ジョン・ドウ起訴
ジョン・ドウ起訴(ジョン・ドウきそ、John Doe indictment)とは、刑事事件において、被告人の身元を特定せずに、DNA型情報などにより特定する形で起訴すること。
概要
2000年代に入ると、犯罪捜査におけるDNA型鑑定の精度が著しく向上し、他人を犯人と誤る確率は小さくなりつつある。こうした状況を踏まえ、アメリカ合衆国では、連邦レベルでは、2003年の立法により、容疑者の身元が特定できない事件でも、性的虐待に関する罪(強姦や強制わいせつなど)の起訴については、特定のDNAプロファイルを持つ者として起訴すれば足り、この方法による起訴が公訴時効期間内になされていれば時効にはかからないものとされたほか、いくつかの州においても同様の立法ないし運用がみられる[1]。このため、日本国内においてDNA起訴とも呼ばれる。
これは、起訴することで公訴時効を停止させられるため、将来、偶発的に被疑者が他の案件で逮捕された際、DNAの採取でジョン・ドウ起訴がなされた事件の被告人との同一性が確認されれば、これを処罰することが可能となるというメリットがある。
2010年現在、アメリカ以外の国では行われていないが、[要出典]各国では適用を視野に入れた検討が行われている[要出典]。
日本における導入の検討
日本では2009年1月、法務大臣森英介と法務省幹部らが、時効の延長を取り扱う勉強会でジョン・ドウ起訴の導入を検討したが、「現実に導入するには相当のハードルがある」などを理由として、それ以上の採用に向けた議論が進められず、見送られた。
由来
「ジョン・ドウ」とは、日本でいうところの「名無しの権兵衛」、つまり「氏名不詳」という意味である。女性名の「名無しの権兵衛」に相当するものとして「ジェーン・ドウ」(Jane Doe)という名があるが、この起訴手法の対象は男性の性犯罪者が大半を占めるため、ジェーン・ドウ起訴という表現はほとんど用いられない。
似て非なる事例
身元が特定できないとは、単に氏名が不明という意味ではない。例えば拘置所に勾留されている被疑者であれば、(黙秘を貫いた結果)その氏名がわからなくても、当該勾留されている人物として特定は可能であるため、起訴することは可能である。実際に、日本国内においても被疑者の氏名が不詳のまま起訴・有罪判決まで至った裁判が複数ある。
脚注
- ^ 法務省・法制審議会刑事法(公訴時効関係)部会 第4回会議資料「 アメリカにおけるDNA型情報により被告人を特定して起訴する取扱いについて」(PDFファイル、2009年12月21日)
関連項目
- 時効
- 生体認証
- 未解決事件
- 殺人事件被害者遺族の会(宙の会)
- コールド・ケース