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一休さん (テレビアニメ)

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一休さん(いっきゅうさん)は、日本の禅僧一休宗純の子供時代の説話を基にしたテレビアニメである。

作品解説

1975年10月15日から1982年6月28日まで、NETテレビ(日本教育テレビ、本放送中の1977年よりテレビ朝日)系列で全296話が放送された。中央児童福祉審議会推薦番組。

制作は東映動画(現東映アニメーション)。東映および東映アニメーションが製作してきたシリーズでない単体のアニメ作品としては、2007年に「ONE PIECE」に記録を塗り替えられるまで、長らく最長の話数を誇っていた。

もともとは1クール(3ヶ月)の予定だった[1]とされる。 裏番組には、「ほんものは誰だ?!」(日本テレビ)、「ブラザー劇場」→「人生ゲームハイ&ロー」(TBS)、「クイズグランプリ」「スター千一夜」→「いじわるばあさん」(フジテレビ)等があり、さらにはNHK総合テレビすら1978年からは科学情報番組「ウルトラアイ」を投入した。強力なバラエティ・クイズ・ドラマなどが並ぶ裏番組の強い時間帯で、長期間の放映を成し遂げた。

初期は日本船舶振興会(会長が笹川良一の時代)の一社提供番組で、間のCM山本直純作曲「火の用心のうた」がよくOAされていた。当初は水曜19:30からの放送だったが、半年後に月曜19:30に移動した。放送末期のスポンサーはハウス食品の一社提供となっていた。

1960年代末に日本の民話をアニメ化する企画がこのアニメの原案である。その際、他の物語が数案あったが、最終的にこの物語に決定した。しかし、衣装の古さや仏教色の強さなどから、作品が日の目を見るには、本放送期間並みの年月を要することになった[2]

禅寺の安国寺(あんこくじ)を舞台に、一休がとんちを使ってさまざなな問題を解決していく。登場するキャラクターをユーモア豊かに描きつつも、南北朝の騒乱さめやらぬ混乱した時代背景を織り交ぜて展開する。

なお、大半の期間は一休の事件解決の痛快さが売り物だが、初期については南北朝の動乱直後の問題の深さ故に失敗する話や、伊予の局と会えずに悩む話(後の作品では一休に会って助言する話もある)など、痛快とは言い難い話もある。また、一休が武家同士の利己的な戦乱に蹂躙される庶民の姿に心を痛めたり、同じく将軍の命に忠実に従って出陣する新右衛門を複雑な表情で見送るなど、頓智咄の枠に収まらないシリアスな描写もみられる。中期以降は頓知話の種が尽きて、古今東西の物語を翻案したエピソードが多い。

番組初期の20話に、母親の伊予の局の厳しい言葉に衝撃を受けた末に、琵琶湖へ身を投げる(自殺未遂)。13話の冒頭で救われるが、本放送では時間帯が移動しておりかつ特別番組の放映で20話と21話の間が数週間開いている。これは成人後のエピソードの翻案とも考えられるが、当時の児童層の視聴者には酷な展開だったとも言われる。

最終回は一休が安国寺を去り修行の旅に出る話で、レギュラー登場人物一同が別れを惜しみ一休の旅の無事を祈るという設定である。ハッピーエンドの結末であるとともに一休(史実のこの時の名は周建)の子供時代の終わりと成長そして高僧への道を暗示した内容となっている。 最終回は普段の一休さんと全く違ったテイストを出しており、”ユーモア”が全く無い真摯な雰囲気になっている。

毎回、話の終わりに一休さんが『はぁ~い。面白かったぁ?じゃぁ~ねぇ~。』とのセリフがある。これは、虎や橋の話等、ユーモアのある笑い話系ではこの終わり方で、政治や人権、道徳に関するシビアな話、または感動系の終わりには、『はぁ~い。どうだった?じゃぁ~ねぇ~。』に変わる。 第74話のみ、一休さん不在の際に外観和尚がとんちを考える話で、その回は中間の『慌てない慌てない』アイキャッチも含めて和尚が務めた。

平均視聴率は24.2%、最高視聴率は1976年3月10日放送の27.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

