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ジゼル

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ミルタ役を踊るN・コロソワ (サラトフ劇場)

ジゼル』(Giselle )は、アドルフ・アダン作曲によるバレエ作品(のちの改訂時にヨハン・ブルグミュラーレオン・ミンクスが曲を追加している)。ロマンティック・バレエの代表作の一つで、現在でも頻繁に上演されている。

概要

結婚を目前にして亡くなった娘達が妖精ウィリー[1]となり、夜中に森に迷い込んできた男性を死ぬまで踊らせるというハインリッヒ・ハイネによって紹介されたオーストリア地方の伝説に着想を得て作られた。2幕物で、第1幕の昼間の森の場面と第2幕の夜の場面の対照が印象的である。主人公が死装束で踊る唯一のバレエ作品といわれる。

主な登場人物

  • ジゼル:村娘
  • アルブレヒト:貴族、版によってはアルベルト[2]
  • ヒラリオン:ジゼルに思い焦がれる森番の青年、版によってはハンス
  • バチルダ:アルブレヒトの婚約者で公爵令嬢
  • ベルタ:ジゼルの母親、寡婦
  • ミルタ:ウィリー(精霊)の女王
    注:バレエ団により解釈が違う。

あらすじ

第1幕

心臓が弱いが、笑顔を絶やさない踊りの好きな村娘ジゼルに、アルブレヒトは貴族である身分を隠し、名をロイスと偽って近づく。ふたりは想いを通わせるが、ジゼルに恋する村の青年ヒラリオンは面白くない。彼はアルブレヒトが普段の衣装や剣をしまう小屋から剣を見つけ、村の青年ではないことを確信してその剣を持ち出す。

ある時、ジゼルの村にアルブレヒトの婚約者、バチルダの一行が狩の途中に立ち寄る。村娘ジゼルとバチルダはお互い結婚を控えているもの同士として仲がよくなる。その後、ヒラリオンが持ち出した剣によりアルブレヒトの身分が暴かれる。アルブレヒトは混乱するジゼルをなだめるが、ヒラリオンは更にバチルダと公爵を連れて来る。もはやごまかしようのなくなったアルブレヒトは公爵に礼を執り、バチルダの手にキスをする。それを見たジゼルは錯乱状態に陥り、母ベルタの腕の中で息絶える。ヒラリオンとアルブレヒトは互いの行為を責め合うが、村人たちやベルタに追い出されるように退場したのはアルブレヒトだった。

第2幕

森の沼のほとりの墓場。ここは結婚を前に亡くなった処女の精霊・ウィリーたちが集まる場所である。ジゼルはウィリーの女王ミルタによってウィリーの仲間に迎え入れられる。

ジゼルの墓に許しを請いにやってきたヒラリオンは鬼火に追い立てられる。ウィリーたちは夜中に迷い込んできた人間や裏切った男を死ぬまで踊らせるのである。ウィリーたちがヒラリオンを追う間、ジゼルを失った悲しみと悔恨にくれるアルブレヒトが彼女の墓を訪れ、亡霊となったジゼルと再会する。

ヒラリオンはウィリーたちに捕らえられて踊らされ、休むことを許されず力尽き命乞いをするが、ミルタは冷たく突き放し死の沼に突き落とす。次にミルタはアルブレヒトをも捕らえ、力尽き死に至るまで踊らせようとする。アルブレヒトが最後の力を振り絞り踊るときジゼルはミルタにアルブレヒトの命乞いをする。そのために時がすぎ、やがて朝の鐘が鳴り朝日が射しはじめるなかウィリーたちは墓に戻っていく。アルブレヒトの命は助かり、ジゼルは朝の光を浴びアルブレヒトに別れをつげて消えていく。

解釈をめぐって

アルブレヒトのジゼルへの愛は貴族の戯れに過ぎなかったのか、それとも本当にジゼルを愛していたかは、ダンサーにより解釈が異なる。ユーリー・グリゴローヴィチ版以降、第2幕ではジゼルがアルブレヒトを許しウィリーたちから守るという解釈をすることも多い。また、マッツ・エック版では、ジゼルは死ぬのではなく、精神病になるといったような解釈をされている。

脚注

  1. ^ 男性に裏切られて亡くなるという悲しい思いを抱いているために、妖精というより男性に対する怨念のこもった悪霊であるが、その姿は若い娘の姿をしている。
  2. ^ 初演の時は「アルベール」となっていたが、後にゴーティエ自身が「アルブレヒト」に変更した。

参考文献