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B-CAS

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BSデジタル用B-CASカード
BSデジタルCCI及び地上デジタル対応マーク付きB-CASカード
BS 110度CS 地上デジタル共用B-CASカード
CATV専用B-CASカード
地上デジタル専用B-CASカード
店頭用B-CASカード
有料放送デモ用B-CASカード
地デジチューナーとB-CASカード
(写真のチューナーは、パナソニック製品である。)

B-CAS(ビーキャス)とは株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(BS Conditional Access Systems Co.,Ltd.)の略称、もしくは同機能を実現するために受信機に設置するカード(B-CASカード)のことを指す。また、この会社が提供する限定受信方式(B-CAS方式)のことを指すこともある。

B-CAS方式は日本のBSデジタル放送の有料放送受信者を対象とする狭義の限定受信システム(CAS)としてスタートしたがBSデジタル放送以外にも利用され、デジタル放送におけるデジタル著作権管理(DRM)の一部として正規の機器を認証する広義の限定受信方式として利用されている。CAS自体は有料放送においては必ず使われるものであるが通常の無料放送でもCASを採用したのは日本が世界初であり、2009年現在でも日本が世界唯一の国となっている。

概要

B-CASカードによる限定受信システムはビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(B-CAS社)によって開発され2000年12月1日、BSデジタル放送が開始された際に有料放送契約者を対象として運用開始された。その後、2002年に開始された110度CSデジタル放送の有料放送にも採用された。

2004年、BSデジタル放送の無料放送に著作権保護が目的とされるコピー制御が導入された際、コピー制御信号(CCI。コピーワンスが原則とされるが2008年7月よりダビング10も併用)とともにCCIの実効性を担保する限定受信方式としてDRMの一部の形でBSデジタル放送・地上デジタル放送・110度CSデジタル放送に広く採用されることとなった。

この限定受信の方式はB-CAS方式と呼ばれ、日本のデジタル放送における著作権保護に利用されている。

2007年10月25日、既に発行されたB-CASカードを流用した上でコピー制御信号を無視することを前提としたパソコン向け地上デジタルチューナーのフリーオが発売されB-CASを用いたDRMシステムは根底から覆された。現在は他の突破手段も開発され、著作権保護を目的とした運用は実質的に機能していない。

B-CAS方式

  • 2000年12月1日にBSデジタル放送、2002年3月1日に110度CSデジタル放送、そして2003年12月1日に地上デジタル放送がそれぞれ開始された。
  • 開始当初、限定受信は有料放送が対象でありコピー制御も一部を除いて行われていなかったが「BSデジタル放送を録画したビデオテープがインターネットオークションに出品される著作権侵害があった」とする放送業界の主張により問題視され(著作権者からの苦情ではなく、あくまでも放送局の主張である)、2004年4月5日からは有料放送・無料放送を問わず著作権保護が目的であるとするコピー制御が開始された。この制御の実効性を担保する手段としてB-CASの限定受信が応用され、これらはデジタル著作権管理(DRM)として機能することとなった。
  • B-CAS方式によるデジタル放送は、動画データにコピー制御信号(CCI)を加えた上で暗号化MULTI2暗号・日立製作所開発)して送信される。視聴する際はB-CASカードに格納されている暗号鍵を用いて復号し、復号されたデータはCCIに忠実に取り扱われる。これにより、B-CAS方式の限定受信の行われている放送・番組では社団法人電波産業会(ARIB)とビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(B-CAS社)に認証されB-CASカードが発行されたチューナー(コピー制御対応チューナー)にB-CASカードを挿入することが必須になり、それ以外の手段では視聴不可能になった。
  • B-CASカードを使用する受信機には特定条件に一致した場合に放送局からのお知らせを目的とした文言を画面に表示する「自動表示メッセージ」と呼ばれる機能がある。NHKの放送においてはユーザー登録を行わないままBSデジタル放送を視聴し一定期間が経過すると、この機能を利用した「ユーザー登録のお知らせ」が表示される。地上デジタル放送ではユーザー登録をしなくとも画面上に「ユーザー登録のお知らせ」は表示されない[1]
  • デジタルテレビ放送についてはほぼ全面的にB-CAS方式によるコピー制御が行われているが、ラジオ放送の一部では行われていない場合もある。また、110度CSデジタル放送での無料番組の一部ではコピー制御・限定受信の一方又は両方が行われない番組もある(主に広告を目的とした通販番組)。
  • B-CAS方式による放送ではデジタル技術を用いた録画機器(一部アナログ機器も含む)での番組の録画(暗号化はされていないが録音にも)に様々な制限が掛かる。「B-CASとコピーワンス」「DVDレコーダー#DVDレコーダーとコピー制御の関係」の項などを参照。

