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核弾頭

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核弾頭(かくだんとう、nuclear warhead)は、モジュール化された量産型の核爆弾である。

ミニットマンIIIに搭載されているW76核弾頭を搭載したMk.12A再突入体

概要

核弾頭とは核兵器を搭載するミサイル魚雷などの弾頭を指す。初期の核兵器は核爆弾として、爆撃機から投下する大型のものであった。これらは航空爆弾として核兵器と一体で開発された。しかし、1950年代後半、大陸間弾道ミサイルなどが開発されると、核兵器も小型化し、ミサイルを始めとする各種兵器の先端に取り付けて発射できるようになったため、核爆弾から尾翼と信管を取りはずして核起爆装置と核物質を一体化した部品をモジュールとして規格化し、(理論上は)同じ核弾頭を異なる兵器間で使用できるものになった。

核弾頭の設計・開発が搭載兵器の開発と分離されたため、核弾頭の設計は少人数ですむようになった。冷戦終結の頃、アメリカ国内にいた核弾頭の設計者は、わずか50人ほどだったと言われる。彼等は高度な機密を共有しお互いにファーストネームで呼び合う間柄だった。

搭載兵器

核弾頭が搭載される兵器は概ね以下の通り。

  • 核ミサイル
    核弾頭が弾道ミサイルに搭載される場合は、大気圏へ再突入する際に生じる大気との摩擦による高熱から保護するため、再突入体(Re-entry Vehicle、RV)と呼ばれるカプセルに搭載されてミサイルに搭載される。RVは断熱機構を備え先の尖った円錐形状をしているが、マッハ25とも言われる速度で大気圏に突入するため、大気との摩擦で着弾までに大部分が損耗してしまう。ミサイルのテスト発射後に回収されたRVの写真には半球状にまで磨耗した姿が写っている。
  • 核砲弾
    戦術用の核兵器で大口径のカノン砲から発射される核弾頭を搭載した砲弾
  • 核地雷
    巨大な対戦車壕を瞬時に掘削する兵器で、敵の進行予測地域に前もって敷設される。イギリスブルー・ピーコック(Blue Peacock)と呼ばれる威力10ktの核地雷を当時の西ドイツに配備する計画を持っていたが、1958年に中止された。
  • 核爆雷
    主に対潜水艦用に使用される兵器で、そのまま航空機から投下したり対潜ミサイルの弾頭として運用される。
  • 核魚雷
    主に対潜水艦用だが、対潜ミサイルに搭載された核魚雷は副次的な対艦攻撃任務を持つ物がある。
  • 核爆弾
    航空機から投下される自由落下爆弾。核兵器の威力は目標への精密な誘導を必要としないことが多い。

状況

現在では核保有国の多くが核兵器のモジュール化を行っている。機密とされているため公開されている情報は少ないが、各国の状況は概ね以下の通りである。

アメリカ

W85核弾頭の外観模式図

Mk.1リトルボーイMk.3ファットマンは核爆弾であり、核起爆装置と不可分の構造である。知れられている核弾頭で古い物はW-4だが1951年に開発がキャンセルされた。続くW-5は海軍のレギュラスIや空軍のマタドールといった巡航ミサイルに搭載されて1954年から運用された。W-5はMk.5航空爆弾から核爆弾を独立させたもので、92個の爆縮レンズからなる最大威力120kトンの核弾頭である。Mk.5はMk.3にくらべて大幅に小型化されており重量は1.5トンといわれている。レギュラスIは後に核弾頭をW-27に載せ替えている。最も小型の核弾頭はおそらく重量30Kg以下で威力250トン(0.25kt)のW-54で、空軍で運用された空対空ミサイル核ファルコンや陸軍の小型ロケット弾デイビー・クロケット(Mk54、核出力10、20tの切り替え型)に搭載された。デイビー・クロケットは人力搬送が可能な小型核兵器として知られている。重量40kg台のW-42は1961年に開発がキャンセルされた。核砲弾に使用された威力72トン(0.072kt)のW-48は重量50kgほどである。最も威力の大きい核弾頭は、タイタンIIに搭載されたW-53で、熱核弾頭を搭載し威力9Mトン、重量は約2.8トンとされている。最も新しい核弾頭はW-91でSRAM-II用の核弾頭として開発が始まったが1991年にはキャンセルされている。量産された最も新しい核弾頭はW-88で、トライデントD-5用の弾頭として開発され、威力は475kトン、時限/高度/接触信管を備え1988年から1989年までの約一年間に400発が生産されたとされている。