このアニメは日本国外でも放送された。特に仏教国のタイでは教育的な内容から好まれ、Dr.スランプドラえもんが放映されるまではもっとも人気のあるアニメだった。中国でも人気があり、孫佳星が歌った主題歌が100万枚を超えるヒットになった[3]2006年7月から、ハワイの日本語ケーブルテレビ局、NGN(Nippon Golden Network)で、英語字幕つきで放送されている。

東映ビデオから、当時の東映アニメ同様に全話収録ではないが、VHSテープで発売されていた。近年VHSテープよりも更にダイジェスト版ながら、DVD化もされている。

登場人物

一休
声:藤田淑子 
本作品の主人公で実在の人物一休宗純をモデルとする。幼名は千菊丸(せんぎくまる)。安国寺では一番の後輩。正義感が強く心優しい、聡明な小坊主。作中では一休と呼ばれているものの、史実の一休は何度も名を変えており、実際には「周建」と名乗っていた時代と推測される。(スペシャル版で史実の一休の一生を紹介した際に、この点も述べられている)
苦手なものに蜘蛛、カミナリ、露姫(やんちゃ姫)、どちて坊やなど。
後小松天皇の庶子であることがアニメでは少しだけ触れられている。
さよちゃん
声:桂玲子 
一休の友達。安国寺境内の裏手に祖父の吾作と一緒に暮らしている。両親とは死別しており、どちて坊やとの会話で、戦に巻き込まれて犠牲になった事が語られている。懐に母の形見の櫛を持っている。
秀念(しゅうねん)
声:はせさん治 
安国寺最年長の兄弟子。兄貴風を吹かすものの、調子に乗りやすい面がある。桔梗屋の弥生に惚れている。初期は一休を小生意気と辛く当たることもあったが、弥生とのある一件を境に和解し、以降は良き兄貴分となる。
哲斉(てっさい)
声:清水マリ(5話まで) → 神谷明(6・7話)→ 井上和彦(22話以降)
安国寺の小坊主。 出家しているものの、将軍に敵対する南朝方の新田家ゆかりの人物。7話で一時還俗し戦いの世界へ戻るが、22話で再び寺へ戻ってくる。初めは生真面目で頑なな性格だったが、やがて皆と打ち解けていく。絵を描く事が趣味。
珍念(ちんねん)
声:鈴木富子 
安国寺の小坊主。 太っちょで食いしん坊。「トンカツ食って馬勝った」の名台詞は、実は彼の発言。おっとりしてマイペース。
黙念(もくねん)
安国寺の小坊主。背丈は一休くらいで、ちょっとおっちょこちょい。
哲梅(てつばい)
声:中野聖子 
安国寺の小坊主。 地味であまり目立たない。そばかすが特徴。
外観和尚(がいかんおしょう)
声:宮内幸平 
貧乏寺である安国寺の住職。小坊主達を厳しく時に温かく見守っている。将軍さまが一休をへこましたいがために度々難題を持ちかけてくるのを「義満公にも困ったものじゃ」とぼやく。一方で将軍さまや桔梗屋等の相談に乗ることもある。
実在の住職は像外集鑑で、これから一文字ずつ頂き、字を変えたと見られる。安国寺も室町幕府が後援している寺院であり貧乏寺ではない。
吾作
声:山田俊司
さよの祖父。貧しい寺男。大根作りの名人である。
たま
さよが飼っている猫。
性別は不明確で、回によってはメス猫の前で張り切るタマがオスとされたり、将軍様の可愛がるメス猫”ルリ”に焼きもちを焼くシーンでさよに「お姉さんなんだから」とメス扱いされたりと、まちまちである。
てるてる坊主
普段は安国寺の渡り廊下前の木にぶら下げられている。
時折、悩んだ一休が母に見立てて相談をしたりする。表情豊か。
どちて坊や
なにかにつけて「どちて?」と聞く。このため多くの者が回答に窮する。実は戦災孤児で、南北朝争乱によって両親を失っている。
蜷川新右衛(ヱ)門(にながわしんうえもん)
声:野田圭一
モデルは実在の人物である蜷川親当(にながわ ちかまさ)か、その父蜷川親俊か。寺社奉行という幕府の高官で武芸の達人でもある。普段は将軍の命により、天皇の御落胤という出自を持つ一休の周辺を監視している。云わばお目付け役だが一休とは非常に仲がよく、平素から将軍のわがままに手を焼いているため一休に助けを請うこともしょっちゅうである。彼が「いっきゅうさ~ん! 一大事でござる~!」と安国寺に駆け込んでくるパターンはこのアニメの王道。末姫に惚れているが、自らが末姫に惚れられていることには気付いていない。
