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真言

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Dharma Wheel
密教
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仏教
金剛乗仏教
時代・地域
初期 中期 後期
インド チベット 中国 日本
主な宗派(日本)
東密
※は、「真言宗各山会」加入
- 古義真言宗系 -
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真言宗御室派
真言宗大覚寺派
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新義真言宗
真言宗室生寺派
- 真言律 -
真言律宗
台密
〈日本〉天台宗
信仰対象
如来 菩薩 明王
経典
大日経 金剛頂経
蘇悉地経 理趣経
思想 基本教義
即身成仏 三密 入我我入
曼荼羅 護摩
東密
古義広沢流 小野流新義
関連人物
東密
金剛薩埵 龍樹
龍智 金剛智 不空 恵果
空海
真言律
叡尊 忍性 信空
台密
最澄 順暁 円仁 円珍
ウィキポータル 仏教

真言(しんごん)、サンスクリット語:マントラ(मन्त्र [mantra])とは、大日経などの密教経典に由来し、真実の言葉という意。転じての言葉をいう。真言は音が重要であることから、翻訳せず音写を用いる。漢訳では、明呪と訳される。

概要

真言は密教成立以前から用いられており、古代インドから効能がある呪文として重視されてきた。真言を唱えることで、発願を仏に直接働きかけることができるとされている。真言宗では、心で仏を想い、手で印を結び、三返ないし七返声で唱える(三密)。

真言宗の「真言」はこれに由来するが、真言宗のみで使われるものではない。般若心経の最後にある「羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶」も真言であり、浄土真宗などを除く多くの宗派で読まれている。法相宗では薬師如来への発願で頻繁に唱えられる。禅宗においても、消災妙吉祥陀羅尼大悲心陀羅尼などが日常的に唱えられる[1]。 真言にはそれぞれ出典となる経が存在するが、同じ密教経典でも成立の過程が異なる大日経 (胎蔵界) と金剛頂経 (金剛界) では、真言が異なる。例えば大日如来の真言を唱える場合は、両界の真言を連続して唱える。

真言は漢字や梵字で書かれたものが伝わった。

光明真言

  • オン・アボキャ・ベイロシャノウ・マカボダラマニ・ハンドマ・ジンバラ・ハラバリタヤ・ウン

如来

  • 釈迦如来ノウマク・サンマンダ・ボダナン・バク(Namah samanta-buddhanam bhah)

      あまねき諸仏に帰命したてまつる。バハ。

  • 薬師如来
    • 大咒ノウモ・バギャバテイ・バイセイジャ・クロ・ベイルリヤ・ハラバ・アラジャヤ・タタギャタヤ・アラカテイ・サンミャクサンボダヤ タニヤタ・オン・バイセイゼイ・バイセイゼイ・バイセイジャサンボリギャテイ・ソワカ(Namo Bhagavate Bhaisajya Guru Vaidurya Prabha Rajaya Tathagataya Arhate Samyaksambodhaya Tadyatha Aum Bhais-ajye-bhaisajye Bhaisajyasamudgate Svaha)
    • 中咒台密)-オン・ビセイゼイ・ビセイゼイ・ビセイジャサンボリギャテイ・ソワカ(Aum Bhais-ajye-bhaisajye Bhaisajyasamudgate Svaha)
    • 小咒オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ(Aum Huru Huru caNDaali maataGgi Svaha)

      オーン。取り去りたまえ。取り去りたまえ。チャンダーリーよ。マータンギーよ。スヴァーハー。

金剛界

  • 大日如来オン・バサラ・ダトバン(Om vajra-dhatu vam)

       オーン。金剛界の主尊よ。ヴァン。

  • 阿弥陀如来オン・アミリタ・テイセイ・カラ・ウン(Om amrta-teje hara hum)

       オーン。甘露の威光ある尊よ。運載したまえ。フーン。

  • 阿閦如来オン・アキシュビヤ・ウン(Om aksobhya hum)

       オーン。阿閦尊よ。フーン。

       オーン。不空成就尊よ。アハ。

  • 宝生如来オン・アラタンナウサンバンバ・タラク

       オーン。宝生尊よ。トゥラーハ。

胎蔵

  • 大日如来-オン・アビラ・ウンケン(Om a vi ra hum kham)
  • 宝幢如来ナウマク・サンマンダボダナン・ラン・ラク・ソワカ
  • 開敷華王如来ナウマク・サンマンダボダナン・バン・バク・ソワカ
  • 無量寿如来(阿弥陀如来)-ナウマク・サンマンダボダナン・サン・サク・ソワカ
  • 天鼓雷音如来ナウマク・サンマンダボダナン・カン・カク・ソワカ

