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ヒト免疫不全ウイルス

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ヒト免疫不全ウイルス
リンパ球に結合するHIV-1
リンパ球に結合するHIV-1
分類(ウイルス)
Group: Group VI (ssRNA-RT)
: レトロウイルス科
Retroviridae
: レンチウイルス属Lentivirus
  • HIV-1
  • HIV-2

ヒト免疫不全ウイルス(ヒトめんえきふぜんウイルス、: Human Immunodeficiency Virus, HIV)は、人の免疫細胞に感染し免疫細胞を破壊して、後天的に免疫不全を発症させるウイルスである。俗に「エイズウイルス」と呼ばれることがあるが、正式な名称ではない(病原性の項目を参照)。

概要

ヒト免疫不全ウイルス(模式図)上段:細胞から出芽直後の未成熟(immature)なウイルス粒子。下段:出芽後に成熟(mature)したウイルス粒子。

ウイルスの分類上は、エンベロープを持つプラス鎖の一本鎖RNAウイルスであるレトロウイルス科レンチウイルス属に属する、HIV-1(Human Immunodeficiency Virus type1)とHIV-2(Human Immunodeficiency Virus type2)が存在する。

霊長類を自然宿主とするサル免疫不全ウィルス(Simian Immuno-deficiency Virus, SIV)が、突然変異によってヒトへの感染性を獲得したと考えられている。ウイルスの塩基配列を比較すると、HIV-1はチンパンジーから分離されたSIVcpzに近く、HIV-2はマカクやマンガベーなどのサルから分離されたウイルスSIVmacSIVsmmに近い。この様な事から、SIVに感染したサルからヒトへと感染し、HIVに進化した物と考えられている。HIV-1とHIV-2の基本的な遺伝子の構造はほぼ同じであるが、塩基配列の相同性は低く60%ほどである。最も大きな遺伝子の相違は、HIV-1にはvpu、HIV-2にはvpxがそれぞれに存在する事である。またこの相違はSIVcpzSIVsmmの間にも見られる事から、HIV-1とHIV-2はそれぞれ独立した祖先から、人間に感染する能力を持ったウイルスに進化したものと考えられている。

HIV-1は塩基配列により3群に分類されている。グループM(Major)、グループO(Outlier)、グループN(non-M/non-O)に分けられるが、世界的に分布しているウイルスの多くがグループMに属している。グループMはさらにA、B、C、D、E(後に組換え体であるCRF01_AEである事が判明。純粋なEは未発見)、F、G、H、J、Kの10のサブタイプに分類される。更にこのサブタイプ間での組換え体が存在し、CRF(circulating recombinant form)が15種類確認されている。日本の感染者の主なサブタイプは、BとCRF01_AEであり、サブタイプBがおよそ75%、CRF01_AEが20%、残りがそのほかのサブタイプとなっている。

後天性免疫不全症候群(AIDS)の項目も参照。

歴史

1983年パスツール研究所のモンタニエらによってエイズ患者より発見され、LAV(Lymphadenopathy-associated virus)と命名された。1984年アメリカ国立衛生研究所(NIH)のギャロらも分離に成功しており、HTLV-III(Human T-lymphotropic virus type III)と命名した。続いてカリフォルニア大学サンフランシスコ校のレヴィらも分離に成功しARV(AIDS-associated retrovirus)と命名された。1985年にモンタニエらが別のエイズの原因ウイルスを分離し、LAV-2(Lymphadenopathy-associated virus-2)と命名された。LAV、HTLV-IIIおよびARVは、後にいずれも同じウイルスである事が明らかとなりHIV-1と改称され、LAV-2はHIV-2と改称された。

症状

HIV-1に感染し細胞変性効果(cytopathic effect,CPE)によって多核巨細胞化したT細胞(矢印)

非常に変異しやすいウィルスでありウイルスの表面抗原がそれぞれ違うといえるほど多種多様な型がある。その為、ワクチンを作成する事は困難である。特定の抗原に対して抗体を作ることが出来るワクチンを作成する事に成功したとしても、すぐに変異ウイルスが出現してしまい、臨床で実用することが難しい。

病原性

HIV免疫機能の発動に必要なCD4+T細胞というリンパ球などに感染し、比較的長い潜伏期の後に活性化してCD4+T細胞を破壊してしまう。CD4+T細胞が著しく減少すると体内の免疫力が極度に低下し、免疫が正常であれば排除できるような病原体にも簡単に感染する日和見感染を起すようになり、容態が不安定になる。進行すれば、その他の合併症等を引き起こし死に至る事も多い。

