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ホビット (映画)

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ホビット
The Hobbit
監督 ピーター・ジャクソン
脚本 フラン・ウォルシュ
フィリッパ・ボウエン
ギレルモ・デル・トロ
ピーター・ジャクソン
原作ホビットの冒険
J・R・R・トールキン
製作 ピーター・ジャクソン
フラン・ウォルシュ
キャロライン・カニンガム
製作総指揮 ゼイン・ワイナー
カラム・グリーン
ケン・カミンズ
出演者 マーティン・フリーマン
リチャード・アーミティッジ
イアン・マッケラン
アンディ・サーキス
ケイト・ブランシェット
イライジャ・ウッド
クリストファー・リー
音楽 ハワード・ショア
撮影 アンドリュー・レスニー
製作会社 ニュー・ライン・シネマ
メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
ウィングナット・フィルムズ
配給 ワーナー・ブラザーズ
製作国 ニュージーランドの旗 ニュージーランド
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
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ホビット 思いがけない冒険
The Hobbit: An Unexpected Journey
公開 2012年12月14日
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ホビット ゆきて帰りし物語
The Hobbit: There and Back Again
公開 2013年12月13日
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ホビット 思いがけない冒険』(ホビット おもいがけないぼうけん、The Hobbit: An Unexpected Journey)、ならびに『ホビット ゆきて帰りし物語』(ホビット ゆきてかえりしものがたり、The Hobbit: There and Back Again)は、2012年から2013年にかけて公開される予定のニュージーランドアメリカファンタジー映画。J・R・R・トールキンによる児童小説『ホビットの冒険』を原作とし、前後編の2部作として公開される。監督はピーター・ジャクソン、主演はマーティン・フリーマン

概要

原作の小説『ホビットの冒険』は、J・R・R・トールキンの小説『指輪物語』の前日譚にあたり、映画『ロード・オブ・ザ・リング』3部作を監督したピーター・ジャクソンが、本作でも引き続き監督を務める。ホビット族の青年ビルボ・バギンズの冒険を、「一つの指輪」の発見や闇の勢力の伸展といった『ロード・オブ・ザ・リング』に連なる要素を絡めながら描く。3D映画として製作され、ワーナー・ブラザーズの配給により、前編『思いがけない冒険』は2012年12月14日、後編『ゆきて帰りし物語』は2013年12月13日にそれぞれ公開予定である。

主人公のビルボ・バギンズ役を、イギリス人俳優のマーティン・フリーマンが、ドワーフの王トーリン・オーケンシールド役を、同リチャード・アーミティッジが務める。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズからも、ガンダルフ役のイアン・マッケランゴラム役のアンディ・サーキスフロド役のイライジャ・ウッドをはじめ、多数のキャストが参加する。

ピーター・ジャクソンによる映画化の具体的な企画は、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ成功後の早い段階で上がっており、待望されていたが、シリーズの利益を巡るジャクソンと製作会社ニュー・ライン・シネマ(ワーナー・ブラザーズ傘下)間の訴訟問題や、『ホビットの冒険』の配給権を握っていたメトロ・ゴールドウィン・メイヤーの度重なる財政危機問題、ニュージーランド映画産業全体を巻き込んだ俳優組合によるストライキ運動など複数の事情が重なり、遅々として進展しなかった。その後、これらの問題の解決を経て、遂に2011年3月より撮影が開始されるに至った。この間、一時期ギレルモ・デル・トロが監督として決定し、製作プロセスにおいて大きな貢献を果たしてきたが、スケジュールの遅延により調整が付かず辞退となった。

あらすじ

後にフロド・バギンズの養父となるホビット族の青年ビルボ・バギンズは、魔法使いガンダルフの推挙により、ドワーフ王トーリン・オーケンシールドをはじめとする13人のドワーフ族と共に、邪竜スマウグに奪われた彼らの祖国と財宝を奪還するため、はなれ山(エレボール)への冒険に出発する。一行は、トロールオークによる襲撃や闇の森エルフによる捕縛などの窮地に陥りながらも、エルフ卿エルロンド鷲の王、熊人ビヨルンらの助力、またビルボ自身の機転により窮地を脱し、旅路を続ける。道中、ビルボはゴラムと遭遇し「一つの指輪」を手に入れる。ガンダルフは、姿を現した冥王サウロンに対抗すべく召集された賢人会議「白の会議」に出席し、エルロンド、エルフの奥方ガラドリエル、魔法使いサルマンらと共に攻勢の機を窺う。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


