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バガボンド

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バガボンド
漫画
作者 井上雄彦
出版社 講談社
掲載誌 週刊モーニング
発表期間 1998年 -
巻数 27
テンプレート - ノート

バガボンド』は井上雄彦による青年漫画作品。原作は吉川英治の『宮本武蔵』。1998年からモーニングで連載が開始される。途中、長期休載されることもあったが、2005年5月より再び連載が再開された。そして2006年11月の段階で、「1年半から2年で終わる」と井上雄彦本人は語っている。

概説

剣豪宮本武蔵主人公とし、戦国末期から江戸時代の転換期、剣の時代の終わりがけを舞台にその青春期を描く。巨大な歴史の転換点で、出世の夢が破れた武蔵が剣士として自己を確立しようともがく様、また巌流島での武蔵と決闘したことで有名な小次郎を筆頭とする、武蔵と関わった複数の武芸者について描れている。

吉川英治の小説『宮本武蔵』が原作となっているが、武蔵の実姉が描かれていなかったり、佐々木小次郎聾唖者(ろうあしゃ)であったりと、キャラクターや物語には井上独自のアレンジが大きく加えられている。表題も原作名である『宮本武蔵』ではなく『バガボンド』となっている。ちなみに、題名の「バガボンド(vagabond)」とは英語で“放浪者”や“漂泊者”という意味で、しばしば日本語の「浪人」の訳として用いられる語である。『宮本武蔵』という題名にしなかったのは、作者が、読者の読む前の先入観・好き嫌いを持ち出されるのが嫌だったのと、過去に実在した人物を好き勝手に描くのは後ろめたさを感じたからである[1]

また、「一コマそのままが一つの絵画として完成している」と評価されるほど[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。、井上の画力は抜群で定評がある。当初井上は当時の服装である着物の描写が思うようにいかず、特に戦闘時に不自然さが現れてしまう事について悩んでいた。考えた末に井上は登場人物が裸の状態を下書きの段階で一度書き、その上で着衣を書き込むといった手間のかかる手法によって、この問題を解決した[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。。その為、本作品では通常の倍近い作業を要している。さらに鐘巻自斎の汚らしさ等を描くのに限界を感じたことから[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。、作品途中にして完全に筆のみによって描画するようになった。

武蔵編から始まった物語は、途中二話だけ辻風黄平編が挟んだ後、14巻から小次郎編へと進む。また、小次郎編が終了する20巻から21巻の間には一年間の充電期間がとられた。その後再び武蔵が主人公となった21巻からはタイトルロゴを変更しているが、これについては「前の方がよかった」という意見が多く寄せられたことをポッドキャスト[2]で語っている。

受賞

ストーリー


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


第一章 宮本武蔵編

立身出世を望んで故郷の村(作州・吉野郷・宮本村)を出た新免武蔵は、関ヶ原の戦に敗れて泥にまみれていた。目標を失いかけた武蔵は、共に出奔した親友・又八が行方をくらました事を伝えるために村へ戻るが、残党狩りという名目で村人達から非情な迫害を受けることになる。そこで武蔵は迫り来る敵を、次々に殺めていってしまう。その中で沢庵に出会い捕縛された武蔵は、自分の生きる道を説いてもらい再び剣の道に生きる志を立て、名乗りを「宮本武蔵」に改める。

京に上った武蔵は、大胆にも京で最強と謳われる吉岡流の道場に乗り込んだ。当主・清十郎には一蹴されてしまうものの、その弟である伝七郎と対等に戦い、伝七郎と1年後の再戦を約束した。

再戦に向け再び武者修行の旅に出る武蔵。道中、沢庵に全体を見るということを教えてもらった武蔵は、まずは「槍の聖地」に君臨する宝蔵院胤栄を倒そうと「宝蔵院」へ向かう。しかし、胤栄は既に引退しており、二代目・宝蔵院胤舜が相手となった。胤舜の圧倒的な実力に今まで味わったことのない“恐怖”により逃げ出した武蔵は「己の卑小」さに絶望した。その後は、胤栄に師事を請い、心の構えを充実させてもらい、再度胤舜との決闘をする。

次へ柳生の城に向かう武蔵は、「一対一城の合戦」を挑む。そこで柳生四高弟と呼ばれる手練、そして“剣聖”、柳生石舟斎と対峙した。武蔵は達人と呼ばれる人物たちとの出会いを通すことにより、更なる高みを身をもって体感して心技を充実させていく。

その後はさらに武者修行を続け、鎖鎌の達人と謳われる宍戸梅軒を探す。旅を続ける武蔵は宍戸梅軒と名を改めたかつての宿敵・辻風黄平と再会した。他者より強くあらんとして戦い続ける者の業を「殺し合いの螺旋」と呼び、誰よりも強くその業に固執した黄平は、武蔵の前に敗れた。しかし、二度と武器を取れない体にされた黄平は、武蔵の予想とは裏腹に「殺し合いの螺旋を降りられる」と安堵し、武蔵に助けを乞う。 その姿を目の当たりにした武蔵は剣に生きることの意味に懊悩し、逃げるようにその場を立ち去るのだった。

特別章 辻風黄平編

幼い黄平は母に滝へ落とされ、捨てられた。ところが、自身も捨てられた過去を持つ兄・典馬に救われ、一命を取り留めた黄平は、兄が頭領である「辻風組」に入る。犯罪集団「辻風組」に入った黄平は剣の天分もあり、すぐさま悪事に手を染めたが、その過去から兄である典馬を初め、誰にも心を許そうとはしなかった。黄平の容貌の美しさに、肉欲・所有欲を抱いていたためか定かではないが典馬は黄平を性的不能者にしてしまう。12歳の黄平は、この時“人の命は無価値”だと悟った。

