探偵
探偵(たんてい)とは、調査業者の一種。興信所員とは一応区別されるが、業務が重複することも少なくない。
ここでは特に日本における探偵の定義を記す。
概要
探偵とは、他人の秘密をひそかに調査したり、犯罪を犯した者を突き止めたりする人(実際には日本の探偵が犯罪者を突き止めることはまずない)。またはその行為。探偵社や興信所などに属する調査員であることが多く、基本的には、警察が多くの事件を解決するのに対し、探偵は悩みの解決を仕事とし、今後も需要は拡大すると言われている。
関西地方の警察では部内用語として刑事のことを「探偵」と呼ぶ事がある。これは、明治時代には「探偵と言う言葉は刑事を指す」言葉だった名残である。一般的な探偵を「私立探偵」と呼ぶ事もあるがこれに対して刑事を「公立探偵」と呼ぶ事はない。
誰でも開業できるため、暴力団の資金源となっている業者も存在する。また、ゆすり・たかりが、金の受け取り先を変えただけという批判も根強い。
また探偵業務が抱える人権問題として「依頼者の秘密を守る反面、調査対象者の秘密は全く守られない」ことがある。
さらに、誘拐事件を起こした犯人グループが被害者の行動を調べ上げるために、探偵業者を使っていたことも明るみに出ている。問題なのは、その探偵業者が一切罪に問われないことである。報酬さえ受け取れば、依頼者の目的を深く詮索せず、依頼者が調べて欲しい対象者のプライバシーを丸裸にしてしまう為、常に悪用される危うさを抱えている。
探偵の業務
探偵の業務は、「調査」と「工作」に大別される。
- 素行調査
- 浮気調査 - 実際に引き受ける事例はこれがほとんどである。“愛に疑問を感じたら……”などと広告を打つ業者が非常に多い。
- 家出人探し
- 債務者探し - 闇金融などの債務を背負ったまま逃げた者の居所を突き止める。
- 裁判の証拠収集
- ストーカー対策
- 過去調査
- 医療保険の受給が不正でないかの調査(例えば仮病ではないか、怪我をした振りをしていないか、など。アメリカでは専門の調査員“アジャスター”もいる)
- 特殊工作
依頼内容によっては、虚実入り混じった情報を、調査対象者の周囲に吹聴したり盗聴器を平気で使う悪質業者が問題になっている。
探偵の権限
2007年6月から探偵業法に基づく届出制が開始された。試合でボクサーやレスラーが相手にケガを負わせても傷害罪に問われないのと同様に、正当業務行為(刑法第35条)が適用され、報道職と合わせ、合法的に尾行調査をできる民間人(法人)となっている。それ以前は、日本においては、弁護士のような国家資格でも警備業のような認定制のある職業でもなかった。
だが、当然に民間人の持ちうる権利の範囲内で業務を行わなければならず、当然のことながら拳銃など武器の携帯も認められていない。したがって、身体に危険が及ぶ可能性のある事件等の調査については、いわゆる丸腰状態で臨まなければならない。推理小説では多くの探偵が殺人事件や凶悪事件の調査を行っているが、現実には素行・浮気調査や人探し調査、企業からの調査依頼が主である。ストーカー対策のように、法的措置が必要となる案件の場合には、警察等と連携して対策を進めることもある。実際には何の資格もなく届け出るだけで合法的に尾行・調査を行え、さらには警察が探偵と依頼者の言い分を真に受け手を貸すことまであることには、強い批判がある。
また、小説・ドラマなどでは警察、国税局などの捜査・調査機関と合同で犯罪捜査をするような描写が多く見られるが、日本においては極めて稀なことといえる。これらの行政機関は法令に基づいて組織的な捜査・調査をすることとなっており、法的権限を持たない探偵が「探偵として」事件捜査に公的に参加・協力することは法的に想定されておらず、またそのような要請がなされることも少ない。例外として、警察署には、捜査協力費という予算が割り当てられており、一部当局の諜報活動のため有能な「探偵」に支払われているケースもある。
端的に言えば犯罪捜査や事件処理に関しては何も出来ないという一般人とあまり変わりがない。
また、少年探偵といった未成年者が探偵の真似事をしたり、未成年者が私立探偵を名乗り、独自の捜査や事件相談などを行ったりするような話が推理小説やアニメなどに見受けられる。
