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声優

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声優(せいゆう)またはヴォイスアクターとは、ラジオドラマテレビ映画アニメテレビゲーム洋画の吹き替えなどに、主にだけで出演する俳優のこと。ナレーターとは異なり、登場人物やキャラクターなどのセリフ吹き替えや声充てを行う。

なお、声優名の前にCVと付いている事が有るが、これは「キャラクターボイスCharacter Voice)」の略で、そのキャラクターの声を担当する声優で有る事を表す。この言葉は1980年代後半頃にアニメ雑誌アニメック』で初めて提唱された造語である。その後、『アニメック』のスタッフが角川書店に移籍して創刊した『ニュータイプ』によってアニメファンの間に普及した。

英語で声優はvoice actor/actressというが、日本製アニメのファンの間では、日本の声優を指してseiyūと呼ぶことも多い。

業務内容

  • 声の吹き込み・吹き替え
声優という職業の根幹となる業務。自分の担当するセリフをしゃべり、それを録音する。アニメの場合は画面を見ながらタイミングをはかり、自分の担当するキャラクターのセリフをしゃべる(アフレコ)。海外のドラマや映画の日本語版吹き替えの場合は、画面を見ると同時に耳で聞いた現地語のセリフのタイミングとも合わせる。
ゲームなどの場合は、その性質上、アニメや吹き替えとは大きく異なり、かけ合いではなく個別に収録するのが普通で、自分のセリフだけが延々と羅列された台本を見ながら、録音のタイミングに合わせてしゃべる。そのため、ゲームの場合は共演者であっても顔を合わせたことがないというケースも多い。
  • ナレーション
番組の画像に合わせて原稿を読み、それを録音する。番組の解説として機能するほか、バラエティ番組では番組を盛り上げる役目も果たす。
自らの名前で歌を歌い、歌手のような活動をする声優もいる(後述の「アイドル声優」参照)が、厳密な意味では本来の声優の業務ではないと考えられる。
しかし、アニメにおいては主役(もしくは主役級)の配役をもらうと、そのアニメの主題歌を歌うことがある。また最近ではアニメのキャラクターが歌っているという設定で、アニメのキャラクター名義のCDを出すことも珍しくなくなっている。従って、特にアニメへの出演を中心に活躍する声優にとっては、基本的な業務の1つに数えてもいいだろう。
ラジオ番組(アニラジ)を持ち、そのトークと進行を行う。特定のアニメやゲームとのタイアップで1年程度で終了するものも多いが、人気があれば数年続くことも珍しくなく、中には10年を超える長寿番組もいくつか存在する。役柄でない声優本人の姿に接することができるため、ファンにとっては欠かせない存在となっている。近年では、コストが安くリスナー数も接続数で直接分かるインターネットラジオへの進出も著しい。
  • その他
出演作品関連の、あるいは自らの名義での各種イベント出演や、アニメ情報番組での顔出しの司会やインタビュアーを行うものも若手を中心に多い。

俳優と声優

吹き替え、声充てとは本来、劇団俳優らが声のみの出演をする仕事のことであり、便宜上「声の俳優」ということで声優という言葉を使っている。しかし、声優ブームなるものが度々起きることで「声優」という言葉が浸透してそのまま使われるようになった。そのため年配の声優の中には声優という言葉で呼ばれることに困惑する者もいる。

例えばチャールズ・ブロンソンの吹替等で有名なベテラン、大塚周夫は声優という呼称について、別冊アニメージュ『ガンバの冒険』ムック本において、「我々は俳優であり、声による演技をしているのですから、声優という別称で呼ぶのはよくないですね」という旨のコメントを発表しており、声優を俳優と区別する風潮に強い難色を示している。

日本で声優の専業化が進んだ理由は、第一にラジオドラマ全盛期にNHK民放が自前の放送劇団を組織して専門職を育成したこと、第二にテレビの普及期はソフト不足のため海外製映画、海外ドラマが大量に放送されて声優による吹替の需要が増大したこと、第三にアニメブームにより最初から声優専門の演技者を志望する者が増えたためだと考えられる。

