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日本の核武装論

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核武装論(かくぶそうろん)とは、厳密には核武装における利得(具体的には安全保障政策における「手段」としての核武装)を論じたものであるが、一般的に、広義においては「国防において核武装をおこなうべきだ」という主張、狭義においては「日本が核武装すべきだ」とする主張である。いずれにせよ「まだ核兵器を保有していない」国家における主張であり、核兵器保有国においてはすでに保有する核兵器をどのように運用整備するのかという核戦略として語られる。

1945年8月以前の核武装計画

日本において原爆が具体的に語られたのは、1940年仁科芳雄博士が安田武雄陸軍航空技術研究所長にウラン爆弾の研究を進言したのが始まりと言われる。

以後、陸軍1941年理化学研究所原子爆弾の研究を委託(ニ号研究)、海軍1942年に核物理応用研究委員会を設けて原爆の可能性を検討した。しかし当時は人形峠岡山県鳥取県境)のウラン鉱脈の存在も知られておらず、ウラン鉱石の入手はもっぱらナチス・ドイツとの連絡潜水艦に頼る状況であり、ウラン爆弾1個に必要な2トンのウラン鉱石の確保は絶望的であった。

1945年6月には陸軍が、7月には海軍が研究を打ち切り、日本は敗戦を待たずして原爆研究から撤退した。詳しくは日本の原子爆弾開発を参照。

冷戦中の核武装論

ソビエトからの核攻撃の脅威を回避するためには、日本も核武装し抑止力を持つべきだと言う主張が行われた。一方日本が冷戦期に核武装しなかったことで、ソ連が日本に対して軍事的行動に出られなかったという主張も存在する。ただし日本は米の核により守られていたのでこの見方が成り立つとは考えにくい[1]

尚、NPT条約の締結以前、非核三原則以前であれば日本政府は「防衛用核兵器は憲法上保有しうる」という見解で核武装の完全な否定はしていない。しかし日米安保体制にある限り、やはり戦略核抑止について論じられることはなく、戦術核に言及されるのみである。

当時、核弾頭の運用が可能な兵器としては航空自衛隊ナイキJ海上自衛隊対潜爆雷アスロック陸上自衛隊の155ミリ榴弾砲、核地雷が考えられた。いずれも精密誘導兵器の発達によって必要性が無くなった分野である。

現在の東アジア軍事情勢及び核開発状況

日本の近くには南北朝鮮/中国台湾という分断国家が存在し、潜在的な危機が存在する。中国/北朝鮮両政府の一部の軍人は、公式非公式に「統一のためには核戦争すら厭わない」と発言している[要出典]エラー: タグの中に無用な文字が含まれていないか、{{要出典範囲}}と{{要出典}}を間違えていないかを確認してください。貼り付け年月は「date=yyyy年m月」、チップテキストに表示する文字列は「title=文字列」と指定してください。

ただし、北朝鮮は技術的、経済的な問題から実戦的な核戦力を構築するのは当面無理である。人民解放軍高官による「核戦争を辞さず」の発言は「核戦争で先進国と共倒れても、生き残った国民の数で勝るから復興速度も速く、故に核戦争後の覇者になれる」というもので、このような発言を真に受ける限り中国相手に核抑止は成り立たない事になってしまうが、現実には1979年の中越戦争では軍事的に敗北していながら、ベトナムソ連の後ろ盾を得ていたことから核を使用できなかった。

また中国は台湾の問題についても、1996年に台湾民主化の先鋒である李登輝が台湾総統に就任すると、中国政府は台湾への武力制裁を示唆したが、アメリカ軍が空母を派遣して威嚇したため戦争にはいたらなかった。その後、人民解放軍の朱成虎少将などが「台湾紛争に軍事介入するなら中国はアメリカに核兵器を先制使用する」などと、頻繁に核使用を示唆するようになったが、これは台湾問題でのアメリカに対する外交上の牽制と見るのが妥当である。

北朝鮮

北朝鮮は原子爆弾の開発は完了していると見られている(詳細は北朝鮮核問題を参照)。北朝鮮の核保有は自衛目的を宣伝しているが、西側諸国の解釈としては経済援助を得るための瀬戸際外交のカードとの見方も強い。

また北朝鮮はノドンテポドン1号テポドン2号などの弾道ミサイルを保有しており、特にノドンは中国のDF21の10倍の200基が日本に向けられており核弾頭の搭載が懸念されている。ミサイル搭載可能な核弾頭を製造するには小型化(1t程度)が必要である。1994年のCIA報告では数tの原始的原爆が1-2個という事であったが、脱北核技術者の情報で2001年時点で高さ直径とも1mの原爆が完成しており、米国の研究機関ISISの報告書によればノドン搭載可能な核弾頭3個、航空用核爆弾3個と予測されている。(欧州で逮捕された核の闇市場関連のスイス人のPCから小型原爆の設計図が発見されており、北朝鮮の手に渡ったと見られている)2008年6月に北朝鮮は核計画を申告したが核弾頭の有無は申告されなかった。

また、北朝鮮は現在稼動停止・無力化中の5MW炉(核兵器1個/年)のほかに、建設中断中の50MW黒鉛炉(同10個/年)と200MW黒鉛炉(同40個/年)を持っている。外交による解体も空爆もせず大型炉建設再開を黙認すると北朝鮮の核生産能力は50倍になってしまい、数年でノドン200基が全弾核装備になるので、直近の日本の安全保障上最大の問題の一つとされている。しかし、2008年現在、6カ国協議で米国は(拉致問題同様)日本にとっての核問題の核心である大型黒鉛炉についても北朝鮮に譲歩し、解体どころか無力化対象からさえ外してしまったのが現状である。

なお、GDP1-2兆円 国家税収3500億円前後の貧しい北朝鮮が中国の対日核戦力をしのぐ規模の核戦力を構築しつつある資金源は、北朝鮮系資本が4割を占める日本のパチンコ産業からの送金や韓朝合弁事業収益、拉致被害者5人と引換えに小泉政権から得た1兆円(詳細 朝銀信用組合事件)など、合法/非合法の海外収入が国家税収を上回る年平均5000億円程あるからであると見られており、年間5000億円の軍事支出の3000億円を核・ミサイルに振り向け、国境の戦車を旧式のまま放置する核一点豪華主義の賜物でもある。

中国

  • 中国は、日本向けに使用できる能力を持つDF-21を推定10-40基保有している。中国は核戦力を近代化し、生残性を高める事には熱心であるものの、量的には核より通常兵器への予算配分が圧倒的であり「基本的には核を使わずに通常戦力で目的を達する事を指向している」と観測される。これは、軍事費がロシアを抜いて旧ソ連に迫る世界2位[2]であり、北朝鮮より遥かに潤沢な資金に恵まれているためである。
  • 抑止論的には中国の現ICBMは液体燃料による固定サイロ配備であり、充分なCEP(半数必中界)と弾頭威力を持った先制核攻撃に対しては脆弱となる。逆に重量を気にせずコンクリートを塗り固めて防御を強化できる固定サイロは、CEPと弾頭威力の双方で達成される破壊力に耐えることができるのであれば、核攻撃からの生残性を持ちうることになる。また、中国の戦略原潜夏型原子力潜水艦は1隻しかない上に、搭載しているJL1ミサイルは改良型でも射程4,000km以下であり、事実上有効な核戦力として機能していない。このため例えば対米を考えると、核抑止力は非常に限定的なものである。
  • 2007年頃から固体燃料移動式でMIRVを装備したDF31Aが就役している。移動式弾道弾は頻繁な移動によって位置を特定させないことで固定サイロとは比較にならない生残性を発揮する。ただし、移動することによる生残性の向上は移動車両(TEL)そのものの機動性、それを助ける道路網の構築があってのことで、直接的な防御力自体は固定サイロに守られた弾道弾とは比べ物にならないほどに脆弱である。
  • 2007年から2010年に掛けて新型晋型原子力潜水艦が5隻配備される予定であり、核戦力の向上が見込まれている。

