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マイコプラズマ肺炎

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マイコプラズマ肺炎(マイコプラズマはいえん)はマイコプラズマラテン語Mycoplasma属の真性細菌 Mycoplasma pneumoniae を主な原因とした呼吸器系の感染症である。肺炎球菌による肺炎とは、異なる種類の肺炎であるということから、非定型肺炎または異型肺炎とも呼ばれているが、異型肺炎の呼び名は使われなくなりつつある。また、夏期オリンピックが行われる年に流行する(4年に1度流行する)傾向があるとして「オリンピック」とも呼ばれているが、1984年と1988年に大きな流行があった以降は、傾向が崩れているが、2005年以降散発的な小流行が繰り返されている。

疫学

日本での感染症発生動向調査によれば、一年を通して感染が報告されるが晩秋から早春にかけてが多く、患者の年齢は幼児期、学童期、青年期(5歳から35歳)が中心である。病原体分離例でみると7歳から8歳にピークがある。5歳未満の幼児では、マイコプラズマに感染しても、軽症状か不顕感染の場合が多い。欧米では、寄宿舎、軍隊、サマースクール、学校、家庭内などの閉鎖集団での発生が多いとされている。感染拡大の速度は遅い。アメリカ合衆国では、致命率は約12%、患者の85%が、HIV感染者から発生している。感染により免疫を獲得するが生涯続く免疫ではなく、再感染する。

ヒトのほかブタ、ウシでも発生する。

病原体

病原体は熱に弱く界面活性剤により失活する。

ヒト臨床所見

  • 感染様式:飛沫感染と濃厚接触による接触感染。
  • 潜伏期:1から4週間程度(通常は、2から3週間)。

病原体は、粘膜表面の細胞外で増殖する。増殖の結果、気管、気管支、細気管支、肺胞などの気道粘膜上皮を破壊する。特に気管支、細気管支の繊毛上皮が顕著に破壊され、粘膜の剥離、潰瘍の形成がみられる。確定診断の遅れにより重症化することもある。成人は重症化リスクが高く重症化すると胸水貯留、呼吸不全を引き起こす可能性がある。

病原体が気道粘液(痰)に排出されるのは発症前2~8日から起こり、臨床症状発現時に最大となり、高いレベルの排出が1週間程度続き、徐々に減少しながら4~6週間以上病原体の排出は継続する。

症状

初期症状は、風邪症候群様の症状を呈し、発熱、疲労感、頭痛、のどの痛み、消化器症状、咳、発疹など。症状は個人差が大きく咳は、発症初期は乾いた咳で有るが、時間の経過と共に咳は強くなり、解熱後も1ヶ月程度続く。年長児や青年では、後期には湿性の咳となることもある。

合併症として中耳炎関節炎、無菌性髄膜炎脳炎肝炎膵炎心筋炎、溶血性貧血、ギランバレー症候群スティーブンスジョンソン症候群など

診断

胸部レントゲン、確定診断は細菌学的、血清診断微粒子凝集(PA)法、遺伝子学的などにて行う。現在の日本では、ELISA法は保険診療適用外。鑑別診断が必要な疾患は、クラミジア肺炎、オウム病、肺結核など。

治療

アジスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質ミノサイクリンなどのテトラサイクリン系抗生物質がよく用いられる。ケトライド系(ガレノキサシンなど)、リンコマイシン系、ニューキノロン系薬剤も有効である。細胞壁を持たないため、β-ラクタム系ペニシリン系、セフェム系)の薬剤は効果がない。しかし、現在ではマイコプラズマの全体の約15%は耐性菌と言われており、前述の薬では効果がない可能性がある。

予防

  • ヒト:薬剤の予防投与は行われない。また、ワクチンは実用化されていない。
  • ブタ:経口ワクチンが使用される。

感染症法

  • 感染症法:五類定点把握疾患。(全国約500カ所の基幹定点から毎週報告)1999年4月施行の感染症法により、病原体診断を含んだ発生動向調査が行われている。
  • 学校保健安全法:第三種その他の感染症。出席停止について明記された疾患ではない。

関連項目

出典

脚注


外部リンク