ホンダ・オデッセイ
オデッセイ(ODYSSEY)は、本田技研工業が製造しているミニバン型の乗用車である。
概要
1994年に初代モデルが発売され、現行型は4代目。ホンダのクリエイティブ・ムーバー(生活創造車)の第一弾として発売された初代から現在までヒットを続けており、ホンダの基幹車種のひとつに位置付けられている。
アコードのプラットフォームを用いて開発。経営が下降していたホンダを景気回復させるほどの大ヒットとなり、トヨタ・エスティマと共にミニバンブームの火付け役となった。北米ではいすゞ自動車にオアシスとしてOEM供給していた。
乗用車ベースのミニバンとして、セダン同等の運動性能を持ち、なおかつセダンよりも広い室内空間を売りにしている。また、床が低いので乗降性が他の車種に比べて楽である。後席ドアは他のミニバンで一般的なスライドドアではなく、一般的なセダン型乗用車と同様の前ヒンジドアを採用している。
初代から採用されている3列目シートの床下収納機構が特徴。3代目では電動格納式(一部グレードに標準装備またはオプション設定)となっていた。
歴史
初代(1994-1999年 RA1/2/3/4/5型)
ホンダ・オデッセイ(初代) RA1/2/3/4/5型 | |
---|---|
フロント(北米仕様) | |
リア(日本仕様) | |
概要 | |
別名 | 欧州名:シャトル |
ボディ | |
乗車定員 | 6-7名 |
ボディタイプ | 5ドア ミニバン |
駆動方式 | FF / 4WD |
パワートレイン | |
エンジン |
F22B型:2.2L 直4 SOHC F23A型:2.3L 直4 SOHC VTEC J30A型:3.0L V6 SOHC VTEC |
変速機 | 4速AT |
前 |
前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン |
後 |
前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,830mm |
全長 | 4,750mm |
全幅 | 1,770mm |
全高 | 1,645-1,660mm |
車両重量 | 1,470-1,610kg |
1994年10月20日登場。アダムス・ファミリーのCMがデビュー当初から話題になった。
当初は月販目標台数は4,000台程度と抑え目であったが、予想外に大ヒットし後に生産ラインも増強された。当時のミニバンにはない独特な乗用車的プロポーションが特徴であった。シフトレバーはコラムシフトを採用し、前席から後席へのウォークスルーを可能にしていた。
エンジンはF22B型 2.2L 直4 SOHC。ただし、アコードに設定されていたVTEC仕様は後のマイナーチェンジの際に採用。トランスミッションは「プロスマテック(TYPE II)」と呼ばれる4速ATを搭載。増加した車重に対してファイナルレシオを低くしたため、エンジンの常用回転数は若干高めである。
ホンダの同排気量クラスの車の中では珍しくタコメーターが標準装備されなかった為、発売開始から半年で純正オプションとし(標準装備の時計と入替え装着・ダッシュボード上置きの液晶表示ユニットタイプ・回転計はバーグラフ式・時計、内外気温表示機能付き)を装備。
ヨーロッパでは「シャトル」という名前で販売した。
それまでオーバー2Lの3ナンバー普通自動車クラスの販売台数では長年の首位を維持していたクラウンを抜き去り、1995年には、125,590台の販売台数を記録した。
1994年、「日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞」受賞。1995年、「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」受賞。
1996年1月、一部変更。シフトレバーの改善・セカンド/サードシート上をガラストップとした「サンシャインルーフ」をオプション設定。最上級モデル「エクスクルーシブ」を追加。
1996年9月2日一部変更。「L」のアルミホイールをメッシュタイプへ変更。「S」と「L」の間に「M」を追加。両席エアバッグとABSを全車に標準装備。また、コラムシフトの操作感改良・ハザードスイッチの助手席側から運転席側への移設等の小改良。カーナビはVICS対応型に改良。停車時に2名が就寝できるポップアップルーフを装着した「フィールドデッキ」仕様を設定。
1997年8月22日にマイナーチェンジでフロントグリルのフェイスリフトが行われる。エンジンをF23A型 2.3L 直4 SOHC VTECに変更と同時に「Sキット」と呼ばれるエアロバーツと専用15インチアルミホイールをセットでメーカーオプション設定。
