F-35 (戦闘機)
F-35 ライトニング II
F-35 ライトニング II(F-35 Lightning II)はアメリカの航空機メーカー、ロッキード・マーティンが中心となって開発中の単発単座のステルス性を備えたマルチロール機である。開発計画時の名称である統合打撃戦闘機(Joint Strike Fighter)の略称JSFで呼ばれる事も多い。
概要
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/66/F-35A_-_Inauguration_Towing.jpg/250px-F-35A_-_Inauguration_Towing.jpg)
統合打撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画に基づいて開発された、第5世代ジェット戦闘機に分類されるステルス機である。
概念実証機のX-35は2000年に初飛行を行い、競作機となったX-32との比較の結果、X-35がJSFに選定される。量産機のF-35は2006年に初飛行し、現在でも開発は継続中である。2012年に実戦配備予定。
JSFの名の通り、ほぼ同一の機体構造を用いながら、基本形の通常離着陸(CTOL)、艦載機(CV)、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)という3つの派生型を製造する野心的なプロジェクトである。1960年代にも似たような運用構想でF-111が開発されているが[1]、F-35はそれと比較しても、機体の小型化技術の進歩を窺わせるものである。
アメリカ空軍・海軍・海兵隊、イギリス空軍・海軍が採用を決定しており、あわせて数千機が製造される見込みである。
開発の経緯
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a9/F-35_-_ILA2002-01.jpg/250px-F-35_-_ILA2002-01.jpg)
1990年代、アメリカ合衆国では各種の戦術機を運用していた空軍、海兵隊において、運用する航空機がゆくゆくは更新時期を迎える予定である事から、それらの後継機となる機体を開発する必要が生じ始めた。また海軍においてはA-6艦上攻撃機の後継のA-12の開発やNATF(YF-22ベースの新型艦上戦闘機)の開発がキャンセルされた事からその代替プランを求めていた。
この様にアメリカ各軍では多数の新型機を必要としたのだが、冷戦終結以降のアメリカ合衆国議会では国防予算の削減圧力が強まり、軒並み国防予算が削減されていた。また冷戦後の戦闘機の運用スタイルは、高性能な機体を長期に亘り運用するスタイルとなっていたが、「長期に亘り運用可能な」、高性能化およびハイテク化した戦闘機を開発するには極めて高いコストが必要となる。その為に国防総省では、今後大量に必要となる新型機の開発にあたり国防予算の削減と極めて多額となる開発費の両方に対応を迫られる事となった。
そこで、開発費を抑えるために、各軍の新型機の開発を一本化し、各軍の要求を満たせる共通の機体を開発する事となった。そして1993年、
の共通開発を目指す計画が開始された。この計画がJAST(統合先進攻撃技術)計画である。その後、このJAST計画にCALF(共通アフォーダブル軽量戦闘機)計画や海兵隊のAV-8B後継機開発に関する研究、ASTOVL(発展短距離離陸垂直着陸)研究計画が集約された。そしてその後、JAST計画を修正、発展させ、元に一つの機体フレームから通常離着陸(CTOL)型、短距離離陸垂直着陸(STOVL)型、艦載(CV)型の3タイプを製造出来る単座、単発機の開発計画が開始された。これが”統合戦闘攻撃機”(Joint Strike Fighter、以下 JSF)計画である。JSF計画にはその後、アメリカ海兵隊と同じくハリアーの後継を求めていたイギリスの海空各軍も加わった。この時点における各軍の装備予定は、
- アメリカ空軍:CTOL型を1763機。F-16C/D、A-10Aの後継機、及びF-22Aを補佐する為の機体
- アメリカ海兵隊:STOVL型を480〜609機。AV-8B、F/A-18A〜Dの後継機
- アメリカ海軍:CV型を300〜480機。F/A-18A〜Dの後継機、及びA-12に代わり採用したF/A-18E/Fを補佐する為の機体
- イギリス空軍:STOVL型を90機。ハリアー GR.5/7の後継機
- イギリス海軍:STOVL型を60機。シーハリアー FRS.1/FA.2の後継機
