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平衡感覚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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ブランコで揺られることは骨半規管の機能強化・平衡感覚の向上に役立つ

平衡感覚(へいこうかんかく、英:equilibrioception、独:Gleichgewichtssinn)は、生体が運動している時や重力に対して傾いた状態にある時にこれを察知できる働きである。平衡知覚とも呼ばれる。

概要

体がどちらを向いているか、どれくらい傾いているか、動いているかどうかといった情報は運動能力のある生物においては重要である。このような情報を受け取るのが平衡感覚である。一般的に、これは体に働く加速度を受け取る形で得られ、それを受容する装置は一般に平衡胞といわれる。ヒトの場合、内耳がその役割を持つ。

ヒトの場合

平衡感覚は内耳の前庭器で受容される前庭感覚(英:vestibular sensation)と同義に考えられることが多いが、体の平衡には前庭感覚の他に深部感覚や皮膚感覚、また殊に視覚が重要に作用する。

前庭器には角加速度を受容する骨半規管(三半規管)と直線加速度を受容する球形嚢、卵形嚢がある。いずれも二重の嚢構造をもち、外側の嚢は外リンパ、内側の嚢は内リンパで満たされている。内リンパ嚢には刺激を受けやすい受容器があり、受容細胞は聴器の蝸牛と同様に有毛細胞である。

一次求心神経は内耳神経(第VIII脳神経)のうちの前庭神経で、これが延髄の前庭神経核に入り、ここからの出力は脊髄、眼筋運動ニューロン、小脳網様体視床大脳皮質視床下部へと複雑に分岐するが、前庭眼反射、前庭自律神経反射、前庭脊髄反射などの迷路反射として、そのほとんどが反射的調節に寄与する。

乗り物酔いなどの動揺病(加速度病)は前庭から視床下部への過度の信号により自律神経系に異常を来すため起こるものとされる。

平衡機能障害

内耳のイメージ図式

平衡機能障害(英:disequilibrium、独:Gleichgewichtsstörung)は、体平衡系の異常によって起こる現象で、原因を大別すれば、内耳を含めた末梢前庭系の障害と中枢神経系の障害とがある。

末梢前庭系の病態による障害では、急性に発症する場合と緩やかに発症する場合とで病態が異なる。急性期の発症ではめまいとともに眼振(眼球震盪。眼球の不随意的往復運動)などが見られ、比較的緩やかに進行する場合には中枢性の代償によりめまい感、眼振は少ない。

急性に発症する病態の一としては、空間識失調を参照

一方、中枢神経系の病態により発症する平衡機能障害には、主に小脳や脳幹など体平衡に関係する部分の異常による循環障害、変性疾患、腫瘍などがある。

関連項目

参考文献

『南山堂 医学大辞典』 南山堂 2006年3月10日発行 ISBN 978-4-525-01029-4