エイズとはこのように感染後の潜伏期を経て陥ってしまう免疫不全状態を指し、単にHIVに感染しただけ(HIVキャリア)ではエイズとは呼ばない。他にも、HIVは脳神経の免疫を担うミクログリア細胞に感染する事が判明しており、HIVに感染したミクログリア細胞が神経系組織に影響を及ぼし、精神障害や痴呆など神経症状を呈するエイズ脳症を引き起こす。

感染経路

HIVは通常の環境では非常に弱いウイルスであり、一般に普通の社会生活をしている分には感染者と暮らしたとしてもまず感染することは無い。感染する原因の内訳は、肛門性交によって感染する割合が最も高い(必然的に同性間での性的接触による割合が多くなる)。それは妊娠のリスクが無い為、性交時にコンドームを使用せず、直腸内で射精する行為が多い為である。次いで異性間の膣性交によるものが多い。全体の多くは性行為による感染で、注射器の使い回しによる感染、母子感染などが後に続く。

一般に感染源となりうるだけのウイルスの濃度をもっている体液は血液精液膣分泌液母乳が挙げられる。

一般に感染しやすい部位としては粘膜(腸粘膜、膣粘膜など)、切創(せっそう)や刺創(しそう)などの血管に達すような深い傷などがあり、通常の傷のない皮膚からは侵入する事はない。その為、主な感染経路は以下の3つに限られている。

性的感染
性交による感染では、性分泌液に接触する事が最大の原因である。通常の性交では、女性は精液が膣粘膜に直接接触し血液中にHIVが侵入する事で感染する。男性は性交によって亀頭に目に見えない細かいができ、そこに膣分泌液が直接接触し血液中にHIVが侵入する事で感染する。その為、性交でなくても性器同士を擦り合わせるような行為でもHIV感染が起こる恐れがある。また肛門性交では粘膜に精液が接触しそこから感染するとされている。腸の粘膜は一層の為に薄く、HIVが侵入しやすい為、膣性交よりも感染リスクが高い。
コンドームの着用がHIVの性的感染の予防措置として有効である。ただし使用中に破れたり、劣化した物を気付かずに使用する場合があるため、完全に感染を防ぐことができるとは言えない。コンドームの使用に際しては、信頼できる製品を使用期限内に正しい用法で用いることが推奨される。
また割礼によって感染リスクが低減するという研究結果が複数ある。傷つきやすく、免疫関連細胞の多い包皮を切除することで、HIVの侵入・感染が抑えられる為だと考えられている。
なお口腔性器を愛撫する場合も、口腔内に歯磨きなどで微小な傷が生じていることが多く、そこに性液が接触することで、血液中にウイルスが侵入する恐れがある。
血液感染
感染者の血液が、輸血麻薬まわし打ち等によって、血液中に侵入する事で感染が成立する。以前は輸血血液製剤からの感染があったが、現在では全ての血液が事前にHIV感染の有無を検査され、感染のリスクは非常に低くなっている。医療現場においては、針刺し事故等の医療事故による感染が懸念され、十分な注意が必要である。
母子感染
母子感染の経路としては三つの経路がある。出産時の産道感染、母乳の授乳による感染、妊娠中に胎児が感染する経路である。
産道感染は子供が産まれてくる際、産道出血による血液を子供が浴びる事で起こる。感染を避ける方法として、帝王切開を行い母親の血液を付着させない方法があり、効果を上げている。
母子感染の経路として母乳による感染が報告されており、HIVに感染した母親の母乳を与える事は危険とされている。この場合は子供に粉ミルクを与える事によって、感染を回避する事が出来る。
胎内感染は、胎盤を通じ子宮内で子供がHIVに感染する事で起こる。物理的な遮断が出来ない為、感染を回避する事が難しい。感染を避ける方法として、妊娠中に母親がHAART療法により血中のウイルス量を下げ、子供に感染する確率を減らす方法がとられている。