である。その他、いくつかの国がJSF計画に参加を表明した。JSFには主にNATO諸国に輸出した初期型のF-16などの各種戦闘機の代替用や、友好国向けの軍事援助用としての役割も織り込まれ、参加各国の開発費の出資の割合に応じて影響力を与えるという方法で国際共同開発として友好国に参加を呼びかけることで更なる負担軽減を図ることとされた。計画のごく初期から参加しているイギリスは強い発言力をもっていることになっているが、意見が反映されていないとの見方もある。
参加レベル
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f4/F-35_Wind_Tunnel_Model.jpg/250px-F-35_Wind_Tunnel_Model.jpg)
- Level-I(出資割合10%程度):要求性能に対し決定的な発言権を持つ - イギリス
- Level-II(出資割合5%程度):要求性能に対し限定的な発言権を持つ - イタリア、オランダ
- Level-III(出資割合1-2%程度):開発資料に対するアクセス権を持つ - オーストラリア・カナダ・デンマーク・トルコ・ノルウェー
- Security Cooperation Participation($5,000万程度):Foreign Military Salesの優先顧客 - イスラエル・シンガポール
(ただし、イギリス以外はSDD以降に参加)
要求能力
各国の海軍・空軍から出された要求全てを、単一のフレームからの派生のみで満たす、という条件のもとで機体が開発された。
- 性能に比して低コスト
- 空母艦載能力・短距離離陸垂直着陸能力を持たせることが可能なこと
- 超音速能力
- ステルス性
- 大きな兵器搭載能力
- 長い航続力
概念実証機の開発
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/90/X-35.jpg/250px-X-35.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/0e/Engine_of_F-35.jpg/250px-Engine_of_F-35.jpg)
ロッキード・マーティン、ボーイング、マクドネル・ダグラス(後にボーイングと合併)の3社が参加の意思を示したが、このうちロッキードとボーイングが概念実証機の開発を許可され、それぞれが概念実証機を製作することとされた。この際にそれぞれの機体の名称はロッキード製がX-35、ボーイング製がX-32となった。概念実証機は2機で、空軍向けのCTOL(通常離着陸)型、海兵隊向けのSTOVL(短距離離陸垂直着陸)型、海軍向けの空母艦載機型の3タイプについて飛行実証を行うこととされた。
搭載エンジンについては、F-22のエンジン、プラット・アンド・ホイットニー社のF119から派生した F135が予定されており、そのバックアップにGE・アビエーション・ロールス・ロイス共同開発の F136も代替エンジンとして検討されている。ただし、F136は一度予算面からアメリカ政府によって開発中止を検討され、R&R社のあるイギリスはこの検討に反発した。イギリスの強い反発は、アメリカを動かし結局F136の開発は継続された。
垂直着陸を行う機構については、X-32とX-35はそれぞれ違った方式を採用した。
X-35では、エンジンノズルを下方へ偏向するスラスト・ベクトル・ノズル(Thrust vectoring nozzle)に加え、エンジンの回転を動力伝達シャフトを介して利用し、コクピット後方に装備した垂直推力専用のファン(リフトファン、Lift fan)を回転させることで下方に向かって空気を噴出する方式を採用した。
一方のX-32は、前部圧縮機からの高圧空気噴射とジェットエンジンの高温排気をスラスト・ベクトル・ノズルで下方へ噴射するという、ハリアーに似た直接排気方式だった。この直接排気方式では、排気の熱で滑走路を傷める恐れがあり、さらには排気が混ざって高温・酸素不足となった空気をエンジンが吸い込むと、出力が低下する恐れもあった[2]。
STOVLタイプにおいて、X-35はリフトファンを装備するのにあたり燃料タンクスペースをつぶしてリフトファンを装着する方式であるのに対して、X-32のSTOVLタイプではウェポンベイ(兵器搭載スペース)をつぶしてSTOVL用の装備をする方式となっていた[3][4]。
X-35の採用
X-32とX-35の各試験の結果を受け、2001年10月26日にX-35がSDD(System Development and Demonstration; システム開発実証)段階に進むことが決定し、概念実証機の名称のX-35から、F-35という制式名称が与えられることとなった[5]。
特徴
基本構造
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a6/F35A_Prototyp_AA1_5.jpg/250px-F35A_Prototyp_AA1_5.jpg)
