概念記法
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『概念記法』 はゴットロープ・フレーゲによって1879年に出版された論理に関する短い本の題名であり,またその本で創始された式のシステムの名称である。
この本の完全な書名は「算術の式言語を模造した純粋な思考のための一つの式言語」である。『概念記法』は,アリストテレスが論理という主題を創設して以来,論理に関するおそらく最も重要な出版物であった。フレーゲが自分の式を開発して論理に到達しようとした動機は,ライプニッツが彼の推論計算機に対して持った動機と似ている。続いてフレーゲは,数学の基礎の研究に彼の論理計算を用い,それは次の四半世紀にわたって遂行された。
表記法およびシステム
この計算には,初登場となる量化された変数が含まれ,また,高度に特異的な2次元表記法で表示されているとはいえ,アイデンティティを持った本質的に古典的な2値の二階論理である:結合子と限量子は,今日使用される¬,∧,∀ではなく,式をつなぐ線を用いて書かれる。たとえば,Bという判断に材料として判断Aが含まれること,すなわちは,と書かれる。
最初の章でフレーゲは,命題(「判断」),全称量化子(「一般性」),条件法,否定,内容の相等性のための記号のような基本的アイデアと表記法を定義する。 第2章で彼は9つの式化された命題を公理として宣言する。
第1章§5では,フレーゲは条件法を次のように定義する。 「AとBが,判断可能な内容を意味するとき,次のような4つの可能性がある。
(1) | Aが肯定され,かつ,Bが肯定される, |
(2) | Aが肯定され,かつ,Bが否定される, |
(3) | Aが否定され,かつ,Bが肯定される, |
(4) | Aが否定され,かつ,Bが否定される。 |
はこれらの可能性のうちで3番目のことは起こらず,他の3つのうちの1つが起こるという判断を意味する。すなわち,我々が
を否定するということは,3番目の可能性が妥当であることを意味する,すなわち我々はAを否定し,かつ,Bを肯定する。」
フレーゲの仕事における計算
フレーゲは9つの命題を公理と宣言し,それらは意図された意味を与えられて直観的真実を表現する,と非公式に論争してそれらを正当化した。 現代的な表記法で再表現すると,これらの公理は次のとおりである:
これらは『概念記法』の命題1,2,8,28,31,41,52,54,および58である。 (1)-(3)は質量含意を支配する,(4)-(6)は否定,(7)および(8)は相等性,(9)は全称量化子である。 (7)はライプニッツの不可識別者の同一性を表現し,(8)は相等性が反射的であることを主張する。
他の命題はすべて,(1)- (9)から次の推論規則を実施することによって推論される。
*モドゥス・ポネンスは我々が と から を推論することを 可能にする, *全称汎化は,Pの中にxが現れなければ,我々が からを推論することを可能にする, *フレーゲが明示的に述べない代入の規則。 この規則は,はっきり正確に述べるのが前の2つの規則よりはるかに難しく,フレーゲは明らかには正当でない方法でそれを実施する。
「系列の一般理論の若干のトピックス」という題名の第3章の主要な成果は,今日,祖先関係と呼ばれるものに関連している。「bがaの祖先である」ことは「aR*b」と書かれる。
フレーゲは,祖先関係の成果を含む『概念記法』の成果を,後の仕事『算術の基礎』に適用した。こうして,我々がxRyとして関係y=x+1を取れば,0R*yは「yは自然数である」という述語である。(133)はx, y, zが自然数なら,次のうち1つに当てはまらなければならないと述べる。: x<y, x=y, または y<x。 これはいわゆる「三分法」である。[訳注:(133)を大小関係で表すと, かつ のとき, または である。]
他の仕事への影響
『概念記法』がドイツの数学文献の中でどのように批評されたか,最近の注意深い研究として,リスト・ヴィルコ (1998年)を参照のこと。 何人かの批評家,特にエルンスト・シュレーダーは,全く好意的であった。『概念記法』に続く形式論理の仕事はすべてこれに負っている,なぜなら2階論理は数学と自然言語のかなりの部分を表現する能力のある初めての形式論理だったからである。
フレーゲの表記法の形跡のいくつかは,彼の「内容線」──と「判断線」│に起源を持つ「回転式木戸」記号 に生き残っている。 フレーゲは『概念記法』で,ある命題が(同語反復的に)真であると宣言するために,これらの記号を一体化した形|-で使用した。彼はある命題が定義であるという印として「定義二重線」∥-を使用した。
なお,否定の印 は水平の内容線と垂直の否定線との組合せと読むことができる。この否定の記号は1930年にアレン・ハイティング[1] によって古典的な否定と直感的なものを区別するために導入された。
ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』では,「概念記法」の用語を論理的な形式主義の同義語として用いることによってフレーゲに敬意を払っている。
フレーゲの 1892年の小論『意義と意味について』は,相等性(数学では=の記号で示される)についての『概念記法』の結論のいくつかを撤回する。
引用
人間の精神に対する言葉の支配を打ち破ることが哲学者の一つの任務であるならば,・・・私の概念記法は,この目的のために更に開発されれば,哲学者にとって有用な道具になり得るであろう。・・・この概念記法を発見したことだけでも,私には,論理学を推し進めたように思われる。(『概念記法』への序文)
こちらも参照
参照
- ^ Arend Heyting: "Die formalen Regeln der intuitionistischen Logik," in: Sitzungsberichte der preußischen Akademie der Wissenschaften, phys.-math. Klasse, 1930, S. 42-65.
さらに読む
- Gottlob Frege. Begriffsschrift: eine der arithmetischen nachgebildete Formelsprache des reinen Denkens. Halle, 1879.
翻訳:
- 藤村龍雄訳,『フレーゲ著作集 1 概念記法』,1999,勁草書房
- Bynum, Terrell Ward, trans. and ed., 1972. Conceptual notation and related articles, with a biography and introduction. Oxford Uni. Press.
- Bauer-Mengelberg, Stefan, 1967, "Concept Script" in Jean Van Heijenoort, ed., From Frege to Gödel: A Source Book in Mathematical Logic, 1879-1931. Harvard Uni. Press.
二次文献:
- 田畑博敏,『フレーゲの論理哲学』,2002,九州大学出版会
- George Boolos, 1985. "Reading the Begriffsschrift", Mind 94: 331-44.
- Ivor Grattan-Guinness, 2000. In Search of Mathematical Roots. Princeton University Press.
- Risto Vilkko, 1998, "The reception of Frege's Begriffsschrift," Historia Mathematica 25(4): 412-22.