黄平は性的不能者にされたことから兄への不信感の増加と同時に恨みが芽生え、典馬の殺害を企てる。しかし、計画が失敗してしまった黄平は幽閉された。その後、関ヶ原の戦いで西方へ付いた辻風組は戦に破れ、東方の兵たちが黄平を幽閉している倉庫の扉を開く。自由の身となった黄平は典馬を殺害しようと追い始めるが、辻風組員から「典馬は武蔵に殺された」と告げられた。典馬を殺すという目的を失った黄平は、代わりに武蔵を殺害しようと追い始めたのであった。

第二章 佐々木小次郎編

越前の片隅で世を倦んだように暮らす剣豪・鐘捲自斎に拾われた佐々木小次郎。孤独な人生を歩んでいた自斎は小次郎を育てようとしたり、農家の片隅に捨てたりと、優柔不断なまま翻弄される。しかし、小次郎に出会ってから次第に生きがいを見つけ、剣を教えて生計を立てる道を模索。少年・小次郎も自斎を敬愛し、二人は血のつながりはなくとも親子のような関係を築いていた。

しかし自斎は、自身が修めた剣の技を小次郎にだけは伝えようとはしなかった。剣の道とはすなはち命と誇りをかけた戦いであり、それに敗れた者がいかに惨めな末路をたどるか我が身をもって知っていたためである。

そんな折、自斎凋落のきっかけとなったかつての弟子・伊藤一刀斎弥五郎が自斎の前に姿を現す。一刀斎は小次郎の本質を即座に見抜き、剣の道へと誘おうとする。はじめはこれを拒んでいた自斎だったが、小次郎の器がすでに自分の計り知れる範囲を超えてしまっていることを悟り、ついには小次郎を一刀斎に託す事にした。

一刀斎に着いて武者修行の旅を続けた小次郎はやがて関ヶ原後の修羅場での、極限の疲労、幾多の強敵と立会い、ついにその才能を本格的に開花させていく。

第三章 吉岡一門編

一章から一年後、京に戻った武蔵は因縁の相手、吉岡清十郎を破る。その戦いを終えた後、本阿弥光悦の家に泊まることに。そこで佐々木小次郎と邂逅し、お互い言葉にはできないものを感じとる。その中で過去の自分が遠ざけていた「理の剣」を取り戻し、また一つ研鑽した。

その後に清十郎の弟、吉岡伝七郎は紆余曲折あったものの武蔵との決闘の日を迎える。しかし清十郎との決闘、そして小次郎との出会いを経た武蔵の前に圧倒的な力量差で蓮華王院に散る。清十郎、伝七郎を連破された吉岡一門は遂に一門七十余名で武蔵を斬るという最後の手段に踏み切る。

登場人物

主要人物

宮本 武蔵(みやもと むさし)
新免無二斎の息子。作州「宮本村」浪人。 
初名は新免 武蔵(しんめん たけぞう)
父の下、武芸者の子として人の温もりを知らずに育つ。大柄な体躯と人並み外れた腕力・殺気の持ち主で、破天荒な行動から周囲との齟齬が絶えず、孤独になりがちであった。本来は真っ直ぐで思いやりのある心の持ち主で、同時に物事の本質を見抜く繊細さも持ち合わせている。その繊細さを表すかのように、芸術の才能がある。剣は我流で身に付けたものだが、強いて言うなら「山が師である」と言うほど山に育まれてきた。
13歳のとき武芸者と決闘して勝利するが、“悪鬼”と周囲から忌み嫌われ一層孤独を深めた。17歳の時、関ヶ原の合戦に西軍方として出陣するも敗戦。合戦場から宮本村に戻る際に関所を破り追っ手の兵や村人を多数手にかけた。そのため沢庵に捕縛され、「人の命の大切さ、それに気づかぬ自分の弱さ」を強く諭され、それと引き替えに命を救われる。ここから名を宮本武蔵と改め、剣の道において天下無双を目指し始める。
一流の人物たちとの出会いを通じて、作中後半からは人間的厚みを持つようになる。「心技体」を磨きぬいた武蔵は未熟なれど作中最強クラスと言えるだろう。
佐々木 小次郎(ささき こじろう)
鐘巻自斎の弟子・佐々木佐康の息子。
赤ん坊の頃、佐康の手紙を携えた数人の従者とともに落城した城から小舟で落ち延び、漂着して鐘巻自斎に育てられる。大柄(バガボンド内では伝七郎と並んで最長身)で、生まれつきの聾唖であるが、耳が聞こえないハンデなど感じさせないほど、太刀や相手を見る目「第六感」非常に発達している。「アー」「ウー」と喃語を発音する。
幼少時代には小舟に一緒に積まれていた形見の長剣を肌身離さず持っていた。自斎および伊藤一刀斎に師事(自斎は「剣は教えぬ」と言いながら実質的に一流の剣士として育てた)し、自らの流派「巌流」を掲げる。
本位田 又八(ほんいでん またはち)
武蔵の幼馴染。作州「宮本村」浪人。
お杉の子ではなくの子である。宮本村時代には武蔵と好んでつるんでいた。戦で名を挙げようと武蔵を誘い、村を出るきっかけを作ったのも又八である。村にいた頃の武蔵と互角か、少なくともその相手が出来る程度の剣の腕を持っている。村を出てからは急速に頭角を現していく武蔵に水をあけられる形になる。
ひょんなことから本来小次郎に手渡されるはずだった印可目録を手に入れ、それを悪用して佐々木小次郎の名を騙るようになった。口八丁で要領の良い部分も見えるが、行動はおおむね場当たり的で定着性がない。こすい所はあるものの悪人というほどではなく、小心者である。自らを強く・大きく見せようとすると同時に、英雄・豪傑に類する人物への憧れも強い。お甲と交わってからその味を占めたのか、女好きであり、小次郎の名を利用して貰った金でしばしば女を買っている。