臨床像

通常感染してから長期間経過した後に日和見感染症などを発症する。23の日和見感染症のいずれかを発症した場合にAIDS発症と判断される。

検査

感染の機会があってから3ヶ月以上経過した後であれば、採血による血液検査でHIV特異抗体を検出する事ができ、感染の有無を確認する事ができる。しかし、HIVの感染初期においては抗体が十分に作られず、血液検査では検出できない期間がある。この期間をウインドウ期間(ウインドウピリオド・空白期間)と呼んでおり、およそ2ヶ月ほどある。その為、この間に血液検査を行っても陰性と判断されてしまう。また抗体検査では非特異的な反応によって、あたかも陽性であるかのような偽陽性の結果が出る場合がある。その為、確定診断として、血中のウイルスRNART-PCR法によって検出するウイルスDNA検査も広く行われている。

検査は全国の保健所で匿名・無料で受ける事が出来る。また、自分の居住地以外の保健所でも検査を受ける事ができる。そして有料であるが、医療機関でも検査を受ける事が出来る。都市部の保健所では、夜間や休日にも検査を行っている所があり、仕事や学業に影響を与えず検査できる体制を整えつつある。結果はおよそ一週間ほどで判明するが、近年は30分以内で判明する即日検査も普及し始めている。

献血においては安全性の面から検査を行っているが、陽性であってもその結果は献血者本人に知らせる事はない。それは感染リスクのある人間が、検査目的で献血することを防ぐためである。一方で、通知しないことにより感染者が再び献血をしてしまう懸念もある。ウイルスが検出できないウインドウ期間があり、この期間に献血をしてしまうと、汚染血液が検査をすり抜けて輸血患者にウイルスを感染させてしまう。その為、決して検査目的で献血を行ってはならない[1]。HIVのウインドウ期間はおよそ2ヶ月ほどであり、最も感度の高い核酸増幅試験(NAT)では、感染後およそ1ヶ月が経過した後にウイルス血症に陥ってから平均11日から22日後に検出可能であり、平均22日以降では抗体によって検出が可能となる。NATで検出が出来ない期間を「NATウインドウ期間」、抗体による検出が出来ない期間を「血清学的ウインドウ期間」という。感染が疑われる機会があった場合は、それから1ヶ月半以上経過の後に血液検査を行ってから、献血を行う事が望まれる。

なお、「陽性であっても、その結果は献血者本人に知らせることは無い、と公表しているが、実際のところ告知を行ってるかどうかは不明(場合によっては告知する場合がある)である」などという言説がよくあるが、これは全くの誤りであり、悪質なデマである。

現在、NATは試薬が大変高価で検査費用が高い事、完全自動化されておらず一度に大量の検査ができない為、20検体を1つにプールしてNATを実施し(ミニプールNATと呼ばれている)、あるプール検体が陽性となった場合はプールされている20検体をし[2](個別NATと呼ばれている)、陽性の検体を特定して、その検体に対応する血液のみ廃棄するという方法をとっている。

感染が疑われる場合は、第一に全国の保健所及び医療機関に相談する事が先決である。

治療

HIVがレトロウイルスである事から、HIV自身が増殖に必要な酵素を阻害する、逆転写酵素阻害剤(NRTI)プロテアーゼ阻害剤非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)が開発され治療薬として使われている。現在のHIV治療はこれらを複数組み合わせて使用する。これは多剤併用療法、HAART(HAART療法、Highly Active Anti-Retroviral Therapy)、カクテル療法などと呼ばれている。また、ウイルスが細胞に取り付くところを抑制する薬剤(フュージョンインヒビター)の開発もされ、米国及び、EUで認可されている。HIV治療薬は適正な使用によりHIVの増殖を抑制し、患者の免疫機能を回復させ病勢の進行を遅らせるのに一定の効果があり、現在ではHIV感染症は長期にわたりコントロールできる疾患になりつつある。しかしHIV自体を体内から排除する根本治療ではない。

抗ウイルス薬を参照。

また、現在では抗ウイルス薬とは全く違うアプローチでHIVを阻止しようという試みもあり、臨床実験が行なわれている。

HIV-1の生物学

形態

成熟したウイルスの形状は球状の粒子であり、直径は約100nmである。球形の膜に囲まれた中心に、ウイルス遺伝子RNAとGAGタンパク質からなる核様体がある。核様体はGAGタンパク質のマトリックス(MA, p17)、キャプシド(CA, p24)、ヌクレオキャプシド(NC, p7)と2本のRNA、そしてプロテアーゼ(p10)、逆転写酵素(p66/p51)、RNaseH(p15)、インテグラーゼ(p31)などのウイルス酵素群からなる、正十二面体の結晶構造をしている。ウイルスの表面はエンベロープタンパク質であるGp120およびGp41と、宿主細胞膜由来の膜タンパク質が主成分である。