菩薩

  • 弥勒菩薩オン・マイタレイヤ・ソワカ(Om maitreya svaha)

       オーン。弥勒尊よ。スヴァーハー。

  • 文殊菩薩オン・アラハシャ・ノウ(Om a ra pa ca na)

       オーン。ア、ラ、パ、チャ、ナ。

  • 勢至菩薩オン・サンザンザン・サク・ソワカ(Om sam jam sah svaha)  

       オーン。サン、ジャン、ジャン。サハ。スヴァーハー。

  • 普賢菩薩オン・サンマヤ・サトバン(Om samayas tvam)

       オーン。汝は三昧耶なり。

  • 般若菩薩オン・ヂクシリシュロダ・ビジャエイ・ソワカ
  • 地蔵菩薩オン・カカカビ・サンマエイ・ソワカ(Om ha ha ha vismaye svaha)

       オーン。ハ、ハ、ハ、希有なるものよ、スヴァーハー。

  • 虚空蔵菩薩ノウボウ・アキャシャ・キャラバヤ・オン・アリキャ・マリボリ・ソワカ (Namo akasa-garbhaya, Om alika mali muli svaha)

        虚空蔵尊に帰命したてまつる。オーン。怨敵を打ち滅ぼすものよ。スヴァーハー。

観音菩薩

  • 聖観音オン・アロリキャ・ソワカ(Om arolik svaha)
  • 十一面観音
    • オン・ロケイ・ジンバ・ラ・キリク・ソワカ

   オーン。世自在王尊よ。フリーヒ。

    • オン・マカ・キャロニキャ・ソワカ

   オーン。大悲を持てるものよ。スヴァーハー。

  • 千手観音オン・バザラ・タラマ・キリク・ソワカ(Om vajra-dharma hrih)

        オーン。金剛法尊よ。フリーヒ。

  • 准胝観音
    • 大準提咒-ノウバ・サッタナン・クチナン・タニヤタ・オン・シャレイ・シュレイ・ソンデイ・ソワカ(Namah saptanam-samyaksambudda-kotina­m tadyata, Om cale cule chundi svaha)

        七俱底の正等覚仏に帰命したてまつる。すなわち、オーン。動き回るものよ。頭頂たるものよ。准胝尊よ。スヴァーハー。

    • 小準提咒-オン・シャレイ・シュレイ・ソンデイ・ソワカ(Om cale cule chundi svaha)
  • 如意輪観音
    • 大心陀羅尼-オン・ハンドマ・シンダ・マニ・ジンバ・ラ・ソワカ(Om padma cintamani jvala svaha)
    • 小心陀羅尼-オン・バラナ・ハンドメイ・ウン(Om varana padme hum)

         オーン。願望を授与したもう蓮華尊よ。フーン。

    • 根本陀羅尼-ナウボウ・アラタンナウ・タラヤヤ・ナウマク・アリヤ・バロキテイ・ジンバラヤ・ボウジサトバヤ・マカサトバヤ・マカキャロニキャヤ・タニャタ・オン・シャキャラバリチ・シンダマニ・マカハンドメイ・ロロ・チシュタ・ジンバラ・アキャラシャヤ・ウン・ハッタ・ソワカ(Namo ratna-trayaaya, nama aaryavalokiteshvaraaya bodhisattvaaya mahaasattvaaya mahaa-kaarunikaaya. Tad-yathaa, om cakra-varti cintaa-mani mahaa-padme ruru tishtha jvala aakarshaya hum phat svaha.)
  • 馬頭観音オン・アミリト・ドバンバ・ウン・パツタ・ソワカ

        オーン。甘露より生起したものよ。フーン。パット。スヴァーハー。

   オーン。空しからず打ち勝つものよ。フーン。パット。

    • オン・ハンドマダラ・アボキャジャヤニ・ソロソロ・ソワカ

   オーン。蓮華を持し、空しからず敵を打ち破る尊よ。出現したまえ。出現したまえ。スヴァーハー。

  • 白衣観音オン・シベイテイ・シベイテイ・ハンダラ・バシニ・ソワカ
  • 揚柳観音オン・バザラダラマ・ベイサジャ・ラジャヤ・ソワカ
  • 観音六字オン・マニパドメ・フン(Om mani padme hum)