武芸者

新免 無二斎(しんめん むにさい)
武蔵の父であり師である。御前試合にて吉岡拳法を降し、時の将軍から「日下無双兵術者」の称号を得た剣豪。しかし天下無双という名にとらわれ、その地位を脅かす者の出現を恐れるようになる。その為「周囲は皆敵である」という疑心暗鬼に陥ってしまい、息子である武蔵にもそれが向けられていた。消息不明。
宍戸 梅軒(ししど ばいけん)
本名は辻風 黄平(つじかぜ こうへい)
通称「死神」。「幼少時、兄である典馬に救われてからは、彼が頭領をつとめる犯罪集団「辻風組」に入った。12の頃、典馬に性的不能者にされ、その後は典馬への恨みを晴らそうとするが、典馬殺害は武蔵に先を越される形となり、やがて武蔵を付け狙うようになった。
Template:SpoilerH
「殺す能力」が他人より優れていることを誇りとしていたが、その誇りも、その道に更に秀でた小次郎に敗れることで潰されてしまい、自分の存在価値を見失う。そんな折、「宍戸梅軒」を頭領とする野武士集団を返り討ちにしたことから、梅軒の遺児「龍胆」に出会う。それ以後、龍胆に親の愛情を知らない自分を重ね、隙があれば龍胆が鎖鎌で黄平の命を狙うという奇妙な暮らしを始めるようになった。いつしか黄平は「宍戸梅軒」を名乗り、自ら鎖鎌術を極め、二人の間に不思議な絆ができるに至る。
武蔵が梅軒の家を訪ねることで4年ぶりに再会。鎖鎌を駆使し、武蔵を散々に痛めつけ苦しめるも敗れ、武芸者としては再起不能の体となる。そして「殺し合いの螺旋」から降りる決意を宣言し、龍胆と静かに暮らし始めた。

小次郎に敗れた際、顔に大きな傷を負っている。
Template:SpoilerF

不動 幽月斎(ふどう ゆうげつさい)
自斎や小次郎が住む村で不動明王の使いを自称する謎の剣士。              
昔、海賊から一人で村を守った過去がある。故に以前「守り神」として崇め恐れられていた。だがその後は、村の娘が14歳になるとさらっていき、貢物を奪う厄介な独裁者として疎まれるようになった。刀傷だらけの上半身裸の格好をしており、歪んだ目と顔を持ち、常に聞き取りにくい独り言を漏らしている。剣士としては一流であった。自斎と死闘を繰り広げるも斬られ、絶命。
甲斐 正嗣郎(かい しょうじろう)
又八が京で小次郎の名をかたっていた頃、手合わせを願い出てきた武芸者。
その後、又八が偽者であることを見破って襲い掛かってきたこともあった。梅軒の鎖分銅で頭蓋を射抜かれて死亡。
高田 三之丞(たかだ さんのじょう)
一刀斎と手合わせを願うという目的の一致から、伝七郎たちと共に武者修行をしていた武芸者。
吉岡とは繋がりはない。小次郎に腕を斬り落とされる。
高倉 惣兵衛(たかくら そうべえ)
高倉流師範。
武蔵から刀ので挑むという、挑発とも受け取れる態度に門弟が総掛りで挑むも全員敗北。その事から自身の負けを認め土下座する。
有馬 喜兵衛(ありま きへえ)
十三の頃の武蔵が始めて斬った兵法者
彼を倒したことを機に、武蔵は村人達に忌み嫌われるようになる。

