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三つ数えろ

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三つ数えろ
The Big Sleep
監督 ハワード・ホークス
脚本 ウィリアム・フォークナー
リイ・ブラケット
ジュールス・ファースマン
製作 ハワード・ホークス
出演者 ハンフリー・ボガート
ローレン・バコール
音楽 マックス・スタイナー
撮影 シドニー・ヒコックス
編集 クリスチャン・ネイビー
配給 ワーナー・ブラザーズ
公開 1946年8月23日 アメリカ合衆国の旗
1955年4月 日本の旗
上映時間 114分
製作国 アメリカ
言語 英語
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三つ数えろ』(みっつかぞえろ、The Big Sleep)は、1946年アメリカ映画レイモンド・チャンドラーの『大いなる眠り』をハワード・ホークスが映画化したサスペンス映画。プロットが大変込み入っていることでも有名。

キャスト

ストーリー


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


戦争が終わった1940年代。ロサンゼルス。地方検事と衝突して検事局の調査員を辞職、私立探偵を開業したフィリップ・マーロウがスターンウッド将軍の邸宅を訪れる。屋敷には大富豪の娘として我儘に育った姉のヴィヴィアンと妹のカルメンが住んでいるが、この美しい姉妹は同時に老人の頭痛の種でもあった。将軍は古書店主のガイガーがカルメンに対しバクチの借金の催促の名目で脅迫してきたと探偵に打ち明けて解決を依頼する。将軍の用心棒でお気に入りのリーガンはマーロウとも旧知の仲だが、最近になって賭博師のマースの妻と一緒に姿を消しており雲行きがおかしい。契約を交わし帰ろうとするマーロウを姉のヴィヴィアンが引きとめる。館では用心棒だけでなく運転手も消えていたと知るマーロウ。姉は妹と違い相当なしたたか者らしい。

図書館で古い本の情報を仕込んだ探偵は古書店街に足を運ぶ。正体を隠してガイガーのアジトを訪問するが本人は不在。応対に出たアグネスは客のマーロウを邪険にして追い払う。暗くなってから帰ってきたガイガーを尾行するとラバーン・テラスの一軒家にたどり着く。雨の中、別の車がやって来るが、運転していたのはカルメンだった。外から窺っていたマーロウは、銃声と悲鳴を聞くと家の中に走りこむ。裏庭から立ち去る2台の車。家の中にはチャイナドレスで素足を放り出し酩酊状態のカルメンと射殺死体となっているガイガー。胸像に仕込んだ隠しカメラからはフィルムが抜き取られていた。無人の一軒家、淫靡な隠しカメラ、脅迫者の死体、酩酊した大富豪の娘、他には誰もいない。

マーロウは意識の戻らない娘を彼女の車でスターンウッド邸まで連れ帰ると「何も無かったことにしろ」とヴィヴィアンに釘をさす。自分の車を取りに雨の中を歩いて戻ってみると現場からはガイガーの死体が消えていた。その夜、事務所にいたマーロウを調査員時代からの知り合いであるバーニー刑事が訪れ、スターンウッド家のクルマと運転手が波止場で発見されたと知らせてくれた。運転手のテーラーの死体を見に行ったマーロウ達は、テーラーの死は自殺とも他殺とも判断がつかないと話し合う。

翌朝、事務所に出勤したマーロウを待っていたヴィヴィアンは、隠しカメラで写したカルメンの写真を5000ドルで買い取るようにとの脅迫状が届いたと相談する。再びガイガーのアジトを訪問すると、応対に出たアグネスの様子から逃走の準備を察知。再び尾行して新たな脅迫者ブローディのアパートを突き止める。脅迫者との交渉の前に昨夜の惨劇のあったラバーン・テラスに足を向けたマーロウをヴィヴィアンが待っていた。二人で事件を検証するため家屋の様子を見て廻る中、家主であるマースとその子分たちが入ってくる。マーロウは自分の正体を隠したままマースの様子を窺うが、互いに尻尾をつかませない…。

