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中華人民共和国の高速鉄道

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中国・台湾の高速鉄道路線網
  300+ km/h
  250–299 km/h
  200–249 km/h
  建設中
  他の路線

中華人民共和国では高速列車のサービスが2007年4月より幹線鉄道で導入された。これは第6次鉄道高速化による主要幹線鉄道での速度向上で6,003kmの路線で最高速度350km/hでの運転が可能になる。高速列車の運営は主に中国国鉄CRH型車両により行われている。動車組や和諧號の名称で呼ばれ、中国では最優等列車となっている。本稿ではこれから建設が計画されている路線や現在の中華人民共和国の高速鉄道(ちゅうかじんみんきょうわこくのこうそくてつどう)について記す。

2008年現在、257の列車が200km/hで運行され、18の幹線850kmで250km/hの運行が認可されている。また新線では、2008年8月に運用を開始した北京・天津線 (京津城际轨道交通)が最高速度350km/hに対応している。第6次鉄道高速化では、既存の8,000kmの路線網で160km/hに速度を向上させ、更に8,000kmの路線で120km/hの運行のため改良された。これは、22,000kmまたは29%の国鉄網で現在平均速度が70km/hの旅客列車の速度が向上することを意味している。しばしば、高速線では重量貨物列車と5分間隔で競合している。

高速列車の運行

上海トランスラピッド

リニアモーターカー

トランスラピッドを使用した、上海トランスラピッドが営業中の旅客列車としては世界最速の430km/hで浦東国際空港駅竜陽路駅の約30kmを7分で結んでいる。旅客数や火災事故の発生など問題が多いが延伸の計画がある。

改良された鉄道

1997年4月、1998年10月、2000年10月、2001年9月、2004年4月、2007年4月まで合計6回にわたり今日に至るまで、速度向上が行われてきた。6,003kmの路線で最高速度200km/hの旅客列車が運行されている。848kmの路線では最高速度250km/hに達し、一部の新線では最高速度330km/hを実現している。中国で最も平均速度が高いのは京津線である。中国での旅客列車の速度向上は、海外技術によるCRH型車両導入による所が大きい。これから計画中の路線を含め、さらに高速列車の重要度が増していく。

所要時間

新しい列車は北京上海1,463kmの所要時間を2時間短縮し10時間以下にしている。上海と長沙1,199kmでは1時間30分短縮されて、7時間30分になった。上海・南昌間では所要時間が半減している。ノンストップの都市間特急もそれぞれ導入が予定され、北京・福州間の列車は33時間29分から20時間以下に所要時間が短縮された。

CRH2

CRH

中国鉄路高速は鉄道の高速部分(主に車両)を意味するのに用いられている。中国で導入されている高速鉄道車両はそれぞれ違った国々から別々の技術で導入されている。信号、駅、軌道設計、コントロールシステムなどは外国からの技術移転で導入された。別々の互換性がないシステムのため、整備面での問題が多い。

2008年現在の330km/h路線

2007年現在の200km/h路線

CRH営業路線

中国東部を主にカバーしている。

路線の整備

中国の高速鉄道の定義

国際鉄道連合によれば、中国の高速鉄道は4つの部分に分けられる。

旅客専用線 (Passenger Dedicated Line, PDL)
旅客専用線は高速鉄道と同義で幾つかの政治的理由により、高速鉄道から旅客専用線と呼び替えられている。全ての旅客専用線は4つの東西路線と4つの南北路線の計7,000kmに及ぶ計画で世界でももっとも長い高速鉄道網の一つとなる。

完全な旅客専用の高速新線で、貨物列車が走行することはなく350km/hの走行に対応した路線として計画される。

当面は貨物列車と共用させる旅客専用線
200km/h〜250km/hの走行に対応した旅客専用線は旅客列車と貨物列車両方に対応することになる。このレベルの路線は今まで鉄道が存在しない重要回廊に用いられる。当面は貨物列車と共用されるが、長期的な計画ではこれらの路線でも貨物専用線が別に建設され、旅客専用線は300km/hに対応する計画である。
都市間線 (Intercity Line)
巨大都市の2地点間に最高速度200 - 350km/hに対応した路線の建設。
改良線 (Updated conventional railways)
従来からの路線を改良し、200km/hに対応させた路線。幾らかの区間では最高速度250km/hに対応。

ドイツの高速鉄道路線のABS (Ausbaustrecke)に近い形態。

旅客専用線路線網

200km/h以上での運転が可能な高速新線は旅客専用線(PDL)と呼ばれているが、旅客専用の路線ではない路線も含まれるため、名称が紛らわしい。秦瀋旅客鉄道を除いてその巨大な路線網の大半が2007年現在工事中か計画中である。

現在は法令や軌道、車両の関係から最高速度が200km/hに抑えられているが、これから建設される路線は将来の高速化に対応した設計がなされ300km/h超の速度にも対応した路線が計画されている。合計8路線、総延長7,000kmとなる。