吉岡流

古くからに栄えている、自らのすべてを「一(ひとつ)の太刀」に込めることを極意とする剣の名門。

吉岡拳法の跡を継いだ吉岡清十郎が当主。名を笠に着て幅を効かせていることや、当主清十郎の放蕩により、住民からは陰口を叩かれている。

武蔵とこの吉岡とは、清十郎への挑戦、伝七郎との約束、そして門弟からの憎悪によって長き死闘を繰り広げることとなる。

吉岡 拳法(よしおか けんぽう)
先代吉岡流当主。
清十郎と伝七郎の父。『扶桑瑞一之者』と号を称す、剣腕は西国にて柳生石舟斎と並ぶほどの実力者であった。自分に似て愚直な伝七郎ではなく清十郎を後継者に選び、遺言に『十度闘って十度勝てる相手としか闘うべからず』と遺して他界する。「勝負において次はない」ことを「一つの太刀」と同時に勝負に厳しさを門弟に叩きこむ。武蔵の父である新免無二斎に敗北を喫したことがある。
吉岡 清十郎(よしおか せいじゅうろう)
吉岡拳法の長男であり、吉岡拳法道場の当主。吉岡四強の一人。
小柄な京風の顔立ちの美男子。事実上、京最強の剣士で、剣に関しては幼少から天才と呼ばれるほどの天稟を持ち、また剣士としての非情さを兼ね備えている。小柄な身体は全く弱みにならず、伝七郎の木刀を一刀の下に落とし、繰り出す剣は常人の目には映らない。
遺言に従い吉岡家の当主となるも、自らの本能にのみ従う奔放な性格の持ち主。酒色を好む遊び人で、吉岡家と自身の名を穢すのに一役も二役も買い、その武士らしからぬ風貌・振る舞いから、弟・伝七郎の方が実力は上だと一般に認識されていた。しかし影では吉岡家や実弟・伝七郎を危険から守るために、吉岡家にとって害となす人物を秘密裏に暗殺するなど、当主として家を守ろうと常に奔走していた。
Template:SpoilerH吉岡一門の命運を賭け、伝七郎との対決を控えた武蔵を襲撃する。だが、激戦の末、武蔵の神速の剣を受けて凄絶な最期を遂げた。Template:SpoilerF
吉岡 伝七郎(よしおか でんしちろう)
吉岡拳法の次男。吉岡四強の一人。
長身で無骨な外見であり性格は極めて厳格で真面目。妻子持ち。武門の子としては愚直なまでに剣に情熱を傾けるが、非情になり切れない優しい一面を持つ。しかし、その愚直さは清十郎には無い面であり、門弟に慕われる原因となっている。遊び人の兄・清十郎が吉岡拳法道場の当主であることを不愉快に思っているが、深層では兄を慕っている。かつては、吉岡拳法の息子であることを唯一の拠りどころとしており、相手を威嚇すべく、自らの出自を明らかにしていた。
武蔵が初めて吉岡道場に乗り込んだ際、武蔵を相手に互角以上の戦いを演じるも、武蔵に再戦の機会を与えて逃すという甘い面が見られた。
Template:SpoilerH蓮華王院にて武蔵との決闘に完敗。しかし、最後の最後まで武蔵を斬り捨てるためにすさまじい執念をみせた。Template:SpoilerF
植田 良平(うえだ りょうへい)
吉岡高弟の一人。
元は捨て子の所を拳法に拾われ、門弟・植田氏の養子となる。その後は、熱心に剣に打ち込み、吉岡兄弟の幼馴染となり、「三兄弟」の様な親密な関係を築いた。伝七郎と行動を共にすることが多く、後見的立場を務める。
道場を実質的に切り盛りしている参謀といったところであり、。「実力は両当主にも引けを取らない」「当主を立てるために一歩引いていた」と言われる程の手練でもある、「吉岡の魂」と称されるほど吉岡にとって欠かせない人物。基本的に冷静な男で、時として手段を選ばぬ狡猾な政治手腕も見せる。しかし、それも吉岡を強く想うがこそであり、内に秘める情熱は誰にも劣らず、時には自尊心をも曲げるほどである。
Template:SpoilerH吉岡兄弟亡き後、伝七郎からの遺言により当主の座を継ぎ、一門を率いて武蔵に挑む。だが、吉岡一門対武蔵の戦いでは開始早々に右側頭部を耳ごと斬り落とされ、瀕死の重症を負った。戦いの最後には、自らの命をすべて吹き込んだ「一の太刀」を武蔵に浴びせるものの、自身の命の限界もありついに倒れる。Template:SpoilerF
祇園 藤次(ぎおん とうじ)
吉岡高弟の一人。
清十郎と行動を共にする事が多い。己の剣に絶対的な自信を持ち、自分の上に立てる人物は清十郎しかいないと豪語してはばからない。その為、周囲からは「天狗」と呼ばれ人望もないが、その剣技は吉岡の誰もが認めている。また単なる自惚れで周囲が見えなくなっているわけではなく、本当の強者を見抜く眼力も持ち合わせている。
胤瞬の今まで見たことも無いような器を目撃していまい、剣の道に踏み惑い、やがて最期を迎えることとなってしまう。
南保 余一兵衛(なんぽう よいちべえ)
吉岡十剣の一人。吉岡道場の余一塾の塾長。
小柄な男。妻子持ち。又八の嘘に動じることなく対応していたなど普段は冷静沈着かつ、したたかな性格。兵法に通じており、人海戦術で武蔵を追い詰める。しかし塾生が打ち損ねたため、首の骨を折られ散る。
小橋 蔵人(こばし くらんど)
吉岡十剣の一人。
あまり感情的になることはなく、冷静で洞察力の高さが窺える。
植田と共に門弟の戦いを見守った後、武蔵に斬りかかった。互いに搗ち合った刀が手から抜け飛び引き分けたが、いずれ吉岡流は時代の流れに乗れず、その魂は消滅する運命にあったと悟り、吉岡の敗北を認めた。吉岡一門と武蔵の戦いで唯一生き残った。
御池 十郎左衛門(みいけ じゅうろうざえもん)
吉岡十剣の一人。
長身の男。佐々木小次郎と対峙し、小次郎の強さを知るために半ばその実力差に気付きながらも斬りかかり、一刀のもとに斬られた。
太田黒 兵助(おおたぐろ ひょうすけ)
吉岡十剣の一人。
「吉岡一太い腕」を持つという、恰幅のよい男。稽古で骨折した腕を、伝七郎に試し斬りさせるほどの豪胆と忠誠を持つ。片腕が無いためか、武蔵との闘いに参加していない。その後は消息不明。
堀川 善兵衛(ほりかわ よしべえ)
吉岡十剣の一人。
感情的な面が目立つ性格。当初、武蔵の強さを見切れない単純さも見られた。
東 紅四郎(あずま こうしろう)
吉岡十剣の一人。
不意を突き、武蔵の顎を斬りつけて一瞬追い詰めた。
多賀谷 彦造(たがや ひこぞう)
吉岡十剣の一人。
武蔵に斬られ散ったかに見えたが、道連れにするためになおも斬りかかる。
藤家(ふじいえ)
吉岡十剣の一人。
武蔵が投げた脇差が喉に刺さり散る。

