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客室乗務員

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タイ王国PBエアの客室乗務員

客室乗務員(きゃくしつじょうむいん、フライトアテンダント英語flight attendant)は、旅客機の運航中に機内客室において乗客への接客サービスや緊急時の誘導などを行う乗務員である。客船新幹線などにも客室乗務員はいるが、この項では旅客機の客室乗務員を紹介する。

歴史

導入期

ボーイング247

1930年アメリカ合衆国ボーイング・エア・トランスポート社(現在のユナイテッド航空)が、運航中の乗客へのサービスおよび身体的なトラブルに対応することを目的に、元看護婦客室乗務員として乗務させたのが始まりである。また、当時まだ「危険な乗り物」というイメージがついていた飛行機を、女性の乗務員を搭乗させることで「女性も乗れるような安全な乗り物である」と乗客にアピールするという意味もあったといわれている。なお、それまでは男性の運航乗務員が機内サービスや緊急時の対応を行っていた。

なお日本においても、1931年には東京航空輸送が東京下田清水間の定期旅客路線に客室乗務員を採用し、その後1939年に開業した大日本航空も採用した[1]

1930年代中盤以降のダグラスDC-2DC-3ボーイング247などの全金属製旅客機の導入がもたらした旅客機の大型化に伴い、日本やアメリカだけでなくヨーロッパの航空会社も男性や女性の客室乗務員を次々と乗務させることになる。

1940年代-1950年代

1950年代の日本航空の客室乗務員

1939年から1945年までの長きに渡り行われた第二次世界大戦が終結したことに伴い、戦勝国では戦後間もなく航空会社が営業を再開したほか、1940年代後半には世界各国で航空会社が次々と開業し、アメリカやヨーロッパの主要国において旅客機での旅が一般層にも浸透することになる。その後1950年代にかけては、ダグラスDC-4BやDC-6ロッキード・コンステレーションなどの大西洋無着陸横断が可能な大型旅客機の就航により客室乗務員の採用数が増加し、それとともに「花形職種」として持て囃されるようになった。

当時の日本では(大戦後の日本においてはナショナル・フラッグ・キャリア日本航空1951年[2]全日空の前身となる日本ヘリコプター1952年に開業した)旅客機は運賃が高額だった上、1945年8月の第二次世界大戦(大東亜戦争)の敗戦以降、連合国の占領下で長期に渡り海外渡航が自由化されていなかったために、乗客が渡航許可を受けた政府関係者や企業の業務出張者、または外国人に限られていた。

なお、この頃から日本においては女性の客室乗務員が大勢を占め、男性の客室乗務員は少数派であった。また、当時の客室乗務員は「エアホステス」または「エアガール」と呼ばれていたが、後に「エアホステス」という名称は、水商売ホステスに紛らわしいと改名された。

1960年代

1960年代のルフトハンザ航空の客室乗務員(後ろはボーイング707型機)

その後1960年代に入り、ボーイング707やダグラスDC-8コンベア880などの大型ジェット旅客機の就航が各国で相次いだことで、座席供給数が激増し運賃が下がると共に、それまでは客船がシェアの大部分を握っていた大西洋横断や大西洋横断ルートにおいて完全に旅客機がその主導権を握ることになり、アメリカやヨーロッパの多くの先進国において旅客機での旅は完全に一般層に定着した[3]

また日本でも、それまでは海外渡航は業務や留学目的のものに限られていたものの、1964年4月1日高度経済成長に伴う外貨収入の増加を受けて海外渡航が完全に自由化され、「ジャルパック」などの海外への団体観光ツアーが次々と発売されるようになった[4]。しかし海外旅行はまだまだ一般層にとって高嶺の花であったこともあり、日本において客室乗務員は「ステータス」の高い花形職業とされていた。

この頃日本において女性客室乗務員が高いステータスを付加されていたのは、外国語の素養がある人は海外と縁のある一部の階層に限られていたことや、航空運賃が高かったために外国に観光などで渡航することが少なかったこと、日本航空などの一部の日本の航空会社においては入社時に家柄なども考慮されたこと、結婚の際に良い条件の相手にめぐり合う機会が多いと考えられてきたからである。また、給与など待遇が一般企業のOLに比べても格段に良かったこともその一つであった。

1970年代-1980年代

ファイル:Pan Am 747 LAX.jpg
パンアメリカン航空のボーイング747型機

ボーイング747マクドネル・ダグラスDC-10型機、エアバスA300型機などの座席数が300隻を超える大型ジェット機の相次ぐ導入や、アメリカのジミー・カーター政権下における航空規制緩和政策(ディレギュレーション)の導入。そしてこれらの要因がもたらした航空会社間の競争の激化などにより航空運賃が下がり、飛行機での旅が大衆化してきた1970年代-1980年代以降は、アメリカやイギリスなどの欧米の先進諸国ではその「ステータス」は下がった。

