柑橘類
柑橘類(かんきつるい)は、園芸学問上はミカン科ミカン亜科のミカン連(カンキツ連)、あるいは、統計上はミカン属(カンキツ属)の総称である[1]。日本では「ミカン」や「タチバナ」に代表される。
語釈
「柑橘類」という言葉は日常生活および産業上において頻用される日用語であり、英訳する際には通常 citrus と訳される。 この言葉は分類学上の項目名 Citrus (下記)が日用語に採り入れられたもの[2]で、現在では Citrus よりも広い範囲の樹木や果実を指すようになっている。
イニシャルを大文字書きした分類名 Citrus は、日本語のミカン属に相当するもので、日用語 citrus 「柑橘類」よりも狭い範囲を指す概念ということになる。 なお、Citrus 自体はある種の樹木を指すローマ時代のラテン語 citrus を学術用語として転用したもの[3]。
「柑」と「橘」は、完熟した甘味の果実と青い酸味の果実を意味する。「矞」は青いという音符である。
特徴
果実
柑橘類の果実は食用とされる。果実の「爽やかな香り」と「甘酸っぱい味」が特徴。甘い種類は生食・ジュースや製菓材料として、酸味が強い種類は菓子のほか料理の酸味づけとして世界各地で広く利用される。オレンジやレモンのように世界的にポピュラーなものもあれば、地域ごとに特色のある柑橘類が存在し利用方法も様々である。
果実は10個前後の小袋が放射状に並んだ形状をしており、小袋をじょうのう(瓤嚢)、小袋の薄皮をじょうのう膜、小袋の中身(いわゆる果肉)を砂じょう(砂瓤)と呼ぶ。じょうのう膜は食べることができるが、種類によって厚さが異なり、また食習慣・好みによって取り除かれることがある。
砂じょうは涙形の長さ数ミリメートル程度の粒で、じょうのう膜の中に無数に詰まっている。砂じょうの表面は薄い膜があり、その中は果汁で満たされている。じょうのう膜の中には硬く食用にならない種子もあるが、ウンシュウミカンのように種子がない場合もある。
果皮の表面には直径1ミリメートル程度の球形の油胞が無数に存在し、リモネンをはじめとする精油が含まれている。一般に油胞には果肉よりも豊富な香り成分が含まれるが、苦味がある。果皮の内側は白く柔らかい綿状または繊維質をしておりアルベドと呼ばれる。レモンやユズのように表面を薄く剥いたりすり下ろして菓子や料理の風味づけに使ったり、アルベドも含めて砂糖漬けやマーマレードにしたり、あるいは乾燥させて食用にする。
樹
カラタチなど、一部を除いて常緑であり、樹高も低木の範疇に収まるものがほとんどである。古くから日本の広い地域で栽培、利用されているが、ルーツは熱帯から亜熱帯にあり耐寒性のない種類も多い。棘を持つもの、葉に芳香成分を含むものが目立ち、蝶類の幼虫の食餌として好まれる傾向がある。
整枝剪定法
同化器官であり、貯蔵器官の葉を切り捨てることは、害が出やすいのが落葉果樹の剪定と大きく異なるところであり、整枝より剪定に力がいれられる。基本的には開心自然系が整枝の基本であるが、変則主幹系や一本主枝の整枝の場合もある[4]。
開心自然系
主枝3本と亜主枝6本からなる樹形。主枝、亜主枝を明確にするため、立ち枝や競争枝・下垂枝を剪定する。柑橘類では一般的な整枝・剪定の仕方である[4]。
早川式坊主枝剪定
小田原市の浦井貫之氏が考案したシラヌヒやはるみで行われる剪定方法。整枝は開心自然系を基本とするが、主枝の20~30cmを坊主枝にすることにより、結果枝を除去し、発育枝を発生させ樹勢の低下を防ぐ剪定方法。神奈川県で普及をしている[5]。
健康への影響
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柑橘類には、オレンジ、レモンに代表されるように豊富なビタミンCが含まれている。さらに、β-クリプトキサンチンも含まれており、ヒトでは、β-クリプトキサンチンはビタミンA(レチノール)に変換されるためプロビタミンAと見なされている。他のカロテノイドと同様に、β-クリプトキサンチンは抗酸化物質としてフリーラジカルによる酸化的損傷から細胞およびDNAを保護していると考えられている[6]。また、チラミンも含まれており、その血管収縮作用の消失から拡張へ向かう際に片頭痛を引き起こす可能性がある[7]。
分類
- ミカン科ミカン亜科
ミカン連には、ミカン属、キンカン属、カラタチ属など、約28属(属数は分類により増減する)が含まれる。商業的に重要な種類は、ほとんどミカン属に含まれる。
真正カンキツ類のエレモシトラス属、ミクロシトラス属は、ミカン属に近縁で、ミカン属に含めることもある。更に、キンカン属、カラタチ属をミカン属に含めることもあるが、日本では、これらをミカン属に含めない、田中長三郎の分類が主に利用されている。
主な種類
ミカン属(カンキツ属)
- オレンジ類
- バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジ、ブラッドオレンジ、ジャッファ・オレンジ、ベルガモット、キノット 他
- グレープフルーツ類
- グレープフルーツ、オランジェロ 他
- 香酸柑橘類
- ユズ、ダイダイ、カボス、スダチ、レモン、シークヮーサー、ライム、シトロン、ブッシュカン、三宝柑 他
- 雑柑類
- ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、ジャバラ、スウィーティー、カクテルフルーツ、湘南ゴールド、瓢柑、黄蜜柑、媛小春 他
- タンゴール類
- イヨカン、清見、はるみ、タンカン、マーコット、津の香、不知火 (カンキツ)、せとか、せとみ、天草 (カンキツ)、はれひめ、あまか、朱見…
- タンゼロ類
- セミノール、サマーフレッシュ、スイートスプリング、アグリフルーツ、タンジェロ 他
- ブンタン類
- ブンタン、晩白柚 他
- ミカン類
- マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、タチバナ、紀州ミカン、サクラジマミカン、カラマンシー 他
その他の属
脚注
- ^ 「みかん」とは?(静岡県産業部農林業局みかん園芸室)
- ^ Online Etymology Dictionary
- ^ Lewis & Short Latin Dictionary
- ^ a b 新版 図集 果樹栽培の基礎知識(発行:農文協)第1版発行 1994年2月25日
- ^ 日本農業新聞16面 2010年2月5日
- ^ Lorenzo, Y.; Azqueta, A.; Luna, L.; Bonilla, F.; Dominguez, G.; Collins, A. R. (2008). “The carotenoid -cryptoxanthin stimulates the repair of DNA oxidation damage in addition to acting as an antioxidant in human cells”. Carcinogenesis 30: 308. doi:10.1093/carcin/bgn270.
- ^ 片頭痛の病態と誘発因子予防から治療まで見つかる、Eisai、2011-12-19閲覧
- ^ 遺伝資源保存リスト(国立大学法人佐賀大学農学部果樹園芸学研究室)
関連項目
- リモネン(柑橘類の皮に含まれる成分)
- カンキツグリーニング病(柑橘類に被害を与える病害)
- 温州萎縮病(特に温州ミカンに被害を与える病害)