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FOLFOX

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FOLFOX(フォルフォックス)とは大腸癌に対して行う化学療法のひとつのレジメである。

欧米では主に外来治療で行う化学療法であるが日本では入院して行う場合が多い。用いる薬剤は5-FULV(但し2007年7月現在、日本では承認の関係でl-LVを使うのが普通)、L-OHPである。外来治療を行うには中心静脈リザーバーが必要である。 有名な方法としてはFOLFOX4とそれの投与方法を簡略化したFOLFOX6がある。FOLFOX6でL-OHPの代わりにCPT-11を用いるようにしたのがFOLFIRIである。stageⅣ大腸癌に対してはFOLFOX6とFOLFIRIのどちらを先に行っても効果が変わりないことが知られている。

FOLFOX4 regime[1][2]


用いる抗がん剤

5-FU
フルオロウラシル(商品名5-FUなど)はピリミジン拮抗剤であり、チミジル酸合成酵素を阻害することでS期特異的にDNA合成阻害をする。
l-LV
レボホリナート(l-LV、商品名アイソボリンなど)はフルオロウラシルの効果を増強させる。ピリミジン拮抗剤とチミジル酸酵素の結合をより強固にする作用がある。
LV
ロイコボリン(LV、別名ホリナート、商品名ロイコボリンなど)の光学活性体(l体)がl-LVである。効果や作用機除はl-LVの説明を参照。LVの効力はl-LVの1/2に相当する。投与はl-LVの場合に比べ倍量となる[3]。なお、日本においては、結腸・直腸癌に対してLVを使い5-FUの効力を増強させる方法は承認されていない[3]のでLVの代わりにl-LVを使うが、海外ではLVを使うことが多い。
L-OHP
オキサリプラチン(L-OHP、商品名エルプラットなど)は白金製剤でありDNA鎖内および鎖間の両者に白金とDNAのクロスリンクを形成しDNAの複製および転写を阻害する。海外では大腸癌に対する有効性が示されており、stageⅡ、Ⅲの大腸癌に対してもFOLFOXとして用いることがある。副作用に末梢神経障害がある。

FOLFOX以外で大腸癌によく用いられる抗がん剤

カペシタビン
カペシタビン(商品名 ゼローダ)は5-FUと同じフッ化ピリミジン系に類する経口抗がん剤であり、5-FUのプロドラッグである。2008年6月の時点で、日本では結腸癌において術後補助化学療法に対してのみ承認されている。L-OHPとの併用の成績もいくつか報告されており、FOLFOXに対してCapeOX, XELOXなどと呼ばれている。[4]
TS-1
一般名はテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムであり、日本で広く用いられているフッ化ピリミジン系経口抗がん剤である。2008年5月時点で、術後補助化学療法としてのTS-1の有効性及び安全性は確立していない。[5]
CPT-11
イリノテカン(CPT-11、商品名カンプトなど)はトポイソメラーゼⅠ阻害薬でありDNA合成を阻害する。FOLFIRIの中心的薬剤である。主な副作用として下痢があり、この治療にはロペミンが有効である。また骨髄抑制が非常に強いことが知られている。
ベバシツマブ
ベバシツマブ(商品名 アバスチン)は、2007年に日本で承認された分子標的治療薬であり、FOLFOX (XELOX)、FOLFIRIなどとの併用も行われている。[4]

使用法

StageIII(一部StageIIを含む)大腸癌の術後補助化学療法

StageIII(周囲リンパ節転移があるが遠隔転移がない)大腸癌では、治癒切除後に補助化学療法を行うことにより再発を抑制し予後を改善することができる。補助化学療法としては2007年8月現在5-FU/l-LV療法が標準である[6]が、FOLFOX4は5-FU/LVより3年無病生存率が有意に良好であったとの報告があり、今後標準療法になる可能性がある。

StageIV、再発大腸癌に対しての全身化学療法

切除不能なStageIV(遠隔転移を有する)・再発大腸癌では、2007年8月現在FOLFOXやFOLFIRIが標準療法である。これらに分子標的治療薬であるベバシツマブなどを併用すると予後が改善するとの報告が相次いでおり、今後は標準療法になると考えられている。

脚注

  1. ^ de Gramont A, Figer A, Seymour M, Homerin M, Hmissi A, Cassidy J, Boni C, Cortes-Funes H, Cervantes A, Freyer G, Papamichael D, Le Bail N, Louvet C, Hendler D, de Braud F, Wilson C, Morvan F, Bonetti A (2000). “Leucovorin and fluorouracil with or without oxaliplatin as first-line treatment in advanced colorectal cancer”. J Clin Oncol 18 (16): 2938-47. PMID 10944126.  HTML PDFPatients with advanced colorectal cancer were given 5-fluorouracil and leukovorin. Those who were also given oxaliplatin were more likely to have a response, and had longer progression-free survival, than patients without oxaliplatin. However, patients with oxaliplatin didn't survive any longer than patients without it.
  2. ^ FDA Approval: Eloxatin [oxaliplatin] PDF
  3. ^ a b 「エルプラット注射用100mg」添付説明書(第3版)(株式会社 ヤクルト本社)
  4. ^ a b NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology, Colon Cancer Vol.2.2007
  5. ^ ティーエスワン カプセル20/ティーエスワン カプセル25添付文書 2008年5月改訂(第21版)
  6. ^ 大腸癌研究会『大腸癌治療ガイドライン-医師用(2005年版)』、金原出版、2005年