しかし、海外旅行の大衆化が欧米の先進諸国に比べて遅れていた上、政府の保護政策で航空会社同士の競争が活発でなかった日本では、『アテンションプリーズ』(オリジナル版:1970年-1971年)、『スチュワーデス物語』(1983年-1984年)など人気テレビドラマの題材にもなり、1980年代になってもまだまだ女性の「なりたい職業」の上位として憧れの存在であった。

1990年代

しかし日本でも、1980年代後半のバブル景気前後に海外旅行の大衆化が進み、大型機の大量導入に伴う採用人数の増加、競争激化を受けたコスト削減の影響での給与の低下、女性側の意識変化などによって、「客室乗務員」が昔と比べて特にステータスが高いものではないというように変革し、1990年代に入ると、女性の人気職業の一つではあるものの以前よりその人気は下がった。

中途採用では30歳代(と応募要項には書かれてあるが、採用されるのは稀だと言われている)、経験者の有期限再雇用では40歳代での採用も行われるといったように変わって来ている[5]など、かつては「若いこと」が採用の条件であったが、その様な状況は変わりつつある。

2000年以降

ガルーダインドネシア航空の客室乗務員

2001年のアメリカ同時多発テロの影響で、乗客数と運航便数が減った多くの航空会社が、一時的に客室乗務員の採用を見合わせたり停止するようになった。

それ以降も日本の航空会社の客室乗務員の採用はそれほど減っていないものの、日本人乗客のために日本人の客室乗務員を乗務させる必然性が、コスト削減の中で見直されたことなど様々な要因によって、近年は外国航空会社の日本人客室乗務員の採用自体は以前に比べ格段に減っている。

2009年には、世界的不況の影響を受けて経営不振が伝えられるエミレーツ航空が、先に内定した日本人客室乗務員の入社を無期限延期するなど、この傾向は進むものと思われる。

呼称

日本においては、船舶女性司厨員に由来するスチュワーデス男性はスチュワード)の呼称が広く用いられている。日本ではTVドラマ等の影響で「キャビンアテンダント」 (Cabin Attendant) 、またそれを略して「CA」とも呼ばれているが、英語圏では「フライトアテンダント」(Flight Attendant)もしくは「キャビンクルー」(Cabin Crew)と呼ばれるのが一般的で、「Cabin Attendant」という組み合わせは自然ではない。

女性の客室乗務員は、初期には「エアホステス」「エアガール」、最近まで「スチュワーデス」(男性の場合には「スチュワード」「パーサー」など。実は「パーサー」はその便に乗り組む客室乗務員達のリーダーの事である)と呼ばれていたが、1980年代以降、アメリカにおける「ポリティカル・コレクトネス」(この場合は性表現のない単語への言い換え)の浸透により、性別を問わない、"Floor Attendant"フロアアテンダント)、"Flight Attendant"フライトアテンダント)という単語に言い換えられた影響で、この和訳である「客室乗務員」(客乗)という言葉が正式とされるようになった。

しかし、その後も航空会社自身が「スチュワーデス○○」など、「スチュワーデス」という呼称を女性の客室乗務員に対して様々な形で使い続けていることから、「スチュワーデス」という呼称がマスコミなどでも多用されており、消えるような気配はない。また初期に使用されていた「ホステス」という用語は現在では水商売でさえ陳腐化した呼称として用いられることもない(ただし空港カウンターで搭乗手続きなどを行うグランドホステス(GH)という役職呼称は現在でも一般的に使用されている)。現在では「客室乗務員」の名称を採用することにより一応の沈静化がもたらされている。

なお客室乗務員に対する社内での呼称は会社によっても相違があり、日本航空では単に「アテンダント」(AT)、全日本空輸では「キャビン・アテンダント」(CA)を用いている。

業務内容

主に機内サービスや機内清掃、保安業務や緊急時対応などの業務を主に行っている。なお日本の航空会社の客室乗務員の労働組合の多くは、会社側との賃金及び待遇交渉上の観点から「サービス要員」ではなく、「保安要員」であることを強調している[6]が、これらの労働組合は(その組合員のほとんどが女性である)本来「保安要員」として女性より適している男性客室乗務員の増員をほとんど主張していない。