B-CASカード

  • B-CASカードはB-CAS社が発行する接触式ICカードでARIBとB-CAS社に認証されたデジタル放送受信機に同梱して配布され、受信機(チューナー、セットトップボックス、デジタル放送対応テレビDVDレコーダー等)に挿入して使用する。B-CASカードのICチップ内部にはカード毎に固有のID番号と暗号鍵が格納されている。
  • B-CASカードは赤カード・青カード・CATV専用カード(オレンジ色)の3種類が一般的に知られている。
    • 赤カードはBS・CS110度・地上のデジタル放送3波共用カードである(裏面にBSデジタル専用と書かれていてもダウンロードサービスを受けることにより3波利用可能である)。
    • 青カードは地上デジタル放送専用カードである(B-CAS社へのライセンス料の支払軽減が目的とされている)。BS及び110度CSは受信可能であるがCSの有料番組の契約は出来ない。
    • 地上デジタル専用(特別内蔵用)カードは、防水仕様等の装着が難しい機器の為に予め挿入済みのカードである。
    • CATV専用カードはデジタルCATV(統合デジタルシステム)向けに赤カードとセットで発行される。赤カードはBS・CS110度・地上の再送信用、オレンジ色のCATV専用カードはCATV専用で用いられる。
  • その他、白カード(店頭展示テレビ専用)・黄カード(用途限定カード)・黒カード(業務用)など限られた用途のB-CASカードも存在するとみられるが一般視聴者が目にすることはあまりない[2]
  • 雑誌「週刊ポスト」の報道では毎年の発行枚数と売り上げから計算するとB-CAS社にとっては1枚600円前後のビジネスと推測されている[3]
  • B-CAS社はデジタル放送推進協会(Dpa)と契約を交わし、ARIB規格に準拠して著作権保護機能を遵守するメーカーの機器にカードを支給していると述べている[3]
  • B-CASカードの所有権はカードを開封する際にシュリンクラップ契約にて締結される使用許諾契約約款において、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズに帰属するとされているが、デジタル放送受信機購入時にB-CASカードの存在や所有権について販売店から説明を受ける事とテレビの設置自体が購入者自身で行う事も稀である。数々の問題点が指摘されている[誰?]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。
  • また上記B-CASカード発行審査は汎用バスに生のデジタルデータを流すことを禁じているが、一般的な視聴スタイルとなりつつあるパソコンでのテレビ視聴や録画、それらの製品開発を著しく阻害しているとの指摘もある。これが原因で完全デジタル化後、現状のアナログ放送のキャプチャ環境と同等な環境を確保すべく不正な製品(あくまでもARIB技術資料の要件に対して不正ということであり、技術資料を強制することの正当性が否定されるなら正当な製品である)が多く出回る可能性も高いと考えられ、実際にフリーオやPT1などの非正規のチューナーが市販されている。
    • ただワンセグ放送の圧縮方式は画質をより良くしようとH.264が採用され、モバイル時の受信安定性は勝るものであるが狭い帯域のためアナログ放送との画質差は埋め難い状態である。それでも「B-CASの存在しないデジタルチューナ」は非常に安価であり発売と同時に欠品になるなどそれなりに支持される状態である。
  • フリーオの登場を受けてパソコン向けの単体チューナーも許可されるようになっており、いくつかの製品が国内メーカーより発売されている。
    • これらの製品の中には、SKNET製のMonsterTV HDUSのように設計上の欠陥によってコピー制御が無効に出来るものもある[誰?]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

