内外情勢の回顧と展望
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内外情勢の回顧と展望(ないがいじょうせいのかいことてんぼう)は、法務省の外局である公安調査庁が毎年12月に発表している、日本及び海外の治安情勢をまとめた報告書である。
公安調査庁
詳細は「公安調査庁」を参照
概要
秘密情報を盛り込むわけにはいかないためか、いささか面白みに欠ける内容となっているものの、日本が抱える治安・安全保障上の問題について、国民に警鐘を鳴らすという目的を持っている。
報告の対象は、北朝鮮、中国、ロシア、イラク、国際テロ組織、オウム真理教、日本共産党、過激派(新左翼)、日本赤軍、右翼、「特異集団」(カルト)など。
2004年(平成16年)12月に公表された「平成17年 内外情勢の回顧と展望」では、北朝鮮情勢について、「一般住民の間で体制への不満や批判が増大し、権力基盤に亀裂が生じることも考えられる」と分析したほか、オウム真理教(アーレフ)については、「依然として危険性を有し、規制強化を求める声も寄せられている」として、「徹底した調査、検査を推進する」と引き続き同教団を注視する必要性を強調した。
また、公安調査庁は、2年に一度、「国際テロリズム要覧」と呼ばれる資料を発表しているが、これは国際テロ問題をまとめた日本政府機関で唯一の資料とされ、研究者からも評価が高い。「回顧と展望」、「国際テロリズム要覧」ともに書店での販売はされていないが、「回顧と展望」については、公安調査庁ウェブサイトから入手できる。
似たような名称の報告書に、外務省が公表している「国際情勢の回顧と展望」や警察庁の「治安情勢の回顧と展望」がある。
2005年(平成17年)版の目次
第1 平成16年の公安情勢の概況
第2 平成16年の国際情勢
- 1 北朝鮮・朝鮮総聯
- 膠着状態が続いた北朝鮮の核問題
- 北朝鮮は,拉致問題の早期幕引きを狙いつつ,日朝国交正常化の早期実現,大規模経済支援の獲得を企図
- 体制不安定化の兆しを見せ始めた北朝鮮
- 韓国に対する働き掛けを強める北朝鮮
- 既存体制・路線に固執する朝鮮総聯
- 2 中国
- 胡錦濤総書記が党中央軍事委員会主席に就任
- 対日関係を重視しつつも,小泉首相の「靖国参拝」に反発し,首脳相互訪問には応じない姿勢を継続
- 海洋権益の拡大を目指す中国
- 陳水扁総統の再選で「台湾独立」路線への傾斜に警戒感を強める中国
- 3 ロシア
- 国家統制色を強める第二期プーチン政権
- 4 イラク
- 主権委譲後もテロが頻発し,治安に不安を残すイラク
- 5 アフガニスタン
- 民主化プロセスが進行するも不透明な情勢が続くアフガニスタン
- 6 国際テロ
- 脅威を増すイスラム過激派
第3 平成16年の国内情勢
- 1 オウム真理教
- 死刑判決を機に「麻原回帰」を一層強めたオウム真理教
- オウム真理教の施設延べ36か所に対して立入検査を実施
- 2 イラク情勢をめぐる国内諸団体の動向
- イラク情勢をめぐり国内諸団体が様々な運動を展開
- 3 共産党・過激派等
- 共産党や過激派などは,沖縄などで反米軍基地運動に力を注ぐ
- 共産党や過激派などは,憲法及び教育基本法の改正問題,年金制度改革をめぐり,反対運動の盛り上げを図る
- “新しい党”との印象付けに努める共産党
- 国内での活動基盤を失いつつある日本赤軍
- 海外団体との連携を強化する反グローバル化勢力
- 4 右翼諸団体
- 右翼団体は,時局問題をとらえて,北朝鮮,中国批判を中心に活動
- 5 特異集団
- 自然災害による不安や不透明な朝鮮半島情勢に乗じて勢力拡大を図った特異集団
公安調査庁は、明らかに犯罪・暴力行為を行っている集団(国際テロ組織、オウム真理教、一部の新左翼セクトなど)と、そうとはいえないものの監視の必要があるとする団体、日本共産党を監視対象としている。