なお、男性客室乗務員が搭乗している場合、厨房内の仕事や力仕事などの業務に回されるケースが多いが、日本の航空会社の場合男性客室乗務員の数が非常に少なく、特に日本人の男性客室乗務員が乗務していないケースも多い。しかし、1999年に発生した全日空61便ハイジャック事件をはじめとする多くのハイジャック事件や、乗客による機内暴力行為において、女性客室乗務員が犯人の暴力行為に対して対抗できず、乗り合わせた男性運航乗務員や乗客が代わりに対処するケースが続発していることから、暴力行為に(女性に比べて)有効に対応できる男性客室乗務員の数を増やすべきだとの意見がある。

機内サービス

機内サービスを行う中国東方航空の客室乗務員
エアバスA340型機のギャレー

飛行機の搭乗および降機時の乗客への各種案内、厨房(船舶の用語にならって「ギャレー」と呼ばれる)での機内食や飲み物の加工および乗客への配布および回収や、新聞雑誌類の配布および回収、機内販売(国際線では免税品の販売)やクレジットカードの勧誘などの営業活動、入国書類や税関申告用紙の配布などの機内での各種サービスを行う(入国書類を客室乗務員に記入させる乗客もいるが、これは法律で禁じられているケースもある)。

個人用テレビオーディオビデオゲームなどの座席周りのエンターテインメント設備が設置されている機材の場合は、それらの設備の使用方法の案内を行うほか、長距離路線のビジネスクラスやファーストクラスでは、フラットシートのベッドメーキングを行なうケースもある。

また、搭乗機の運航状況や各種機内サービスの案内など機内における各種案内放送を行う他、到着地の天候や空港の案内などの数々の問い合わせなどについて運航乗務員と連携の上で対応したりしている。なお、一部の外資系航空会社の現地在住の日本人客室乗務員を除く日本人客室乗務員は、諸外国の到着地においては時差調整のための休養で1、2泊するだけであるため、諸外国の到着地についての知識レベルは、一般観光客とさほど変わりはない。

機内清掃

飛行中の乗客の各種ゴミの回収などの機内の簡単な清掃や、飛行中に乗客が機内で嘔吐したり、幼児が排便し機内を汚した場合にはその清掃を行う。また、中長距離国際線ではトイレットペーパーやゴミ箱の交換、洗顔台の拭き取りや備品の補充などをはじめとするトイレの清掃も行う。

なお、格安航空会社をはじめとする一部の航空会社では、引き返し時などに座席など機内の簡単な清掃を地上駐機中に客室乗務員に行わせている他、アメリカでは機長および副操縦士にも清掃作業を課す航空会社もある。

また、一部の国では離着陸前後に機内客室への殺虫剤や消毒剤などの散布が義務付けられている場合があり、その際は散布業務を行う。

保安業務

緊急時対応方法の案内を行うルフトハンザ航空の客室乗務員

ドア(非常口)の操作および確認、離着陸前の客室内の安全確認、非常用設備の案内(緊急着陸水時の脱出口および脱出方法、救命胴衣の使用方法、酸素マスク使用方法などを、ビデオ設備搭載機ではビデオの上映、ビデオ設備の故障時およびビデオ設備未搭載機ではデモンストレーションを行う)、離着陸前後の非常用設備の管理、離着陸前後の客室内の確認(各種設備に故障、異常がないかの監視だけでなく、具合の悪い旅客がいないか、泥酔者はいないか、航空法違反に該当する行為をしている旅客はいないか、ハイジャックに発展する恐れのある人物はいないか等も確認している)、などの機内の保安業務を行う。客室乗務員はそれぞれ担当区分を持っているが、定時運航の為に手分けをすることもある。

緊急事態対応

万が一航空事故ハイジャックなどの緊急事態が発生した時には、運航乗務員などと連携して乗客に状況説明をしたり、緊急着陸や着水をする場合には避難用具の用意や避難誘導にあたる。そのため一部の外資系航空会社では、一定距離を泳げることが採用時の条件になっているケースがある。また、急病人発生時には、医療関係者に引き継ぐまで基礎的な救急看護を行う(赤十字救急法救急員資格の取得が推奨されている)。中途採用の客室乗務員の中には、看護師などの医療従事経験者の客室乗務員も多い。

食事

全日空のエコノミークラスの機内食

機内での食事は、国内線の場合は紙の箱に入った弁当が用意され、国際線の場合はエコノミークラス担当者はエコノミークラスの機内食、ビジネスクラス担当の乗務員はビジネスクラスの機内食(乗客と同じもの)が用意される他、ファーストクラスの乗客が手をつけなかった食事の残りに手をつけることもある。また、アルコール類を除く飲み物も機内に用意されているものを飲む。なおこれはデッドヘッドの際もほぼ同様である。