B-CASとコピーワンス

デジタル放送のコピー制御として採用され、一般的に「コピーワンス」と呼ばれるB-CAS方式のDRMはこれ以上厳しい運用は例外無しの録画禁止しか存在しないと指摘されるほどの重DRMである[4]。さらには機器の不具合により録画情報を失う事故が多く、また安価なため録画メディアでは最も出荷数の多いDVD-Rでは単純な録画すら禁止されるなど視聴者が目に見える形で大きな不利益を蒙ることもあり各方面から批判を浴びている状態である。

現在は無料放送に限ってダビング10に緩和されているが本質的に従来のコピーワンスと違いはなく[5]、やはり批判が絶えない。


技術的問題

かねてよりB-CASカードそのものを悪用した(不正機器にB-CASカードを挿入した)不正コピーには対応できない可能性が指摘されていたが、フリーオのように「正規に発行されたB-CASカードの流用を前提としたチューナー」によってB-CAS方式のDRMは破られたことで機器認証を行なっていない欠陥システムであることが明らかになっている。このようなことが可能であれば、B-CAS方式のような高コストの暗号技術を併用せずともCCIのみで十分である。

さらにはインターネット経由によるB-CAS鍵の共有や別途用意するカードリーダーを前提とするデジタルチューナが発売されるに至っており、DRMとして全く機能していない状態である[6]

  • 海賊版の防止が目的であるとされているが、そのような効果は期待できないと指摘する向きもある。海賊版は往々にして画質が低いことから、海賊版製造業者はコピー制御の解除が容易なアナログコピーを利用するとの見解からである(アナログコピーにおいてもDVD並みの画質であり、決して低画質ではない)。
  • フリーオ発売前からインターネットにデジタル放送の生データ(MPEG2-TS)が流出していたことも指摘されている。B-CAS方式によるDRMが完全に機能しているならばそのようなものは放送局以外に存在しないはずであり、B-CAS方式の著作権保護には何らかの欠陥が推測されていた。
  • 時代遅れの規制手段であると批判する向きもある。インターネットを通じた海賊行為の特徴として瞬時に数多のコピーが作られることを挙げ、世界中のたった1人に破られただけでも全てが無意味となる著作権保護の費用対効果を疑問視する見解からである[7]
  • B-CAS方式による放送の結果として悪意による著作権侵害の抑止効果は期待できない一方、著作権法で認められた私的利用のみを厳しく制限していると批判する向きもある。視聴者のみならず放送局にも掛かるB-CAS方式の多大なコストを正当化できないと批判する向きもある。
  • また、著作権法上問題なしとされている私的複製を放送業界だけで決めたルール(私法とも揶揄される)で取り締まることに対し問題視する向きもある。
  • さらには本来は問題のない私的複製を行うためにコピーワンス制御を解除してしまうと、これは違法行為となってしまうことを問題視する向きもある。どこにも存在しなかった著作権侵害を、コピーワンス制御によって作り出してしまう構造になるためである。
  • コンポジット端子S端子など、旧来のアナログ端子にまでコピー制御信号が載せられていることを批判する向きもある。これもコピーワンス導入の口実と矛盾することに加え、DVDレコーダー等と並べて公然と市販されている機材で制御信号を除去できることから「正直にルールを守るものだけがバカを見る」状態であるからである。
  • 制御信号除去に関わる半導体チップを供給しているとして、B-CAS社のメーカー系株主を批判する向きもある。B-CAS側では著作権保護で収益を上げる反面、著作権侵害でも収益を上げているとされ、まるで武器商人だと揶揄する向きもある[8]
  • また、コピーガード除去装置が広く普及したのはコピーワンス実施以降であることを問題視する向きもある。もともとはマニア向け商品であり大衆たる消費者はレンタルビデオやセルビデオ、レンタルDVDやセルDVDを気軽に複製する手段はなくパッケージ品の安易なコピーは防止できていたと考えられるが同装置が広く普及した結果、簡単にコピーされる状態となってしまったためである。また、同装置の製造企業に大きな利益をもたらしたのはコピーワンス実施であると指摘する向きもある。
  • 日本において私的利用の複製は著作権主張の例外とされ、著作権者・隣接権者が阻止することは認められていない。一方、フェアユース規定のような強制力を伴ったものでもないため行き過ぎた著作権保護をビジネスにする者がいると批判する向きもある。