韓国

  • 韓国は1970年代に米国の圧力により一旦は核兵器開発計画を放棄し、「朝鮮半島非核化に関する共同宣言」を行っている。しかし1994年に北朝鮮の核開発疑惑があり、米国は北朝鮮の爆撃を検討し、ソウルでは市民の大規模な避難が行われるなど朝鮮半島での戦争の危機が高まったことなどから、その後韓国政府は独自の核開発を検討した可能性がある。
  • 2000年1-2月にNPT(核拡散防止条約)に明らかに違反した核燃料濃縮実験を科学者が極秘で行ったことを2004年になって韓国政府は認めた(2004年9月3日の読売新聞によると、その高濃縮ウランは兵器級の90%に近い濃縮度に達していたとされる)。そのためIAEAは検査団を韓国に急行させ強制的な査察を行っている。韓国政府は実験があくまで平和利用目的であることを主張したが、IAEA内部では疑義が出ており、専門家は核兵器レベルのウランを醸成するレーザーを使用したその技術を民生利用したとは信用し難いと主張している(2004年9月2日のBBC NEWSより)。
  • 現在の韓国政府は公式には核兵器開発の検討などは否定している。しかし韓国の世論は核兵器開発に賛成が多く、東アジア研究院の2004年7月調査で核保有賛成が51%。2006年の北朝鮮の核実験後は65%が核保有賛成で、賛成しないという回答は32%だった。
  • なお核兵器の運搬手段になりうるものとしては、韓国は弾道ミサイルは保有しないものの、F-15K戦闘爆撃機巡航ミサイルを保有しており、特に玄武III Cは日本のほぼ全域と中国沿岸部の大半が射程内に入ると見られる。

台湾

  • 台湾の複数の軍経験者らによると、台湾は中国が核実験に成功した1964年以降、当時の蒋介石政権が核開発に着手したが、計画を知った米国は1976年、台湾に圧力をかけ、計画はいったんは中止されたとされる。
  • しかし、1980年代後半になり、蒋経国政権下で再び開発が再開され、同研究院内に1987年、秘密裏に小規模核実験施設が造られ、プルトニウム抽出実験などが行われたが、米国に亡命した同研究院幹部が1988年1月に行った証言などを基に、米政府が李登輝政権時代に施設を閉鎖に追い込んだとされる。
  • 陳水扁政権は核開発を完全否定しIAEAの査察も受け入れている(以上2004年10月14日の毎日新聞より)。
  • 核兵器の運搬手段になり得るものとして、台湾は射程距離1,000キロ、弾頭重量400キロの巡航ミサイル雄風2Eを保有している。
  • 国際政治的には中国が、台湾は自国の一部であると主張しており、その中国は近年の著しい経済成長に伴い軍事力を急速に増強し、またアメリカに対する核抑止力も高めていることから、今の台湾がもし核開発を始めれば即中国が武力侵攻を行うことは確実であり、台湾の核武装は現状では不可能と考えられる。

核武装賛成論の主張

主な核武装論者

核武装主張の理由

核抑止力の保有

  • 日本が核武装することによって、主に中国、北朝鮮、またはロシアに対する核抑止力が得られるとするのが、核武装論の中核である。
    • 日本の狭く都市部に人口が密集した地理的条件から中・露など広大な国に対する核抑止力を否定する意見もあるが、それは相互確証破壊の概念と核抑止力の概念の混同である。
    • 核抑止力とは、敵の先制攻撃によっても生存可能な報復用の核兵器を持つことにより、敵の核攻撃を抑止する力である。
      • 核によって攻撃しようとする側は、核攻撃によって得られる利益が不利益を上回らなければ攻撃できないから、報復用の核を持つことによりその不利益の割合を増大させれば、核攻撃の動機を抑止出来ることになる。そして核抑止力の大きさは反撃可能な核の量に比例する。これが核抑止力の基本的な考えであり、その核抑止力が敵対しあう2国間で最大、すなわち国家の存続が不可能となった状態が、相互確証破壊である。
      • 日本が核武装するとしても中国などに対し相互確証破壊に至るまでの核戦力を保有することは不可能であり、日本同様狭い国土条件でロシアに対し一定の核抑止力を構築しているイギリスやフランス、またはイスラエル程度の核戦力の保有が現実的である。

「核の傘」への疑問

  • 米国政府は公式には同盟国への核の傘を一度も否定したことは無く、今後も核の傘の提供を維持することを再三明言しているが、 それは同盟国や仮想敵国に対する外交戦略として当然の政治的アピールであり、実際に同盟国が核攻撃を受けた場合、米国が何千万もの自国民が死亡する危険を覚悟して核による報復という軍事的選択を行うかどうかは、全く次元の異なる問題である。
  • 核武装論と言っても考えは多様であるが、共通して挙げられる核武装の必要性の最大の理由は、たとえ日本が核攻撃を受けたとしても、実際に米国は自国が核攻撃を受ける危険を冒してまで核によって反撃しないだろうという、核の傘の否定である。
  • 日本の政治学や安全保障などの専門家の間では、核武装を主張する者はごく少数であり、反対派が大多数であるが、その核武装反対派においても「日本が核攻撃を受ければ、米国は核によって反撃する」と核の傘の有効性を明言している者はほとんどいないのが事実であり、それは核武装を議論する際に留意すべき重要な点である。
  • なお、米国が同盟国に対して本当に核の傘を提供するかという議論は、米ソ冷戦時代から存在した。欧州においても大論争があり、米国が「欧州が核攻撃されたら米国本土からソ連に対し報復核による攻撃を行う」と説得したものの、欧州諸国は納得せず、米国によるより強い核のプレゼンス(核の傘)を求め、欧州を脅かしていたソ連の中距離弾道ミサイル「SS20」と対等のミサイルを配備するよう求め、結局米国は欧州諸国に中距離弾道ミサイル「パーシングII」を配備することになった(中西輝政編著『「日本核武装」の論点』参考)。
  • また、米国の核の傘に対する否定的考えは当の米国の政治家や学者からも出ている。(伊藤貫著『中国の「核」が世界を制す』参考。)
  • ヘンリー・キッシンジャーは「超大国は同盟国に対する核の傘を保証するため自殺行為をするわけはない」と語っており、CIA長官を務めたスタンスフィールド・ターナー(Stansfield Turner)元海軍大将は「もしロシアが日本に核ミサイルを撃ち込んでも、アメリカがロシアに対して核攻撃をかけるはずがない」と断言し、カール・フォード元国務次官補は「自主的な核抑止力を持たない日本は、もし有事の際、米軍と共に行動していてもニュークリア・ブラックメール(核による脅迫)をかけられた途端、降伏または大幅な譲歩の末停戦に応じなければならない」と言う。
  • その他、以下の米国の要人、著名人が、米国の核の傘を否定する発言をしているという。
    • サミュエル・P・ハンティントン(ハーバード大学比較政治学教授)
    • マーク・カーク議員(連邦下院軍事委メンバー)
    • ケネス・ウォルツ教授(核戦略理論家)
    • ファレオマバエガ議員(下院外交委・アジア太平洋小委員会)