登場人物

  注意: 現在の記事は原作での描写に基づくもので、映画の内容とは異なる可能性があります。

ホビット

ビルボ・バギンズ
冒険の仲間。ホビット庄の青年。故郷での平穏な生活を楽しんでいたが、ガンダルフの企みにより、ドワーフ一行のはなれ山(エレボール)への冒険に「忍びの者」として同行することになる。後に親戚のフロドを養子に迎える。『ロード・オブ・ザ・リング』にも登場。
ドロゴ・バギンズ
ビルボの又従兄弟。フロドの父。幼いフロドを残し、妻プリムラと共に早くに亡くなる。原作には未登場。
フロド・バギンズ
ドロゴの息子。ドロゴの死後、養子として親戚のビルボに引き取られる。後に「旅の仲間」として「一つの指輪」棄却の旅に出る。原作には未登場。 『ロード・オブ・ザ・リング』にも登場。

ドワーフ

トーリン・オーケンシールド(トーリン2世)
冒険の仲間。ドワーフ一族の王。一行の指導者であり、スマウグを倒し、奪われた王国と財宝を奪還するため、12人のドワーフの仲間とビルボを率いてはなれ山への冒険に出発する。
バーリン
冒険の仲間。ドワーリンの兄。オイン、グローインの従兄弟。一行の中ではトーリンに次いで2番目の年長者である。後に大坑道モリアの領主となり、『ロード・オブ・ザ・リング』内でも言及されている。
ドワーリン
冒険の仲間。バーリンの弟。オイン、グローインの従兄弟。
フィーリ
冒険の仲間。キーリの兄。トーリンの甥。陽気な性格をしており、キーリと並んで一行の中では一番の若輩である。
キーリ
冒険の仲間。フィーリの弟。トーリンの甥。陽気な性格をしており、フィーリと並んで一行の中では一番の若輩である。
ドーリ
冒険の仲間。ノーリ、オーリの兄。
ノーリ
冒険の仲間。ドーリの弟、オーリの兄。
オーリ
冒険の仲間。ドーリ、ノーリの弟。
オイン
冒険の仲間。グローインの兄。バーリン、ドワーリンの従兄弟。
グローイン
冒険の仲間。オインの弟。バーリン、ドワーリンの従兄弟。『ロード・オブ・ザ・リング』の「旅の仲間」ギムリの父。
ボンブール
冒険の仲間。ボフールの兄。ビフールの従兄弟。一行の中では一番の大食漢で丸々と太っている。
ボフール
冒険の仲間。ボンブールの弟。ビフールの従兄弟。
ビフール
冒険の仲間。ボンブール、ボフールの従兄弟。
スロール
ドワーフ一族の先々代王。トーリンの祖父。原作には名前のみの登場。
スライン2世
ドワーフ一族の先代王。トーリンの父。原作には名前のみの登場。
ダイン(鉄の足ダイン)
くろがね連山の領主。トーリンの又従兄弟。「五軍の戦い」においてトーリンらの救援に訪れる。

魔法使い

ガンダルフ(灰色のガンダルフ)
冒険の仲間。灰色の魔法使い。トーリンの古くからの友人で、はなれ山への冒険に向う彼に対し、ビルボを仲間として推挙し、自らも同行して一行の旅を導く。その後一行から離脱し、「白の会議」に向かう。『ロード・オブ・ザ・リング』にも登場。
サルマン(白のサルマン)
白の魔法使い。冥王サウロンに対抗するため、賢人会議「白の会議」を主宰する。原作には未登場。 『ロード・オブ・ザ・リング』にも登場。
ラダガスト(茶色のラダガスト)
茶色の魔法使い。中つ国の鳥獣や植物に造詣が深く、また、ガンダルフやビヨルンの良き友人である。原作には名前のみの登場。