1997年10月2日にJ30A型 3.0L V6 SOHC VTECを搭載した「Prestige(プレステージ)」発売。前期型の廉価グレード「B」がMCでグレード整理により消滅(ただし3代目の後期型で復活するが、位置づけとしては実質的に前期型の「S」に相当)。MC後は下位グレードから「S」、「M」、「L」になる。後年はお買い得価格のモデルとして「M」をベースにしたカーナビ装備の「ナビスピリット」・木目調パネル等装備の「ファインスピリット」・エアロパーツ装備の「エアロスピリット」、「S」をベースにした「スマートスピリット」をそれぞれ追加。ガラスプリント式ラジオアンテナ・タコメーターが全車標準装備されドアミラーも黒色からボディ同色となる。
日の丸自動車グループの日の丸リムジンではワゴンタクシーとして採用された(現在、初代と3代目が混在)。
-
日の丸リムジンタクシー
2代目(1999-2003年 RA6/7/8/9型)
ホンダ・オデッセイ(2代目) RA6/7/8/9型 | |
---|---|
2代目 | |
プレステージ | |
ボディ | |
乗車定員 | 6-7名 |
ボディタイプ | 5ドア ミニバン |
駆動方式 | FF / 4WD |
パワートレイン | |
エンジン |
F23A型:2.3L 直4 SOHC VTEC J30A型:3.0L V6 SOHC VTEC |
変速機 | 4速AT / 5速AT |
前 |
前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン |
後 |
前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,830mm |
全長 | 4,770-4,835mm |
全幅 | 1,795-1,800mm |
全高 | 1,630-1,655mm |
車両重量 | 1,570-1,760kg |
1999年12月3日、フルモデルチェンジ。初代の大ヒットによりデザインやコンセプトなどはキープコンセプトであったが、先代よりスポーティー志向の走りとなった。
エンジンは先代後期型と同様のF23A型 2.3L 直4 SOHC VTECとJ30A型 3.0L V6 SOHC VTECだが、V6は200PSから210PSとなる。トランスミッションは直4は4速AT、V6は5速AT。シフトレバーはコラム式からインパネに移動した。同じコンポーネンツを持つアヴァンシアと異なり、Sマチック付きのゲート式である。それぞれ6-7人乗り。
中国やオーストラリアなどでも発売された。この型はアメリカでは発売されず、代わりとしてより大型な現地生産車(日本名「ラグレイト」)がオデッセイとして発売された。中国仕様のみリアバンパーの運転席(左)側にリアフォグランプを装備している。
2000年8月31日、「L」と「M」の中間に「MQ」が追加。「L」と同様の同色ロアスカートやMDプレーヤーを装備。
2001年11月21日、スポーティーモデルの「Absolute(アブソルート)」を追加。サスペンションのセッティングなどを一部変更し、走りの仕様へと仕上げた。後期型はメーターが自発光式メーターに変更(「S」を除く)となった。
-
リア(前期型)
3代目(2003-2008年 RB1/2型)
ホンダ・オデッセイ(3代目) RB1/2型 | |
---|---|
フロント(前期型) | |
リア(前期型) | |
ボディ | |
乗車定員 | 7名 |
ボディタイプ | 5ドア ミニバン |
駆動方式 | FF / 4WD |
パワートレイン | |
エンジン | K24A型:2.4L 直4 DOHC i-VTEC |
変速機 | CVT / 5速AT |
前 |
前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン |
後 |
前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,830mm |
全長 | 4,765mm |
全幅 | 1,800mm |
全高 | 1,550-1,570mm |
車両重量 | 1,610-1,760kg |
2003年10月17日、フルモデルチェンジ。低床プラットフォームにより、ミニバンとしては異例の立体駐車場に入庫可能な1,550mmに全高が収まり、先代よりもかなりスポーティー度が高まった。車名ロゴが初代から継続されていた「ODYSSEY」から「OdyssEy」に変更された。
