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大型自動二輪車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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BMW K1200S(1170ccの大型自動二輪車)

大型自動二輪車(おおがたじどうにりんしゃ)とは、日本におけるオートバイの区分のひとつで、排気量400cc超の二輪車を指す。

概要

車両価格が比較的高価であり、車検が必要、燃費が良くない、維持費の負担が大きいなど、日常利用には必ずしも向いているとは言えず、維持所有のためのハードルは高い一方、パワーにあふれ、所有欲を満たす、趣味性の高い乗り物といえる。

道路運送車両法では「二輪の小型自動車」に分類される。

大型二輪免許で運転でき、高速道路も走行できる。2005年4月より、高速道路での二人乗りが可能となった。ただし、20歳以上で免許の期間が3年以上(普通自動二輪のみの免許期間も合算される)などの条件がある。また、首都高速の一部は二人乗りが認められていない。

警視庁・道府県警・その他警察公務機関で白バイとして現在広く採用されている車種である。また海外においても、警察機関で大型自動二輪車が採用されている。

オートバイにおける、最高峰に分類されるカテゴリであり、四輪のスーパーカーに匹敵する性能を有する市販車も存在する。故に、大型自動二輪車を運転するライダーは、高い運転技術や安全運転・法律遵守への高い意識を持つことが求められる(これは公安が認可した二輪車教習教科書の殆どに明記されている)。

法律上の定義

大型自動二輪車は、道路交通法施行規則において、次の通り定義されている。[1]

総排気量0.400リットルを超える内燃機関を原動機とする二輪の自動車(側車付きのものを含む。)で、大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外のもの

免許制度

かつての大型二輪免許である自動二輪免許(限定なし)は、1973年以前には普通自動車免許(或いは大型自動車免許)のオマケとして付与された(いわゆる「ポツダム免許」)ため、大型二輪の乗車経験もない70代の高齢者でも大型自動二輪免許を持っているという現状がある。 しかし、1975年より運転免許試験場での技能試験または自動二輪中型限定免許からの限定解除審査(共にいわゆる「一発試験」)の合格者のみに交付されたが、その合格者数は全受験者の一割未満ともいわれる難関であったがゆえに、免許そのものが高嶺の花であった。

しかし、ハーレーダビッドソンBMWなどの海外のメーカーから「輸入バイクが売れないのは、日本の免許制度に原因がある」(=非関税障壁)と外圧がかかり、1996年9月の免許制度改正から「公認自動車教習所」で大型二輪免許の教習が受けられるようになった。(実際には認可までに時間がかかり、1997年教習開始)以前よりは容易に免許が取得できるようになってからはカテゴリーとしての人気が高まった。

なお、1996年から大型二輪免許と普通二輪免許が独立した免許となったため、現在では普通二輪免許の限定を解除して大型二輪免許を取得することはできないので注意が必要。また免許が独立したことにより、別個のものと扱われるようになったため、普通二輪免許で大型自動二輪車を運転した場合、免許条件違反ではなく無免許運転扱いとなる。

教習所によっては、無免許または原付免許、普通免許、中型免許、大型免許、大型特殊運転免許からいきなり大型二輪免許を取得出来るところもあるが(多くの場合最低でも小型自動二輪が乗れる実力があることを前提にしてある)、教習効率等を理由に段階的な取得を薦めたり、そもそも普通二輪免許を所持しない人を対象としたコースを設けていないことも多い。

2005年6月より二輪免許にもオートマチック限定免許が創設され、400ccを超えるビッグスクーターを運転するには大型二輪AT限定免許を取得すれば乗ることができるようになった(126~400ccの場合は普通二輪AT限定免許)。しかし創設当時には650ccを超えるオートマチック車両が日本国内で生産されていなかったことから、現在でも大型二輪免許のAT限定には650ccまでの排気量限定がついており、限定解除審査に合格しないとそれ以上の排気量を持つ大型自動二輪車(AT車も含む)を運転することができない。AT限定解除するか教習車仕様の750ccのAT自動二輪を作り持込で教習を受けるか、試験場で試験を受けて合格すれば排気量制限の無いAT大型自動二輪免許が受けられるが、事実上困難である。

大型二輪免許制度は日本独自のものである。だが、欧州の場合は年齢や経験により34馬力までに制限されることがある(一定期間経験をつめば解除)。2013年から欧州の免許制度が統合され、免許を取得してから2年は34馬力までということになる。また、ニュージーランドの場合初心者は250ccまでや、速度は70km/h(一般道路)の制限があったりする(これも経験をつめば自動的に解除される)。これと似たようなものに旧大型自動車免許がある(普通免許を取得してから3年間は現中型自動車免許しか運転できなかった(現在では旧制度による大型自動車免許を取得後何度も免停になる例外を除けば旧制度による大型自動車免許を持っていれば大型特殊自動車、自動二輪車及び牽引免許を必要としない自動車であればすべての自動車を運転できる))。しかしニュージーランドの場合のように自動的に制限解除がされないのは日本独特の制度である。