エルフ

エルロンド
裂け谷リヴェンデルの領主。安息を求めて谷を訪れた一行をもてなし、冒険の助言を与える。中つ国における最も力のあるエルフの1人として、「白の会議」に出席する。『ロード・オブ・ザ・リング』にも登場。
リンディア
裂け谷のエルフ。原作には未登場。
スランドゥイル
闇の森のエルフの王。闇の森に迷い込んで来た一行を捕縛し、尋問する。『ロード・オブ・ザ・リング』の「旅の仲間」レゴラスの父。
レゴラス
闇の森のエルフの王子。スランドゥイルの息子。後に「旅の仲間」として、フロドらと共に「一つの指輪」棄却の旅に出る。原作には未登場。 『ロード・オブ・ザ・リング』にも登場。
タウリエル
闇の森のエルフの女性。名(Tauriel)はシンダール語で「森(Taur)の娘(iel)」を意味する。映画オリジナルの登場人物。
ガリオン
闇の森のエルフの給仕頭。
ガラドリエル
ロスローリエンの森の奥方。中つ国における最も力のあるエルフの1人として、「白の会議」に出席する。原作には未登場。 『ロード・オブ・ザ・リング』にも登場。

人間

バルド
湖の町エスガロスの青年。谷間の国デールの王族の末裔であり、はなれ山と同じく邪竜スマウグに滅ぼされた祖国を再興するため、スマウグに立ち向かう。
湖の町の統領
湖の町エスガロスの領主。町を訪れた一行に豪勢な食事を振舞い、歓待する。
アルフリッド
湖の町エスガロスの役人。統領の右腕として信頼が厚い。映画オリジナルの登場人物。

オーク

大ゴブリン
霧ふり山脈のオーク(ゴブリン)の首領。山脈に迷い込んできた一行を捕獲する。
ボルグ
モリアのオークの首領。かつてドワーフに討たれた父アゾグの復讐に、配下を率いてはなれ山を襲撃する。
アゾグ
モリアのオークの先代首領。ボルグの父。原作には未登場。

その他の登場人物

ゴラム
霧ふり山脈の地下洞窟に住む奇怪な生物。「一つの指輪」を所有しており、洞窟に迷い込んできたビルボと遭遇する。『ロード・オブ・ザ・リング』にも登場。
ビヨルン
闇の森の入り口に住む熊人。巨大な熊に変身することができる獣人で、豪放磊落な性格をしている。ガンダルフやラダガストの友人であり、一行を屋敷に迎え入れ、温かくもてなす。
鷲の王
中つ国の大鷲族の王。魔狼ワーグの群れに囲まれ、木の上に追い詰められた一行を空から救出する。『ロード・オブ・ザ・リング』にてガンダルフやフロドを救出したグワイヒア本人もしくはその祖先である。
ロアーク
はなれ山の大ガラス族の長。はなれ山のドワーフ族とは古くから友好関係にあり、帰還した王トーリンに助言や情報を与える。
ウィリアム / トム / バート
トロルの森に住む3体のトロール。一行を捕食しようとする。『ロード・オブ・ザ・リング』にもフロドらが休息を取った木陰に石化した姿で登場している。
スマウグ
はなれ山に住む。中つ国最大の個体で、巨大な翼と黄金色をした頑丈な鱗を持っている。非常に狡猾かつ強欲な性格をしており、過去にはなれ山を襲撃し、ドワーフの王国と財宝を略奪した。
死人占い師(サウロン
ドル・グルドゥアの丘に住む死霊術師(ネクロマンシー)。その正体は、「一つの指輪」の主人である冥王サウロン。中つ国の支配を目論み、密かに策を弄している。『ロード・オブ・ザ・リング』にも登場。