中国脅威論

  • 核武装論のほとんどは中国脅威論と並行して主張される。また中国脅威論の多くは米国の一極支配の終焉と同時に語られることが多い。
  • 米国は20世紀初頭から圧倒的な経済力と軍事力を背景に世界秩序を制御してきたが、経済においてはEUの通貨ユーロの台頭により、ドルの世界の機軸通貨としての地位低下が確実視され、軍事においては中国の経済成長に伴う軍事力の拡大によって米軍の影響力の低下が予想されている。
  • 中国の軍事支出の伸びは19年連続2桁パーセント増で、2007年の時点で5兆円超と公表されているが、米国防総省は実態はその3倍になると指摘している。また中国は2015年までには晋型戦略原潜を5隻就役させ、それと並行して固体燃料移動式ICBMDF-31を配備する予定である。それらの核ミサイルは発見困難で先制攻撃で破壊できない。ゆえに現在米が保ってる核戦力による圧倒性は低下するだろう。
  • かつて米国はソ連との冷戦期において同盟国を保護し、やがてソ連を崩壊に追い込んだが、中国相手に同様の構図は成り立たないと考えられる。ソ連は経済的には貧弱であったが、中国の経済力はやがて米国を上回るという予測もある。[1]そして冷戦期の米ソの経済関係は極めて希薄であったが、米中の経済関係は極めて緊密であり、米国の国別の貿易額では、中国は2004年に日本を抜いて3位になっている。[2]また米国債の保有額では2007年で日本は1兆ドル弱、中国が約7000億ドルと推定される。
    • 今後も中国の経済発展により、米中の貿易額は増加していくのは確実である。それに対して日本は人口減少により対米貿易額は減少すると考えられる。即ち米国経済にとって中国の価値が日本の価値を上回れば、米国が中国の脅威から日本を守ろうとする動機が希薄になる。
    • 実際に中国が経済的、軍事的に超大国となった場合、米国は台湾や日本を守るため中国と戦争は出来ないという指摘は米国の学者からもなされており、ハーバード大学のスティーブ・ワルトやシカゴ大学ジョン・ミアシャイマー、そしてサミュエル・ハンティントンなどは、米国が東アジアでの覇権を放棄して中国との力関係を保つ「オフ・ショアー・バランサー戦略」という選択肢を主張している。(中西輝政編著『「日本核武装」の論点』より)
    • リチャード・アーミテージの講演では米国一極超大国時代は2020年以降に不確実になる可能性があるという認識が示された。[3]
  • その他、予測される核武装によるメリット
    • 国際的影響力の大幅な増加が期待される。
    • 米国の被保護国からの脱却を目指せる。核武装を行っている・または進めている周辺国(中、露、北朝鮮)への抑止力を米国に依存(核の傘)する現状が、日本の自主外交力を低下させているという考えが背景にある。
    • 複数国家間の勢力均衡維持が期待できる(勢力の均衡が平和をもたらすという考え)。

核安全保障論の種類

単独核保有論

日本が独自に核兵器を開発し、運用すべきであるとする考えである。一般に「核武装論」とはこの単独核保有論を指す事が多い。

  • 利点
    • 後述する核安全保障論のような欠点が無く、信頼性の高い核抑止力を持つことが出来る。
    • 安全保障において日本の自立性が飛躍的に高まる。
  • 問題点
    • 非核三原則をはじめとするこれまでの政策の大幅転換が必要である。
    • 外交的には周辺国の反発が予想される。米国もNPT体制の維持を望んでいるため理解を得るのは容易ではない。

米国の核兵器配備要請論

欧州では欧州を射程に収めるソ連のSS20配備に対して米国がパーシングII配備で対抗し、結局中距離核戦力全廃条約によってSS20とパーシングIIが両方撤去された歴史があるので、これと同じように米国に中距離核ミサイルの配備を求めて北朝鮮や中国に対抗しようとするもの。単独核武装論に次いで判りやすいので広く見かける意見である。

  • 利点
    • 欧州で一度成功した実績がある。
  • 問題点
    • 日本に配備されようと発射の権限がアメリカにある以上、究極的には「核の傘」の信頼性の問題でしかない。

日米共同核保有論

最近、田母神前航空幕僚長などは核兵器シェアリング(Nuclear Sharing)の導入を提言している。アメリカがNATO加盟国(ドイツ、オランダ、イタリア、ベルギー、トルコ)に提供する核武装オプションである。平時はアメリカ軍が核兵器を保持・管理しつつ相手国と核兵器の使用と管理の訓練を行う。戦時になったとき、アメリカ軍が相手国に核兵器を提供し、相手国は核武装する。

  • 利点
    • この方法には開戦後に核兵器が提供されるという点で開戦前までNPT条約に抵触しないという特徴がある。
    • NPT改革のような多国間交渉が必要なく簡易・現実的で判りやすい。
    • 米国の警戒心を買いにくい
  • 問題点
    • 非核三原則を放棄するという大幅な政策の転換が必要。
    • NATOの核シェアリングはあくまで戦術核兵器の運用であり、日本が考える核抑止力の構築とは目的が違う。アメリカが戦略核兵器の供与を意図したことはない。
    • そのNATOの核シェアリングにおいても、核の使用はNATOの総意とされるものの最終的な決断は核兵器国にある。
    • この議論そのものが「核を保有する口実」を探すことに収斂しており、核抑止の概念にまで発展していない。

NPT見直し論

国連改革で常任理事国を増やそうという提案がなされているが、NPTを脱退して核武装するのではなく、NPT内に留まりながら、他の非核諸国と連携してNPTのルールを変革してNPT公認の核保有に至ろうとする考え方。5大国以外の数国に新たに核保有を認めるという案と、中小国共同原潜保有機構を立ち上げて非核国に自前の核抑止力を持つ道を開こうという考え方がある。

  • 利点
    • NPTを崩壊させないので、政治献金次第で米議員の賛同を得られ易い
    • NPTを崩壊させないので、中露に核施設空爆などの軍事介入の口実を与えない
    • 他国と組んで「日本とアラブ/豪州/ブラジルにもNPT公認の核戦力を」という具体的な運動をしないと米国のほうから日米共同核を提案してくる事はありえない。
  • 問題点

日本核武装の実現性

経済的技術的問題

  • 伊藤貫によれば「必要最小限の抑止力で良しとするならば、日本にとって高いハードルではない」とし、伊藤の試算によれば核弾頭(原爆)付き巡航ミサイル200~300基と、専用の駆逐艦及び潜水艦約30隻の建設と運用にかかる軍事予算は年間1兆円となっている。この場合の「必要最小限の抑止力」とはケネス・ウォルツ核戦略理論に基づくもので、具体的には中国東部の主要都市への対価値攻撃力(カウンターバリュー)を意味する。ただし、この核戦力でどのような段階まで中国の核攻撃の意図を抑止できるのかについての具体的な議論はないため、国(防衛省)による本格的な抑止力の算定が行われた場合には「必要最小限」とされた規模、予算は伊藤個人の試算に比べて大きく上下する可能性が高い。
  • 核実験についてはガンバレル方式だけでなく、インプロージョン方式も現代の技術なら起爆装置臨界前核実験だけで十分とする意見がある(イスラエルと南アフリカは起爆装置の実験だけで原爆を開発したという説がある)が、複数回の核実験が必要という説の方が多い。
  • 核実験は技術的な問題以上に、政治的に「核武装の実証を公言」するため必須となる。70年代初頭に当時の防衛庁の行った研究では「国内に実験場が無い」ことを核武装断念の理由としている。これを本土から離れた無人島地下核実験を行えば良いという意見もあるが、現実問題としてそのほとんどが国定公園である離島を核実験場にすることは固有種絶滅危惧種生態系など環境への深刻な影響を与える。これは核実験の放射能の影響云々以前に、核実験場という施設の建設や維持する人員によって惹起されるものである。また、地下核実験を行っても問題が無い地層地質であるかの研究はまったく行われていないため、候補地そのものを探すところから始めなければならない。
  • 巡航ミサイルは、開発の前提となる諸技術は全て備えているので比較的短期で開発は可能であるとされる。
  • ただし巡航ミサイルの長射程は核弾頭の小型化(トマホークに搭載されたW80 (核弾頭)で290ポンド)によって達成されたものであり、潜水艦を発射プラットフォームとする限りは、魚雷発射管を始めとする寸法、容積、重量の制限を受ける。
  • 米英仏露中のような戦略原潜水爆の保有を求めるとなると、開発のハードルはより高いものとなる。