声優の歴史

ラジオドラマ時代

1925年NHKの前身である社団法人東京放送局がラジオ放送を開始。同年に公募されたラジオドラマ研究生12名が、声だけで演技を行なう専門の俳優として、日本の声優第1号とみなされている。この当時は新聞では「ラジオ役者」と呼称していた。時代が下り、1941年、NHKはラジオドラマ専門に俳優を養成する「東京中央放送局専属劇団俳優養成所」の研究生を公募。翌、1942年に東京放送劇団の1期生がデビューを果たし、これが声優第2号とみなされ、かつ「声優」という言葉が使われたのはこの頃からである。「声優」は読売新聞の芸能記者だった小林徳三郎が命名したとされる。声優は当初、ラジオドラマを専門に行なう東京放送劇団員やその他の放送局の劇団員を指し、テレビ時代になって吹替とアニメを行なう役者を指す用語として定着していった。テレビ放送が無く、ラジオがマスメディアで主要な地位を占めていたラジオドラマ時代の声優は決して日陰の存在ではなく、二枚目の主役を多く演じた名古屋章には月に何十通ものファンレターが届いたという。

第一次声優ブーム

民放テレビの草創期には、1961年の五社協定によるテレビ局への日本映画供給停止などによるソフト不足から、海外ドラマ洋画等のいわゆる外画の日本語吹替版が数多くテレビで放送された。テレビのアフレコ作品第1号は、アニメでは1955年に日本テレビが放送した海外アニメ『テレビ坊やの冒険』、実写では1956年にKRTテレビ(現・TBS)で放送された『カウボーイGメン』と記録されている。当初、NHKは基本的に字幕スーパーで海外作品を放送していたため、民放が中心となっていた。以後、1960年代前半をピークとして、外国テレビ作品がテレビで数多くテレビで放送された。これを背景として声優人気が高まっていった。ブームの中心人物は野沢那智など。映画俳優は五社協定とギャラの問題で吹き替えをすることは無く、草創期のテレビ俳優と同じく、テレビの声優の人材はラジオ時代からの放送劇団出身者や新劇の舞台役者に多くを依存した。海外アニメには落語家や浅草出身のコメディアンなどもキャラクターの声をあてた例もある。この時代には、声をあてることから、アテ師という声優の別称があった。

第二次声優ブーム

1970年代末からのアニメブームと並行して起こったブーム。アニメの美男子キャラクターを持ち役とする声優が人気を集め、神谷明古谷徹古川登志夫らはスラップスティックというバンドを結成してライブ活動を行なった他、多くの声優がレコードを出すなどした。アニメ声優がDJを務めるラジオ番組なども誕生。この時代はアニメ雑誌が創刊され始めた時代であり、『アニメージュ』の創刊編集長である尾形英夫は、声優のアイドル化を編集方針の一つとして打ち出した。アニメージュ以外の他のアニメ誌も同様に誌面に声優コーナーを設けて、定期的に声優の情報を発信して、アニメファンからは声優が憧れの職業の一つと見られる一因ともなった。人材の供給・育成面では、声優専門プロダクションが分裂することによって次第に数が増え始め、各プロダクションにより声優養成所が設けられた。これらにより、放送劇団出身者や舞台役者の俳優活動の一環や余技としての声優業ではなく、最初からアニメ声優を目指した声優が登場し始めた。このブームは、およそ1980年代前半までとされる。

端境期

1980年代末のテレビアニメ『鎧伝サムライトルーパー』に出演した佐々木望草尾毅ら男性声優で結成した「NG5」が人気を集めた。毎日放送制作のドキュメント番組の特集にもなるほどの異常人気だったが、人気はNG5に限定されて、ブームと言えるほどの声優全般の人気とまではならなかった。声優プロダクションの付属養成所以外に、アニメ系の専門学校に声優養成コースが設けられるようになった。

第三次声優ブーム

それまでのブームがテレビという大衆メディアを背景としていたのに対して、ラジオ番組(アニラジ)・OVAテレビゲーム・イベント・ネットと、よりパーソナルなメディアを背景として情報が発信されるようになり、ついに声優専門誌まで登場した。

ラジオでの活動を通じてファンを獲得して、CDを売り上げ、大ホールでのコンサートを繰り広げた。1980年代の第二次ブームにも声優がラジオ番組でDJを務めることがあったが、このブームでは声優が専属契約するレコード会社がラジオ番組のスポンサーとなり、商業化を顕著となった。林原めぐみ椎名へきる國府田マリ子らが成功の先駆けとしてモデルケースとなった。同様の手法で声優事務所やレコード会社が若手声優の売り出しを図るようになった。これまでのブームと比較してさらに声優のアイドル化、タレント化が進行したのが特徴。1990年代中頃より始まったと見られる。

ラジオ番組以外にもテレビゲームに音声が付くようになり声優の存在が大きくクローズアップされた。その結果、声優出演のテレビゲームのイベントが数多く催され、声優がパーソナリティを務めるテレビゲームのラジオ番組が数多く放送された。