  • 一般の人がニュースなどでインタビューに答えたり、特集などで取材を受ける事もあるだろう。また、NHKの『のど自慢』や朝日放送の『探偵!ナイトスクープ』、フジテレビの『クイズ$ミリオネア』などの人気番組に視聴者が出演する場合があるが、例えば自分や家族、あるいは親族、親しい友人などが登場するシーンをハイビジョンの高精細映像のままパソコンで一括管理したいと思っても、現状のB-CAS方式によるDRMのもとではそんな思いは叶わない。肖像権は出演者にあるのに、出演者本人や家族までもが趣味における保存や編集に対しても著しく制限を受ける事になるので「がんじがらめの規制はおかしい」という反発の声もある[9]
  • 本来「コピーワンス」は「一世代のみ複製許可」とするDRM運用方法の1つであるが、現在はもっぱらB-CAS方式によるDRMの代名詞と認識されている現実がある。これには周知活動や広報内容が少なからず影響していると考えられ、確信犯的に消費者の誤解を狙っているとの批判がある[10]
  • B-CAS方式によるDRMがコピーワンスとされる根拠は「放送ストリームのCCIにコピーワンスフラグを立てる」ことである。受信機はこの情報に基づき録画されたデータを複製として扱い、「コピー禁止」フラグを立てる。また、コピー禁止とすることが出来ない場合(著作権保護に対応しないなど)は録画を許可しない[11]。これはダビング10でも同じである。
  • よって、デジタル放送で要求されるルールの原則は「録画禁止」である。リムーバブルメディアの場合は媒体を規定する各団体からの申請に基づき認可される手順となっている。例えばDVDに録画する場合にはDVDフォーラムからの申請に基づき「CPRMに対応する」「VRモードで記録する」の両方、または「旧世代のアナログ方式で記録する」という条件を満たす場合に限って例外的に録画が許可されるに過ぎない。なお現状はこのほか、Blu-ray DiscHD DVDSDメモリーカードメモリースティックなどが認可されている状態であるが現在、もっとも普及している「(CPRM非対応の)DVD-Rによる録画」は禁止しておりコピーワンス・ダビング10規制による不満の要因となっている。
  • 一部にはデジタル放送のコピー制御運用そのものとCPRMなどの一部媒体のDRM方式を混同されて批判されているとする向きがあるが混乱を招く広報を行う側に少なからず問題があると考えられる。
  • 「コピーワンス規制」の実態を正直に周知すれば視聴者の強い反発を受けることが確実であるために誤解を招く表現である「コピーワンス」を積極的に用い実態を偽っているのではないかとして批判する向きもある。
  • 放送業界各社は番組の録画とは放送局側にあるマスターをコピーする事であり、“コピーワンス”と呼称することに何ら問題はないと主張している。
  • 一方、「コピーワンス」の語感や一般的に録画はコピーと呼ばないことから視聴者の多くは「録画物を1世代コピーが可能である」と勘違いするのが当然であり「不当景品類及び不当表示防止法」で禁止されている不当表示であると考えられる。場合によっては訴訟問題に発展しかねないとする向きもある。
  • ダビング10の場合はダビング10対応の機材とCPRM対応メディアを用意した環境においてHDDに録画した録画データを1世代に限り9回コピー禁止で複製でき、さらに1世代のムーブが出来るに過ぎない。これも「ダビング10」の語感からは想像しがたい厳しい規制であり、「コピーワンス」と同じく誤解を招きかねないものである。
