訓練中、先行機(US-1A)の後方乱気流により操縦不能となり、墜落。乗員4名が殉職。 |
諸元(C-21A)
- 全長:14.83m
- 全幅:12.04m(主翼端燃料タンク含む)
- 全高:3.73m
- 翼面積:23.53 m2
- 空虚重量:4,502kg
- 最大離陸重量:8,345kg
- エンジン:ハネウェル TFE731-2-2B ターボファンエンジン(推力15.57kN)2基
- 最大速度:872km/h=M0.71(高度25,000ft)
- 巡航速度:860km/h=M0.70(高度41,000ft)
- 証明取得上昇限度:13,715m
- 航続距離:3,891km(乗客6名時)
- 乗員:2名
- ペイロード:乗客最大8名 または貨物1,430kg
参考文献
- 分冊百科「週刊 ワールド・エアクラフト」No.17/115 2000年/2002年 デアゴスティーニ社
- 航空ファン イラストレイテッド 1999 AUTUMN No.108 『自衛隊航空機オールカタログ』 文林堂 1999年