内政的問題

非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)ならぬ非核四原則(三原則に加え「議論させず」を追加)の状態にあると言われるほど、日本人の核兵器に対する嫌悪は強い。これは左派と言われる政党や言論人、メディアが運動する割には国民に受け入れられた原子力発電政策や、米海軍の原子力艦艇の寄航とは一線を画している。その一方で核を持ち込ませないための方針については、厳正な適用すらアメリカに求めることができないない自己矛盾にある。

ただ、1998年の北朝鮮の弾道弾の試射によって費用の問題から疑問視されていたMD配備が一気に加速したり、2001年の同時多発テロの直後にはテロ対策特別法が、2002年に拉致被害者が公式に確認された後に経済制裁に関する諸法が速やかに立法されたことから、何かの事由で世論が大きく動く可能性はある。しかしMDの配備の目処がついた2006年に北朝鮮の核実験が行われた際は(MD配備や経済制裁を超える)具体的な新たな対抗措置をとれという世論にはならなかった。

仮想敵の核兵器の保有という脅威そのものは、冷戦期にソビエト相手に経験してるため、世論が日本自前の核を保有しなければならない脅威に直面していると認識する段階に至っていないとも言える。

外交的問題

  • 大半の核武装論者の考えで共通するのは、日本は最大の同盟国である米国の理解を得て核武装するという点である。これは日本の核武装が決して単独防衛を目指すものでなく、米国と同盟関係を維持しながら自主的な防衛力を強化するという考えである。また日本が核武装を試みれば、周辺国の反発が予想され、国連安保理国際連合憲章第7章に基づく対日制裁決議案が提出される可能性が高い。だが、あらかじめ米国の理解を得ていれば安保理における米国の拒否権によって制裁決議を否決でき、核開発や原発に必要なウランを引き続き輸入できるという主張もある。(月刊核武装論[4]参考。)ただし、アメリカ1国では日本の電子力発電所の需要を満たすだけのウランの供給、再処理は困難である。
  • 米国が日本の核武装を承認する可能性
    • 基本的に米国は日本の核武装には消極的である。それは日本が核武装すればNPT体制が崩壊し、核のドミノ現象や核拡散が生じ、それにより核戦争及び核技術流出によるテロの危険性が高まるという懸念があるからである。
    • 米国が日本の核武装を積極的に賛成する可能性は少ない。安保理で対日制裁が決議された場合は日米の経済的繋がりを理由として拒否権の行使する可能性が無いわけではないが、経済的な得失とアメリカの国家戦略とのすりあわせがあってのことなので、日本は自国の核武装がアメリカの国益にとって必須であることを提示する必要性がある。
      • 即ち、日本の核武装が、核不拡散以上に米国と日本との共通の国益として認識されれば、アメリカの援助による核武装の可能はある。
    • 現状、アメリカは核の不拡散を至上命題としている。NPTの維持に努力を払っており、アメリカ主導のNPTが存在する限りは日本への核武装の支援は現実的ではない。それが行われるとすればNPT体制の崩壊後のこととなる。
    • NPTが崩壊した後であれば、核による脅迫(ニュークリア・ブラックメール)をアメリカの同盟国が受けた場合であっても、米国は当事国の核武装を支援することで、事態を当事者間の交渉に限定し、核攻撃による自国民が犠牲になる危険を回避できる。
      • ただしこれらはすべてNPTの崩壊、あるいはアメリカが核不拡散を断念した後の仮定であり、その場合には日本の核武装の有無と無関係に多くの不利益を蒙っていることが予想される。現実の日本はアメリカと共にNPTを支持しており、また、核の不拡散によって得られる以上の国益をアメリカに与えることも不可能である。
  • ただしアメリカの同意を取り付けたとしても、それが他の二国間の関係に影響を与えないというわけではない。アメリカが日本に核技術を供与することと、第三国が安定して日本にウランを供給する義務を負うことは別問題だからである。
    • つまり、日本が核武装後においても現在のような経済大国としての地位を占めるのであれば、アメリカ一国ではなく世界の殆どの国家に対して、日本の核武装の正当性を認識させる必要がある。これは二国間の問題である日米の技術供与問題よりもさらにハードルが高い。
    • しかし、アメリカに対して同意を取り付けたのと同様な日本の責によらない、世界の共通認識となるだけの日本の危機があれば、経済制裁などの国際関係の破綻を回避できる可能性がある。

核兵器を戦力化させる手段

核爆弾を搭載する兵器については、弾道弾、巡航ミサイル、爆撃機の選択肢が考えられる。また兵器のプラットフォームとしては、地上基地・水上艦・潜水艦・航空機などが考えられる。なお敵の先制攻撃に対する生存性を高めるために複数の運用手段を確保するのが望ましい。

弾道ミサイル

日本はM-Vロケットに代表される固体燃料ロケットの技術を保有していることから、弾道ミサイルの基本的な技術は有していると考えられる。

宇宙ロケットと弾道ミサイルの主な違いは誘導システム、そして再突入体の有無である。 宇宙ロケットは地上施設からの電波によって誘導される点が慣性自立誘導式の弾道ミサイルとは大きく異なる。そのため弾道ミサイルを開発するならば誘導システムの新規開発は必須である。 再突入体(RV)については、日本はOREXなどで大気圏再突入の実験を5回行ない、慣性航法装置のテストや空力加熱のデータなどを収集した。 ただし核弾頭を搭載した再突入体を開発するならば核抑止力としての有効性持つだけのCEPを有するRVをJAXAとは別に行う必要がある。

固定基地の弾道ミサイルは先制攻撃で狙われやすく、生存性が低い。車両移動式ミサイルを僻地で運用する方法も考えられるが、日本の狭隘な道路事情では困難を伴う。これは「ソビエトに近い島国」であるイギリスも陥ったジレンマで、空中発射弾道弾を開発しようとして失敗し、ポラリスを導入した経緯がある。

ちなみに兵頭二十八は山岳地帯にミサイル基地建設を提案している。これは敵の先制核攻撃があっても、よほどCEPが高くなければ山自体が盾になるためミサイルの生存性が高まるという考えであるが、周辺住民の反発は確実で政治的難易度が最も高い運用方法である。

もし日本が現実に核弾頭を搭載した弾道弾で核抑止力を構築するというのであれば、潜水艦発射弾道弾(SLBM)の開発と発射プラットフォームとしての戦略原潜の開発が核戦略としては有効性が高い。

爆撃機

日本がライセンス生産したF-15要撃戦闘機や、日米共同開発のF-2支援戦闘機の開発の経験があるとはいえ、国産のエンジン開発能力がネックとなっている。

国防の重点政策として資金を投入しても、米国が保有するような、敵の防空網を潜り抜けて核弾頭を目標に確実に命中させるような戦略爆撃機(もしくはそのような戦略用途に使用できる航空機と搭載兵装の組み合わせ)の開発には多年を要する。国産大型エンジンとB-2爆撃機のようなステルス性を獲得しても、その時点ではさらなる軍事技術の発展が見込まれる。戦略爆撃機は高価であり、効果的に運用しているのが米国だけであり、日本が戦略爆撃部隊を保有するのは困難である。

日本が運搬手段として航空機を使うのであれば、長射程の巡航ミサイルと搭載母機の組み合わせとなる。しかし航空基地は敵の先制攻撃の標的になるため航空機を核抑止に用いるのであれば、かつてアメリカ戦略空軍が行っていたような核パトロール(核弾頭搭載機の24時間空中待機)を行う必要があるが、極めて高い経費を必要とする。