1990年代後半から始まったアニメブームにより首都圏で放送されるアニメの数が激増した。そして、誰もがインターネットに接続できるようになり、声優の情報も簡単に入手出来るようになり、また、声優がパーソナリティを務めるインターネットラジオ番組が激増した。

これらのこともあって一時期ほど過熱的ではないものの、すっかり定着した様相を見せている。

声優の経歴

現在第一線で活躍している声優の経歴を見ると、大別して7つのケースが存在する。

子役出身者

小中学生の頃から大手の劇団等に子役として所属し演技力を養い高校卒業と共に、あるいはそれと前後していきなり第一線で活躍するパターン。古くは池田秀一中尾隆聖古谷徹塩屋翼鶴ひろみ冨永みーな鳥海勝美など。
最近は浪川大輔坂本真綾飯塚雅弓渡辺明乃千葉紗子南里侑香名塚佳織などがこれに当たる。
ここ数年位から入野自由仙台エリ齋藤彩夏平野綾木村昴黒葛原未佑など、小中学生のうちから声優として活動するケースが増え始めている。

舞台役者出身者

高校、専門学校、大学在籍,卒業後に劇団で舞台役者として活動中にアニメ関係者から見出され、声優として活動するパターン。
富野由悠季に見出された朴璐美スーパー・エキセントリック・シアター出身の折笠富美子白鳥哲青羽剛村田秋乃高橋理恵子や、地元の短大在学中に所属していた劇団でたてかべ和也にスカウトされた小林沙苗などが代表的な例。
また特殊な例として、声優の卵としてドリカンクラブに入るも、その時点では芽が出ず、暫く舞台役者活動を行いながら養成所に通い、ようやく声優デビューを果たして早々『まぶらほ』などで一気にブレイクした生天目仁美の例もある。

養成所出身者

高校、専門、大学卒業(もしくは中退)後に後述の専門学校やプロダクション直営の養成所で数年間勉強し、見習い期間を経てデビューするパターン。学生時代にアニメを観て声優に憧れこの道を志す人間は大抵このパターンを取る。
最も手の届きやすい方法ではあるが、それだけに志半ばにして挫折することも多い。例えば、代々木アニメーション学院の各校における声優タレント科の入学者は毎年数百人にも及ぶが、卒業後に声優として第一線で活躍できる者はごく少数である。また、卒業後に別の養成所に入り直す例も少なくなく、そこから有名声優への道を歩んだ者も多い。

その中での成功例としては古くは林原めぐみ山寺宏一井上喜久子三石琴乃森川智之らが、最近では野川さくら田中理恵田村ゆかり中原麻衣鈴村健一など多数(野川に関してはエニックスのオーディションに合格した事が声優デビューのきっかけではあったが、本格的に知名度を伸ばしたのは、その後代々木アニメーション学院で勉強して、現在の所属事務所に入った後である事から、この項に分類される)。

芸能界内異ジャンルからの転向者

アイドルから転向した岩男潤子日髙のり子(いずれもアイドル時代は苦労人であった。ちなみに日高に関しては子役経験も一応ある)、ヌードもこなすグラビアアイドルから転向した柚木涼香千葉千恵巳、レポーターだったかかずゆみ松岡由貴、人気お笑い芸人であったが一旦引退した後に声優として復帰した斉藤祐子、声優活動を行う前に出演していたNHK教育テレビたんけんぼくのまち』チョーさん役で知られる長島雄一などが挙げられる。

異業界からの転職者

電通マンの永井一郎や元警視庁機動隊所属の若本規夫、元公務員中井和哉に元北陸放送アナウンサー河内孝博(その逆の例として、声優からテレビユー福島のアナウンサーに転職した藁谷麻美がいる)、大学の建築学科を卒業してから銀行員を経て声優となった金田朋子幼稚園教諭だったこおろぎさとみの例が挙げられる。

各種オーディション出身者

作品や雑誌の企画による一般オーデイションから、声優になるパターンである。アイドル歌手などでお馴染みのコンテスト形式の声優版である。真田アサミ浅野真澄堀江由衣沢城みゆきなどがコンテスト出身者にいる。(正確には、真田と浅野は養成所出身だが後にコンテストにより勝ち取った役でブレークしたのであえてこの分類に入れた。また沢城に関しては、その後声優事務所の養成所で勉強して、若くして卓越した演技力を身に付けるに至った。)

