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殉職

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殉職(じゅんしょく)とは、一般に特定の業務に従事する職員が、職務・業務中の事故が原因で死亡することをいう。

概要

一般的な事例として警察官消防官自衛官海上保安官消防団員運転手船員などがあるが、スポーツ選手が競技中の事故で死亡する場合、八百屋さんが野菜を売っている最中に死亡する場合、サラリーマンが通勤途中に交通事故等で死亡する場合は含まれない。ただし、スポーツでも公営競技の選手については、レース中の事故で亡くなった場合には主催団体や競技統括団体が殉職として発表する事がある。その他一般の企業・工場でも作業中の事故が原因で死亡した場合は殉職と言い、この場合産業殉職者として、顕彰会がある。土木工事では、黒部ダムで171名、東海道新幹線で210名、青函トンネルで34名などをはじめとした大規模な工事において多数の殉職者が出ている。このような場合、完成後に施設近辺に慰霊碑を設ける事例が多い。鉱山開発においても多数の殉職者をだす事故が度々発生していた。特に石炭採掘では、坑内火災やガス中毒によって時に一度の事故で100名を超える殉職者を出すこともあり、石炭採掘の斜陽化に拍車をかけた。炭鉱事故の殉職者の中には、救出困難により、坑内の中に置き去りとなった者もいる。また、それぞれの職種ごとに遺児への教育資金援助や慰霊式典を行なうため、殉職者の顕彰会が設けられている。

二階級特進

警察官、消防官、自衛官、海上保安官といった職務階級が明確な職業において、殉職に伴って在職階級から二段階昇進させる制度又は慣行で、名誉・叙勲・その他の遺族に対する補償も特進した階級に基づきなされる。この結果「二階級特進」が、しばしば「殉職」の別称とされる。

警察官の場合、巡査(-巡査長)-巡査部長-警部補-警部-警視-警視正-警視長-警視監-警視総監 という階級構成であるが、巡査・巡査長が殉職すると、各々警部補に特進する。これは巡査長が正式な階級ではなく階級的職位にすぎず、階級上は巡査と同格だからである。なお巡査部長の場合は2つ上の警部に特進する。但し、近年職務執行中の交通事故による殉職は、1階級のみの昇進にとどまる。

これは、旧日本軍において功績顕著な戦死者を二階級特進させた例に倣ったものであるが、戦後組織においては殉職自体が特異な事態であるため、「殉職」=「功績顕著」としたものであろう。また、死亡退職金や遺族年金では、特進後の階級を基準とするため、算定にあたり有利になるという側面もある。旧陸軍に於いては上から大将-中将-少将-大佐-中佐-少佐-大尉-中尉-少尉-准尉-曹長-軍曹-伍長-兵長-上等兵-一等兵-二等兵であった。

そもそも、日本陸海軍には元々戦死者を特進させる習慣は無かったが、日露戦争において軍神とされた広瀬武夫海軍少佐橘周太陸軍少佐が、死後それぞれ中佐に一階級特進したのが始まりとなった。その後、上海事変における爆弾三勇士を顕彰するため3人を二階級特進させ、それ以降功績抜群の戦死者は二階級特進というのが慣例になった。

なお、戦死にあたっては必ずしも二階級特進というわけではなく、一階級の場合もある。また、大佐が中将になる例は少なく、少将が大将に進級する事はなかった。大将が戦死した時に元帥の称号を与えた(旧日本軍には他国と違い元帥の階級が明治時代に廃止されたため存在せず、以降は「元帥」は大将に与えられる称号としてのみ存在した)。旧海軍では下士官の特攻での戦死者には最大『四階級特進』まで規定されていた。

しかし、旧日本軍ではテストパイロットの殉職など訓練中、公務中の死亡である殉職と戦闘での死亡である戦死とは明確に一線を画しており、外地で公務中に死亡するなど戦死に準ずると判断された場合を除いて殉職者は最大でも一階級特進どまりで二階級特進した例はない

2003年11月29日イラクにおける日本大使館の外交官奥克彦参事官井ノ上正盛三等書記官)が、テロリストにより射殺された際、政府は、この二名の日本人犠牲者に対して二階級特進(参事官→大使 三等書記官→一等書記官)を決定した。これは、警察官、自衛官、海上保安官以外では前例のないことであったが、これも任地のリスクの高さなどを勘案してのものであったといえる。

二階級特進した例

自衛官

警察官

ほか多数名

その他 消防官・消防団員など多数。警察官の殉職のニュースに比べると扱いが小さいが、殉職者数では消防官は警察官よりもさらに多い。消防団員は非常勤の特別職地方公務員であり、災害時以外は各自の職業がある為、氏名は公表していない模様である。

外交官

賞恤金

公務員が殉職した場合(および負傷した場合)で特に功績が認められたときには、賞恤金(しょうじゅつきん)が送られることがある。

フィクションに於ける傾向

刑事ドラマなどでは刑事役の俳優が番組を降板する際に、その演ずる刑事を殉職させる脚本とする事がある。犯人から抵抗され受傷する等、実際の警察に於いても殉職として扱う状況で死亡させる脚本が殆どだが、勤務時間外に(当人が事件性を認知し警察官としての行動を取らないまま)通り魔に刺殺されたり、業務とは関係なく抱えていた持病による病死、といった明らかに殉職で無い死亡による脚本までも殉職として扱われる傾向がある。

※捜査本部に従事して疲労が蓄積した結果発症して病死するなど、諸条件を勘案して、病死が職務に起因する場合には殉職と認定される。勤務前、通勤途上、通り魔に刺殺された場合でも殉職とされた実例がある。

関連項目