戦略原潜(SSBN)

原潜は隠密性に優れ、衛星で発見しにくいため生残性が高く、報復戦力として優れている。但し固定サイロより自己位置計測誤差が大きく命中精度が悪いため、核攻撃に対する防護を施された軍事目標(核爆発の熱線、衝撃波に耐えうる硬化サイロに格納されたICBMなど)を攻撃する第1撃には向かない(ただしこれは報復のみを目的とした場合は無視してもよい要素となる。例を挙げるならイギリスは核戦力を戦略原潜搭載の弾道弾のみに依存している)。陸上配備の場合のような受入れ自治体を探す立地難がない。最もコスト高な方法ではあるが日本の核武装を考えた場合、最も現実的な核配備手段といわれている。

米海軍は1948年に潜水艦用原子力機関の設計を始め、世界初の原子力潜水艦ノーチラス」を1952年に起工、1954年に完成させた。以後も米海軍は原子力潜水艦の戦力拡充を図ったが、ソビエトとのミサイルギャップを受けて涙滴型を採用したスキップジャック級原子力潜水艦にミサイル区画40メートルを挿入すると言う強引な手法でジョージ・ワシントン級戦略ミサイル原潜を1960年に完成している。

現在の日本は当時の米国より工業水準は優れているが、搭載すべきミサイルも敵対国の潜水艦捜索装備も1960年代より大幅に進歩しているため、それに見合う船体や静粛な原子力機関の開発を米海軍同様の短期間で達成するのは困難と見られる。米国からの技術導入が得られなければ夏級原子力潜水艦のような習作を経て米露中英仏の水準にステップアップするような形にならざるを得ないであろう。また、潜水艦建造可能な造船所は2箇所あるが、いずれも排水量1万トンにならざるを得ない現代のSSBNを建造するには規模が不足するので、原潜を建造する場合、二分割で建造して大型ドックで接合するか、あるいは新規に造船設備を建設する事になるが工員身元調査、技術教育、機密保持、財政、立地・用地取得など多くの課題がある。

また、原子力潜水艦は燃料棒の交換は船体を切り開く長期間の大工事になりがちである。米海軍の新型原子力艦艇は超高濃縮ウランを使用することで燃料棒交換の回数、あるいは燃料棒の交換そのものを省いているが、日本がいきなりこの水準に到達するのは困難である。高被爆環境下での保守点検と燃料交換に多額の費用が掛かり、寿命が切れた原子力潜水艦は強い放射線を帯びているので解体処理コストも嵩む。 相当な予算が必要なこともあり、戦略原潜とそれに搭載するSLBMの開発には10年以上の期間を要すると想定される。 また原潜は高価であり調達数量の制限が見込まれるため、SLBMを搭載するなら可能な限り多くのミサイル発射筒を装備させMIRVを採用した多目標個別攻撃能力を持たせることで潜水艦1隻あたりの報復能力の向上を図るのが望ましい。しかしその為には弾頭の小型・高威力化に加え、弾道ミサイル自体の高性能化さらにはSSBNの大型化を要するので、弾道弾にせよ弾頭にせよSSBNにせよ漸進的改良を行わざるを得ない。

日本には原子力船むつの経験が持ち、搭載された原子炉は基本的には軍用船舶の原子炉と同じ加圧水型原子炉で、荒天での激しい船体の揺れや万一の際の転覆事故も想定した設計になっていた。しかし原潜で必須である静粛性はまったく考慮されておらず、なにより出力が圧倒的に足らない(むつの1万馬力に対してロサンゼルス級攻撃原潜で3万馬力、オハイオ級戦略原潜で6万馬力)ことからも大幅な技術革新が前提となる。

SSBNにはミサイル整備施設が必要なため専用の基地が必要である。また通信のために浮上することの無いように、SSBNへの指令は海中にも届く電波である超長波(VLF)が用いられるため、専用の無線基地や通信中継基地が必要になる。

戦略原潜は単独で活動せず、攻撃型原潜が護衛に付くのが一般的である。よって戦略原潜を配備するなら戦略原潜と同数以上の攻撃型原潜が望ましい。日本は世界六位の排他的経済水域を持っているが、ソビエトがかつてカムチャッカ沖に保持した「聖域(敵勢力の活動を排除した海域)」を持つことは困難と見られる。必要なのは航行の自由が保障されるEEZではなく、侵入そのものを違法とできる領海か、または侵入を困難たらしめる内海である。潜水艦以外の護衛戦力の展開についても、広大な海域のエアカバーは海上自衛隊、航空自衛隊の航空部隊の能力を超えるものであるし、水上艦艇の貼り付けではその行為自体が潜水艦の存在の傍証となってしまう。

兵頭二十八の著書などにおいて、運搬手段が潜水艦なら動力が原子力である必要性はないとの主張もあるが、原子力推進艦は長期間哨戒・船体規模に比して小型の機関区という利点があり、同じ大きさ(排水量)ならば通常動力潜水艦より兵器搭載量が多くなり、運搬手段としては原潜が圧倒的に有利となる。また速力と航続力の圧倒的なアドバンテージは、哨戒海域までの進出・帰投にかかる時間を短縮し、オンステーション可能な期間を延長する。速力と航続力がもたらす生残性や、先の搭載量の優位を加えるならば、原子力推進にすることで一定数量の弾道弾を即応体制に置く場合に必要な弾道ミサイル搭載潜水艦の総数を、大幅に削減することができる。逆に言えば、通常動力潜水艦で同じことを試みた場合、膨大な数の潜水艦とその支援設備、脆弱な通常動力潜水艦を守りきる為のより強力な護衛部隊が必要になる。弾道弾の搭載の可否だけを論じても、抑止力というシステムの構築を論じたことにはならない。だたし、核抑止の必要性が明確かつ逼迫した場合においては、非常に効率の悪い装備であっても過渡期としては一定の効果を得る可能性はある。

巡航ミサイル

巡航ミサイルは原潜駆逐艦航空機、車両など、発射プラットフォームを多様化出来るという点が最大の利点である。

トマホーク巡航ミサイルを米国から輸入した場合は、日本が自由に運用できない可能性がある。現にトマホークを米国から輸入したイギリスにおいては運用についての厳しい制限が設けられている(事実上、アメリカの同意が無いと発射できない)。

巡航ミサイルを独自に開発した場合はこの限りではないが、戦略用途の運用であれば、機体規模の小ささ(トマホークで1.5トン、弾頭部は450キロ、事実上の艦艇用長魚雷サイズである)にあわせて、小型核弾頭の開発が必要である(兵頭二十八は大型巡航ミサイルの開発を提唱しているが、その場合はかつてアメリカが建造し、運用を諦めたレギュラス搭載潜水艦のような単能艦でしか運用できないことになり、多彩な発射プラットフォームを選択できるトマホーククラスの巡航ミサイルの持つ運用の柔軟性を失う事になる)。

航法装置 (INS) は1時間飛行すると約1.8キロのずれを生じる。戦術用途であれば(もしくは戦争の規模が限定されているのであれば)GPS地形照合システムで補正することもできるが、現在の所GPSはアメリカの独占状態にある。欧州連合やロシア、中国は安全保障上の要請もあって独自企画を開発中である。戦略核兵器を使用する状況(すなわち全面戦争)において、他国の航法支援を使用できない可能性は極めて高く、GPS無しでの命中精度を確立するか、日本独自のGPS衛星を保有する必要がある。

しかしGPSによる航法情報も電波であるためにGPSジャマーと呼ばれる装置で妨害される可能性がある。地形が存在しない海上を長距離飛行する場合に地形照合は使用できないため、海を渡ってから地形照合で位置を補正する必要がある。そのためには弾頭の小型化やエンジンの燃費向上でミサイルの射程距離を延ばさなければならない。