F-35は、F-22に似た、ステルス性に優れた菱形翼のすぐ後方に、主翼と似た平面形の全遊動式水平尾翼を持ち、2枚の垂直尾翼はステルス性向上のために外側に傾けられている。主翼付け根前縁から機首先端まで続くチャインは機体の上面と下面を明確に分けており、エアインテーク(インレット)はチャインの下、コックピット後方の左右にある。従来の超音速ジェット機にあったような境界層分離板(boundary layer diverter)が無く、胴体側面の出っ張りによって境界層を押しやる仕組みになっており、ダイバーターレス(diverterless)超音速インレットなどと呼ばれている。
コックピットには前方ヒンジ方式の一体型キャノピーを採用した。これによりアクチュエーターの小型化と重量の軽減が可能となった。合わせて、整備の際のアクセスも容易となった。
電気システムのユニットや整備アクセス関連のユニットを、それぞれ胴体側面に配置した事で少ないアクセスパネルで対応できる。
エンジン
機体後部のエンジン排気もノズルによって下方へ曲げられる
エンジンの圧縮機で作られた高圧空気の一部も翼の左右に導かれて下方へ噴射される
F-35はその開発に際し各軍の要求の多くを実現しようとしたため、単発戦闘機としては重量級の機体となった。それに見合う様、エンジンも強力なF135を搭載しており、その推力は約177.9kNに達する。その為、F-35は単発機でありながらラファール(約150kN・合計)、ユーロファイター(約180kN・合計)、F/A-18E/F(約195.8kN・合計)等といった双発機の合計推力に匹敵する大推力を有する事となった。
また、GEアビエーションとロールス・ロイスが開発中のF136が、2010年以降互換性を持つとされる。
F-35B型は垂直離着陸を行う方法として、リフトファン方式を採用しているのが特徴である。
X-32と同出力のエンジンを使用したと仮定した場合、構造上X-35は、X-32より効率的にエンジン推力を伝達出来るため、離昇速度や燃費に優れる。離昇推力は基本的には、単位時間当りの空気流量×噴出速度から決定されるが、X-35はリフトファンの効果によりX-32と比べて離昇時の空気流量が大きくなるためである。当然、離昇推力が同一の場合は噴出速度が低くて済む。
だが、垂直離着陸時や短距離離着陸時にしか使用しないリフトファンとシャフトは、水平飛行中は不要となり重量と空間が無駄となる。これにより燃料搭載スペースが削られ、STOVL機であるF-35BはF-35A/Cより航続距離が短くなっている。また、構造の複雑化により整備性も悪くなる。
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F135エンジン
アビオニクス
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/18/F-35_EOTS.jpeg/250px-F-35_EOTS.jpeg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/37/F-35_Casco_Piloto.jpg/250px-F-35_Casco_Piloto.jpg)
レーダーにはF-22Aに搭載されているAN/APG-77 AESAレーダーをF-35の機体サイズに合わせ改修したAN/APG-81が搭載される。その探知距離は90nmとされており、これはAN/APG-77の約3分の2にあたる。また、FLIRを始めとする目標探知システムやレーザー誘導兵器の誘導等に使うレーザー照射装置等で構成される、EOTS(電子光学ターゲット探知システム)と呼ばれる装置も搭載される。
コクピットは先進的なものとなっており、その特徴の一つに、現代の戦闘機では常識となっていたHUDを装備しないという点が挙げられる。これはHMD(Hellmet Mounted Display ヘルメット装着型ディスプレイ)により、前方のみの限られた範囲でしか情報が表示されないHUDが必要なくなったためである。このHMDは、従来のJHMCS(Joint Helmet Mounted Cueing System 統合ヘルメット装着型キューイング装置)を更に発展させたもので、JHMCSは戦術機動中のミサイルの照準程度にしか使えず、HUDの機能全てを表示することは出来なかったが、F-35のHMDではディスプレイのリフレッシュレートを大幅に引き上げることによって火器の照準だけでなく、飛行情報の基本ディスプレイとして使用することが可能となった。また、HUDやコクピットのMFDにしか表示出来なかったFLIRの画像などの戦術データもバイザーに投影することが出来る。更にSTOVL仕様のF-35Bでは、コクピット直後にリフトファンを内蔵した関係で生じた左右下方と後方の死角を補うために、ノースロップ・グラマン社製の電子式光学画像配信システムEODASが採用されている。これは上下前後左右、つまり自機の全周360°をカバーした映像がバイザーに投影されるというもの。バイザーに情報を投影するイルミネーターが2基あるにもかかわらず、全体が炭素繊維でできているため、従来の汎用ヘルメットよりも軽量である。開発メーカーはイスラエルのビジョン・システム・インテグレーション(VSI)社で、VSIはJHMCSの開発も行なっている[6]。