以上で物語・作品・登場人物に関する核心部分の記述は終わりです。


出演

*は、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作からの出演者。

主要な登場人物(冒険の仲間)
ホビット
ドワーフ
  • スロール - Jeffrey Thomas
  • スライン2世 - Mike Mizrahi
魔法使い
エルフ
人間
オーク
その他の登場人物

製作

背景

企画の第一段階

ピーター・ジャクソンとフラン・ウォルシュは、元々1995年に『ホビットの冒険』の映画化に関心を示し、『指輪物語』と合わせた三部作の第一部とすることを思い描いていた[1]。ジャクソンのプロデューサー(ハーヴェイ・ワインスタイン)は、ソウル・ゼインツが『ホビットの冒険』の製作権を持っていたが、実は配給権がまだユナイテッド・アーティスツ(UA)に属していたことを知り、フラストレーションが溜まっていた[2]。スタジオは権利をマーケットに出したが、ワインスタインは権利を買うことに失敗した。ワインスタインは『指輪物語』を映画化するよう迫った[3]。結局、『指輪物語』の映画化はワインスタインではなくニュー・ライン・シネマによってなされ、そして『ホビット』の撮影開始は権利が切れる2010年に設定された[4]。2006年9月、UAの親会社のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)は、ニュー・ラインとジャクソンと共同で『ホビット』を製作することに関心を示した[5]

2005年3月に、ジャクソンは『ロード・オブ・ザ・リング』のビデオ及びコンピュータゲーム版からの利益を得る権利を失ったとして、ニュー・ラインを相手とした訴訟に着手した[6]。ジャクソンは明確な決着を求めなかったが、ニュー・ラインが彼からお金を奪ったかどうかを確認するよう監査に要求した[4]。ジャクソンは製作に踏み切る前に決着することを望んでいたが[4]、彼は訴訟が重大ではなく、そしてニュー・ラインはまだ自分に『ホビット』を作らせるだろうと考えていた[7]。ニュー・ラインの共同設立者のロバート・シャイは訴訟に苛立ち、2007年1月、ジャクソンを傲慢だと非難し、二度と監督に復帰させないと言い放った[8]。一方で、ジャクソンの参加を望んでいたMGMの社長のハリー・スローンは企画を中断させた[9]。8月までにシャイはジャクソンとの関係修復へと歩み寄っており、「私は本当にピーターを尊敬しており、『ホビット』で彼の創造性が発揮されるのを望んでいる」と発言した[10][11]。翌月、ニュー・ラインは要求された会計文書を提供することができなかっために、裁判所から12万5000ドルの制裁金を科せられた[4]

監督、製作総指揮のピーター・ジャクソン

2007年12月16日、ジャクソンが『ホビット』とその続編の製作総指揮を務めると発表された。ニュー・ラインとMGMは共同で映画の製作費を調達し、後者が20世紀フォックスを通して北米外で配給する[12]。両映画には約1億5000万ドルの予算が組まれており[13]、それはジャクソンの『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の総製作費(1作あたり9400万ドル)に匹敵する。2008年2月、ニュー・ライン・シネマがワーナー・ブラザーズと合併が完了した後、2011年12月と2012年内公開予定が発表された[9]。三部作のプロデューサーだったマーク・オーデスキーも監修を務める[14]。ジャクソンは、自分の前作と競合したくなかったので監督しないほうを選んだと説明した[15]

同月、トールキン・エステート、チャリティー団体「トールキン・トラスト」、ハーパーコリンズ社らは、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作が全世界で約60億ドル近い興行収入を上げているにもかかわらず、6万2500ドルしか分配されていないとして、ニュー・ラインを相手に総収益の7.5%を求める裁判を起こした。2009年9月、両者は和解に至った[16]。クリストファー・トールキンは「法的措置が必要だったことは残念だが、この論争がきちんとトールキン・トラストが慈善の目的を追求できる満足な条件で解決されたことが喜ばしい。トラストはニュー・ラインによる『ホビットの冒険』の映画化を認めます。」と述べた[17][18]