新陰流

上泉伊勢守秀綱が創始者となる流派。奈良に栄える柳生城にて、剣の最高峰と称される流派。また、将軍家兵法指南役にもなっている

現在は石舟斎が新陰流を正式に受け継いでいる。

上泉 伊勢守 秀綱(かみいずみ いせのかみ ひでつな)
新陰流の創設者。
東国にて塚原卜伝と双璧を称される天下無双の剣豪。宝蔵院にて手合わせを願った若き日の石舟斎、胤栄を圧倒的な器の大きさでいとも簡単に下し、さらに高い次元の境地があることを印象的な言葉(後述の『剣は天地に元々・・・』)と共に体験させる。その後は二人の師となる。消息不明。
作者インタビューによれば武蔵が五里霧中なりに志向しているのは胤栄や石舟斉に「受け継がれた秀綱の剣=無刀の境地」らしく、物語のキーパーソンの一人である。作中では、「剣とは心が伴ってこそ最高の境地に至れる」と言うことを発見したルーツの人物。
疋田 豊五郎(ひきた ぶんごろう)
上泉伊勢守の甥で弟子。
若くして、執拗に上泉伊勢守との再戦を求める柳生宗厳と立ち合い、一太刀で倒すような実力者。消息不明。
柳生新陰流
柳生 石舟斎(やぎゅう せきしゅうさい)
柳生新陰流の開祖。
本名は柳生 但馬守 宗厳(やぎゅう たじまのかみ むねよし)
通称「剣聖」。伊勢守に弟子入りし、業を引き継いだ、新陰流第二世。武蔵の心の師の一人。剣を首元にかざした武蔵を圧倒したり、祇園藤次に対していとも簡単に「無刀取り」したりするなどの所業は紛れもなく“天下無双”。
剣聖と称えられる今も技の探求を続けているほど極めて求道的。病気がちであり、自身の余命を考え、その技を兵庫助に残すことに尽くしている。人々から受ける偉人的評価に反し、愛する孫たちにはついつい甘い顔を見せてしまう無邪気な部分や茶目っ気も持っている。
柳生 兵庫助(やぎゅう ひょうごのすけ)
新陰流の後継者。
本名は柳生 利巌(やぎゅう としよし)
柳生石舟斎に特に溺愛されている孫。仕官を誘われるが一顧だにせず断り、向上心を忘れず常に鍛錬に勤しむ。武蔵のことを自分に似ていると感じ、石舟斎も寝ぼけて武蔵の気を兵庫助と間違えたことがある。
柳生 宗矩(やぎゅう むねのり)
石舟斎が五男。
三玄院で沢庵と仲良くなり、それが沢庵と石舟斎を繋ぐきっかけにもなった。江戸で将軍家に剣術を教えている。
庄田 喜左衛門(しょうだ きざえもん)
柳生四高弟の一人。
のような(威圧感のある)男。四高弟の中でも、物事を取り仕切るなど筆頭。
出淵 孫兵衛(でぶち まごべえ)
柳生四高弟の一人。
豪壮な剣の持ち主で、手裏剣を放つ,剣でかち合う時に指を折る、といったような実戦的な技も持つ。
村田 与三(むらた よぞう)
柳生四高弟の一人。
四高弟の中では冷静さに欠け、感情的になりやすく、その性格により空回りしやすいが剣技は確か。
木村 助九郎(きむら すけくろう)
柳生四高弟の一人。
常に冷静沈着であり、普段汗ひとつかかない。武蔵との合戦の際に片耳と右目を負傷する。
富田 勢源(とだ せいげん)
中条流で名高い剣豪。鐘巻自斎らが弟子にいる。
一度彼を探した又八曰く、越前は宇坂之庄浄教寺村に住んでいるらしい。
鐘巻 自斎(かねまき じさい)
鐘巻流の開祖。 
小次郎の育て親。中条流師範として道場を開き、その腕前は当時、「天下に敵なし」と自負していたほど。しかしひたすら自らの剣を極める事のみに打ち込んできたからか、自分以外の人間には酷く無関心であった。弟子の伊藤弥五郎に敗北し、唯一の拠り所であった剣への自信や闘争心を失い、剣の道から退く。
長らくくすぶり続けていたが、不動幽月斎との死闘の際には、小次郎を助ける一心で闘争心を取り戻し、見事討ち果たした。
自分を表現をするのが下手で、独占欲・所有欲が強い面もある。小次郎に剣の道で挫折しとことん落ちぶれた自分自身を投影し、彼を剣の道から徹底して遠ざけようとするが、次第に小次郎こそが自分の生きる希望、そして誇りであると思うようになり、小次郎が望んだ剣の道を歩ませる事になる。  
草薙 天鬼(くさなぎ てんき)
鐘巻自斎の門弟。
本名は亀吉(かめきち)
小さい頃から「野の草を薙ぎ鍛えた、天からの鬼」と「草薙天鬼」を自称していた村のガキ大将。小次郎の幼馴染であり最初の友達である。
父が不動に腕を切られて寝たきりの状態になったことから、復讐の為に強くなることを切望していた。小次郎と共に不動に夜襲を仕掛けるも失敗したことから、顔に傷を刻まれる。自斎が不動を倒したときには、真っ先に弟子となって、自斎という最強の師を目指し、以後、道場では敵なしの実力を持つようになる。
Template:SpoilerH成長して小次郎が一刀斎と共に旅立った後、自斎から小次郎に宛てた免許皆伝の印可を託され彼らの後を追うも、悲運な最期を遂げる。また、その印可目録は又八の手に渡ってしまう。Template:SpoilerF
一刀流
伊藤 一刀斎(いとう いっとうさい)
一刀流の開祖。
本名は伊藤 弥五郎(いとう やごろう)
通称「剣の神様」。鐘巻自斎の弟子で、たった5年の師事で自斎をも倒すほどの剣腕を身に付ける。小次郎を剣の道に導いた張本人で、弟弟子である小次郎の師匠的な役割を果たす。性格は剛胆無比であり自分の実力に絶対の自信を持つ。剣を「遊び」と称したり、生き死にを賭けた斬り合いに無邪気さが全面的に現れるなど、剣を人生の最大の楽しみと捉えている節がある。それ故、現在の鉄砲の戦には興ざめし、士官・出世には興味を示さない。
その実力は、鋼鉄の鉄砲すらも一刀のもとに寸断せしめ、植田良平を手玉に取るほどである。
最強であるが故、対等の敵がいないというつまらなさ感じている節もあり、小次郎が自分の前に最強の敵として現れることをひそかに願っている。
夢想 権之助(むそう ごんのすけ)
「兵法天下一」を名乗る、自分の流派を立てることが夢の若者。
いわゆる傾奇者の格好をしている。百姓の子で、子供の頃は大きな体で働かずに悪事を働いたりしていたので、怖がられ、疎まれていた。故に孤独であり、小次郎が始めての友達となる。
旅をする最中に一刀斎、小次郎らにからかわれ、その際彼らと立ち合うも成す術なく敗北。一刀斎に戦う姿勢の未熟さを指摘される。それ以後、一刀斎を師と仰ぎ二人と旅を共にする。関ヶ原では殺されかかるが武蔵に助けられ、彼らの戦い方を学ぶ。
巌流
佐々木 小次郎(ささき こじろう)
巌流の開祖。
詳細は主要人物を参照。

