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湖水地方

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6月の湖水地方
湖水地方の位置

湖水地方(こすいちほう、Lake District、もしくはThe Lakes)は、イングランドの北西部、ウェストモーランドカンバーランド郡ランカシャー地方にまたがる地域の名称である。

概要

氷河時代の痕跡が色濃く残り、渓谷沿いに大小無数の湖が点在する風光明美な地域でリゾート地・保養地としても知られる。1951年にはその大部分にあたる2292k㎡が国定公園に指定された。これはコロンビアの面積とほぼ同等で、イングランドとウェールズ内に13ある国定公園では最大、イギリス国内の国定公園としてはケアンゴーム国定公園に次いで第二位の規模を誇る。

地理

スコーフル・パイクとU字谷

湖水地方は今から約15000年前の最終氷期の終了とともに形成されたと考えられている。氷河が衰退するとそのあとには氷河が土砂を削り取ったU字谷圏谷が残る。これらはその多くが水を貯めこみ湖となった。湖水地方近辺は緯度が高く、平均気温が低いために遷移が進みづらく湖とならなかった部分は岩場やムーアが形成されてシダなどが繁茂した。森林限界以下にはオークが茂り、19世紀にはマツのプランテーションが開かれた。標高800mから900mあまりの山がいくつもあり、イングランド最高峰のスコーフル・パイク(標高978m)を擁し、イングランドでもっとも深い湖もある。

また、地形は以下のようにいくつかの区分に分けられている。

中央高原(central fells)

北西高原(north western fells)

北西部はボロウデール(谷)とバターミア(湖)の間の地域を指す。

西部(western fells)

東部高原(eastern fells)

極東高原(far eastern fells)

南東高原(south eastern fells)

南西高原(south western fells)

中央部

気候

イギリス気象庁の観測によると、湖水地方の平均降水量は年間2000mmということであるが、地域によって大きな差がありボローデール(ボロー渓谷)に位置するセスウェイト集落が最も多く年間3300mm程度、場所によっては5000mmを記録するのに対し、東側のペンリス(厳密には湖水地方から外れる)では1000mmに満たないという。3月から6月にかけてが降水量が少なく、10月から1月にかけて多い。

月別平均気温は1月の3℃(37°F)が最低で、7月の15℃(59°F)が最高である。湖水地方はロシアのモスクワとほぼ同緯度だが、北大西洋海流の影響でモスクワよりも温暖である。このため山間部を除けば、雪が積もることもほとんどない。ただし、年間を通じてが発生し日中に平均2.5時間、沿岸部では平均4時間程度は霧に包まれる。

地質

湖水地方の地質はとても複雑であるがよく研究されている。最古の地層は約5億年前のオルドビス紀粘板岩火山岩のもので、粘板岩は北部の方で火山岩は比較的高所で見つかっている。後年、これらの岩石でできた割れ目にマグマが貫入したために火成岩もみられる。その上にシルル紀に形成された石灰岩が多く見られる。

動植物

湖水地方には多くの動植物が生息している。キタリス(現地ではレッド・スクレイルと呼ぶ。赤いリスの意)は最も多くみられる動物の一つである。植物は貧栄養地を好む食虫植物の仲間が多い。魚ではサケ科の3種、vandesius、Schelly、ホッキョクイワナが貴重である。特にvandesiusはバセンスウェイト湖、ダーウェントウォーターの2か所でしか確認されていない。これらの希少種の保護を目的に14の湖で生き餌ルアーによる釣りを禁止する条例が2002年6月より施行された。外来種の問題は特に魚において顕著である。スズキ目のruffeはほかの魚の卵を食べてしまうという点で脅威となっており、特に産卵から孵化まで120日もかかるvandesiusでは深刻な問題となっている。

もっともイギリス固有の動植物は種レベルで見た場合の「固有種」では0と言われており、一般的な種類は他の地域やヨーロッパの大陸部(アルプス山脈以北)でも見られる。

文化

産業

新石器時代の湖水地方は石斧の産地だったと考えられている。

牧畜、特にヒツジの牧畜はローマ時代より続くこの地域の主要産業である。現在ではヒツジは肉や羊毛で地域経済を支えるだけでなく、観光客が求める風景の一部にもなっている。各地で見られる石垣も元はと言えばヒツジが逃げ出さないように建てられたものだ。2001年に大流行した口蹄疫は牧場主に大きな打撃を与えた。これは湖水地方で用いられていたフェンスの貼り方に問題があり、山頂側はフェンスを張らず通電させなかったことにある。これが山を越えて行き来する一部のヒツジ同士で接触を招き感染が拡大したとされている。以後、山頂部にもフェンスを張り通電させるようになっている。

鉱業はを産出する。また重晶石(主成分:硫酸バリウム)、グラファイト粘板岩(スレート)を産する。湖水地方の伝統的な家屋ではスレートを薄くしたもの積み重ねて外壁を構成している。

19世紀になると織物の原料につかう糸巻き(ボビン)の生産が盛んであったが、20世紀にはいると交通機関の発達により主要な産業は観光業に移り、それが今日まで続いている。

主要都市

湖水地方を舞台とした作品

外部リンク