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女系天皇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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女系天皇(じょけいてんのう)とは、古来より父系のみによって伝えられてきた皇統を受け継がず、単に女性皇族の子であることをもって即位する天皇を言う。

万世一系と呼ばれる父系で受け継がれてきた皇統とは異なり、母方の女系先祖を辿っても決して天皇には行き当たらない点から考えれば、女系天皇という言葉そのものがかなり不正確であり、正確には双系、あるいは両系とでも呼ぶのが適切な表現であろう。

語句の類似性から女性天皇と混同されることが多いが、女性天皇とは単に女性の天皇を指す言葉であるのに対し、女系天皇とは本人の性別に関わらず、母親が皇族であるという理由から皇室の血統を受け継ぐ天皇を指すものであり、本質的に異なる概念である。

女系天皇論の背景

男女平等論からの主張と、現実に現在生じている男性皇族の不足への対応策としての主張と、2論あると思われる。

男性皇族の不足については、客観的に見て、現在の皇室が採る一夫一妻制による面が大きい。

すなわち、一夫一妻制のもとでは、皇后たる1人の女性が生涯に出産できる子の数は限られており、また皇后の健康状態、不妊、天皇皇后の不仲などによりそもそも子ができないこともあるから、天皇の子を多数確保し続けることは困難であり、男性の皇子を得られなくなる可能性は比較的高い。この場合、男系の皇統が断絶するリスクが無視できない程度に高くなる。

しかし、一夫多妻制が採られていれば、側室にも子を産ませることにより、このような皇后たる女性側の要因により子孫を得られなくなる危険性は低くなるし、また仮に男性天皇側の原因により子ができない場合であっても、伝統的に一夫多妻制が採られていれば、当該男性天皇に同腹または異腹の弟皇子がいる可能性が高く、その者を皇太弟にすることにより、男系男子の子孫による皇位継承を維持することができる。

日本の皇室においては、伝統的に(大正天皇まで)一夫多妻制が採られており、例えば第119代光格天皇から第124代昭和天皇まで6代続けて正妃でない実母の所生である。しかし、昭和天皇の代からは西洋に倣って一夫一妻制が導入され、天皇の子の人数が減り、従って男系男子の子孫の確保が従前より困難になり、現在の男性皇族の不足問題が発生したものと思われる。

外国の諸王国を見るに、キリスト教圏では中世から伝統的に一夫一妻制(側室の子に王位継承権がない)が採られており、歴史上、男系男子の断絶により女系の子孫を王に迎えるという事件が多数起こっている。男系男子の子孫による王位継承を長期間維持できたのは、独りフランス王家ユーグ・カペーに始まりルイ・フィリップに至るカペー家)のみ、という状況である。

女系天皇の正統性

「皇胤(天皇の男系子孫)のみが皇位を継承することができる」とする一貫した不文律が堅く守られてきたとされる日本の歴史上、女系天皇は一度として存在したことがない(歴代の女性天皇はいずれも独身か天皇・皇太子の配偶者(未亡人)であり、かつ天皇又は男系の皇子を父に持つ女性皇族であった)。

また、女系天皇の即位によって、「神武天皇以来男系で連綿と継承されてきた」とされる「万世一系」が断絶するとして、「『万世一系』およびそれに付随する神話的な権威こそが皇室の世襲の最大の要件」と考える人々からは「女系天皇には日本の象徴としての歴史的正統性が無く、国民統合の象徴たりえない」との指摘がなされている。また、一部では女系天皇は「天皇のまがいもの」とする意見も聞かれる。

いずれにせよ、今後女系天皇の即位が実現するとしても、女系天皇には「万世一系」の皇統や神話による権威的な裏付けが無いことは否定し得ない事実であり、そのような日本古来の歴史や文化と断絶した新たな「天皇」が果たして国民統合の象徴として従来の天皇と同等の正統性を保持していけるかどうかは全く以て不明である。

女系天皇に対する皇族の意見

憲法上の制約もあり、天皇及び皇族がこの問題について自らの意見を公にする機会は限られている。だが、三笠宮寛仁親王のように、女系天皇への反対姿勢を明言する皇族も存在する。

寛仁親王は、「歴史と伝統を平成の御世(みよ)でいとも簡単に変更して良いのか」と女系天皇を容認する意見を批判した上で、皇籍を離脱した旧皇族の復帰や、旧皇族を女性皇族の養子として皇位継承権を与えるなどの方法により、男系継承を堅守すべきだとの考えを示している。

また、「万世一系、一二五代の天子様の皇統が貴重な理由は、神話の時代の初代・ 神武天皇から連綿として一度の例外も無く、『男系』で続いて来ているという厳然たる事実」と指摘した上で、

(1)皇籍離脱した旧皇族の皇籍復帰

(2)女性皇族(内親王)に旧皇族(男系)から養子を取れるようにし、その方に皇位継承権を与える

(3)廃絶になった秩父宮や高松宮の祭祀を旧皇族に継承してもらい、宮家を再興する

などの方法を挙げている。

 その上で、「陛下や皇太子様は、御自分達の家系の事ですから御自身で、発言される事はお出来になりません」とし、「国民一人一人が、我が国を形成する『民草』の一員として、二六六五年の歴史と伝統に対しきちんと意見を持ち発言をして戴かなければ、いつの日か、『天皇』はいらないという議論にまで発展するでしょう」と結び、歴史と伝統を無視した女系天皇容認の動きに強い警鐘を鳴らした。