これらの多くは、旅行先などで偶然遭遇した事件に対して、無報酬で、個人的な見解を述べるという筋立てになっている。しかし、これらを業として行うには、親権者の同意がなければ依頼者と確定的な契約を結ぶことができない点と、18歳未満の者については児童福祉法によって夜間一定時間帯に従業させることができない点から、現実的ではない。
もっとも、未成年者の営利活動またはこれらへの従業が全面的に禁止されているわけではない。
「別れさせ工作」では、別れさせる相手を女性工作員が自ら体を使った性交によって篭絡することもあると言われているが、これらの特殊工作を実施する会社は、ただの無法者であり、厳密には「探偵」とは言わない。
日本テレビ視聴率買収事件で視聴率対象者を調査するため探偵を雇い、ビデオリサーチの自動車をつきとめたため、買収が成功し、番組制作費から探偵料をもらった例もある。本来倫理的に問題ある事件でも、「金のためならなんでもやる」風潮があることが問題視されている。
探偵業の法制化
前述のように、日本では探偵業についての法的な位置付けが不明確であり、業務に際して事件を起こしたり、依頼者との間でトラブルが発生することが多い。このため、探偵業務を「依頼を受けて、所在や行動の情報を収集することを目的とし、聞き込みや尾行、張り込みなどの方法で調査し報告する業務」と定義した上で、都道府県公安委員会への届け出を義務づける「探偵業の業務の適正化に関する法律」(探偵業法)が提出され、2006年6月2日に参議院で全会一致で可決された。2007年から施行されている。
法制化により、業務内容が明確化されることなどから、健全な業者の育成および悪質業者の淘汰が期待される。しかし、「法に基づく届出済」を広告で謳う業者は現在でも稀である。
探偵への依頼費
以下に、探偵に仕事を依頼した際にかかる、おおよその依頼費用を挙げる。なお、必要経費を別途請求されることも多い。ただし、これらは探偵の「技量・経験・評価」などにより、大きく左右されるので、注意が必要である。
※ ご存知の方おりましたら、編集追加ねがいます。
- 素行調査 - 10万~500万(調査対象者の情報量や調査規模・調査員の数により変動する)
- 浮気調査 - 50万(上限はない)
- 家出人探し - 50万~500万(情報量・捜索期間による)
- 裁判の証拠収集 - 50万
- ストーカー対策 - 40万
- 別れさせ工作 - 200万
- リストラ工作 - 150万
関西地方の探偵業者の平均的価格は、調査員1名「時給1万円」が平均的な価格とされる。探偵の時給は、ほぼ全国で一律に近いというのが実態のようである。
多くの探偵社が採用している料金は、1日4時間パック、または1日5時間のパックである。このパック(調査員が2名というところが多い)の、およその料金は10万円である。ただし、調査員4名が最低の契約単位という会社も一部存在しているようである。探偵社によって、1日単位のパックで契約を受け付けるところもあれば、最初から1週間単位で契約をすることが前提となっているところもある。
アメリカの場合
アメリカでは州レベルで銃器の保持さえ許される公的免許制度があり、元刑事が転職したり個人開業したりする例もある。リンカーン暗殺を阻止したピンカートン探偵社は、北米最大の法人探偵社として有名。
(各種の法執行官として一定の実務経験を有する者が、試験を通過して保証金を納めると晴れて許可状・身分証・身分章(バッジ)を交付され開業出来る―カリフォルニア州の場合)
また、12歳から学業の妨げにならない範囲での勤労が認められる事もあり(新聞の夕刊配達など)、小遣い稼ぎにアルバイトをしている児童もいる。
推理小説の名探偵
「名探偵」を主人公とする小説は欧米の探偵小説がルーツで、事件捜査の中心人物とされることが多い。上述のように、これは日本の現実の探偵・調査業者の実態とはかけ離れた存在である。主人公(必ずしも探偵を職業にしているとは限らない)が探偵行為を行う小説はかつて「探偵小説」と呼ばれたが、現在は「推理小説」と呼ばれる。名探偵も参照。