なお、いずれも集団食中毒を防ぐ目的から、乗客向けと同じく複数の種類が用意され、基本的に社歴が長いものから優先的に選択し、休憩時間や地上での乗り継ぎの短時間の間に(客室乗務員が早食いが多いのは、このためであると言われている)厨房内や空席で食す。

休憩

なお、夜間飛行や6、7時間以上の飛行時間の長距離路線においては、乗務中に数時間の仮眠を含む休憩時間が設けられ、休憩用に仕切られた座席や機体後部などにある乗務員専用の休憩室(「クルーバンク」と呼ばれ、寝棚もある)で休憩を取る。

乗務人数

TAM航空のエアバスA320

各国の法令で機材の仕様(ドア数)や乗客数、飛行時間により最低乗務人数が決められている。通常は乗客約50名に対して客室乗務員が1名以上、それ以上の大きさの機材の場合はドア数に合わせた人数が乗務することが基本となっており、国際線ではそれを基本にして旅客数やサービス内容に応じてサービス要員として人数が増える。

通常は、近距離向けプロペラ機のボンバルディアDHC-8シリーズの場合1-2人、中型ジェット機ボーイング737エアバスA320の場合は1機に3-5人、大型ジェット機のボーイング767エアバスA300の場合は6-10人、超大型ジェット機のボーイング747型機の場合は12-28人程度乗務している。

また、日本国内においては、ビーチクラフト1900Dやブリテン・ノーマン アイランダーなどの、定員が19人以下の飛行機には客室乗務員を乗務させる必要はない。

制服

傾向

タイ国際航空の客室乗務員

世界的に航空機等の客室乗務員には専用の制服を着用させている。日本でも客室乗務員を搭乗させている航空会社は、全て制服を着用している。なお、客室乗務員の制服は男女ともに警察官自衛官のように法的に規定されたものではないので、制服の種類は航空会社の数だけある。

但し、男女ともに客船のように「客室乗務員の制服の標準的デザイン」という概念があり、それに近いデザインのものが主流を占めており、変化があるといってもエンブレムや社名ロゴ、スカート丈やスカーフの柄(女性客室乗務員)色などに差異が見られる程度である。なお、1990年代前半までは、女性客室乗務員の制服は制帽と手袋、スカーフが用意されることが多かったが、制帽と手袋を用意することはほとんどなくなってきている。

全体的に女性客室乗務員制服上衣の標準的デザインは色が紺、藍などの青系統が主流でボタンは真鍮製の金色(シングル若しくはダブルのブレザー風)、トーク型かハイバック型の帽子が付いており、ネクタイかレースがセットになっている。下衣は、欧米を中心にパンツを採用している会社も多いが、アジアではスカートのみのところが殆どであり、パンツを採用している航空会社は少なく、採用していてもスカートとの選択制が殆どで、パンツを選択する乗務員は少ない。しかし、日本ではスターフライヤーの制服にパンツを採用している。乗務員の中には、パンツの方が緊急時を含め、通常業務中にも動きやすいと好評である。

但し、スカート丈の長さは航空会社によってまちまちである。一般的には極標準のスカート丈、次いで多いのがロングスカートである。ミニスカート並に短いスカートをスチュワーデスの制服として採用している航空会社は実際には殆ど無く、日本では現在1社も存在しない(以前JALエクスプレスがミニスカートに近い制服を採用したところ、一部の客室乗務員がそれをさらに短い丈に細工し乗務したため、社内および乗客から「スカートが短すぎる」とのクレームがつき、その後丈が長いものに変更されたという経緯がある)。

緊急時の問題

シンガポール航空の客室乗務員

また、シンガポール航空マレーシア航空など一部の航空会社の女性客室乗務員の制服は、民族衣装をモチーフにしたタイトスカートにサンダル履きの制服であることから、緊急時の対応に問題があるという指摘がある。

実際にシンガポール航空は、多数の死傷者が出た台北での墜落事故の際に、「客室乗務員が着用していたバックストラップなしのサンダルのせいで緊急脱出時の対応に時間を要した」との事故調査委員会や被害者からの批判が出た。しかし同社はその後も、離着陸時のみバックストラップのサンダルを着用することのみで対応しており、「ファッション性のために安全を蔑にしている」という批判も多い。