  • 南北4路線(PDL)
    • 北京・ハルビン線 (天津・秦皇島・瀋陽・長春経由)
      • 本線 中華之星用に建設された秦瀋旅客鉄道 (2003年から250km/h運転が可能)も利用
      • 支線 瀋陽・大連線。列車はハルビンまで続くので、哈大高速鉄道とも呼ぶ
    • 北京・上海線 (天津・済南・徐州・蚌埠・南京経由。最高速度350km/h対応)
      • 支線 合肥線(蚌埠・合肥・銅陵・黄山・上饒・福州)(客貨両用200km/h〜250km/h対応)
    • 北京・香港線 (石家荘・鄭州・武漢・長沙・広州経由。将来の350km/h運転に対応。)
    • 上海・深圳線 (杭州寧波温州福州廈門経由。上海・杭州・寧波市間は350km/h対応。残り区間は200 - 250km/hの客貨両用)
  • 東西4路線(PDL)
    • 青島・太原線 (済南・石家荘経由。石家荘・太原は客貨両用200 - 250km/h対応、その他の区間は旅客専用200 - 250km/h対応)
    • 徐州・蘭州線 (鄭州・西安・宝鶏経由。350km/h対応)
    • 上海・成都線 (南京・合肥市・武漢・重慶経由。上海・南京間は北京・上海線と共用で最高速度350km/h、南京・重慶間は客貨両用の200 - 250km/h対応。重慶・成都市間は350km/h対応。)
    • 杭州・南昌・長沙線 (350km/h対応)
  • 建設期間は次の通り。
    • 秦瀋旅客鉄道 2003年に最初の区間が完工。
    • 南京・合肥市間 2007年完成予定。
    • 合肥市・武漢、青島・済南、重慶・成都、寧波市・温州市・福州市・厦門間は2008年軌道整備予定。
    • 武漢・広州・深圳、 鄭州・西安間は2009年に350km/h対応の軌道を整備。
    • 石家荘・太原間は2009年4月1日開業。

軌道の準備が出来ると、営業運転開始前に法令などに対応した試験走行が開始される。

  • 建設の準備段階に入った路線。
    • 北京・上海間
    • 哈爾濱・瀋陽・大連間
    • 北京・武漢間(石家荘・鄭州経由)
    • 西安・宝
    • 合肥市・蚌埠市間
    • 杭州・寧波市間
    • 武漢・重慶間
    • 厦門・深圳間
    • 天津・秦皇島間

都市間線

都市間線(Intercity Line)は大都市間の速達輸送で最高速度は200〜350km/hとなっている。PDL網の一部を利用するか、他は専用線となっている。

  • 北京・天津線(京津城际轨道交通)はPDL網ではないが、最高速度350km/h対応である。中国では最初の350km/hの路線で、2008年北京オリンピック前に開通した。はやてをベースにしたCRH2、ICE3をベースにしたCRH3が導入されている。
    • 北京・石家荘間 (PDL)
    • 上海・南京間 (PDL)
    • 上海・杭州間 (PDL)
    • 南京・安慶
    • 南京・杭州間
    • 重慶・吉林
    • 南昌・九江
    • 青島・栄成
    • 江油市・綿陽・成都市・楽山
    • 南寧・柳州間
    • 重慶・重慶市万州区間(重慶市中心から228km離れた区域)
    • 広州・東莞・深間 (PDL)
    • 広州・珠海
    • 海口三亜間 (海南島東部)

長春・吉林間、南昌・九江間、広州・珠海市間、上海・南京間は建設中である。南京・安慶市間、南京・杭州間、綿陽・成都市間、海口市・三亜市間は建設準備段階に入っている。

旅客専用線(PDL)以外の高速鉄道

PDL網の建設計画以外にもPDLと同様の規格で200 - 350km/hの客貨両用に対応した路線が新しく計画されている。

リニアモーターカーの延長計画

2006年に中央政府によって、リニアモーターカーの延伸計画が承認された。この計画は竜陽路駅から上海南駅を通り、上海虹橋国際空港へ至る路線である。同時に上海南駅から、杭州東駅に至る全長160kmの上海・杭州リニア線の計画もされている。しかしながら、中国国民にとって本当に高価な移動手段が必要かと言う議論もある。また、ドイツがトランスラピッドの中国への技術移転に対して懸念していることも影響している。現在は上海にある、上海虹橋国際空港と上海浦東国際空港を結ぶリニアの計画だけが進行中である。杭州への延長計画は延期されている。

2010年5月から開催される上海万博では、目玉となるはずだった会場へのトランスラピッドの乗り入れが断念される見通しとなった。 ドイツとの技術移転に関する協議が難航し建設が間に合わない為でもあるが、上海市では現路線の延長計画そのものを再検討する模様である。2006年5月に中国とドイツの間でトランスラピッド延伸に関する協議が行われたが、中国側は両国が現地合弁会社を設立し、設備や部品の大部分を中国国内で生産する方式を希望した。ドイツ側は、これに対して技術使用権の買取を求めたが中国側はこれを拒否し、協議は中断されたままとなっている。延長予定地ではリニアの磁場による健康被害も懸念する声が出ている他、総工費350億人民元の巨費も見込まれるため、無駄との批判も根強い。[1]

脚注

  1. ^ 上海万博:リニア乗り入れ断念 ドイツとの協議難航 毎日新聞6面 2007年12月19日