また、主表示装置については、従来の機体と異なりひとつの大型液晶ディスプレイとなっている(カラー表示、タッチパネル式)。このディスプレイの表示をいくつかのウィンドゥで区切って分割し、そこに各種の情報を表示する為、従来の機体の表示装置よりも大幅に見やすくなっている。画面分割数やウィンドゥのサイズ等、表示する情報をパイロットが変更出来る。これにより、必要な情報のみを表示し不必要な情報は表示しない、という従来の機体にはない使い方も可能で、パイロットに与える負担を少しでも減らせると考えられている。その他、F-22A等と異なり操縦桿が可動するようになっている。
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EOTSの映像
武装
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/5c/F-35_weapons_bay.jpeg/250px-F-35_weapons_bay.jpeg)
空対空ミッションではステルス性を維持した状態では、胴体のウェポンベイに左右で最大4発のミサイルを、空対地ミッションでは同じく内部ベイに2000ポンドJDAM2発搭載と中距離空対空ミサイル2発を搭載可能である[7]。
また、爆弾架の部分に装着するタイプのラックを開発中である[要出典]。 さらに翼下パイロンが左右3ヵ所ずつあり(一番外側は空対空ミサイル専用)各種ミサイル・爆弾が搭載可能[7]。
機関砲は25mmのGAU-22/Aで、固定装備とするのはF-35Aのみ。B型とC型ではステルス性を備えた機関砲ポッドをオプションで機外搭載する[8][9]。
愛称
本機につけられている愛称である「ライトニングII(Lightning II)」は、かつてロッキード社によって開発され、第二次世界大戦で活躍したP-38ライトニングに因んだものである。また、共同開発の最大のパートナーであるイギリスの、自国で開発した唯一の超音速戦闘機イングリッシュ・エレクトリック ライトニングも多分に意識した愛称でもある[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。。なお、YF-22がF-15の後継機の座をYF-23と争った際、この愛称を名乗っていた時期もあった。
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初飛行直前のF-35A
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給油中のX-35A
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X-35Bの下面
派生型
以下に各タイプの概要を挙げる。なおF-35は現在開発中の機体であり、細かいスペックなどは発表されていない。
F-35A
F-35Aは、F-35シリーズの基本型でアメリカ空軍での使用が考慮されたCTOLタイプ(CTOL: Conventional Take Off and Landing; 通常離着陸)2006年12月15日初飛行。2013年より配備予定。
F-16の後継機とされ、F-22を補佐する戦闘機となる。F-35Aはほかの2つのタイプと違い固定武装として機関砲を装備することが要求されている。各種の兵装を胴体下の兵器倉に収容してステルス性が損なわれないように考慮されているがステルス性が重視されない作戦では主翼下6ヶ所のハードポイントに増槽や各種兵装を携行することが可能である。
一部ではF-22の導入機数を増加する為に配備機数の削減やA型としての開発を中止し、同じ様な機体構成のC型に統一するという計画も持ち上がっていたが、結局F-35Aの採用が決定となった。
F-35B
F-35Bはアメリカ海兵隊、イギリス空軍、イギリス海軍のシーハリアー、ハリアー IIの後継機として使用するために、Yak-141の技術を使用したSTOVLタイプ(STOVL: Short Take Off and Vertical Landing; 短距離離陸・垂直着陸)の垂直離着陸能力を持つ。2008年7月11日初飛行。2012年より配備予定。