各種芸能人における仕事の一部として参加

最近は俳優・女優・アーティスト業の傍ら声優として活動するケースも少なくない。

俳優・女優関係

声優としての勉強などの経験が無い者も珍しくないため、演技力は玉石混交であるが、映画『ストリートファイターII MOVIE』、テレビアニメ『ストリートファイターII V』でケン・マスターズを演じたタレント羽賀研二は、本職顔負けの演技力で視聴者を唸らせた事は有名である。

特撮番組出演経験者

特に変身ヒーロー作品では変身後のキャラを演じる際にアフレコが必須であり、事実上声優経験をしている為か、俳優などでも活躍した後に声優に転向した中庸助中田譲治内田直哉、現在も俳優としても活動している渡洋史小川輝晃岸祐二松風雅也菊地美香などの例が挙げられる。

アーティスト関係

主な例としてChangin' My Lifemyco栗林みな実宍戸留美などが声優として活動している。

主な例として、九代目林家正蔵(旧:林家こぶ平)栗田貫一ラサール石井テアトル・エコー在籍時代に声優の勉強を行っていた経験がある)が挙げられる。また、出演経験は『じゃりン子チエ』テツ役だけであるが、余りにもハマり役だったが為に視聴者の記憶に残る存在となった西川のりおの例も挙げられる。
なお、講談師の一龍斎貞友(旧名:鈴木みえ)や一龍斎春水(麻上洋子)はもともと声優として長いキャリアを積んだ後に講談師に転身し、その傍らで引き続き声優活動も行っているため、前記の各人とは意味合いが異なる。

声優のカテゴリ

アイドル声優

最近では声優の仕事は多岐に渡り、声充て・吹き替えだけでなく、携帯電話の着声やCDを発売したり写真集を出版する者もいる。また、自分がパーソナリティーを務めるラジオ番組(アニラジ)を持つ場合も多い。このような幅広い活動を行う声優を俗にアイドル声優という。このアイドル声優は『タッチ』や『らんま1/2』のヒロイン役を務めた日髙のり子と、同じく『らんま1/2』や『新世紀エヴァンゲリオン』に出演した林原めぐみが先駆けとなり、國府田マリ子椎名へきるなどでブームに火がつき、現在に至る。

このため、現在の声優には、演技力のほか、ルックスの良さや歌唱力、自分自身が独特のキャラクターを持つことなど、様々な能力が求められるようになっている。とりわけ女性アイドル声優の場合はスタイル、ルックスも多少重視される場合もあるが、それはアイドル化路線が軌道に乗ってから言われる事が多いとされるが、最近の一部の事務所の養成所で「声優はエンターティメント」と銘打っている例も出ている。この傾向に対しては一部の声優ファンから『露骨過ぎる』との批判の声も出ていて、その事務所所属声優を無条件で嫌う者まで出ている状況まで発生している(その結果、本来の実力を過小評価されている者まで出ている事に、そのファンの中からも憂慮する声が挙がっている)。

夢の国の住人を自称し、生年を公表していない者も少なくない(タレント名鑑などでのみ確認出来る)。

ただし、声優はアイドル化しても一般的な知名度は低い。お菓子系アイドル地下アイドルよりは知名度があるといわれるが、お菓子系アイドルでは風野舞子が、地下アイドルでは水野あおいが声優以上の人気を得たケースもあり、平均すると声優の知名度はお菓子系アイドルや地下アイドルと同程度であるといえる。

もちろん年齢的にアイドル声優としていつまでも活動出来る訳はなく(一般のアイドルが20代に入ると古株と言われるのに対し、アイドル声優は30代前後でも通用する点から、前者よりは長いとは言えるが)、一時期一世を風靡した者が、程なくして次の若い世代に取って代わられた結果、仕事量が激減してしまった例も少なくない。

とりわけ20代後半に差し掛かった辺りで更なる成長を遂げられるか否かが、アイドル声優と呼ばれる者たちのその後の運命を左右すると言っても過言ではなく、現在の中堅声優の中にそれに成功した者が多く存在する。

世界の声優事情

日本のように専業の声優が確立している国は少なく、俳優が担当することがほとんどである。

韓国では放送局が声優の劇団を持っている。

プロダクションの得意分野

声優の仕事は所属するプロダクションの得意分野に左右されることが多く、例えばアニメでは人気声優でも吹き替えでは出演機会が少ないということがある。

プロダクションの得意分野を挙げると、

とされている。子役声優の場合、有名児童劇団からの起用が多く、劇団ひまわり出身が多い。

声優と芸能界

アニメファン・声優ファンは歌手やタレントを「芸能人」と呼ぶことが多い。声優も芸能人に含まれるが声優はアニメ、映画の吹き替え中心で独自の発展を遂げたことが区別される理由だと考えられる。