地表情報は民間企業から購入できる高精度の衛星画像を使用できるという説もあるが、日本が独自保有する偵察衛星(情報収集衛星)の精度を上げてより精密な地表情報を入手する方が確実である。

現在、アメリカ軍は巡航ミサイルを戦略兵器として運用していないため戦略抑止としての参考にならないが、ピースキーパーなどの弾道弾は航法情報が無い状態を基本としており、アストロトラッカーと呼ばれる恒星追跡装置による天測を行ってCEP90メートルを達成している。

その他

  • 「攻撃に使える兵器」と言う意味でなら、核でなく青森県で貯蔵されている使用済み核燃料やプルトニウムを兵器に積み込み、報復攻撃対象国上空で爆発させるだけで核と同等の効果を持つ上に長期的に敵国の土地資源や人的資源に汚染を引き起こせる為、費用対効果が高く多大な費用を掛けて核兵器を開発する必要は無いという指摘もある。しかし汚い爆弾は使用しても死者は出ないと言われており、仮に大型の輸送機に満載して自爆させるとしても撃墜される可能性が高い。軍事的確実性が不明確では費用対効果を測る事自体が不可能であり、国家単位のテロにはなり得ても核抑止には寄与しない。
  • 弾道弾も大量破壊兵器WMD)の運搬手段として国際的な監視と規制がおこなわれている。拡散安全保障イニシアティブ(PSI)
    • 日本はMTCR(ミサイル技術管理レジーム)に参加している。これは弾道ミサイルとその関連技術の輸出管理を目的とするが独自開発は妨げない。(米ロをはじめ、弾道弾の開発は行っている)
    • 日本政府は弾道弾や攻撃型空母など「性能上専ら相手国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器」の保有はしないとしている。核武装とは、非核三原則を含めこれまでの安全保障政策の根本的な変更を意味する。

核武装論への疑念

核武装は本来安全保障政策であるのだから、まず差し迫った軍事的必要性から論議されるべきであるが、この先10年程度の国際情勢であれば世界の警察官を自認するアメリカがその立場を放棄することはありえず、またそれはアメリカならびにアメリカ以外の軍事費、兵器開発等を比較すれば「世界唯一の超大国」に変化は無いと考えられ、核の傘を提供する日米安保条約も継続されると見込まれる。しかし多くの核武装論は根底に対米不信を置きながらも都合よくアメリカの支援を得ようとするため、様々な矛盾を孕む事となる。核武装にナショナリズムの高揚を見る核武装論は多いが(アメリカからの脱却、国際的地位の向上)所詮は国防のためのシステムでしかない。故にこの項は核武装への「反対」ではなく、核武装という政策提起に対する「疑念」となる。


  • 日本が核武装することによって、主に中国、北朝鮮、またはロシアに対する核抑止力が得られるとするのが核武装論の中核であるが、日本は都市部に人口が密集する地理的条件から核攻撃に対し非常に脆弱である。日本が核攻撃を受けた場合に大きな損害が予測される以上(そしてその打撃に耐えることが困難である以上)、核攻撃と言う決断を下しがたいだけの打撃を仮想敵に与える能力の担保が望まれる。故に防衛白書では独自の核武装に対して否定的な見方(充分な担保を持つ核の傘への依存の表明)をしている。これを相互確証破壊と混同する意見もあるが、日本の国情がより高い担保を求めているだけであり、冷戦期の米ソ中などの国土の広大な国家が、実際に核を撃ち合った上での国家の存続まで意図したような「核への耐性」を無視した暴論である。独自に核武装を行い、その上で核の傘以上の有効性を得ようというのであれば、その戦力はアメリカを基準とすることになる。

NPT体制の崩壊の可能性と米国の反対

  • インドの核武装はパキスタンの核武装を引き起こしたことから、日本がNPTを脱退することは韓国/台湾/ベトナムのNPT脱退の引き金、ひいてはNPT体制が崩壊する発火点になり得る。日本が世界核軍縮条約を崩壊させる引き金を引いた場合、世界の中で日本の外交的立場は現在の北朝鮮のように「短絡的不法国家」に悪化し、常任理事国入りが不可能になるばかりでなく、同盟国を失いかねない。
  • また、NPTが崩壊した場合、テロリストの手に核が渡る可能性は増える。これにより日本に敵対する国がこれらテロリストの犯行を装って日本を核攻撃する可能性がある。核抑止は一般に非正規戦的な攻撃手法に対し抑止力はないので、結果として日本の核武装が引き起こすNPT体制の崩壊が、日本に対する非正規戦的手段による核攻撃の可能性を増加させる。
  • 日本が核保有すれば六者会合で北朝鮮に核開発放棄を要求する論拠を失う。

米国の金融制裁・経済制裁

  • 北朝鮮は米国市場に依存していないが、日本の自動車・電機等の最大顧客は米国であり、日本にとって米国の貿易制裁は大打撃になる。北朝鮮と比べ米国への依存度が高く、北朝鮮を単純にまねするのは不可能。
  • ドル決済には米銀とのコルレス契約が必要で、BDAを見ても金融制裁でドル決済不能に追い込まれると大手邦銀は軒並み倒産すると思われる。この点でも北朝鮮と比べ米国への依存度が大きく米国に対抗するのが困難
  • 中国の外貨準備が日本に比肩するレベルになっているので、米中に結託されたら米国債を売っても中国に買われてしまい日本は屈服に追い込まれてしまう。

中露の核施設空爆/海上封鎖

  • イスラエルはイラク・シリアの核施設空爆で核武装を強制中絶させているし、米国も北朝鮮核施設空爆は3度も検討している。日本が核武装を宣言すれば、中露は日本の核施設を空爆する可能性は高い。戦闘機保有数は中2400/露2200/日260であり、単純比較はできないが防衛は容易ではない。
  • 日米が北朝鮮の臨検・海洋封鎖を検討したように、中露が日本を海洋封鎖し、米国が傍観を宣言した場合、石油/食料/原料輸入と自動車/家電等輸出が止まってしまう。

核燃料返還/原発停止とエネルギー危機

  • 日本は原子力の平和利用というNPTに加盟した上に米国と日米原子力協力協定を結んでおり(他の国との原子力協定も内容としてはほぼ同じものである)、核武装はその二国間協定のならびに国際条約であるNPTの破棄となる。これを破棄すれば協定の破棄条項によって核燃料棒の殆どは米国などに引渡されるため、原子力発電所は操業を停止せざるを得ない。(東京電力は原子力発電への依存度40%以上 新潟県中越沖地震にて柏崎刈羽原子力発電所が停止しただけで“電力需要危機”と騒動になった)。
  • 日本の年間ウラン燃料棒消費は7,500トンだが、ウランを輸入して燃料棒を国内で作ろうにも燃料棒生産設備能力が、年産1500t程度しかなく、その設備さえ米国は廃止を要望していて、核武装宣言前は増設が困難で核武装宣言後建設に数年かかる。その間原子力発電所が使えなくなる。

原料ウラン自給が当面は困難

  • 仮に燃料棒製造設備を建設しても、人形峠のウラン総埋蔵量は2,500トン前後で消費量1年分にも満たない。カナダは核開発国にウランを輸出しない政策である。高速増殖炉を実用化せよとか、海水からのウラン採取を実用化せよとかの意見があるがまだ実用化にいたっていない。
  • ナミビアなどウラン資源国との共同開発のほうがハードルは低い