  • VRモードやCPRMの低い互換性、また対応していない機器は全て排除するという基本ルールを問題視する向きもある。DVD再生専用機は廉価なものはもちろんだが実売価格が10万円以上の高級機でも非対応が主流であり、対応しない場合は再生できない。次世代規格のBlu-ray DiscやHD DVDレコーダでも規格化されておらず普及率の低い同方式はコストダウンを目指した結果対応されないのが実情であり、結果的にコピーワンス番組は録画物を再生できる環境すら厳しく制限され消費者に著しい不利益を強いるものとなっている(一部には再生対応を行っているものもある)。
  • 録画されたデータはコピー禁止のCCIが付加されるが別のメディアにコピーした後、元データは逐次消去すること(ムーブと呼ばれる)はコピーではないとされ可能である。が、ムーブに関するルールがあまりにも厳しすぎる(非常識であり非現実的である)として批判する向きもある。
  • 特に槍玉に上がっているのは「ムーブにおける逐次消去(再生可能な情報が60秒以上同時に存在してはならない)を定めたARIB技術資料によるルール」である。メディア不良の可能性などに加え全てがDRMで構成された複雑な環境でストリーム処理を行うことはエラーリスクが高い反面、エラー補償を行うことを不可能に等しい状態とすることからである。
  • ただし、バックアップデータなど一定のエラー補償についての規定も存在している。が、「再生可能な情報が同時に存在してはならないルール」のため再生不可能とすべく更なる暗号を掛けたデータを1つ限り保存可能(バックアップストリームと称される)というものであり2回以上のエラーには対応できない(ダビング10の場合は、9回のエラーまでは対応可能となっている)。また、HDDの容量を2倍消費する上にメーカにとっては難易度が高く対応コストもかかることには変わりなく一部の機器を除いて実装されていない。
  • 現実問題としてムーブ失敗による苦情は殺到しており、レコーダーメーカーを悩ませる最大要因となっている。この結果、無料放送に限ってダビング10に緩和された。
  • そもそも録画データに対して一定の保護が求められている状況において、ムーブ時に元データを秒単位で消去させる必要性は全くないと批判する向きもある。
  • DVD-RW/RAM・D-VHSなどの記録媒体にムーブした場合は以降のムーブが行えないことを批判する向きもある。これは「メディアからのムーブを許可すれは、複製が可能なセキュリティホールになりかねない」とする放送業界の主張によりARIB技術資料によって規制されているものであるが極めて非常識な主張であるとする向きもある。また、ムーブ失敗に関する苦情をこれ以上増やしたくないメーカーが実装断念している面もあると考えられる。
  • 高解像度の録画物から低解像度の媒体にムーブした場合でも高解像度のデータは消去しなければならないルールを問題視する向きもある。コピーワンス規制の導入理由として放送局が挙げていた「高画質のハイビジョン映像が…」と矛盾しているとする指摘もある。
  • コピー制御信号を除去することが著作権法違反となる可能性を問題視する向きもある。私的録画・私的複製はもちろん合法であるが意図した複製防止技術の除去は違法であると判断されるため、コピーワンス規制が権利侵害に繋がる行為を多発させているとして批判する向きもある[12]
  • 一方、安価であり最も普及しているDVD-Rがコピーワンス番組を録画できないことを指摘する向きもある。画質を向上させることを名目としたコピーガード除去装置が家電量販店で簡単に入手できる状況となり、一般消費者レベルまでコピー制御の除去が公然化したのは件の苦情が殺到した結果であると指摘する向きもある。