風貌は、髷が長髪、など、どこか放送当時の青年を思わせる姿にデザインされている。
実際の蜷川氏は山城守護および政所執事を世襲した伊勢氏の親族であったため、伊勢氏の下で山城守護代および政所代として軍事・警察および財務・訴訟を司る一族として活躍した。また幕府の奉公衆でもあり、隣国丹波に所領を与えられ有事の際には軍事力を提供した。
実在の人物として蜷川新右衛門という連歌師がいるが、一休宗純の連歌の弟子であり、頓智の弟子ではない。歴史上では一休が壮年になってからの関係であり一休より歳若である。また、「寺社奉行」は史実では室町幕府には存在せず、江戸幕府の老中の次の高官である。
将軍さま
声:山田俊司
室町幕府の第三代将軍足利義満。南朝側の母を持つ一休の行動を警戒している。と同時にいつかは賢い一休をへこましたいと思っており、しばしば呼び寄せては無理難題をふっかけるのだが、大抵一休のとんちに一杯食わされて地団駄を踏むはめになる。非常に子供っぽい反面、素直に一休さんに対して負けを認めるあたりは、器量が大きく潔いとも言える。実際に作中でも、甥の小太郎が一休さんの頓智を認めず、負けを認めないのをたしなめるエピソードがある。わがままで戦も頻繁に行い、民の生活を顧みない事が多いが、時には正義感から仁政を行う事もある。ただしこれも、一休さんの頓智に負けた結果による事も多い。露姫が苦手で、遊びに来たときには新右衛門や一休に面倒を見させている。
実在の人物だが、史実の足利義満は、一休が生まれた時には既に将軍職を息子の足利義持(作中では義持はハイハイが終わったばかりの幼児)に譲っており、金閣寺も義満の隠居所である。一休の時代においては「将軍さま」ではなく、「前将軍さま」か「太政大臣さま」が正しいのだが、番組スタッフがあえて将軍として登場させたという。史実でもアニメの描写に輪をかけてわがままな性格と言われるが、室町時代の全盛期を築いた有能な人物だった。
桔梗屋利兵エ(衛)(ききょうやりへい)
声:緒方賢一 
幕府御用達の商人。本職は米問屋らしいが、色々と手広く商売をやっている。豪商の常でお金に目が無く、度々阿漕な商売をして痛い目にあうか一休にとんちでとっちめられるが、懲りない。一休に嫌がらせをする事もしょっちゅうだが、困り事は一休に泣きついて相談を持ちかける。根は悪い人ではなく、将軍にはもちろん、安国寺にも度々つけ届けをしており、案外信心深い。
桔梗屋弥生(ききょうややよい)
声:小山まみ吉田理保子 
桔梗屋利兵エの美人で我侭な一人娘。父の商いの手伝いをしている。一休への嫌がらせも自ら行うが、困り事は父親同様一休さんに泣きついて相談を持ちかける。一休に対しては、困らせたりへこませたりしてやろうという感情と同時に好意も持っており、ある種喧嘩友達のような関係。一休の兄弟子秀念さんが、秘かに想いを寄せている。
伊予の局(いよのつぼね)
声:坪井章子増山江威子
一休の母。公家の娘で天皇の女官。将軍に敵対していた南朝側の公家の出身であったため、将軍によって一休と引き離され小さな家に暮らしている。将軍は後にこれを恥じ、一休と住めるように大きな家を建てるが、一休はこれを断る。息子の身を日々案じ、修行を重ねて立派な僧になって欲しいと願っている。
ナレーターは伊予の局と二役で坪井が行っており、伊予役と共に増山に引き継がれた。
五条露(ごじょうつゆ)
声:白石冬美
モデルは大名の七条家(赤松氏)と思われるが五条家の末娘となっている。将軍さえも恐れぬその性格からやんちゃ姫と呼ばれ、その扱いには一休ですら手を焼いている。本来は心優しいところもあるが、あまりのやんちゃぶりにそういった印象は希薄である。また、ロマンチストな一面もあるらしく、自身が飼う番いの小鳥の雄に「秋の日の 鳥の鶏冠の 藤三郎」と(一休原案の「籐三郎」に無理やり、雅やかにして欲しいと)名づけさせたりしている。ちなみにこれも名付け親は一休であるが、雌の名は「ぴぴ」である。
末姫(すえひめ)
大大名大内家の娘。淑やかで美しい姫。新右衛門とは実は相思相愛だが、女心に疎い新右衛門はその想いに気付いていない。一休さんも(時には新右衛門に頼られて)何とか仲を取り持とうと画策するが、外観和尚から子供が大人の色恋沙汰へ介入すべきでないと、叱られる羽目になる。