カジュアル化

2009年2月にスカイマークが経費節減のため、運航乗務員と客室乗務員の従来のようなスタイルの制服を廃止することを発表した[7]。廃止後はパンツは決められた色と形の私物を着用させ、同社のシンボルカラーの黄色のポロシャツを配布し、同じく配布するウィンドブレーカーをポロシャツの上に着用することで、乗客と客室乗務員を区別する。すでにアメリカやヨーロッパの一部の格安航空会社では、制服を着用していないケースもある。

ファッションデザイナー

ナショナル・フラッグ・キャリアを代表とする各国の主要な航空会社においては、自国の、または国際的に著名なファッションデザイナーにその制服のデザインを依頼することが多い。

下記のリスト以外にも、日本のナショナル・フラッグ・キャリアの日本航空が過去に日本人ファッションデザイナーの森英恵のデザインした制服を使用していた他、同じくイタリアのナショナル・フラッグ・キャリアのアリタリア航空ジョルジオ・アルマーニミラ・ショーンのデザインした制服を、ブラニフ航空エミリオ・プッチのデザインした制服を使用していたことがある。

著名なデザイナーの制服(一部)

訓練

新規採用時に、空港や本社内などにある訓練施設(新興航空会社や格安航空会社などの小規模な航空会社ではモックアップを持っていない為、最終便の後に実機にて訓練を行うところもある)において機内サービスの手順や語学(主に母国語の正しい使い方と英語だが、外国航空会社の場合その国の言語も)、機内アナウンスやファーストエイド、緊急時対応訓練などを1ヶ月から3ヶ月程度受け、筆記・実技試験に合格した者のみ、その後数日間のOJT訓練を受ける。

他にも、国際線担当やビジネスクラス担当、ファーストクラス担当に伴うサービス訓練、先任客室乗務員への昇格時の訓練などを各社のマニュアルに沿って受ける。なお、通常新人はエコノミークラスを担当し、順次上級クラスの担当を行うことになる(アジア系の一部の会社では、入社時に全てのクラスの訓練を受け、新人のころからエコノミークラス、ビジネスクラスに関係なく乗務する会社もある)。

また、機種によって機内の各種設備に違いがあるために、機種ごとの訓練を受けない限り別の機種に乗務することは出来ない。なお、各社ごとの社内規格であり、同じ機種でもまた会社によって設備の仕様に違いがあるため、会社を変わると一から訓練を受ける必要がある。この訓練は、機種ごとに、半年から1年に1度行われており、全ての試験に合格できなければ乗務ができなくなる。

政府専用機の客室乗務員の場合

日本国政府が所有・運航を行い、政府要人の輸送および、在外の自国民保護などのために使用される政府専用機においては、航空自衛隊の「特別航空輸送隊第701飛行隊」、通称「特輸隊」が運航させている。操縦士、整備士は勿論、天皇皇族首相等の要人を接遇する客室乗務員も全て航空自衛官で占められている。

通常の自衛官として入隊した後に選抜され、同型機材(ボーイング747-400型機)を運航し、国際線運航の経験が豊富な日本航空へ機内サービスの研修に行き、日本航空の客室乗務員とほぼ同じスキルを習得する。女性自衛官が多く活躍しているが、正式には「空中輸送員」という職であり、輸送機に荷物などを搭載させる屈強な男性自衛官と立場上何ら変わりない。

就職

採用

日本の大手航空会社ではほぼ毎年新卒採用(客室系総合職/契約制客室乗務員双方)を行う他、経験者採用(既卒)も定期的に行っている。また、一部の日本の大手航空会社では、一定期間就業後に一旦退社した客室乗務員を有期限でパートタイマーとして採用している[8]

なお、現在日本のほとんどの航空会社において契約制客室乗務員としての採用で、またそのすべてが女性である。契約制客室乗務員は1年間の有期限雇用契約を2回更新した後、3年経過後に本人の希望と適性、勤務実績を踏まえて、正社員への切り替えを行う。

外国航空会社も日本人客室乗務員の欠員が出たり、日本便の増便があるとそれにあわせて経験者採用を中心に若干名の募集を行う他、日本に乗り入れていない航空会社が、自国民以外の外国人客室乗務員の採用枠で日本人の客室乗務員を採用するケースもある。なお、中東諸国の一部の航空会社の日本人客室乗務員採用は、日本人のみの採用枠ではなく、国籍や居住国に関係なく行われ、数人のみの採用である(日本在住の外国籍者を日本国内で採用したり、海外在住の日本国籍者を海外で採用することも多くある)。

近年は、コスト削減や本国の労働組合対策などの理由で、昔に比べると外国航空会社の日本人客室乗務員の募集自体が少なくなっている。10年ほど前までは頻繁に募集のかかっていたアジア系航空会社も2-3年に1度しか募集をかけなくなったり、エールフランスのように10年以上募集を出していない会社もある(ヨーロッパ系の航空会社は、ほぼ毎年募集をかけているヴァージンアトランティック航空を除けば、募集は滅多に出ない)。