エンジンはアコードなどに搭載されているK24A型 2.4L 直4 DOHC i-VTEC(標準:160PS、Absolute:200PS)の2種類のみとなり、初代(後期型)・先代と続いた「Prestige」のサブネーム(2006年にエリシオンプレステージで復活した)とV6エンジンを廃止した。この型から6人乗りは無くなり、7人乗りのみになる。トランスミッションは「Absolute」と標準タイプの4WDは5速AT、標準タイプのFFは7速マニュアルモード付CVTとなる。ヘッドライトも最近のホンダお得意の「鋭い目」になっている。また、上級グレードにはオプションでアコードワゴンに採用されている電動式リアテールゲートが装備でき、電動格納3列目シートは「L」に標準装備されていた。
2005年10月31日にマイナーチェンジを実施。特別仕様車の「M・Aero Edition」が発売された。これは、ベーシックグレードである「M」をベースに、人気グレードの「Absolute」の外装が装備される他、「Absolute」の専用色であるブラック・アメジストパールを含め計6色を選択することができる。
2006年4月13日にマイナーチェンジを実施。外装・内装のデザイン変更となり、リア部は大幅に変更され、テールランプはLED式となり、ドアミラーは前期型はサブピラーに付いていたが、後期型はアウターミラーに設置され、ドアミラーウインカーが標準化された。新色の追加などに加えて、グレードは今まで最廉価グレードであった「S」に代わり初代前期型以来の「B」の名称が復活、「M」に特別仕様車の「Aero Edition」に相当する「エアロパッケージ」の追加などが行なわれた。また、「Absolute」には、オデッセイ初の18インチタイヤが装備された。
2007年2月15日にマイナーチェンジを実施。「S」を再設定、「L」にHDDナビを標準設定、「Absolute」に「コンフォートビューパッケージ」を標準設定。一部グレードにはマニュアルモード付CVTが設定されている。
先代同様中国などでも販売されているが、北米ではやはり別なモデルが販売されている。
ミニバンらしくない運動性能やスポーティなデザインから、若年層やホンダが過去に生産していたスポーツモデルからの乗り換えユーザーに人気を博したが、その一方で全高の低さに起因する開放感の無さを敬遠する向きもあった。
タレントの所ジョージが自身がトータルコンセプターを務める月刊誌「デイトナ」誌上の企画において、前期型をベースにデザインをシェルビー・コブラに似せた「ファミリーコブラ」と呼ばれる車両を製作し一部のファンの間で話題となった。その後この車両は2007年に大阪オートメッセのホンダブースにて展示された。
2007年8月30日「L」に「L・Kパッケージ」を追加するとともに、特別仕様車「HDDナビ スペシャル エディション」、「エアロ HDDナビ スペシャル エディション」を発売。
-
フロント(後期型)
-
リア(後期型)
-
車内
4代目(2008年- RB3/4型)
ホンダ・オデッセイ(4代目) RB3/4型 | |
---|---|
アブソルート フロント | |
アブソルート リア | |
ボディ | |
乗車定員 | 7名 |
ボディタイプ | 5ドアミニバン |
駆動方式 | FF / 4WD |
パワートレイン | |
エンジン | K24A型:2.4L 直4 DOHC i-VTEC |
変速機 | CVT / 5速AT |
前 |
前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン |
後 |
前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,830mm |
全長 | 4,800mm |
全幅 | 1,800mm |
全高 | 1,545-1,565mm |
車両重量 | 1,600-1,690kg |
2008年9月19日に4代目の先行情報サイトが公開された。車名ロゴが3代目に使用されている「OdyssEy」から初代と2代目に使用されていた「ODYSSEY」に戻された。また4代目には新技術として、車両の挙動の乱れを安定方向にアシストする「モーションアダプティブEPS」や、魚眼CCDカメラにより死角の低減や車庫入れなどの支援をする「マルチビューカメラシステム」を搭載する。
2008年10月16日 - 正式発表。翌日本では10月17日から販売を開始する。FCXクラリティやストリームに似たフロントマスクとなり、テールランプは初代から継承してきた三角形から横長に変更され、車幅灯は先代後期型のLEDから電球に変更された。
室内に関しては、1,220mmの室内高は変わらず、室内長は60mm拡大。2列目シート座面裏を削り込み、3列目シートの足元空間を拡大し、後席ドアの開口部も広げられた。視界に関してはAピラーを30%細めて後退させることで劇的に改善した。2-3-2のシートは全席で前方視界が確保できるよう、V字に配列した。荷室は、フィット同様にスペアタイヤを廃止し(代わりにオデッセイでは初となるパンク修理キットを装備)、荷室床下のアンダーボックスを設置した。