  • 現実には遵守不能なまでに厳しい規制により日常的に技術的保護を破られる状況や規制が利権を生んでみたり、ともすれば権力による弱者いじめにも映りかねないコピーワンス規制を破ることが勧善懲悪的な立場から正当化されかねない(法で禁じられてる以上、法治国家で認められる主張ではないが)状況は結果的に著作権軽視にも繋がりかねずより悪質な著作権侵害への誘因になっていると指摘する向きもある。
  • 更にコピーワンス規制は著作権者が望んだものではないことが明らかになっており、著作権者の側からDRMは解除する方向が望ましいと意見が出ている。B-CAS方式のDRM利用に掛かる負担に加え消費者からの少なからぬ反発ゆえに守るべき著作権者がコピーワンスの被害者になりかねず、実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫は「一切関与していない」と表明している[13]
  • 放送業界各社に勤める従業員といえども、その人個人的にはB-CAS方式のDRMに反対という考えの者が中にはいるという。
  • 日本の著作権法は親告罪なので殺人や放火、恐喝、誘拐などの刑法犯罪とは異なり被害者による告訴がなければ触法行為でも罪に問われる事はない件を指摘する向きもある。例えばダビングなどの際にコピー制御信号を除去する事でデジタル放送を録画したメディアのコピーを作成したりDVDの規格上、本来なら認められていないビデオモードによるコピーワンス番組の録画をコピー制御信号除去により行ったりしたとしてもそれが私的目的の範囲内であれば著作権者等の告訴を受けることはないと考えられている。家電量販店でデジタルレコーダーの売り場で「画像安定装置[14]」などと称してコピーガード除去装置が公然と併売されている現実もあり、数多くのテレビ番組やコマーシャルなどを集めることを趣味とするマニアに限らず一般消費者レベルでもデジタル放送の録画用として制御信号を除去できる装置等が広く普及している事が推測される。
  • 型番の古いVHSビデオデッキなど1990年代までに発売された旧型の製品の中には制御信号を除去できる装置と同等の働きをしてしまう製品もあると言われている。
  • 音楽CDの海賊行為を防止するとして導入され、消費者の猛反発を受け更に深刻な事態に陥ったコピーコントロールCD(CCCD)との類似性を指摘する向きもある。
  • 一方でDRMで保護しつつも緩い規制により支持を集めたiTunesなどに採用されるDRMであるFairPlayと比較し、消費者の立場を無視した厳し過ぎるB-CAS方式によるDRMを批判する向きもある。
  • コピーワンスを定めたARIBの運用規定(TR-B14,15)が標準規格ではなく技術資料に過ぎないことを問題視する向きもある。ARIB標準規格とするには利用者を含めた利害関係者の総意を得ねばならず到底無理であると考えられ、一部の利害関係者が確信犯的に身勝手を技術資料としてねじ込んでいると指摘する向きもある。
    • この件には以下のような指摘もあるが、仮にそうであるなら業界側の広報不足である。
      • ARIB自身が規定する標準規格と、Dpaなど運用団体で規定されてARIBが審査・交付する運用規格の違いについての認識不足に基づくものだと思われる。双方の規格ともそれぞれの手順に基づいて同程度の審査を受ける必要があるため、一部の利害関係者が確信犯的に身勝手を技術資料としてねじ込んでいるとの指摘は誤りである。
  • 根本的な話であるが、電波に関わる約束事を決めるARIBがコピーワンスだのEPNだのと録画の方法にまで介入しているのは越権行為であるとして問題視する向きもある。
    • これについては各種規格規定の性格や実際の記述内容、各種団体の位置付けに対しての理解不足に基づくものであるとする向きもあるがそうであるならやはり広報不足である。