毎年新卒採用を行っている日本の航空会社(一部)

日本人の客室乗務員を採用したことのある外国航空会社(一部)

採用時の性差別

女性優先

男女が混乗するイギリスのプライム航空の客室乗務員

イギリスアメリカなど、職場における男女平等が比較的確立されている国の航空会社が日本国内で客室乗務員の募集を行う場合は、男女がほぼ均等な割合で採用される場合も多い。しかし、日本など東アジア諸国の航空会社、さらに一部の欧米諸国の航空会社においても、日本における契約制客室乗務員としての募集は一応「男女双方」となっているが[9]、実際は男性が採用されるケースは皆無であり、男性は事実上総合職(客室系総合職)としての採用のみとなっており、男性の客室乗務員は極めて少ないのが現状である[10]

これを男性差別であるとして、1999年4月1日男女雇用機会均等法の改正時に、主に男性の希望者から「明らかな性差別であり、違法行為である」として問題とする声が出たものの、現在のところ厚生労働省をはじめとする行政や労働組合に差別是正の動きはない[11]

また、ハイジャックや事故などの不測の事態が発生した際、男性の方が平均的に腕力、体力が強いという点から、「保安要員としての目的なら男性の客室乗務員を増やしては」との意見も多く、近年は日本でも、スカイマークスカイネットアジア航空などの新興航空会社を中心に契約制客室乗務員として男性を採用する場合も出てきた。しかし、日本航空と全日空の大手航空2社に関しては、現在のところ契約制客室乗務員としての男性の採用は過去10年以上全くない。

なお、日本航空は2009年5月5日に、全員男性客室乗務員の「こいのぼりフライト」を実施すると発表した[12]が、この様なことが行われること自体、女性優先の採用が行われており、男性にとって「狭き門」であることの証明ともいえる。

2つの理由

この様な背景には、制服姿の女性客室乗務員を必ず自社の広告に出演させることや、女性客室乗務員の入社試験時に外見のテストを重視すること、さらに以前は一定の体重を超えた客室乗務員を強制的に地上勤務に異動させたなど、欧米の先進諸国では「女性蔑視」との批判を受けかねない行動で知られているシンガポール航空や、現役の女性客室乗務員のみが登場するカレンダーを毎年制作し販売している日本航空、同じく現役の女性客室乗務員のみを多数登場させたウェブサイトを使って広告活動を行っている全日空[13]のように、性差別に比較的寛容なアジアの多くの航空会社自らが「(若くて綺麗で)従順なアジア人女性」というものを主な収益源である男性のビジネス客に対するマーケティング上の一つの売り物としている[14]ことであると言われている。また、結婚退社(寿退社)する女性が多いために、年功序列賃金体系において給与の高い高齢乗務員を自然減することが出来、結果的に人件費を抑制できるという背景がある。

このことを反映してか、アジア系の航空会社のみならず、欧米系の航空会社の一部が日本人の客室乗務員を採用する際も、女性のみを採用したり、給与が高くなる(そして「若くなくなる」)前に強制的に退社させられるように、3年程度の延長不可の時限契約で採用するケースもある(なおこれに反して日本の航空会社では、延長不可の時限契約で採用するケースは、いわゆる「再雇用型」の場合を除き皆無である)。

採用基準

国内大手航空会社の契約制客室乗務員の場合、一度に100-500人単位の採用を行う。英語の資格(TOEIC600点以上が一般的)や身長(158cm以上が一般的)や視力などが規定に達していなければならないが、英語資格などを持っていなくとも合格する者は少なからずいる。一般的に「高倍率」と言われているものの、実際にはこれらの基準に達しないものの書類を提出するものも多いため、実際の倍率はそれほど高くないとも言われている。

外国航空会社の場合は、募集がなかなか出ない上に欠員を補充するための採用で1度に数人~20人程度しか採用しないので、倍率はそれなりに高いとも言われている。また、ユナイテッド航空グリーンカード保持者を対象に募集をかけた(コスト面や本国の労働組合対策で日本ベースの乗務員をとらず、アメリカベースの乗務員を採用したい)ため、応募できる人が限られていた[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。他、ニュージーランド航空も応募条件がニュージーランド永住権保持者のみ対象となっているなど、募集条件に永住権の有無を課す会社もある。また、外国航空会社の中には水泳で一定距離を泳げることを条件につけている会社もある。