宝蔵院流槍術

槍の達人、宝蔵院胤栄が創始者となる流派。槍の聖地と言われる奈良の興福寺子院の宝蔵院(寶藏院)に、大勢の修行僧が集まっている。

現在は胤栄は既に引退しており、胤舜が宝蔵院・二代目を襲名する。しかし、胤舜に反感を持つものは多く、その為院内は揺れている。

宝蔵院 胤栄(ほうぞういん いんえい)
宝蔵院流槍術の創始者。
法号、覚禅房胤栄。通称「大胤栄]。豪放磊落な性格で、門弟から尊敬されて止まない。「にゃむにゃむ…」「カカッ」が口癖。武蔵の心の師の一人。
胤舜に宝蔵院の座を譲った後も槍術の腕に衰えはなく、武蔵を圧倒し、その神速の槍捌きはまるで見えない。自身が作る「宝蔵院漬」は好評で、日中畑仕事に精を出している。柳生石舟斎と共に、上泉伊勢守秀綱に弟子入りした過去も。
宝蔵院 胤舜(ほうぞういん いんしゅん)
宝蔵院流槍術二代目。
本名は満田 慎之介(みつだ しんのすけ)
宝蔵院胤栄の元で槍術を学ぶためにやってに来た武士の息子であったが、両親は浪人によって目の前で惨殺され、そのまま胤栄に引き取られる。残酷な現実を、その時に母を助けきれなかった自分の弱さを覆い隠すように槍術に没頭する。すばらしい槍の天分にも恵まれ、15の時にはすでに院内に敵は無く宝蔵院の二代目まで上り詰める。しかし天才であるが故に周りに相応の敵がおらず、戦いに対する姿勢はどこか慢心的であり精神的な未熟さが残る。自身もその自らの欠点は分かっていて、命のやり取りを渇望するが、相手の命のやり取りにしかならないのが事実である。
Template:SpoilerH武蔵と交戦、一度は圧倒的な強さで勝利する。しかし、再度の決闘では、極限状態での精神的弱さが露呈。武蔵の強烈な一撃を浴びて昏倒してしまう。武蔵も夥しい出血のために戦い続けることが出来なくなったため、立会人となった胤栄により、都合2回の対戦内容を考慮した上で引き分け扱いとなった。決闘後、生死をさまようが奇跡的に生還。武蔵とは互いに和解し、再会を約束する。また、宝蔵院の二代目を正式に襲名。Template:SpoilerF
阿厳(あごん)
宝蔵院の修行僧の一人。
無骨な風貌と厳格な性格を持つ。武蔵や胤舜には及ばないが、並みの剣客なら軽く屠り去るほどの手練であり、その槍腕は胤栄にも認められている。
初めのうちは胤舜に憧れて近づこうとしたが、胤舜の性質をいつしか恐れるようになる。しかし、それでも友達だと思っており、胤舜に反感を持つ者の多い宝蔵院の中にあって、彼を親身に心配する数少ない人間でもある。
明栄(みょうえい)
宝蔵院の修行僧の一人。
胤舜が二代目ということが気にくわずに派閥をつくり、胤栄に気に入ってもらおうと胡麻を擂って、自分が二代目になろうと目論む。しかし、実力の差は明らかで、胤栄からもその魂胆は見透かされている。