関係機関の動き

相次ぐ批判に対して、行政当局や業界団体などからの動きもある。

  • 視聴者からの苦情を受け、監督官庁である総務省の情報通信審議会・第2次中間答申は「2011年の地上デジタル放送の全面移行に向けた受信機の普及に際して大きな障害」「考え方の原点は、複製は私的録画の範囲内である」と批判した上で「コピーワンスの現行の運用を固定化する必然性はなく、私的利用の範囲で視聴者の利便性を考慮して運用の改善に関係者が一体で対応することが必要だ」として関係者には見直しを検討し2005年末までに結論を出すよう指示した。私的録音録画補償金制度の問題とも絡んで議論が長期化したが、2008年7月4日より運用がダビング10へと緩和された。
  • 知的財産戦略本部・コンテンツ専門調査会が発表したコンテンツ振興戦略は「全てのユーザーの利便に一律に重大な影響を与えるもの」と定義し、その設定に関しては「ユーザーやメーカー、関係事業者など幅広い関係者の参加を得、そのプロセスを公開して、透明化を図ることでシステム間の競争を促進。利便性と著作権保護の双方の観点からバランスの取れたシステム策定を促進する」と提案した。これはバランスを欠き不透明な企業を中心に運用され、消費者の批判を浴びるB-CAS方式のコピーワンスを非難するものであると指摘される。
  • JEITAは暗号化により出力データは保護するがコピー回数は無制限にするよう提案している。これに対し放送業界は「コピーが可能ではコンテンツホルダーが納得しない」として猛反発している。
  • 一方、公共財である電波をDRMで囲い込むことが問題とする向きは全ての元凶は独占的に必要とされるB-CASでありJEITA案では何の解決にもなっていないと批判的である。B-CAS社の株主のうち家電メーカーはJEITAの会員でもあることから利害関係を指摘する向きもある。
  • JEITA案の対案として放送業界は現行規定内にある「バックアップストリーム」を用いてムーブ失敗に備えるよう提案したがダビング10によってムーブ失敗はある程度補償されることとなった。
    • バックアップストリームとは、同一の録画機器内に録画と同時に1つだけ記録が許されている暗号済データである。いつでも再生可能なDRMによる暗号データとは違い再生に用いることができないよう更なる暗号化が施されたデータであるが録画データがムーブ失敗により消失した場合、このバックアップストリームを1度限りデコードし失敗に備えることが可能とするものである。
    • しかしバックアップストリームではムーブ失敗を1回しか補償できず、根本的な解決になっていないと批判する向きが多数を占める状況である。また、バックアップストリームの記録はハードディスクの容量を食い潰すばかりか「同一機器で1つしか持てない」など録画データ以上に厳しい制限が行われるものである。「コピーワンスはカジュアルコピーが阻止であり、優秀なクラッカーには突破されることは予想している」とする放送局の主張を取り上げ、カジュアルコピー阻止が目的でそこまでやる必要性が全く理解できないと批判する向きもある。
  • デジタル放送を推進する立場である政府関係者からまで「あのようなものを採用するからデジタル放送は使いにくいものになったのだ」との批判が絶えないとする向きもある。
  • 2006年8月1日、総務省の情報通信審議会はEPNを指定した上でコピーワンス見直しを指示した。同様の指示は1年も前に同審議会が行っているが放送業界の猛反発により未だに結論が出ていないため、身勝手な放送業界に対し激怒しているのではないかとする向きもある。またEPN導入となった場合既に売った機器での互換性などは確保されるのか、また利便性がより低下しないのかを疑問視する向きもある。
    • これについては長期の議論の末、EPNは導入されずダビング10で決着した。既に売った機器では引き続きコピーワンスのままであり、最低限の互換性は確保された。
  • 他方、如何なる犠牲を払ってでも著作権は保護しなければならないとする立場からコピーワンスやB-CASを批判することに対し批判する向きもあるが、B-CASを支持しなければならない理由を持つ者は限られていると考えられることからその主張には自身の利害が影響しているのではないかと指摘する向きもある。

暗号(DRM)放送の是非を巡って

B-CAS方式によるDRMに限った話ではないが暗号通信はその性質上、第三者が監視することは困難である。

暗号は破ろうとすれば優秀な技術者等によって破られる可能性があるが、B-CASのように著作権保護を標榜する暗号を破った場合、技術的保護の解除を禁じた著作権法違反に問われる可能性がある。デジタルミレニアム著作権法(DMCA)においてもDRM破りは禁じており、歴史的な悪法と批判されるものでもある。

また、DMCA施行後は米国においてもDRMを盾に独禁法違反逃れを始めとした様々な形での悪用が絶えず非難される状況である。昨今では消費者の権利意識とともに悪用されることを問題視しDRM自体に対する反対運動が起こっている。

B-CAS見直しに向けて

総務省の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(デジコン委員会)」は2008年9月26日、地上デジタル放送のB-CASを見直すことを決めた。

現在は、見直し案として

  • B-CASカードを小型化する
  • B-CASカードをあらかじめ機器に装着した状態で市販する
  • コンテンツ保護機能のチップ化
  • コンテンツ保護機能のソフトウエア化

