コンテンツにスキップ

エンチクロペディー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。218.46.65.35 (会話) による 2007年5月6日 (日) 02:24個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎邦訳)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

エンチクロペディー

  1.  百科事典のこと(独 Enzyklopädie)
  2.  エンチクロペディー(哲学の百科事典)はドイツの哲学者ヘーゲル(1770年-1831年)の主著。本項で記述する。

概要

エンチクロペディーはヘーゲルがハイデルベルク大学教授時代に、講義に使うために刊行したものである。論理学(小論理学)、自然哲学、精神哲学の3部からなり、あらゆる哲学・知を体系化しようとする壮大な著書である(初版1817年)。その後、本人によって改訂が行われ、さらに逝去後に刊行されたヘーゲル全集版(1839年)では、ヘーゲルの講義筆記(弟子たちが記録したもの)をもとに大幅に増補されている。

哲学大系

論理学

先に刊行された『論理学』(大論理学、1812-1816年)に対して一般に『小論理学』という。ヘーゲルによれば存在-本質-概念というのは人間の認識が深まってゆく過程であるとともに、絶対者(神)の属性でもある。例えば「神は存在する」というのはごく当然の規定でそれだけで終わっていては浅い段階に留まり、本質-概念、と進んで「神は絶対的理念である」というのが最も深い考察である。

  • 存在(質-量-限度)
  • 本質(本質-現象-現実性)
  • 概念(主観的概念-客観-理念)

自然哲学

  • 数学
  • 物理学
  • 有機的な自然

精神哲学

ヘーゲルによれば「精神」は単に人間の主観ではなく、世界史の過程を通して絶対的精神が自己展開してゆくことになる。

  • 主観的精神(人間学-精神の現象学-心理学)
  • 客観的精神(法-道徳-人倫)
人倫はさらに家族-市民社会-国家に展開する
  • 絶対的精神(芸術-宗教-哲学)

客観的精神の部分をさらに考察したものがのちに『法哲学』になる。最後の「哲学」に至って、端緒の論理学と円環を結んだ体系が完成する。

一見してわかるようにヘーゲルは『3』(三一性 Dreiheit)という数に非常にこだわって哲学体系を築き上げた(主観的-客観的-絶対的など)。(こうした考えは、キリスト教の三位一体説が基になっている。ヘーゲルの弁証法の考え方は、その代表例であるが、フィヒテの弁証法にも認められるし、カントが示した12項目のカテゴリー表(分量・性質・関係・様相の各グループ)にも認められる。) ヘーゲルは、この書を含めこの世界のあらゆるものを自身の哲学体系に取り込もうとし、この世のあらゆる現象を扱う諸学問も、この体系から導出すべきだとし、ヘーゲル自身もこの体系は完成していると見なしていた。しかし、その意図は壮大であるが、それほど割り切って世界が説明できるのか、という素朴な疑問が浮かんでくるのも事実であろう。


邦訳

  • 『ヘーゲル論理学 : エンチクロペディ緒論及び第1部』 鉄塔書院 速水敬二訳 1929.
  • 『ヘーゲル哲学体系. 第1論理学 第2部自然哲学』 速水敬二訳 筑摩書房 1949. 
  • 『論理学・形而上学 ヘーゲル哲学体系初期草稿』 訳者代表:田辺振太郎 未来社 1971.
  • 『自然哲学. 上』 本多修郎訳 未来社 1973.
  • 『自然哲学. 下』 本多修郎訳 未来社 1984.
  • 『エンチュクロペディー―哲学諸学綱要〔新装版〕』 樫山欽四郎、塩屋竹男、川原栄峰訳 河出書房新社 1987.11.
  • 『ヘーゲル全集.1 改訳小論理学 哲学体系1』 真下信一,宮本十蔵訳 岩波書店 1996.7
  • 『ヘーゲル全集.2a 自然哲学 上巻 哲学体系2』 加藤尚武訳 岩波書店 1998.3.
  • 『ヘーゲル全集.2b 自然哲学 下巻 哲学体系2』 加藤尚武訳 岩波書店 1999.2.  
  • 『ヘーゲル全集.3 改訳精神哲学 哲学体系3』 船山信一訳 岩波書店 1996.8 
  • 『論理学 哲学の集大成・要綱 第1部』 長谷川宏訳 作品社 2002.4.
  • 『自然哲学 哲学の集大成・要綱 第2部』 長谷川宏訳 作品社 2005.2.
  • 『精神哲学 哲学の集大成・要綱 第3部』 長谷川宏訳 作品社 2006.4.