また、日系航空会社、外国航空会社を問わず、日本において既卒、経験者採用もたまに行われているが、一般に社会人経験が1年以上(外国航空会社の場合は2年以上というところが多い)、かつ上記のような基準を満たすもののみが対象とされている[15]

なお、日本航空の現役契約制客室乗務員として勤務する傍ら、会社に無断で写真週刊誌ヌードモデルになった仲谷かおり[16]や、同じく会社に無断でバラエティ番組へ出演し職務の内容を暴露していた島田律子の出現以降、同社や他社においても同様の「事件」を起こすものが続出している影響で、日本の航空会社では、過去にミスコングラビアレースクイーン、さらにキャバクラなどの水商売風俗の経歴がないかを厳しくチェックしていると言われる。多くの外国航空会社においては、採用後に受験者が履歴書に書いたレファレンスを元に、本社人事が直接前職に連絡をし、どんな人物であるかなどをチェックするのが普通である。

「国際性」は国際線乗務時においては求められる素養であろうが、実際は特に日本の航空会社においては高い外国語レベルは必要とされないうえ、せいぜいが大学時代に数ヶ月から1年程度の「遊学」を行ったような「国際性志向」を持つレベルのものが目につく程度である[17]

試験会場

国内航空会社では一度に多数を採用することもあり、多くの希望者に対応するために、社屋だけでなく都内の大学のキャンパス日曜日に借りて採用試験会場とする場合も稀にある。外国航空会社の場合は、採用数が少ないこともありほとんどがホテルで何日間にも分けて行われる。

受験予備校の指導にあわせていわゆる「リクルートスーツ」と呼ばれる服装の首にスカーフを巻き、仕事時の客室乗務員をまねた独特のヘアスタイルをした学生の女性受験者もいる。しかし一部の外国航空会社の場合は、新卒もいるが、客室乗務員経験者も多い上、採用試験でスキンチェック等が行われることも多いのでスカーフを巻く人は少ない。

就職情報

大都市を中心に「スクール」と呼ばれる客室乗務員志望者専門の専門学校や受験予備校が数多く存在している他、エアステージなどの客室乗務員を主体とした航空業界就職情報誌や、就職情報を書き込めるインターネット上の掲示板も存在している。総じて「客室乗務員志望者向け就職情報」といえるような独自の市場を形成している。

大学に通いながら、もしくは仕事をしながら「スクール」に通う学生も多いが、既に退社して時間の経つ元客室乗務員が指導しており、指導内容は主に面接の立ち居振る舞いや、スーツの着かた程度にとどまっている。

組合活動

日本航空や全日空などの日本の大手航空会社の、契約制客室乗務員制度が導入された1994年以前に入社した加齢客室乗務員や運航乗務員においては、現在では、単純労働者やブルーカラー以外では多くの業種においてその活動が下火となっている労働組合活動が活発に行われている。

なお、日本最大の航空会社である日本航空においては、1990年代に契約制客室乗務員制度が導入された以前の客室乗務員(「プロパー社員」の呼称で呼ばれる)とそれ以降の客室乗務員(「新正社員」の呼称で呼ばれる)の雇用上の待遇が大きく違うこともあり、労働組合活動を活発に行うのは、契約制から正社員になった客室乗務員をはじめとする多くの社員が加入する会社側組合[18]の組合員ではなく、上記のように少数派である反会社側労働組合[19]に加盟する加齢客室乗務員の組合員が中心という状況である(「日本航空の組合問題」参照)。

また、コンチネンタル航空ノースウェスト航空アリタリア航空などの外国航空会社の日本法人や日本支社においても日本人客室乗務員をはじめとする社員による労働組合が結成されており[20]、そのいくつかは活発に活動しているが、結成されている会社自体は少ない。

