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示相化石

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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示相化石(しそうかせき、facies fossil)というのは、その時代の環境条件がわかるような化石のことである。

概説

化石から、その生物の生きていた環境を推定することができた場合、その化石の発見によって、その地層堆積した時、そしてその場所の環境が推察できる。たとえばそれが熱帯に生息するものと考えられれば、その地域が当時は熱帯域の気候にあったと判断できるし、それが海岸性の生物であれば、その地点は海岸か、それよりさほど遠くないところであったと判断できる。このような判断が可能になる化石を、示相化石という。

具体例

実際には、化石から、それが生きていたときの状態を考えるのはそれほど簡単ではない。新しい時代のものであれば、現生のとの比較を行うことによって、ある程度の推察は行える。同じ種と判断できれば、ほぼ同じ環境であったと考えてよかろうし、ごく近縁なものと判断されれば、その差からある程度の推察を行うことも可能である。たとえばゾウの化石が出れば、一般には温暖な地域であったのだと想像がつく。しかし、それがマンモスであれば、むしろ寒冷な地域であったと判断される。これは、マンモスが現生のゾウとは異なり、非常に厚い毛皮に覆われていたことから、寒冷な気候に適応していたと考えられるためである。

より長い時間軸で

より古い化石であれば、現生の生物との対応はつけにくくなる。しかしながら、それでも現在の生物と比較して、その成育していた環境を判断する場合もある。たとえばサンゴ礁は、古生代の初期から現在に至るまで、さまざまな地域で発達していたと考えられる。化石としては、石灰質の骨格を大規模に発達させた生物が大量に集中する形で発見される。しかし、それを構成する動物の種は、時代によって大きく異なり、同じ珊瑚であっても、現生の珊瑚と古生代の珊瑚では全く異なる群からなっている。また、珊瑚以外の動物(二枚貝など)が関与している例もある。しかし、現在のサンゴ礁はすべて熱帯の浅い海にある。これは、造礁サンゴ共生藻を持ち、彼らの光合成産物によって生活しているからであるが、同時に、珊瑚の骨格形成に共生藻が関わっていると考えられている。したがって、古代に於いてもサンゴ礁を形成する生物は似たような条件で、似たような生活を送っていたと考えるのである。つまり、サンゴ礁の化石が発見されれば、そこはかつて、熱帯の浅い海であったと考えられる。

化石の移動

ただし、プレートテクトニクスの考えによれば、海底はゆっくりと移動しており、現在化石が発見された場所が、かつてその生物の生息していた場所だとは断定できない。たとえば大東島の地下数百mにわたって堆積しているサンゴ礁の層は、その下の部分ほど太平洋の中央に近い場所で形成されたものであろうと思われる。同様に、本州の石灰岩も、それがサンゴ礁起源と考えられた場合も、その地域がその時代にサンゴ礁を保有していたと見るよりは、太平洋のサンゴ礁が本州にまで運び込まれたものと考えるようになっている。

関連項目