デル・トロとの企画

法的訴訟中でも企画は進み、2008年4月、ギレルモ・デル・トロが監督として雇われた。デル・トロはジャクソンの三部作のファンであり、2005年に彼と『HALO』を映画化するために接触していた[15]。2006年のインタビューにおいてデル・トロは、「私はドラゴンホビットが好きで、私は剣と魔法が好きではない。」と語った[19]。デル・トロが2008年4月に監督契約をした後[20]、彼が子供の頃に『ホビットの冒険』に魅了されたが、トールキンの他の小説は「思春期前の自分には難しすぎた」と感じていたことがTheOneRing.netのフォーラムに投じられた[15]

2008年8月、デル・トロ、ジャクソン、ウォルシュ、フィリッパ・ボウエンが共同で脚本執筆に取り掛かったことでプリプロダクション開始となった[21]。デル・トロはビデオ会議によってジャクソン、ウォルシュ、ボウエンと協力し、3週おきにロサンゼルスからニュージーランドへ飛んだ[20][22]。デルトロは脚本執筆に朝の時間を費やし、午後は素材を観察してトールキンの作品を理解しようとした。彼は第一次世界大戦もののドキュメンタリーを鑑賞し、また、第一次大戦関連物のコレクターでもあるジャクソンに参考となる文献を聞いた。デルトロはトールキンの経験が彼の物語に影響を与えたのだと感じていた[23]

2008年11月にデル・トロは、脚本陣4名は、毎週のように物語について新しい何かを理解し、絶えず変化していると語った[24]。彼らが映画の構想を最終決定するまでに至った3週間、脚本執筆時間は1日12時間まで増加していた[25]。2009年の最初の数か月の間、デル・トロがWETA(WETAワークショップとWETAデジタル)と会うとき、執筆は午前8時30分から始まり、午後3時に終わった。物語のアウトラインとトリートメントの完成は2009年3月に終わり、そしてスタジオは台本執筆開始を承認した[26]。この時点では撮影は2010年の間にニュージーランドで行われ、デル・トロはマタマタホビット庄のセットを修繕する予定であった[15]。ジャクソンは彼の為に三部作で使った裂け谷のスケール・モデルとビッグ・エンドのセットを保存した[7]。撮影の半ば、セットが2作目のために変更されている頃に、デル・トロが編集する猶予が与えらると予想されていた[27]。監督は撮影に370日を要すると予想した[28]

ジャクソンは2009年11月末、『ホビット』の脚本化が2010年初頭まで終わらない見積であることを明らかにした。そして、その年の夏の中頃まで製作開始を遅らせた[29]。この発表で、映画公開が2011年12月と2012年12月に間に合うか疑問視されることとなった[29]。またジャクソンは、キャストがまだ決定していないことも明らかにした[29]。2010年1月22日、アラン・ホーンは、映画1作目が2012年の四半期まで恐らく公開されないと発言した[30]

デル・トロの離脱

2010年、デル・トロはプロジェクト遅延の為、降板した。5月28日、彼は記者会見にてMGMの財政難のために『ホビット』プロジェクトがストップしていると説明した[31][32]。2日後、デル・トロはTheOneRing.netにて、撮影開始の遅れを理由に監督降板を表明し、「新監督へスムーズに移行できるようにしたい」と述べた[33][34]。インターネット上では監督する可能性のある人物が表面化し始め、スタジオはジャクソンを要した他、ニール・ブロムカンプデヴィッド・イェーツブレット・ラトナーデヴィッド・ドブキンが言及された[35]

2010年6月25日、映画2部作の監督としてジャクソンと交渉中であると報告じられた[36]。2010年10月15日、ニュー・ライン・シネマワーナー・ブラザーズは、『ホビット』はジャクソンが監督し、3Dになると発表した[37]。同時に、2011年2月に主要撮影が始まることがわかった[38]。ジャクソンは「トールキンの中つ国の探検は、通常の映画制作とは比較にならない経験だ。それは、想像、美、ドラマのとても特別な場所へのオールイマーシブな旅である。」と述べた[39]