エンジンは3代目と同じくK24A型が搭載されるが、ハイオクガソリン指定の「アブソルート」が206PS(151kw)・23.7kg·m(232N·m)、その他が173PS(127kw)・22.4kg·m(220N·m)にパワーアップされるのと同時に燃費も向上され、特に「M」・「L」・「Li」のFF車は「平成22年度燃費基準+25%」を達成した。また4代目では「アブソルート」を含め、全車「平成17年排出ガス基準75%低減レベル(☆☆☆☆)」認定を取得した。トランスミッションは従来同様FF車がCVT、4WD全車と「アブソルート」が5速ATとなる。(「アブソルート」のみ、パドルシフトでのマニュアルシフトが可能)
また、「アブソルート」を除くFF車のステアリング脇にはエンジン・CVT・エアコンの制御を燃費重視にする「ECON」ボタンが備わる。
-
インテリア
-
ECONボタン
-
アブソルートのエンジンルーム
搭載エンジン
初代
- 標準グレード
- F22B型 直4 SOHC 16バルブ VTEC(2,156cc 内径×行程:85.0×95.0)(M/C前)
- 参考スペック:107kW(145PS)/5,500rpm 198N·m(20.2kg·m)/4,500rpm
- F23A型 直4 SOHC 16バルブ VTEC(2,253cc 内径×行程:86.0×97.0)(M/C後)
- 参考スペック:110kW(150PS)/5,800rpm 206N·m(21.0kg·m)/4,800rpm
- プレステージ
- J30A型 V6 SOHC 24バルブ VTEC(2,997cc 内径×行程:86.0×86.0)
- 参考スペック:147kW(200PS)/5,800rpm 265N·m(27.0kg·m)/4,700rpm
2代目
- 標準グレード
- F23A型 直4 SOHC 16バルブ VTEC(2,253cc 内径×行程:86.0×97.0)
- 参考スペック:110kW(150PS)/5,800rpm 206N·m(21.0kg·m)/4,800rpm
- プレステージ
- J30A型 V6 SOHC 24バルブ VTEC(2,997cc 内径×行程:86.0×86.0)
- 参考スペック:154kW(210PS)/5,800rpm 270N·m(27.5kg·m)/5,000rpm
3代目
- 標準グレード(B、S、Sエアロパッケージ、M、Mエアロパッケージ)
- K24A型 直4 DOHC 16バルブ・i-VTEC(2,354cc 内径×行程:87.0×99.0)
- 参考スペック:118kW(160PS)/5,500rpm 218N·m(22.2kg·m)/4,500rpm
(4WDは216N·m(22.0kg·m))
- アブソルート
- K24A型 直4 DOHC 16バルブ・i-VTEC(2,354cc 内径×行程:87.0×99.0)
- 参考スペック:147kW(200PS)/6,800rpm 232N·m(23.7kg·m)/4,500rpm
(4WDは140kW(190PS)、227N·m(23.2kg·m))
4代目
エンジン名こそ先代と同じK24Aであるが大幅に手が加えられた。ボア、ストロークは先代と同じであるが、シリンダーヘッドはR型エンジンと同様に排気マニホールドと一体化された。これにより排気系の熱容量を減らし、触媒の早期活性化を実現している。ピストン裏側へのオイルジェット追加等により圧縮比は標準仕様で9.7から10.0、高オクタン価ガソリン仕様の高出力仕様では10.5から11.0へと高められ、出力を向上させている。
- 標準グレード(M、L、Li)
- K24A型 直4 DOHC 16バルブ・i-VTEC(2,354cc 内径×行程:87.0×99.0)
- 参考スペック:127kW(173PS)/6,000rpm 222N·m(22.6kg·m)/4,300rpm
- アブソルート
- K24A型 直4 DOHC 16バルブ・i-VTEC(2,354cc 内径×行程:87.0×99.0)
- 参考スペック:151kw(206PS)/7,000rpm 232N·m(23.7kg·m)/4,300rpm
(4WDは150kW(204PS)、230N·m(23.5kg·m))
車名の由来
- 「長い冒険旅行」という意味の英語で、ギリシャ神話のオデュッセイアを語源とする。
共通のプラットホームを使用する車種
初代
2代目
関連項目
- ホンダ・アコード
- ホンダ・エリシオン(3代目の派生車種)
- ホンダ・ラグレイト(北米版オデッセイ)
- マツダ・MPV(同サイズの乗用ミニバンにおける最大のライバル)
- スバル・エクシーガ(前述のMPVと並んで乗用ミニバンにおけるライバル車種)