旧ソ連/ロシア

旧ソ連で最初の量産型核爆弾はRDS-3Tと、より小型化されたRDS-4である。RDS-6からは熱核弾頭となった。これら核爆弾から多種多様な核弾頭が設計されたと考えられているが、形式番号は詳らかでは無い。R-36Mには15F143、15F143U、15F147、15F678といった形式番号を持つバス(またはPost Boost Vehicle、PBV)に弾頭が搭載されていたといわれる。

イギリス

航空爆弾として開発され、1953年から配備された威力15kトンの原子爆弾Mk.1ブルー・ダニューブ(Blue Danube)から、レッド・ベアード(Red Beard)、ヴァイオレット・クラブ(Violet Club)を経て、水素爆弾であるイエロー・サンMk.1(Yellow Sun Mk.1)が配備されている。ヴァイオレット・クラブの核爆弾にはグリーン・グラス(Green Grass)、イエロー・サンMk.2(Yellow Sun Mk.2)の熱核爆弾にはレッド・スノー(Red Snow)という名前があった。イギリス空軍は1956年からブルー・スチールMk.1巡航ミサイルを配備している。その後、射程延伸型のブルー・スチールMk.2とブルー・ストリーク中距離弾道ミサイルの開発とスカイボルト空中発射弾道ミサイルの導入に失敗した結果、空軍の核戦力はWE177核爆弾を除いて退役した。結果としてイギリスの核戦力は核弾頭を標準化するほどの多様性を持つ事が無いまま現在にいたっている。

イギリスは核戦力を海軍中心に編成しなおし、その主力にポラリスA-3潜水艦発射弾道ミサイルを搭載したレゾリューション級原子力潜水艦を据えた。ミサイルは米国製だが弾頭はイギリス製である。ただしその設計はアメリカのW-58核弾頭に近似していると言われる。これら弾頭を含むミサイルシステムはChevaline計画で近代化され、21世紀初頭まで運用された。その後はトライデントD-5が導入された。核弾頭はイギリス製とされている。

フランス

フランスでは陸軍の中距離弾道ミサイルSSBSシリーズにおいて、1971年に配備されたS-2が威力120kトンのMR-31、1980年に運用が開始されたS-3が威力1.2Mトンの熱核弾頭であるTN-61を搭載した。1974年に配備された短距離弾道ミサイル(地対地ミサイル)のプリュトン(Pluton)は核弾頭の威力25kトンのAN-51が、後継として1984年から開発が始まったハデス(Hades)は80kトンのTN-90が搭載されている。これらのミサイルは冷戦終結後に全て廃棄された。海軍では潜水艦発射弾道ミサイルのMSBSシリーズにおいて、M-1とM-2が威力500kトンのMR-41を搭載し、M-20とM-4がTN-61、M-4A、M-4Bが威力150kトンのTN-70を搭載している。最新のM-45ではステルス性能をもつTN-75が搭載されている。空軍では最初の核爆弾AN-11、及びミラージュIV爆撃機用の航空爆弾AN-22に替わる巡航ミサイルASMPが1986年に配備されている。弾頭は威力150kトンのTN-80、または威力300kトンのTN-81とされている。後継ミサイルのANSの弾頭は未定の模様。

その他

中国インドパキスタンが核兵器を保有しているが詳細は不明である。南アフリカと核兵器の保有が疑われているイスラエル北朝鮮も同様である。

関連項目