エンジンのノズルを折り曲げて下方に向けることができ、エンジンから伸びるシャフトはクラッチを介して前方のリフトファンを駆動する。リフトファンの吸気ダクト扉は後方ヒンジによる一枚扉となっている。キャノピーの形状はA/Cと違い、完全な水滴型になっていない。
アメリカ空軍はA-10の後継機にA型ではなくB型を充当することを検討している。
イギリス海軍はクイーン・エリザベス級の就役を前提に、ハリアーⅡの後継機にB型ではなくC型を充当することを検討している。
F-35C
F-35Cは、アメリカ海軍での使用を主としたCVタイプ(CV: Carrier (based) Variant; 艦載型)2012年より配備予定。
F-14、F/A-18A〜Dの後継機となるため、艦上戦闘機に要求される低速時の安定性の強化に対して主翼と垂直尾翼を大型にしている。また航空母艦での運用のために、機体構造や降着装置の強化、前脚の2重車輪化とカタパルト発進バーの装着、アレスティング・フックの装備、特に空母格納庫スペース節減のための主翼の折り畳み機構を追加している。これらにより機体重量は増大している。
海軍独自に開戦第一撃を担える機体を必要としたため、シリーズ中もっとも高いステルス性を誇る。
UAV化計画
同機を無人航空機(UAV)としても使用できるタイプの機体の開発を計画している。
配備計画と課題
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/fb/F-35_potential_buyers.png/400px-F-35_potential_buyers.png)
パネルに計画参加国の国旗が並ぶ
現在アメリカ軍とイギリス軍はJSF約3,000機を配備することを予定している。またSDD段階から参加する国での採用もほぼ確実で、現在F-16などを使用しているその他の国でも採用される可能性が高く、最終的に製造数は5,000機以上にのぼることが予測されている。
量産計画
量産型の生産計画についてアメリカ軍では、2006会計年度に第1期初期低率生産(LRIP-1)の長期先付け(LL)品の購入が認められ、また2007会計年度には完全な予算が承認されたことで、2機のF-35Aの製造が開始された。また合わせて、LRIP-2のLLの購入も開始され、2008会計年度予算で全生産予算が承認されれば、F-35Aが6機とF-35Bが6機の、計12機の製造が開始される。このLRIPは2013会計年度のLRIP-7まで続けられる予定で、その後の2014会計年度より多年度調達(MYP)計画に移行するとされる。
ロッキード・マーティンでは、2010会計年度のLRIP-5からは対外有償軍事援助(FMS)機の製造を組み込む事も可能になるとしており、海外からの発注があれば、もっとも早ければ2014年の引き渡しが可能になるとしている。
前述したとおり、F-35の生産予定数はアメリカ軍とイギリス軍のもので2,600機近く見込まれている。これに加え、計画参加国のF-35導入が決定すれば、F-16の製造機数に達するものとみられている。ロッキード・マーティンでは、F-35を輸出可能な最初の第5世代ジェット戦闘機と位置付けている。また、F-16やF/A-18と同等の価格で諸外国に提供でき、維持・整備費などの費用はより安価になるとしている。その販売や運用中の支援についても、F-16で確立された国際協力関係が活かされることになる。
課題
概念実証機X-35の製作と飛行試験やF-35としての採用決定までは極めて順調に見えた計画であるが、幾多の国際共同開発機、あるいは空海軍共通機の例に漏れず、計画総コストや1機あたり単価の大幅な増加が問題となった。機体自体も、1フレームをベースに各タイプを開発する為、どれかひとつのタイプの設計の問題が発生した場合、他のタイプの設計にも大きな影響が出ると懸念されていた。
また、開発各国の様々な要求を満たす為に重量も超過気味となり、あらゆる部分の再設計や仕様変更によって予定の重量内に収めるべく努力がなされた。空軍・海軍・海兵隊、あるいはF-35を購入予定の各国の戦術機開発・取得のための予算のほぼすべてがこの計画に注がれている点も問題となっている。現実にF-35の単価上昇や計画の遅れが発生していることで、埋め合わせのために現用機を延命したり再生産したりする必要性があり[10]、その分F-35の予算を減らさなければならない。
しかし、各国各軍の利害調整のうえで巨額の予算を投じられた大規模プロジェクトから勝手に予算を取り上げて計画から抜け出すわけにも行かず、各国軍のジレンマは大きい。
採用国 | 購入量 | 型式 | 調達年 | 変動 |
---|---|---|---|---|
![]() |
100 | F-35A | 2014 | |
![]() |
80 | F-35A | 2017 | |
![]() |
48 | F-35A | 2016 | |