※エンディングではその回の出演した声優全員はクレジット表示されず、主役クラスの声優のみ表示され、その他の声優は『協力:青二プロ』の表示で統一されていた。

とんち

このアニメでは度々とんち勝負や様々な問題のために、一休が頓智(知恵)を使って解決させる。

頓智を働かせるときには、まず胡座をかき両手の人差し指を舐め、その指で側頭部に2回ほど円を描いてから座禅を組み、ポク、ポクという木魚の音をバックに目を閉じて考える。 その後、閃いたときにはチーンという仏鈴の音と共に一休は目を見開く。何も浮かばない時には一休は黙想をやめ「だめだ…」と溜息をつく。細部は省略されることもある。

一休以外の者が同じことをする場合は音が変だったりして、失敗したりすることが多い。例えば新右衛門の場合は木桶の底を叩いたような音が、桔梗屋や将軍の場合はに水滴が落ちたような音がする。

とんち勝負の出題時には毎回、出題者が「そもさん(什麼生。宋代の俗語で「さあどうだ」「いかに」)」と問い、回答者が「せっぱ(説破)」と返し、「汝に問う!」で始まる問答が入る。

「ポクポクポク…チーン!」は様々な分野でネタとして使われている。FUJIWARA原西孝幸はこれを元に「ポクチンダンス」というギャグを編み出している。

スタッフ

主題歌・挿入歌

主題歌
  • オープニング『とんちんかんちん一休さん』(歌:相内恵、ヤング・フレッシュ
  • エンディング『ははうえさま』 (歌:藤田淑子
    2曲ともに、作詞:山元護久 作・編曲:宇野誠一郎
    エンディングの歌詞は一休が書いた母宛の手紙になっている。また、映像は安国寺のてるてる坊主が四季の風景を背景に描かれる。
挿入歌
  • 『鐘がゴーンと鳴りゃ』
    作詞:辻真先 作曲:宇野誠一郎 歌:藤田淑子
    一休達が作中よく歌っている曲。

ネット局

同時ネット
時差ネット

本放送終了後、首都圏では、テレビ朝日や他の在京キー局、独立U局なども含めて、再放送は見られないようである。首都圏以外では、本放送終了後も盛んに再放送された。この他、東日本放送のように、本放送中に初期作品の再放送を行った例もある。

首都圏では本放送中にフジテレビが1979年6月29日から1ヶ月間午前6:00~6:30の枠で初期作品の再放送を行っていた。4大キー局の一つが他キー局で本放送中の番組の再放送を行った数少ない例である。

現在、CSではアニマックスで放送されている。過去にはファミリー劇場でも放送されていた。また、NHK-BSの「衛星アニメ劇場」や、WOWOWなど、CS放送以外の衛星放送での放送例は、2007年4月4日よりBS朝日で再放送が始まるまではなかった。

前後番組
NET 水曜19時台後半枠
【当番組まで日本船舶振興会一社提供枠】
前番組 番組名 次番組
一休さん
(1975年10月~1976年3月)
水曜スペシャル
(19:30 - 20:54)
NET→テレビ朝日系 月曜19時台後半枠
【当番組より日本船舶振興会→ハウス食品一社提供枠】
敬礼!さわやかさん
(ここまでドラマ枠)
一休さん
(1976年4月~1982年6月)

脚注

  1. ^ ラジオ番組「大アニメ博覧会」に一休役の藤田が出演した時のトークより
  2. ^ 「テレビ ヒット番組のひみつ 「ジェスチャー」から「おしん」まで」(志賀信夫/著)、日本放送出版協会
  3. ^ 人気アニメ視聴率ランキング完全版テレビ朝日2004年8月22日放送。

外部リンク