ニュージーランドでの労働闘争

2010年9月24日、本作のプロデューサーがニュージーランドの俳優組合との契約を拒否していることを理由に、国際俳優同盟は現地の俳優たちに出演拒否するように呼びかけた[40][41]。これに対し、ワーナー・ブラザーズとニュー・ライン・シネマは「他の国での撮影を考える」と表明し、ジャクソンもまた東ヨーロッパで撮影する可能性について言及した[41]。10月25日、製作中止による経済的損失を危惧したこともあり、数千人ものニュージーランド人がニュージーランドでの撮影継続を嘆願するデモを行った[42]。2日後の10月27日、ニュージーランド政府とワーナー・ブラザーズは交渉の結果、当初の予定通りニュージーランドで撮影が行われるとジョン・キー首相は発表した。その見返りとしてニュージーランドの政府は、元々の原因であった雇用関連法の改正を約束し、また、本作の宣伝費の援助も決めた[43][44][45]

撮影

主要撮影は2011年3月21日にニュージーランドウェリントンで開始された。撮影はウェリントンストーン・ストリート・スタジオ、マタマタの村、その他ニュージーランド周辺の極秘の場所で行われると予想されている[46]。4月、ピーター・ジャクソンは自身のFacebook上にて、本作を従来の24fpsではなく48fpsで撮影することを明らかにした[47]

脚注

  1. ^ Brian Sibley (2006). Peter Jackson: A Film-maker's Journey. London: HarperCollins. pp. 313–16. ISBN 0-00-717558-2 
  2. ^ Tom Ambrose (2009年3月). “The Return of the Ring”. Empire: p. 67 
  3. ^ Brian Sibley (2006). Peter Jackson: A Film-maker's Journey. London: HarperCollins. pp. 323–25. ISBN 0-00-717558-2 
  4. ^ a b c d Benjamin Svetkey (2007年10月4日). The Hobbit: Peace in Middle-Earth?”. Entertainment Weekly. http://www.ew.com/ew/article/0,,20036782_20037403_20142132,00.html 2007年10月5日閲覧。 
  5. ^ Stax (2006年9月11日). “MGM Eyes Hobbit, T4”. IGN. http://movies.ign.com/articles/732/732006p1.html 2007年8月17日閲覧。 
  6. ^ “Director sues over Rings profits”. BBC News Online. (2005年3月2日). http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/film/4312463.stm 2007年8月17日閲覧。 
  7. ^ a b Steve Daly (2006年9月22日). “Action Jackson”. Entertainment Weekly. http://www.ew.com/ew/article/0,,1538494,00.html 2007年10月5日閲覧。 
  8. ^ “Jackson ruled out of Hobbit film”. BBC News Online. (2007年1月11日). http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/6251099.stm 2008年9月30日閲覧。 
  9. ^ a b Dade Hayes, Dave McNary (2008年2月28日). “New Line in Warner's corner”. Variety. http://www.variety.com/article/VR1117981598.html?categoryid=10&cs=1 2008年2月29日閲覧。 
  10. ^ Patrick Goldstein (2007年8月10日). “THE BIG PICTURE: New Line's midlife crisis”. Los Angeles Times. http://www.latimes.com/entertainment/news/movies/la-et-goldstein10aug10,0,7800308.story?coll=la-headlines-entnews 2007年8月17日閲覧。  [リンク切れ]
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  14. ^ Anne Thompson (2008年3月6日). “Shaye kept New Line afloat”. Variety. http://www.variety.com/article/VR1117982001.html?categoryId=2508&cs=1&query=the+hobbit 2008年3月7日閲覧。 
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  17. ^ Alex Dobuzinskis (2009年9月8日). “Legal settlement clears way for "Hobbit" movie”. Reuters. http://www.reuters.com/article/entertainmentNews/idUSTRE5875BK20090908 
  18. ^ “Legal path clear for Hobbit movie”. BBC. (2009年9月10日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/entertainment/8245300.stm 
  19. ^ “Conversations: Guillermo del Toro”. Salon.com. (2006年10月12日). http://www.salon.com/ent/audiofile/2006/10/12/conversations_toro/ 2008年6月4日閲覧。 
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外部リンク