1954年の日本シリーズ
1954年のプロ野球日本シリーズは、天知俊一監督率いる中日ドラゴンズと三原脩監督率いる西鉄ライオンズとの対決となり、10月に中日球場と平和台球場で行われた。
戦評
中日と西鉄の両チームの初対決は、共にセ・リーグ、パ・リーグ結成5年目で初のリーグ優勝を果たしたチーム同士の対決で、中日が4勝3敗で勝利し初の日本一に輝いた。特に優勝の原動力となったのは、『フォークの元祖』と呼ばれた杉下茂が5試合に登板し、3勝1敗と活躍した所が大きかった点、石川克彦、服部受弘、近藤貞雄の安定した投手陣、西沢道夫、牧野茂といった打者の活躍が大きかったところだった。
また、天知監督は3年ぶりに中日の監督に復帰した事と高校野球で中京商(現・中京大中京高校)が全国制覇を果たした事も話題があったことから、名古屋の街は熱狂にあふれ、日本シリーズで初優勝した事もファンは熱狂した。
杉下は第7戦、疲れからかフォークが全く落ちず、途中からフォークを投げるのを一切やめてしまった。球速こそ落ちていたものの、コントロールはいつも以上に上々の出来であり、無四球3被安打(二塁すら踏ませなかった)で見事に完封勝利を収めることとなった。
なお、この年から最高殊勲賞に輝いた選手にトヨタ自動車工業(ただし、広島東洋カープ優勝時はスポンサーの都合上マツダ)協賛により記念品として高級乗用車が贈呈されるが、杉下はその獲得第1号となった。
エピソード
この年の日本一チーム中日ドラゴンズが胴上げをしたのは実はこれが初めてである。中日のセントラル・リーグ優勝決定は試合のない日にマジック対象チームである読売ジャイアンツが阪神タイガースに敗れた事によって決まったため、胴上げがなかった。そのため、日本一決定により晴れて・・・というわけである。
中日がリーグ優勝決定で胴上げしたのは1974年が最初だが、以降日本一を手にすることが出来なくなったため「中日は1回しか胴上げできない」というジンクスが生まれてしまったのである。
2007年に悲願の日本一を手にしたが、リーグ優勝は読売ジャイアンツ、クライマックスシリーズ優勝は胴上げ無しだった。しかし、アジアシリーズでは見事に優勝したため、2回胴上げが達成されたことになる。
試合結果
第1戦
10月30日 中日球場 入場者数:29245人
西鉄 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
中日 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | X | 5 |
(西) | ●西村(1敗)、川﨑 - 日比野 |
(中) | ○杉下(1勝) - 河合保 |
本塁打 | |
(西) | 日比野 1号(3回杉下) |
(中) | 児玉1号2ラン(8回西村) |
[審判]セ筒井(球)パ横沢、セ津田、パ苅田(塁)セ円城寺、パ長谷川(外)
第2戦
10月31日 中日球場 入場者数: 30303人
西鉄 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
中日 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | 0 | 0 | x | 5 |
(西) | ●大津(1敗)、河村、北原 - 日比野、永利 |
(中) | ○石川克(1勝)、杉下 - 野口明、河合保 |
本塁打 | |
(中) | 西沢1号2ラン(5回大津) |
[審判]パ二出川(球)セ国友、パ横沢、セ円城寺(塁)パ長谷川、セ津田(外)
第3戦
11月2日 平和台球場 入場者数:23994人
中日 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
西鉄 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 | X | 5 |
(中) | ●大島(1敗)、徳永 - 加藤進、河合保 |
(西) | ○河村(1勝) - 日比野 |
本塁打 | |
(西) | 日比野2号ソロ(4回大島) |
[審判]セ筒井(球)パ横沢、セ国友、パ苅田(塁)セ円城寺、パ長谷川(外)
第4戦
11月3日 平和台球場 入場者数:25185人
中日 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
西鉄 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | X | 3 |
(中) | ●杉下(1勝1敗) - 河合保 |
(西) | ○川崎(1勝) - 日比野 |
[審判]パ二出川(球)セ津田、パ苅田、セ円城寺(塁)パ長谷川、セ国友(外)
第5戦
11月4日 平和台球場 入場者数:19771人
中日 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 3 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
西鉄 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 |
(中) | ○杉下(2勝1敗)- 野口明、河合保 |
(西) | 大津、西村、●河村(1勝1敗) - 日比野 |
本塁打 | |
(西) | 日比野3号ソロ(9回杉下) |
[審判]セ筒井(球)パ苅田、セ円城寺、パ横沢(塁)セ津田、パ長谷川(外)
第6戦
11月6日 中日球場 入場者数: 27776人
西鉄 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 4 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
中日 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
(西) | 川崎、河村、○大津(1勝1敗) - 日比野 |
(中) | ●石川克(1勝1敗)、空谷 - 野口明、河合保 |
[審判]パ二出川(球)セ国友、パ横沢、セ津田(塁)パ長谷川、セ円城寺(外)
第7戦
11月7日 中日球場 入場者数:23215人
西鉄 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
中日 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | X | 1 |
(西) | ●河村(1勝2敗)、川崎、西村 - 日比野 |
(中) | ○杉下(3勝1敗)- 河合保 |
[審判]セ筒井(球)パ横沢、セ津田、パ苅田(塁)セ国友、パ長谷川(外)
- 第1戦:10月30日 NHKテレビ 実況:石田武
- 第2戦:10月31日 NHKテレビ
- 第3戦:11月2日・第4戦:11月3日・第5戦:11月4日 テレビ中継なし
- 福岡地区ではまだテレビ放送が開始されていなかったために中継なし
- 第6戦:11月6日 NHKテレビ
- 第7戦:11月7日 NHKテレビ
ラジオ中継
- 第1戦:10月30日
- 第2戦:10月31日
- 第3戦:11月2日
- 第4戦:11月3日
- 第5戦:11月4日
- 第6戦:11月6日
- 第7戦:11月7日
- 現在までに日本短波放送(→ラジオたんぱ→現・ラジオNIKKEI)が日本シリーズを中継したのはこの第4戦だけである。