といったものを中心に検討されている[15]

雑記

  • デジコン委員会の第5次答申では「消費者や権利者の立場からB-CASについてさまざまな指摘が行なわれた」ことを理由にB-CAS見直しの方向を打ち出している。
  • 経済学者である池田信夫は、2008年9月26日にB-CAS見直しが決定した際に「B-CASの廃止が事実上決まった」と述べた[16]が、実際に廃止が決まったわけではなく「見直し」が決まっただけである。また、放送局・権利者団体の意向に沿っていたデジコン委員会においてB-CAS見直しの流れとなった原因としては、インターネット上での圧倒的なB-CAS反対意見があり、これを受けた公正取引委員会独占禁止法違反の容疑でB-CAS社などの事情聴取に乗り出したことが原因だった、とも述べた。

脚注

  1. ^ BSデジタル放送の受信確認メッセージって何?”. NHK /digital. 日本放送協会 (2008年4月7日). 2008年9月19日閲覧。
  2. ^ これらのカードはネットオークションに出品されることもあるが、同社は契約違反であるとして問題視している。
  3. ^ a b 「地デジマフィアを肥えさせる新型テレビ「不要な内蔵カード」週刊ポスト 2008年10月3日号、小学館、150-151頁。
  4. ^ コピーフリー以外にも利用者の利便に配慮して支持を得られてるDRMならいくらでもあるが、B-CAS方式は利用者の利便はほとんど考慮されていない。これはB-CAS方式DRMが集中砲火の如き批判を浴びてる最大要因でもある。
  5. ^ コピーネバーのメディアを10枚作ることが出来るだけで、SCMSのような本来の「コピーワンス」より厳しい運用である。
  6. ^ インターネット経由のB-CAS鍵はどのように製造されているのかは明らかになっていないが仮にキージェネレーターで作られていた場合、有料放送向けの限定受信すら機能していないことを意味するものなる。
  7. ^ B-CAS方式の全国適用の理由は「1社でも抜け落ちるとそこからコピーが出回る」とされているため。これは放送局の主張とも一致する指摘である。
  8. ^ ただし、広く市場に供給されている一般的なNTSC処理部品などについては利用目的によって供給先を制限することがむしろ不当な商行為とも考えられるとする向きもある。が、アナログレコーダーの高級機が絶滅に近い現在、これらを対象としたTBC等のデジタル補正回路がコピーガード除去以外のどのような目的に使われるのかは議論を呼ぶ問題でもある。
  9. ^ 出演者が著作権を持っているとは限らないと指摘する向きもある。ただし著作権と比べて肖像権が軽視される権利ではない。
  10. ^ 広報については主に電子情報技術産業協会(JEITA)やデジタル放送推進協会(Dpa)が行っている。また運用方式を定めるのはDpaであり、電波産業会(ARIB)が審査と配布を行っている。
  11. ^ 但し、Windows3.1の時代に発売された旧式のビデオキャプチャーボードなど年式の古いデジタル映像機器の場合はコピー制御信号そのものが認識出来ない製品が存在するのでコピー禁止であるにも関わらず録画が可能な場合がある。
  12. ^ ちなみに複製防止技術の除去が直ちに権利侵害になるわけではない。著作権侵害は親告罪であるためである。
  13. ^ 三柳英樹 (2007年12月27日). “デジタル放送の暗号化に疑問の声が相次ぐ、総務省の検討委員会”. Internet watch. インプレス. 2008年9月19日閲覧。
  14. ^ 現在、入手可能な画像安定装置など”. コピーガード情報へようこそ (2008年9月15日). 2008年9月19日閲覧。
  15. ^ B-CAS見直し、「技術的エンフォースメント」の4案を提示――情通審
  16. ^ 池田信夫 (2008年10月7日). “「第5権力」としてのウェブ”. 池田信夫の「サイバーリバタリアン」. アスキー・メディアワークス. 2008年10月7日閲覧。

関連項目

外部リンク