武蔵関係

宮本村

おつう
武蔵と又八の幼馴染で、彼らの想い人である美女。捨て子だったのを本位田家のお杉に拾われ、又八の許婚として育てられた。
天真爛漫を絵に描いたような性格で無邪気。しかし、一方で捨て子ゆえか礼法が判っていない。その屈託のなさゆえに誰からも嫌われていた武蔵の孤独を理解し、当の本人も気づいていないが想いを寄せるようになった。整った美貌と快活な性格から、誰からも好かれる素質を持っているが、例外的にお杉からは強く逆恨みされている。
武蔵が天下無双を志して再び宮本村を出る決意を固めた時には同行しようとしたが、これを武蔵から拒否された。とはいえ又八との許婚関係を解消した行きがかりから村に留まる事もできなくなっていたので、沢庵の勧めで柳生家に世話になる。しかし武蔵と再会をしたことにより、再び武蔵を追っている。追ってはいるものの武蔵と一緒に旅をしたい訳ではない様であり、武蔵を見つけても声をかけようとしない所を見ると、武蔵を見守っていたい様である。
お杉おばば(おすぎおばば)
又八の母親。
又八の「産みの親」ではない。けれども又八に対する愛情は盲愛と言えるほどに深く、村の名士である本位田家への強烈な自負心ともあいまって、著しく偏狭なものの見方をし、また非常に図々しい。
汚らしかった武蔵のことを、もともと彼女は良く思っておらずに、武蔵(たけぞう)のことを“悪蔵(あくぞう)”と呼んでいた。それに加え、又八に対する強烈な愛情から来る逆恨みにより武蔵とおつうの両名は彼女にとって強い憎悪の対象となっている。又八の後を追うと同時に、武蔵たちへの復讐も果たそうと旅を続ける。
権叔父(ごんおじ)
お杉の弟。
又八への偏愛に現実を見失いがちなお杉とは違い、又八の性情を正しく理解している。又八もその事は分かっているようで、二人の間には信頼関係も存在していたようである。お杉とともに又八を探す旅を続け、ついに又八と巡り会った矢先、武士に斬殺される。そのときの又八の動揺は大きく、妾の子の又八にとっては父親代わりのような人物だったようだ。

その他

沢庵 宗彭(たくあん そうほう)
姫路城城主の池田輝政や柳生石舟斎など様々な有力な人物と人脈を持つ僧。
国と国とを放浪している。僧籍に身を置いているので自ら武器を持つことはないが兵法にも長けており、胆力では辻風黄平ですら圧倒するほど。武蔵のことに気にかけ、しばしば彼に道を説いてやる。石舟斎とは三玄院で宗矩をきっかけに知り合った。
城太郎(じょうたろう)
武蔵の弟子」と名乗る少年。
幼少時代の武蔵に言動が似ている。武蔵の手紙を柳生に届ける際には、「手紙を受け取らないならおいらを斬れ」と言うほど、武蔵に対しての憧れ・忠誠は強い。また、それだけの胆力の持ち主でもある。おつうからは「たろちん」と呼ばれている。   
当初は武蔵には「自分のこともままならぬのに弟子などつくれぬ」と拒否されていたが、柳生へ旅をはじめる際には、武蔵の方から声をかけられ旅の供になるなど、一応弟子扱いはされている。柳生城での戦いにおいて武蔵とはぐれ、おつうと共に武蔵を追う旅を続ける。ちなみに、原作では青木丹左衛門の息子。

関ヶ原関係

辻風組関係

辻風 典馬(つじかぜ てんま)
野武士集団「辻風組」の頭領。
辻風黄平の兄で黄平と同じく母に捨てられた経歴をもつ。黄平が母に殺されかけたところを救い辻風組に入れる。しかしそれは黄平に対する肉欲・所有欲等、特別な面で黄平を見ていた為であった。
関ヶ原の合戦では西方につくも敗れる。お甲に惚れている。お甲の亭主を斬った。武蔵に木刀で撲殺される。
お甲(おこう)
関ヶ原から落ち延びてきた武蔵と又八をかくまった未亡人
野党集団「辻風組」の首領・辻風典馬に懸想されており、たびたび辻風組との諍いを起こしていた。武蔵を辻風黄平との因縁に巻き込むと同時に、妖艶な色香を利用し又八を惑わした。後に又八と暮らし始めたが、程なくして京に移住し又八を捨てた。性格はがめつく、ずる賢い。
朱美(あけみ)
お甲の娘。
当初は武蔵の事を気にしていたが、京で母の稼業を手伝うようになってからは客である清十郎に気を惹かれつつあった模様。清十郎も彼女の事を気に入っているようだが、恋仲ではない(朱美はそのことに気づいている)。清十郎が武蔵に斬られた後は、武蔵対吉岡一門の死闘を見ていた。勝利して京から抜け出そうとしていたぼろぼろの武蔵の前に現れ、自分が「吉岡清十郎の女」である事を告げ、崖から身を投げる。
龍胆(りんどう)
本物の宍戸梅軒の遺児(もしくは事実上の養子)。
梅軒と同じく鎖鎌を使え、技だけなら甲斐正嗣郎を凌ぐ。物心を覚えた頃から周囲にこき使われ、親の愛情を受けないまま育ち、いつか梅軒を殺すことだけを考え生きてきたが、辻風黄平に梅軒を殺され生きる目的を失う。その後、同じく生きる目的を見失っていた辻風黄平が「宍戸梅軒」を名乗り、隙があれば龍胆が鎖鎌で梅軒の命を狙う、二人の奇妙な暮らしが始まる。梅軒が武蔵に敗れた後は、友情や愛情を越えた絆の中、改めて二人で暮らしはじめる。

西方の落武者たち

関ヶ原の戦いにより、敗北した西方の手練揃いの落武者たち。自分らの殿である石田三成を尊敬して慕っており、大阪で逃げ延びて待っていると信じている。そのため、数々の残党狩りや落武者狩りの百姓たちから、誰一人も欠けることなく生き延びると決意して大阪を目指す。