遺伝子

ウイルス粒子中のRNAはプラス一本鎖のRNAである為、宿主内ではmRNAの構造となる。RNAは5'末端にキャップ構造を持ち、3'末端にポリAを持つ。RNA全長はおよそ9000塩基対であり、9個の遺伝子と、両端にウイルスの転写及びその制御を行う配列を持つ。ウイルスRNAは逆転写酵素(RT)によって二本鎖DNAに変換され、インテグラーゼによって宿主DNAに組み込みプロウイルスを形成する。

LTR

LTR(Long Terminal Repeat)はウイルスゲノム両端にある、ほぼ同じ塩基配列が繰り返されている領域である。転写制御を行うプロモーターエンハンサー、NRE(Negative Regulatory Element)を有している。また、ウイルスゲノムを宿主ゲノムに挿入するインテグラーゼの認識配列がある。このように、LTRは核酸の制御を行う配列がまとまっている領域である。

gag

gag (group specific antigen) は、ウイルスの構造タンパク質をコードしている。翻訳されたタンパク質は、ウイルスのプロテアーゼによって6つのタンパク質とペプチドに切断される。

  • MA - マトリックス(matrix)の略である。MAは中心部の核様体と外套部(エンベロープ)を繋げる役割をもつ。タンパク質の質量からp17とも言われる。
  • CA - キャプシド(capsid)の略である。CAは核様体の基本骨格であり、正十二面対の構造を形成する。タンパク質の質量からp24とも言われる。
  • p2 - CAとNCの間にある、スペーサーペプチドである。
  • NC - ヌクレオキャプシド(nucleo capsid)の略である。ウイルスのゲノムRNAに直接結合し、RNAの凝集および保護を行っている。外側をCAに覆われて核様体を形成する。タンパク質の質量からp7とも言われる。
  • p1 - NCとp6の間にある、スペーサーペプチドである。
  • p6 - 細胞内でGAGタンパク質やVprを細胞膜に集め局在させるモチーフがある。このモチーフを破壊するとウイルスは出芽できなくなり、増殖する事ができない。

pol

polgag の下流にある、ウイルス酵素群をコードしている遺伝子が結合した領域である。pol開始コドンを持っておらず、リボソームgag のmRNAを-1フレームシフトする事によって翻訳される。従って、翻訳産物はGag-Polの融合タンパク質となる。そしてフレームシフトした結果、プロテアーゼが翻訳され自己消化し、プロテアーゼを融合タンパク質から切り出す。そしてプロテアーゼは残りのPolタンパク質を消化して、各ウイルス酵素を切り出す。

  • pro - プロテアーゼ(protease)の略である。翻訳産物は二量体を形成するアスパルティックプロテアーゼであり、活性中心にはアスパラギン酸スレオニングリシンからなるアスパルティックプロテアーゼ特有のモチーフを持つ。プロテアーゼは翻訳後、オートプロセッシングによって切り出された後、ウイルスのタンパク質を切断する。細胞質中での活性は低いが、ウイルスの発芽後にウイルス粒子内のpHが変わり最適な状態になると、Gag、Gag-Polを切断し、成熟(mature)したウイルス粒子を完成させる。ウイルスの成熟、各種ウイルス酵素の活性化に重要な役割を果たしているため、プロテアーゼ阻害剤による化学療法のターゲットとなった。
  • RT - 逆転写酵素(reverse transcriptase)をコードしており、プロテアーゼによって切り出された後、完全長のp66と一部プロセスされたp51とが二量体を形成する。レトロウイルス特有の逆転写を行う酵素であるため、逆転写酵素阻害剤による化学療法のターゲットとなった。RTによる逆転写はフィデリティ(正確性)が低い為、しばしば突然変異を引き起こす。このRTの不正確さがウイルスの変異を早める結果となり、ワクチンの作成を困難にし、更に薬剤耐性ウイルスの出現の要因となっている。
  • RNaseH - 一部プロセスされたRTの残りの部分p15には、RNaseHとしての機能領域がある。RNaseHは、DNAとRNAのハイブリッドからRNAだけを特異的に分解する酵素である。逆転写酵素がRNAを鋳型にDNAを合成した後、鋳型であるRNAを分解する事に作用している。
  • IN - インテグラーゼ(integrase)の略である。インテグラーゼは翻訳後に多量体を形成し、逆転写されて二本鎖DNAになったウイルスゲノムを、宿主ゲノムに組み入れる働きを持つ酵素である。ウイルス特有の酵素である為、その阻害剤(en:Raltegravir)が開発され、米国で認可された。