核実験場の確保

  • 核武装するためには核実験が必須である。シミュレーションは核実験の実験データーがなければコンピューターがあっても出来ない。過去の事例を見ると、「単なるブラフではない」実効的な核抑止力を行使している全ての国は、核実験により実用的な核兵器の保有を証明してきている。核実験を行う場合、実験場は本土から離れた無人島ということになる。離島は国定公園に指定されている場合もあり、固有種や絶滅危惧種などの希少生物や自然への影響が懸念される。
  • 離島は必ずしも無人ではなく、EEZの根拠の場合もある。沖ノ鳥島に対して中国が「岩礁であって国際法上の島ではない(ゆえにEEZを認めない)」と主張しており、大陸棚資源や漁業権などの子々孫々までの国益も絡む。

「核の傘は破れ傘」なのか

  • 米国政府は公式には同盟国への核の傘を一度も否定したことは無く「同盟国への核の傘の提供とトライアド(大陸間弾道弾、戦略爆撃機、潜水艦発射弾道弾による「核の三本柱」のこと)を維持する」ことを再三明言している。これはアメリカの覇権を構成する根幹であり、実際に同盟国が核攻撃を受けた場合、アメリカが自国への核攻撃への危険を侵してでも核による報復を行わなければならない十分な理由となる。ただし、だからといってアメリカが核攻撃を甘受するつもりはなく、故に条約を破棄してでも「核抑止の効かない相手」への防御手段であるMDの開発と配備を行っている。「核の傘」というと核による報復のみに目が行きがちだが、通常戦力やMD、仮想敵への外交圧力も含めての「同盟」であることを失念している。さらには核の傘の信頼性とは、核を保有しないアメリカの同盟国に核攻撃を仕掛ける国家が評価するものである。これらの国家が「アメリカによる報復は無い」と確信できなければ、反撃がないままに非核国家へ攻撃ができるどころか、世界最大の核保有国による報復に晒される事になる。極論を言えばアメリカが「核の傘を提供しない」とステートメントしたとしても、それが信用できないことになる。実際に撃つまで結果がわからないが故に、アメリカの同盟国への核攻撃はアメリカとの直接対決の覚悟が必要となる。このハードルの高さが核の傘の意義となる。

仮想敵はどこなのか

  • 基本的に核兵器は戦略兵器なのであるから、通常兵器以上に戦争を抑止すべき対象と言うものを明確化する必要があるが、漠然と仮想敵は中国であるとか対米依存の脱却とかを唱えても説得力を持たせることはできない。中国が相手であれば(ソビエトにそうしたように)アメリカとの同盟を継続することで対抗する選択肢もあるし、対米依存の脱却を唱えるのであれば当然、アメリカも「仮想敵のひとつ」としなければならない。さらには仮想敵を明確にした上で、その戦力を評価し、対抗手段(核兵器の場合であれば戦争を抑止できるとする損害の強要)を見積もり、予算を策定しなければならない。

北朝鮮に核抑止が通じるのか?

  • 日本が北朝鮮の核攻撃を被弾する可能性で最も高いのは、半島戦争の巻き添え被弾である。すなわち北朝鮮が核恫喝で韓国を併合しようとして、日本に核をつきつけ、米国に半島から手を引くように迫る場合である。しかし、北朝鮮政府要人は「統一のためなら核戦争も辞さない」と言明しており、日本が核武装しても「核の撃ち合い」になるだけではないか?という疑問もある。
  • 北朝鮮は独裁国で選挙による人命尊重圧力が掛かりにくく、金正日自身は核シェルターに避難するであろうし、核戦争で数百万人死のうとも半島統一を達成すれば「統一の英雄」になって権力基盤は強固になるため、「半島統一戦争」に絡む場合は核抑止が有効かどうかは疑問の余地がある
  • また北朝鮮の体制崩壊に伴う混乱の場合も核抑止が効くかどうか疑問といわれている
  • そのため北朝鮮に対しては「核抑止は効かない」ことを理由に真剣に国民保護を考えるなら、核武装よりも核物質生産施設への先制攻撃をすべきであるという積極意見もある。
    • 詳細は(核抑止・核抑止不成立ケース参照)

核武装を巡る検討と発言の歴史

日本政府の公式見解

  • 「日本が核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずとの非核三原則を堅持することについては、これまで歴代の内閣により累次にわたり明確に表明されている。政府としては、今後ともこれを堅持していく立場に変わりはない。日本は、核拡散防止条約(NPT)上の非核兵器国として核兵器の製造や取得等をおこなわない義務を負っている。さらに、法律上も原子力基本法により、日本の原子力活動は平和目的に厳しく限定されている。このような点から見ても、日本が核兵器を保有することはない」非核三原則について
  • 「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないというこの核に対する三原則のもと、その平和憲法のもと、この核に対する三原則のもと、そのもとにおいて日本の安全はどうしたらいいのか、これが私に課せられた責任でございます」(1967年12月11日 佐藤栄作内閣総理大臣 衆議院予算委員会)。
  • 「たとえば万一核不拡散条約、これを日本が脱退をするということになった場合には、条約上の遵守義務というものはありませんから、先ほど申し上げましたような間接的意味における憲法に由来する九十八条の問題というものは消えちゃうんです。第九条の問題だけが残るということなんです。憲法全体の思想といたしましては、私は、第九条だと思うのです。第九条によって、わが国は専守防衛的意味における核兵器はこれを持てる。ただ、別の法理によりまして、また別の政策によりまして、そういうふうになっておらぬというだけのことである」(1978年3月11日 福田赳夫内閣総理大臣 参議院予算委員会)。

以後の日本政府は憲法98条2項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」に基づきNPT条約を履行するため、非核三原則を「一貫して堅持する」と代々の政府は繰り返し明言している。

  • 「大体いま世界戦略的に、また世界歴史的に見ますと、核武装というのは第二次世界大戦の戦勝国のになってきている。ああいうものをつくってしまいましたからなくすわけにいかぬ、相手が持っている以上は少し優越したものを持っていないと不安である、そういう世界に入り込んでいって、やむを得ず苦悶してSALTをやるというような形になってきておる。それで、私は戦勝国の業であろうと思っております。戦敗国である日本がそんな業にのこのこ入っていく必要はない、そんな考えを私は持っているわけです」中曽根康弘防衛庁長官昭和46年衆議院内閣委員会)。
  • 「私は非核武装論者でありまして、核武装をしなければいかぬなんということは一回もありません」中曽根康弘科学技術庁長官昭和47年衆議院科学技術振興対策特別委員会)。
  • 「国会におけるその非核三原則を堅持しろというような御決議があって、それでその核は持たないという選択をしなさいという御決議があるわけでございますから、それで政府はその政策の選択として非核三原則を堅持しておる、そのことと法律の解釈というのは、それは政策とは別なんですよ、それは」(1978年3月11日 真田秀夫内閣法制局長官 参議院予算委員会)。
  • 「我が国の核保有という選択肢は全く持たない。非核三原則は一切変更がないということをはっきり申し上げたい」(2006年10月10日 安倍晋三内閣総理大臣 衆議院予算委員会)。
  • 「隣の国が持つとなった時に、一つの考え方としていろいろな議論をしておくことは大事だ」「非核三原則を政府として堅持する立場に変わりはないが、日本は言論統制された国ではない。言論の自由を封殺するということに与しない(=核武装の論議容認)という以上に明確な答えはない」(麻生太郎外務大臣 2006年10月18・19日 衆議院テロ対策特別委員会にて)。
  • 2006年12月25日 産経新聞によると、「日本が小型核弾頭を試作するまでには少なくとも3~5年かかる」とする政府の内部文書が12月24日明らかになった。

