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償い (さだまさしの曲)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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償い」(つぐない)は、1982年に発表されたシンガーソングライターさだまさしのアルバム『夢の轍』(ゆめのわだち)の収録曲の一つで、知人の実話を元につくられた楽曲。作詩・作曲さだまさし、編曲渡辺俊幸。6分15秒。

のちに裁判での引用で話題となり、命の尊さ、犯した罪への償いを考えさせるため、運転免許更新の際の放映ビデオ内で使われているほか、交通キャンペーンにも使用されている。


実話

この楽曲は、知人の実話を元に作られたものである。ただし曲中では、優しく真面目な心の持ち主である交通事故の加害者「ゆうちゃん」をメインに、それを見守る同僚の気持ちを歌詞にした物になっているが、実際にはさだの知人である被害者の奥さんの体験と事実を元に詩が作られている。(さだは、「ゆうちゃん」に該当する加害者とは合ってはいない)

さだの知人の女性がが交通事故で主人を亡くした。加害者の男性は真面目な人らしく、毎月わずかずつではあるが賠償金を郵送してきていた。彼女は加害者の手書きの文字を見るたびに、事故の事や亡きご主人を思い出しては辛い思いをしていた。事故から数年経ってもその送金は続き、知人はお茶(茶道)の先生でもあり経済的にも自立できていることから、「もうお金は送ってくれなくて結構です」と加害者に対して返事の手紙を書いた。しかし、被害者の許しの手紙を受け取ったはずの加害者は、償い続けるために翌月以降も送金を続けた。

裁判での引用

2001年4月19日東京世田谷区東急田園都市線において、2人の少年が銀行員の男性に対し車内で足が当ったと口論の末、三軒茶屋駅のホームで2人がかりで殴り、のちにくも膜下出血で死亡させるという事件が起きた。

傷害致死罪に問われた少年の判決公判が2002年2月19日東京地裁で行われた際、2人は言葉では謝罪し、「自分という人間を根本から変えてゆきたい」などと述べたものの、事件自体は酔った被害者がからんできたことによる過剰防衛であると主張しており、反省の言葉を繰り返すだけで、裁判中の態度や発言から、真に事件について反省しているかどうか疑問な態度を繰り返していたという。

判決公判の閉廷直前、山室惠裁判長が被告人2人に対し「さだまさしの『償い』という歌を聴いたことはありますか」と切り出し、「この歌のせめて歌詞だけでも読めば、なぜ君らの反省の弁が人の心を打たないか分かるでしょう」と異例の説諭を行い、反響を呼んだ。

さだまさしは新聞社の取材に対して、「法律で心を裁くには限界がある。今回、実刑判決で決着がついたのではなく、心の部分の反省を促したのではないでしょうか」とコメントしたうえで、「この歌の若者は命がけで謝罪したんです。人の命を奪ったことに対する誠実な謝罪こそ大切。裁判長はそのことを2人に訴えたかったのでは」と述べた。

ライナーノーツ

さだまさしは著書『さだまさし 夢のかたみに』にて、この楽曲に次のような引用をしている。

「ゆるすというのはことはむずかしいが、もしゆるすとなったら限度はない-ここまではゆるすが、ここから先はゆるせないということがあれば、それは初めからゆるしていないのだ」山本周五郎『ちくしょう谷』より

収録作品

  • アルバム『夢の轍』
  • コンピレーションアルバム『償い~SONGS OF LIFE』
  • ベストアルバム『さだまさしベスト2~通』
  • ベストアルバム『さだの素~さだまさしベスト・入門編』
  • ライブDVD『風の交響曲(シンフォニー) さだまさし』(“まさしんぐWORLDコンサート”第20回公演特別記念)
  • シングル(ヤマト運輸製作・配布の非売品)2002年にヤマト運輸のドライバーに配布された。

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