事件

  • ブリティッシュ・エアウェイズの客室乗務員が、香港などで購入した偽物の時計や香水を、本物とすり替えてロンドン東京便や香港便などの機内で免税品として販売し、差額を着服していた事件が1999年9月に明らかになった。なお、乗客からの苦情に対してブリティッシュ・エアウェイズは、代金を弁償すると同時に「事件を公表しない」との同意書にサインを求めたが拒否された[21]
  • 2000年に、日本航空の客室乗務員の仲谷かおり(芸名)が写真週刊誌フライデー」で、勤務先の社名を出した上でヌードモデルとなったため、新千歳空港からの乗務終了後、羽田空港内で会社関係者に拘束され、事情聴取された後に解雇された[22]。なお、仲谷のヌード事件以降、日本航空をはじめとする航空会社は、客室乗務員採用の際に当該者の前歴(グラビア活動やモデル活動、ミスコン活動や水商売風俗業への従事経験の有無)や動向を厳しくチェックするようになったといわれている。
  • 2005年5月に、全日空の運航乗務員と客室乗務員の計8人が、翌日早朝から乗務予定であったにもかかわらず、ステイ先の秋田市内の居酒屋で(同社は社内規定乗務の12時間前から飲を禁じている)に違反して飲酒していたために、急遽代替運航乗務員を東京から呼び寄せることとなった。なおこの事件後、運航乗務員と客室乗務員とその上長ら13人が処分を受けた[23]
  • 多くの航空会社では、在籍中において勤務先企業名や制服姿、本名や勤務内容などを露出した書籍やブログなどの公開は一切禁止されているにもかかわらず、ブログに詳細な勤務内容を書いたために解雇された例がある[24]。しかしながら、このような活動を行う現役の客室乗務員は後を絶たない。

人物

現・元客室乗務員

関係者

  • 深田祐介(作家。「スチュワーデス物語」の著者。元日本航空社員)
  • 益岡康夫‎青山学院大学講師。元日本航空客室乗務員訓練部の英語教官。「スチュワーデス物語」に実名で出演し人気を博した)

客室乗務員を扱ったテレビ作品

テレビ局名の後ろの航空会社名は制作協力社名。無いものは架空の航空会社の設定。

関連項目

脚注

  1. ^ 戦前日本のエアガールについて、鈴木五郎「大空の花束『エアガール』太平洋戦域フライト日誌」(潮書房『丸』1996年4月号 No.600 p191~p199)を参考
  2. ^ 「JALグループ50年の航跡」日本航空広報部デジタルアーカイブ・プロジェクト編 2002年 日本航空
  3. ^ 「エアライン Empires of the Sky」アンソニー・サンプソン著 大谷内一夫訳(早川書房)
  4. ^ 「JALグループ50年の航跡」日本航空広報部デジタルアーカイブ・プロジェクト編 2002年 日本航空
  5. ^ 日本航空「再雇用型客室乗務員(契約社員)募集要項」http://www.jal.com/ja/saiyo/apply/cabin_keikensya.html
  6. ^ 「日本航空客乗組合」http://www.bekkoame.ne.jp/~jcau/jcaunews.htm
  7. ^ ポロシャツ姿で客室乗務 スカイマーク、制服廃止へ”. 2009年2月19日閲覧。
  8. ^ 日本航空「再雇用型客室乗務員(契約社員)募集要項」http://www.jal.com/ja/saiyo/apply/cabin_keikensya.html
  9. ^ 日本航空「客室乗務員募集要項」http://www.jal.com/ja/saiyo/apply/cabin_index.html
  10. ^ 「ANA Latte」http://www.analatte.com/
  11. ^ JALキャビンクルーユニオンhttp://www.bekkoame.ne.jp/~jcau/indexj.htm
  12. ^ 産経ニュース2009年4月24日付
  13. ^ 全日空「Analatte」http://www.analatte.com/
  14. ^ 「エアライン Empires of the Sky」アンソニー・サンプソン著 大谷内一夫訳(早川書房)
  15. ^ 日本航空「再雇用型客室乗務員(契約社員)募集要項」http://www.jal.com/ja/saiyo/apply/cabin_keikensya.html
  16. ^ 「JALスチュワーデスから衝撃のヌード・デビューを飾った仲谷かおり」http://www.gyao.jp/kb/k1/ft/
  17. ^ 「4196人のスチュワーデス―スチュワーデスの本」(深田祐介監修)
  18. ^ JALFIO http://www.jalfio.or.jp/index3.html
  19. ^ JALキャビンクルーユニオンhttp://www.bekkoame.ne.jp/~jcau/indexj.htm
  20. ^ ノースウエスト航空会社日本支社労働組合 http://www.h7.dion.ne.jp/~nwunion/
  21. ^ 共同通信ニュース速報」 1999年9月12日 http://www.azaban.com/news/old/74.txt
  22. ^ FUTABASYA NET「現役JALスチュワーデスの写真集で一躍有名となったのが、仲谷かおり」http://www.futabasha.co.jp/?isbn=4-575-29124-2&cmd=adult&accept
  23. ^ 「マイカー運転550キロ、駆け込み搭乗=機長ら飲酒で交代要員-全日空」Yahoo!ニュース-時事通信2005年5月 http://nozomi.at.webry.info/200505/article_48.html
  24. ^ Cnet Japan「私はブログで会社をクビになりました」http://japan.cnet.com/column/pers/story/0,2000055923,20079804,00.htm