日本の政治家の非公式発言

  • 岸信介首相がアメリカ政府宛てに「防衛上、核武装の必要が迫られれば日本は核武装する」と非公式に伝達し、アメリカは大きな衝撃を受け、日米安全保障の強化に乗り出したといわれる。
  • 「閣内に核武装論者がいる」
    • 1961年11月、池田勇人首相が来日したラスク国務長官に
  • 「他人が核を持てば、自分も持つのは常識だ」
  • 中曽根康弘が自著において防衛庁長官だった1970年に「現実の必要性を離れた試論」として核武装について「日本の能力を試算」し「当時の金で2,000億円、5年以内で核武装できるが、実験場を確保できないために現実には不可能」との結論に達したことを明かした。「自省録-歴史法廷の被告として-」
    • 1970年当時の防衛費は4,800億円で一般会計の7パーセントを占めた。現在の貨幣価値に直すなら、消費者物価指数で言えば約3倍の6,000億円、防衛費の伸びで言えば10倍の2兆円といった金額になる。弾頭1発1億円とも述べており、これは当時の主力戦闘機F-104の価格、5億円の1/5という高額なものであった。
    • 「(核武装について)これまでも一貫して否定してきていますし、今でも変わりません」(2004年、インタビューに対して)
    • 中曽根康弘は「日米安保の続く限りにおいて」という条件つきでの一貫した非核武装論者である。
  • 1991年宮沢喜一は、総理就任前に『中央公論』9月号で評論家の田原総一郎との対談で「…日本にとって核武装は技術的に可能であり、財政的にもそれほど難問ではない」と主張した。
  • 2001年、内閣府高官が、雑誌インタビューに対して「3年で核武装可能」と回答。
  • 「あまりいい気になると日本人はヒステリーを起こす。核弾頭をつくるのは簡単なんだ。原発でプルトニウムは何千発分もある。本気になれば軍備では負けない。そうなったらどうするんだ」(2002年4月6日 小沢一郎 福岡での講演において、中国共産党情報部の人間に語った内容として自身が紹介)。
  • 「自衛のための必要最小限度を超えない限り、核兵器であると、通常兵器であるとを問わず、これを保有することは、憲法の禁ずるところではない」「核兵器は用いることができる、できないという解釈は憲法の解釈としては適当ではない」(2002年5月13日 安倍晋三官房副長官 早稲田大学の講演において)2003年、週刊金曜日および朝鮮新報の紙上で、安倍晋三官房副長官早稲田大学で行われた講演の後の懇談会で「北朝鮮なんて核落として、ぺんぺん草一つ生えないようにしてやるぜェ」なる発言をしたと伝聞調で紹介された[3][4]。「政府や党の機関としては議論しない。それ以外の議論は自由だから言論封鎖することはできない」(首相就任後 後述中川昭一らが唱えた核保有論について)
  • 「非核三原則は憲法に近いもの。しかし、今は憲法改正の話も出てくるようになったから、何か起こったら国際情勢や国民が『(核兵器を)持つべきだ』ということになるかもしれない」「法理論的には持てる。持っていけないとの理屈にはならない」(2002年5月31日 福田康夫内閣官房長官)。記者団とのオフレコでの発言であったため発言者は「政府首脳」とぼかされていたが6月4日に自身であることを認める。
    • 「核の問題にしても、これからどういう変化が社会にもたらされて、それが政治ケースとなって、国民のその問題に対するとらえ方もおのずと変わってき得るということを福田君はいったことで、ああいう障害に阻まれたと認識しております。そういう点で、過去にあった事例というものを踏まえながら、現在の時点で正確に主張してもらいたいということで、私は激励しました」(関連して石原慎太郎2002年6月18日、都議会で答弁 石原はこの時、『諸君!』1970年10月号に載せた自分の論文「非核の神話は消えた」の全文コピーを福田に送っている)
  • 「欧米の核保有と違って、どうみても頭の回路が理解できない国が持ったと発表したことに対し、どうしても撲滅しないといけないのだから、その選択肢として核という……」(中川昭一自由民主党政務調査会会長 2006年10月15日、テレビ朝日「サンデープロジェクト」にて)「攻められそうになった時にどう防ぐか。万が一のことが起きた時にどうなるかを考えるのは、政治家として当然のことだ」(10月20日、自民党静岡県連合会の集会で)この発言は日本のみならず、海外にまで議論が及ぶこととなり与野党からこの核武装とも取れかねない発言の撤回を求める意見が多数出ることとなり、この発言の後に安倍晋三総理大臣や塩崎恭久官房長官が非核三原則は厳守すると念を押す発言をし、ジョージ・W・ブッシュアメリカ大統領もこの発言に対し「中国が懸念する」と述べた。

その他の見解

  • 2003年に発表されたアメリカの未来予測を記した国防白書において、日本2050年までに核武装すると異例の記述。
  • 「その可能性は大きい。日本はその気になれば90日以内に核爆弾を製造し、ミサイルに搭載できる技術的能力を持っている。われわれはすでに大陸間弾道弾(ICBM)水準のミサイルロケット)を保有しており、50トン以上のプルトニウムを備蓄している。核爆弾2,000基を製造できる分量だ。日本はすでに30~40年前、原爆製造に必要なあらゆる実験を終えた。日本が核武装をしないのは国民情緒のためだ。9割の日本人が核兵器の開発に反対している。広島と長崎の悪夢のためだ。しかしわれわれが北朝鮮核兵器の実質的脅威を受ける状況になれば、世論は急変するはずだ」(2005年2月25日 大前研一 経済評論家 韓国マスコミの「北朝鮮の核保有が最終確認された場合、日本も核武装に動くのか」という質問に対して)
  • 2005年民社党の後身である民社協会系の新憲法組織「創憲会議」の「「創憲」を考えるための提言書」(玉置一弥サイト「「創憲」を考えるための提言書を掲載しました」参照)が明らかにされた。公式に核武装を視野に入れ、核兵器に加え、生物化学兵器の所持をも選択肢に入れるよう提言したものである。国会議員を擁する政党・政治団体で、核武装の検討を公式見解にしている党派はここだけである。ただし、同年10月28日に発表された創憲会議の新憲法草案では、核武装検討の明言はされていない。(「創憲会議 新憲法草案」)。
  • 2005年12月28日に公開されたイギリス政府の機密公文書によると、1975年、日本の科学技術庁(当時)の原子力担当課長が在京の英国大使館に「日本は3か月以内に核兵器の製造が可能」と語った。この情報を基に一時イギリス政府は大騒ぎになった。
  • 数学者のピーター・フランクルは著書の中で、「市民全体で国防のリスクを引受けるべきで、一部の男性にだけ兵役を押し付けるのではなく、核武装して市民社会全体でリスクを引き受ける方が民主的である」と述べている。

脚注

  1. ^ ただし、西ドイツが米軍供与の戦術核200発を戦時に運用する計画を立てていてもソビエトが欧州正面での戦争の可能性を否定することは無かった以上、日本の核武装の有無が軍事的影響を与えたという主張の妥当性は低く、ソ連が欧州戦争の可能性を否定しなかった事と実際の抑止力との評価の関連性が不明である。
  2. ^ 国際戦略研究所によれば、中国の2006年軍事費は購買力平価で約14兆円と言われるが、購買力平価が「国内向け」の貨幣の価値であることを考え合わせるならば「国際価格」で輸入されるロシア製兵器やノウハウ、資源、部品など「人民解放軍の最新装備」はひどく目減りすることになり、輸入兵器や装備を測るのならばドルベースで見るべきである。
  3. ^ http://d.hatena.ne.jp/oizumi-m/20060804 週刊金曜日2003年10月31日号『人寄せパンダ・安倍晋三のお寒い中身』
  4. ^ http://www.ultracyzo.com/cyzo/contents/0602/juuyou/02.html サイゾー2006年2月号『重要参考人2006 ポスト小泉たちの「スネの傷」? 麻垣康三スキャンダル図鑑』

参考文献

関連項目

外部リンク