猪谷 巨雲(いがや こうん)
巨躯と豪剣を誇り、皆に認められる一団の中の最大の手練。獣じみていると見られる反面、歩けなくなった新次郎を背負って歩くなど、優しい一面を持つ。
定伊を尊敬し、慕っている。初めは定伊を斬られた復讐心で小次郎と戦っていたが、徐々に強いものとの戦う楽しさ、技の研鑽の喜びを感じるようになる。小次郎との死線を巡るような、一進一退の死闘の果てに散る。
定伊(さだこれ)
巨雲達より年齢を重ねていて教育係であり、親同然の男。故に巨雲達からの信頼は厚く、落ち武者になった際は一団をまとめて物事を決め、取り仕切る。妻を娶らず子もなかったせいか、巨雲達を息子のように思っていたが、足を負傷して動けない新二郎を斬るように言うなど武士として非情な面も持つ。百戦錬磨の兵法者であり、同時に教育者ゆえか「其処許」など独特かつ若干説教がましい言葉使いをする。
小次郎に出会った彼は素通りできない何かを感じて、万力鎖を得物に小次郎と戦う。戦う最中は言葉は通じなくとも、お互いの心は通じたようであり、剣士としての死に場所を見つけたかのように、心持良く散る。
間垣 新二郎 (まがき しんじろう)
市三の兄。
武士の子だが、百姓の子である右源の「理の剣」に憧れる。弟の市三と好対照な実直な性格で弟思い。観察力が高く、戦いの中で巨雲や小次郎たちの実力を分析する。
戦で足を負傷し歩行不能になり巨雲に背負われる。それゆえに一団の足手まといになってしまい、その上、巨雲達の感じた「戦いの中の喜び」を理解できず、苦悩する。
間垣 市三(まがき いちぞう)
新二郎の四つ違いの弟。
戦いに無邪気な性質を持つ若武者。
無数の山狩りを見て、自分らの殿(石田三成)はもう死んでいると悟る。そのことや強い者と戦う高揚した気持ちが抑えきれないこともあり、大阪へ行く使命を捨てて小次郎に勝負を挑む。小次郎の瞬速の一太刀で散る。
右源(うげん)
巨雲とは対照的にかなりの技巧派。残党狩りの百姓達から、足を負傷し戦えない新二郎を助け死亡。
利宗(としむね)
戦の際にが左腕に刺さる。残党狩の百姓達に夜襲をかけられ殺されてしまう。

本阿弥家

代々、刀研ぎを生業としている名門の家柄。現在は光悦は引退して、光室が十代目の惣領として働いている。
本阿弥 光悦(ほんあみ こうえつ)
本阿弥本家九代目惣領
京の屋敷に母・妙秀とともに住まう芸術家。迎え入れた牢人者たちとも暮らしている。芸術家としての技は、天下人徳川家康に指名で刀の研ぎを依頼されるほどで、その技量は折り紙付き。
本阿弥家にて生まれた頃から刀に囲まれて育ち、刀を天地と見立て、その業を長い年月とともに高めてきた。武蔵や小次郎たちとは違った意味で“剣に生きる者”といえる。刀の中に眠る美しさに魅せられ、自分が研ぎたいと思える者の刀のみを研ぐために研ぎ師として一線を退き、家康の依頼すら断ってしまった。そうして一線を退いた後、光悦が刀を研いだのは武蔵と小次郎のたった二人である。
本阿弥 妙秀(ほんあみ みょうしゅう)
光悦の母。
滞在していた小次郎には祖母・母親のように慕われている。
本阿弥 光室(ほんあみ こうしつ)
本阿弥本家十代目惣領。
その目利きや研ぎは光悦にも認められるほど申し分ない技量を持つ。光悦のあまりに早い引退に疑問を抱いていている。

その他

赤壁 八十馬(あかかべ やそま)
出世する為に大阪へ出てきた蒲生浪人。
小次郎の名をかたる又八から推挙料と称して有り金をかすめとる。その後又八から糾弾され、剣の対決に持ち込んだ。恐怖に震える又八を嘲るが、まさかの敗北を喫する。ガチャ蝿ではあるが、ゴロツキの中では、それなりの実力はあったらしい。


関連作品

WATER
バガボンドカラー原画集。
バガボンドモノクロ原画集。

画集が二つに分かれたことについては、作者曰く最初から二つ出す予定であったわけではなく、一般に画集ではカラーが中心になってしまうが、普段よく書いているモノクロの絵の方がレベルが高い位置に達していると思いモノクロを多く載せたいと考えたことによる。[2]

この二つの画集では普段、雑誌掲載時には印刷の限界により見えなくなってしまう微妙な部分まで印刷されるように、工夫されている。

DRAW
バガボンドの原稿を描いていく様を収録したDVD作品。2枚組。先着1000名にはバガボンド特製ダイス(サイコロ)付き。

脚注・出典

  1. ^ 5巻 あとがき
  2. ^ a b     井上雄彦が語る『バガボンド』の世界

関連項目

外部リンク

講談社漫画賞一般部門
第23回 平成11年度
第24回 平成12年度
バガボンド
吉川英治井上雄彦
第25回 平成13年度
文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞
第3回 平成11年度
第4回 平成12年度
バガボンド
吉川英治・井上雄彦
第5回 平成13年度
手塚治虫文化賞マンガ大賞
第5回 2001年度
第6回 2002年度
バガボンド
吉川英治・井上雄彦
第7回 2003年度