![]() アメリカ空軍 アメリカ海軍 アメリカ海兵隊 |
1763 340 340 |
F-35A F-35C F-35B |
2013 2015 2012 |
|
![]() |
25 | +50追加 | ||
![]() イタリア空軍 イタリア海軍 |
109 22 |
F-35A F-35B |
2014 2014 |
|
![]() |
48 | F-35A | 2015 | |
![]() |
85 | F-35A | 2016 | +15追加 |
![]() |
138 | F-35B | 2015 | |
![]() |
116 | F-35A | 2014 |
仕様
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/ec/F35ctolstores.jpg/250px-F35ctolstores.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/86/F-35_weapon_layout.jpg/250px-F-35_weapon_layout.jpg)
- 乗員: 1名
- 全長
- F-35A, F-35B: 15.41 m
- F-35C: 15.50 m
- 全幅
- F-35A, F-35B: 10.97 m
- F-35C: 13.12 m(折りたたみ時:9.10m)
- 全高: 4.60 m
- 翼面積
- F-35A, F-35B: 42.74 m2
- F-35C: 57.6 m2
- 空虚重量
- F-35A: 12,426 kg
- F-35B: 13,888 kg
- F-35C: 13,924 kg
- 機内燃料重量
- F-35A: 8,165 kg+
- F-35B: 5,897 kg+
- F-35C: 8,618 kg+
- 最大離陸重量
- F-35A, F-35B: 22,680 kg
- F-35C: 27,216 kg
- エンジン
- F-35A P&W製 F135ターボファンエンジン × 1
- F-35B P&W製 F135 ターボファンエンジン × 1
- F-35C P&W製 F135 ターボファンエンジン × 1
- 互換エンジン
- GE/RE製 F136 ターボファンエンジン × 1
- 推力: 18,144 kgf
- 最大速度
- F-35A, F-35C: M1.7
- F-35B: M1.6
- 航続距離
- F-35A, F-35C: 2,220 km
- F-35B: 1,670 km
- 戦闘行動半径
- F-35A: 1,090 km
- F-35B: 830 km
- F-35C: 1,110 km
- 実用上昇限度: 19,240m
- 固定武装(A型のみ): ゼネラル・エレクトリック GAU-12/U 25mm ガトリング砲 × 1
出典・脚注
- ^ F-111は機体の大型化のため、すべての運用計画に対応できるものではなかった。
- ^ X-35においてもエンジンからの排気は高温だが、エンジンによりシャフトで駆動されるリフトファンはいわば強力な扇風機であり、前部排気は高温とならず酸素も減らないため、これをエンジンが吸い込んでも出力が低下する恐れは比較的少ない。また、エンジンの排気もファンによってある程度撹拌されるため、滑走路に与えるダメージは少ないとされた。
- ^ 。燃料搭載量の減少は空中給油で補うことが可能だが、ウェポンベイはほかのものによって補うことが不可能とされた。
- ^ その他、X-32はギア(脚)をおろした状態でウェポンベイから兵器を投棄した場合、ギアにあたる恐れがあり、非常時の兵器投棄が難しい。
- ^ YF-23の次として予想されるF-24とはならなかった。
- ^ 月刊『航空ファン』2008年3月号、12月号、2009年2月号
- ^ a b F-35 Program Brief, USAF, 26 September 2006.
- ^ F-35 Joint Strike Fighter Media Kit Statistics (ZIP, 98.2 KB)
- ^ F-35 specifications, GlobalSecurity.org
- ^ 現行のF-16の次世代型F-16E/Fを一部生産し、F-35導入までのつなぎにするという手もある。
参考文献
- 月刊『JWings』2007年5月号 イカロス出版
- 月刊『航空ファン』2008年3月号、12月号、2009年2月号 文林堂
関連項目
- F-35に関連する作品の一覧
- 戦闘機一覧
- F-22 / X-32
- STOL(短距離離陸垂直着陸機)
- VTOL(垂直離着陸機)
- ホーカー・シドレー ハリアー / BAe シーハリアー / ハリアーII
- Yak-141