脅迫事件に戻ってブローディのアパートに乗り込むと、今度は別の男がブローディを殺してしまう。犯人を捕まえて警察に引き渡すマーロウ。最初の脅迫者ガイガーは昨日死んで、新たな脅迫者ブローディが今日死んだ。事件は終わったと小切手を渡すヴィヴィアンにマーロウは納得していない。証拠は無いが、2人の脅迫者を殺した黒幕はマースと睨んでおり、事件を決着させたいスターンウッド家が地方検事にかけた圧力をかわして、マースとカジノで会う約束を取り付ける。

カジノの先客であるヴィヴィアンとマースの悶着から、逆に二人が裏で取引きをしていると感づいたマーロウは、車の中で彼女を問い詰めるが頑として口を割らない。ヴィヴィアンに惹かれているマーロウは彼女を車の中で抱きしめる。ヴィヴィアンを送って事務所に戻ったマーロウをマースの子分たちが襲う。痛めつけた後で手を引けと脅迫して去っていく様子をガイガーの子分ハリーが見ていた。リーガンの居場所を教えるかわりに200ドル交換を持ちかけたハリーだが、マースの子分たちは邪魔な存在として「助かりたければ三つかぞえろ」と嘯きつつ無慈悲に殺す。殺し屋に手が出せないマーロウは惨劇をなすすべもなく物陰から見ているしかなかった。

マーロウは生き残ったアグネスに200ドルを渡し、リーガンの居場所であるロード・サイドの自動車工場を聞き出すが、そこには敵の罠が仕掛けてあり殺される直前のマーロウを助けたのはヴィヴィアンだった。アジトの殺し屋たちを片付けるとヴィヴィアンとラバーン・テラスに赴き、カジノにいたマースヘ『自分は自動車工場にいるが』話し合いたいと電話をかける。二人が会う場所に指定したラバーン・テラスへカジノとロード・サイドから向かった場合は、自分が先に到着するとマースは気づく筈。そこでマーロウ殺しの罠を張るマースの裏をかくしか勝ち目はないと考えるマーロウ。平気で子分に殺しをさせるマースの底知れない恐ろしさが身に染みたが、ここで一気に逆襲へ出る。

やはり殺し屋を連れてきたマースは、子分たちにマーロウがやって来た際にはそのまま家に入れておき「必ず最初に家から出るはずの」マーロウを玄関で撃ち殺せと指示しておく。窓の隙間から様子を見ているマーロウ。家の中に入ってきたマースは先客の姿に驚くが、体勢を立て直すとリーガンは既に死んでおり酩酊状態のカルメンが殺したこと、カルメン自身は殺した事に気付いていないと真相を語る。真の恐喝者であるマースへの怒りと、利用される姉妹へのやり切れなさにマーロウは拳銃を取り出すと「助かりたければ三つかぞえろよ」と脅しマースを玄関から最初に家から飛び出させて子分たちに撃ち殺させる。ヴィヴィアンに全ては死んだマースの仕業として警察に解決させるつもりだと話して事件は終わる。

その他

1945年版と1946年版の2種類がある。正規版DVDが発売中で、大変珍しい両面1層となり、A面に1945年版、B面に1946年版が入る。なお、現在米国においてもパブリックドメインであることから激安DVDが発売中で、こちらは1946年版となる。

原作者チャンドラーは、ボガートが自分の考えるマーロウ像より背が低いことから、当初はこのキャストに難色を示した。冒頭、ボガート演じるマーロウが「背が低いのね」と言われるシーンがあるが、原作の同じ場面では「背が高いのね」と言われている(辛辣な女性に対してマーロウは「努力はしてみたんだが」と、とぼけてみせる)。

「テーラーの死」は原作でも死因がはっきりと書かれていない。そのためホークスはチャンドラーに問い合わせたがチャンドラー自身も「わからない」と答えたという。公園でボートを漕いでいたボガードが「運転手はどうなったんだ」と聞かれた際に、この20世紀最も人気のあった俳優は誰に言うともなく「俺だってしらねえよ」と洩らしたとされる。

関連書

  • 直井明『本棚のスフィンクス 掟やぶりのミステリ・エッセイ』論創社 - 原作と映画とを詳細に比較した文章が収録。