vif

vif(Virion Infectivity Factor)は細胞質に存在し、ウイルス粒子が感染性を持つようになる因子であると考えられていた。しかしvif変異体の研究では、宿主細胞によって機能がまちまちであり、機能がはっきりしていなかった。近年の研究により、ウイルスRNAから複製されたDNAのマイナス鎖中で、シチジン残基をウラシルに変換し、レトロウイルスゲノムを破壊する細胞内因子APOBEC3Gの抑制に関与する事が判明した。詳細な機構は完全に解明されていないが、Vifが細胞自身のユビキチン-タンパク質リガーゼのいくつかと複合体を形成し、それによってAPOBEC3Gをタンパク質分解酵素の標的にし、APOBEC3Gを破壊する事で、HIV-1のゲノムがダメージを受ける事を回避させていると考えられている。

vpr

vpr(Viral Protein R)にコードされているタンパク質は、感染初期に必要なタンパク質であり、ウイルス粒子内に取り込まれる唯一のアクセサリータンパク質である。Vprの機能は多岐にわたり、代表的な機能としてサイトカインの合成阻害、アポトーシスの抑制、細胞分裂をG2/M期で阻止する事が挙げられる。その為、HIV-1の毒性を高める大きな要因となっている遺伝子である。発現はRevに依存して行われる。

vpu

vpu(Vilal Protein U)はHIV-1だけにみられる遺伝子であり、そのタンパク質はEnvタンパク質を細胞膜に集める役割がある。細胞膜に局在するが、ウイルス粒子内には取り込まれない。

tat

tat(Trans AcTivator)は転写活性因子をコードする遺伝子である。5'末端のLTR内にあるTAR(Trans Activation Responseive region)に結合し、ウイルス遺伝子の転写を促進させる。遺伝子はイントロンを持ち、転写後スプライシングされ翻訳される。

rev

rev にコードされているタンパク質はRNAの輸送と分配に作用する。遺伝子はイントロンを持ち、転写後スプライシングされ翻訳される。Revの活性領域に宿主由来の核タンパク質が結合して、RNAを核から細胞質へと輸送する。

env

env はウイルスを覆う殻となるタンパク質をコードしている。エンベロープは始めGp160として翻訳され、宿主細胞由来のプロテアーゼ切断されて、Gp120とGp41になる。宿主細胞表面のレセプターに結合し、宿主細胞へウイルスを侵入させる役割を持つ。

  • Gp120
  • Gp41

nef

nef(NEgative Factor)にコードされているタンパク質は、宿主の細胞膜に局在し、宿主の細胞表面でCD4抗原の発現を抑える働きがある。またNefはMHC-1を抑制する事から、ウイルスのエピトープが細胞表面に提示されず、感染細胞がキラーT細胞(CTL)によって傷害されなくなる。この事から、AIDS発症に重要な役割をしていると考えられている。実際にnefを欠損したHIV-1感染者では、病態の進行が遅く、長期にわたってAIDSを発症しないことが確認されている。

感染率上位10ヵ国

世界各国におけるHIV感染者の割合
感染上位10ヵ国
%
1 スワジランド王国 33.38
2 ボツワナ共和国 24.10
3 レソト王国 23.24
4 ジンバブエ共和国 20.12
5 ナミビア共和国 19.56
6 南アフリカ共和国 18.78
7 ザンビア共和国 16.96
8 モザンビーク共和国 16.11
9 マラウイ共和国 14.09
10 中央アフリカ共和国 10.73

※ここでは、正式名称で表示する。

参考資料

その他

感染者は免疫機能障害という事で都道府県に申請することにより身体障害者手帳が交付される。

参考文献

  1. ^ http://www.pref.osaka.jp/chiiki/shippei/tokutei/aids/kenketsu.html
  2. ^ http://www.hokkaido.bc.jrc.or.jp/laboratory/info007.htm 個別に再検査を実施

関連項目

外部リンク