明王

  • 不動明王
    • 大咒-ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン(namaH sarvatathaagatebhyaH sarvamukhebhyaH, sarvathaa traT caNDamahaaroSaNa khaM khaahi khaahi sarvavighanaM huuM traT haaM maaM)
    • 中咒-ノウマク・サマンダ・バザラダン・センダマカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン(namaH samanta vajraaNaaM, caNDamahaaroSaNa sphoTaya huuM traT haaM maaM)

     あまねき金剛尊に帰命したてまつる。恐ろしき大忿怒尊よ。打ち砕きたまえ。フーン。トラット。ハーン。マーン。

    • 小咒-ナウマク・サマンダ・バザラダン・カン
  • 孔雀明王オン・マヤラギラン・デイ・ソワカ

       オーン。無敵の孔雀尊よ。スヴァーハー。

  • 降三世明王オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・パッタ(om sumbha nisumbha hum vajra hum phat)

       オーン。スンバ尊よ。ニスンバ尊よ。フーン。金剛よ。フーン。パット。

  • 大威徳明王オン・シュチリ・キャラロハ・ウン・ケン・ソワカ

       オーン。シュトリー。カーラ神の姿をとるものよ。フーン。カハン。スヴァーハー。

       オーン。金剛夜叉尊よ。フーン。

       オーン。不死なるものよ。フーン。パット。

  • 愛染明王
    • オン・マカラ・ギャ・バザロ・シュニシャ・バザラ・サトバ・ジャク・ウン・バン・コク(oM ma hA raga vajro SHI Sa va jra satva jaH+jaH hUM vaM hoH ; 帰命したてまつる 大愛染尊よ、金剛仏頂尊よ、金剛薩たよ、衆生を四種に摂取したまえ)
    • ウンシッチ(hUM si ddhi)

  • 梵天ナウマク・サマンダ・ボダナン・ボラカンマネイ・ソワカ

      あまねき諸仏に帰命したてまつる。梵天に帰命したてまつる。スヴァーハー。

  • 帝釈天ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ

      あまねき諸仏に帰命したてまつる。帝釈天に帰命したてまつる。スヴァーハー。

  • 多聞天毘沙門天)-オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ(oM vaizravaNaaya svaahaa ; オーム、ヴィシュラヴァスの御子よ、吉祥成就)
  • 持国天オン・ヂリタラ・シュタラ・ララハラバ・タナウ・ソワカ
  • 増長天オン・ビロダキャヤ・キシャヂ・ハタエイ・ソワカ
  • 広目天オン・ビロハキシャ・ナウギャヂ・ハタエイ・ソワカ
  • 吉祥天オン・マカシリ・エイ・ソワカ

      オーン。大吉祥天女に帰命したてまつる。スヴァーハー。

  • 弁財天オン・ソラソバテイ・エイ・ソワカ

      オーン。弁財天女に帰命したてまつる。スヴァーハー。

勤行の際に唱える真言

その他

  • 金剛起(覚眠)-「オン・バサラ(バソロ)・チシュタ・ウン (オーム、金剛(仏性・如来蔵)よ立ち上がれ(覚醒せよ)、ウーン)

十三仏真言

真言宗では、次の如来・菩薩・明王を十三仏として、その真言を勤行や法要の際に順に唱える(一部の宗派を除く)。カッコ内はその法要の際の本尊。

  • 不動明王 (初七日)
  • 釈迦如来 (二七日)
  • 文殊菩薩 (三七日)
  • 普賢菩薩 (四七日)
  • 地蔵菩薩 (五七日)
  • 弥勒菩薩 (六七日)
  • 薬師如来 (四十九日)
  • 観世音菩薩 (百カ日)
  • 勢至菩薩 (一周忌)
  • 阿弥陀如来 (三回忌)
  • 阿閦如来 (七回忌)
  • 大日如来 (十三回忌)
  • 虚空蔵菩薩 (三十三回忌)

出典

  1. ^ 『印と真言の本 神仏と融合する密教秘法大全』 学研

関連項目

参考文献

  • 渋谷申博 『面白いほどよくわかる密教 -曼荼羅・仏像から修法、教理、寺院まで徹底解説-』 日本文芸社、2009年、ISBN 9784537256765