初心者特例について

免許を取得してから1年間以内に3点以上の違反をし、初心者講習を受けずに再試験になった場合や、受講後再度免許を取得してから3点以上の違反をした場合は再試験に不合格になるとその該当する車種だけ取り消しになる。通常上位免許を取得すれば該当車種の再試験は免れるが、この大型自動二輪には上位免許が存在しないため上位免許取得し初心運転期間を強制終了することが不可能である。また普通自動車も人生の中で初心運転期間終了までに通算して2年以上の運転歴(普通免許又は大型特殊免許のうちどちらか一方又は両方の免許有する期間)があれば中型免許を取得し、初心運転期間を強制終了することが出来る点でこの車種だけは特別である。また余談であるが普通自動二輪で16以上18歳未満で初心者特例の再試験に該当してしまった場合もちろん上位免許の取得という方法は使えないため再試験を受ける他ない。

750ccが特別な存在となった理由

かつては大型自動二輪車の代名詞といえばいわゆるナナハン(排気量750cc)であったが、これはCB750FOURが販売された時、当時の四輪車を超えるスピードで走行できたことから、国内メーカーが正規に販売できるバイクの排気量を750ccまでとする業界の自主規制が行われたためで、それが解除された近年は排気量1,000ccを超えるバイク(リッター車と呼ばれる)が大型自動二輪車の主流となっており、600ccや750ccの排気量を持つバイクは、現在ではミドルクラスと呼ばれている。

なお国内の正規販売車が750cc以下であった時から、それを超える排気量を持つ車両が輸入および逆輸入されて国内を走っているが、750ccを超える車両が販売できる現在でも、正規販売車は騒音や馬力の規制が強いことから、規制の緩い国向けに生産された車両が逆輸入され続けている。

また国内のフェリー運賃において自動二輪車は大きさや重量ではなく排気量で区別され、現在でも125cc以下、125cc超750cc以下、750cc超で運賃が区別されている事が多い。

ヨーロッパにおいては排気量によって保険料が変わり、600ccを境目に保険料が高額になる。その為ヨーロッパ向け車種には600cc以下モデルが用意されている場合が多い(出力によっても保険料が変わる。従って、600ccでもスーパースポーツなどは高くなる)。

大型自動二輪車の特徴

"SS"(スーパースポーツ)や"US"(アルティメットスポーツ)と呼ばれる、最高時速が300km以上にまで達する車種(ただし現在は規制により構造上300km/hを超える速度は出せない)をはじめ、長距離巡航に適した「ツアラー」、ハーレーダビッドソンに代表される「アメリカン」など車種も豊富である。中には四輪車のエンジンを積み、排気量8,000ccを超える「メガクルーザー」と呼ばれる超大型バイクも存在する。

日本の場合、そのほとんどは輸入車であり、国内メーカーのものでも海外に輸出したものを輸入したもの(いわゆる逆輸入車)である。これは、国内仕様で販売されたものは大幅な出力規制を受け、一部の例外を除いては750ccの車両において77ps、1,300cc越の車両においては100psを上限とされていたためである。なお、この規制は2007年7月に撤廃され、現在は100psを越える国内仕様車両も販売されている。

大型自動二輪車共通の特徴として、大トルク出力が得られるエンジンを備えている(例としてホンダのCB400SFが 38N・m なのに対し、CB1300SFは 117N・m)。これによりエンジン低回転でも安定した操縦が行なえ、また長時間運転しても疲労が少ない。大出力のエンジンに対応した剛性の高いフレームは高速走行時における操縦安定性に寄与し、ライダーは快適な運転を楽しむ事ができる。

一方、バイクにとって大トルク・高出力はアクセルコントロールをシビアにし、急アクセルでパワースライドを起こす危険がかなり高いため、むやみな高出力は事故の元となる。また車重が大きいため、普通自動二輪車と比べて立ちごけを起こす可能性が高くなる(ただしスーパースポーツと呼ばれるオンロード向けのスポーツバイクについては、乾燥重量が170kgを切るものもある)。一般道路を走行するにあたってのアクセルワークはミリ単位であり、普通自動二輪車のような全開にできる機会は少ない。

関連項目

外部リンク