歌手やタレントは知名度を期待されてアニメや吹き替えで重要な役の声優に起用されることがある(大抵はテレビ局の一方的な話題作りや宣伝行為で起用することが多い)が、演技が下手なことが多いため、実際に声の出演の訓練を受けキャリアを積んだ俳優・声優が軽視されていると批判する意見が多い。特にスタジオジブリ制作のアニメ作品は日本映画トップクラスの観客動員数を誇るだけに、歌手やタレントの声優起用が毎回批判の的になることが多い。

有名芸能人の中には若手の頃の声優の仕事を無かったことにしている人も見られる。ちなみに女優仲間由紀恵もアイドル時代に声優の仕事をメインとしていてアイドル声優とも言える。ただし、仲間本人とファンは声優としての活動自体を忘れ去りたい過去(黒歴史)としての認識を持つ。

声優からテレビドラマ俳優やテレビタレント・司会者への進出

これは事実上、殆ど存在しないと言える。元々声優というのは俳優が声だけで演じているとはいえあくまでも役者なので、テレビドラマへ役者として出演しても問題は無いはずだが、実際問題、声のみで演じている専業声優がドラマ等で顔出しするケースは稀で、しかも成功した例は少ない。ただ、マイナーな作品(興行的に展開が小さい作品)ではそれなりの成功を収めた例はある。しかし、顔を知られていないので主演や助演などにすると新人起用同然の状況となってしまい、主にゲストとして出演するのが常である。

専業声優出身者としてドラマ出演でのほぼ唯一といっていい成功例が山寺宏一である。山寺の場合は、声優という閉鎖的な雰囲気を一切感じさせない明るいキャラクターが受けたといえる。但し、これも「おはスタ」などで顔出しする司会者として名を馳せた事や、各種モノマネ番組に頻繁に出演実績があってこその俳優デビューであったと言える。山寺は専業声優歴が長く人気も高いので、俳優デビューは遅く、進出後も兼業で声優を続けている。

故・山田康雄戸田恵子津嘉山正種は元々顔出しして演じている舞台役者(戸田はアイドル時代があるが)で、初めは俳優業としてドラマにも出ており、その後、声優兼業というパターンで俳優もこなしている。大山のぶ代はタレント・料理研究家としての顔を持ち、冨永みーな飯塚雅弓辺りは元来子役出身であり(冨永の場合はモノマネに秀でていた事から、山寺と同様にテレビのモノマネ番組に頻繁に出演していた時期があった)、また、日高のり子もアイドル時代に各種テレビ番組に出演していた経験が多数あり、いずれもその後声優に転身している。

これらの逆のパターン、すなわち最初に専業声優で演じ、その後テレビドラマなどメディア上で俳優として演じるのは難しいのが実情である。

國府田マリ子がかつて深夜ドラマに出演したことがあるがぱっとせず、その後は映画のエキストラ等で出演することがある程度である。その為か、最近では野川さくらなどは、テレビの特番企画などのゲスト出演を除いては(清水愛のように、この手の番組にも積極的に出演する例もあるが)、最初から声優ファン向けの映画やDVD、各種番組に的を絞って顔出し出演している。

ドラマのキャスティング権は大手芸能事務所が大きな力を及ぼす状態なので、声優業のマネージメントを主とする声優プロダクションではテレビドラマに出演させる力が弱い。そのため声優業を行なっている劇団系の役者の顔出しの活動は、大手芸能事務所の圧力が及ばない舞台活動・映画活動がメインとなっている。彼らは俳優活動の一環として声優業を行うという昔ながらの声優に近い形態である。だが最初から声優を志して専業声優となった場合は顔出しの仕事自体行わないケースが多い。

日本武道館の声優コンサートの成功、芸能界の驚愕

日本武道館でコンサートをして成功させるには、知名度だけではなく、熱烈なファンの獲得と歌唱力、演技力、人物的魅力など総合的な能力が必要とされ、大物芸能人(ここで言う芸能人に声優は含まれない)でも滅多に成功出来ない。

よって、日本武道館のコンサートで成功させることは大物であると言う事を内外に示す意味も持つ。20年以上芸能界に在籍する人でも日本武道館でコンサートを成功させるのは難しいと言われたが、声優・椎名へきるの成功は、声優界、芸能界の両方に衝撃を与えた。 特に声優界では、この椎名へきるの成功もあってかアイドル声優が次々と誕生し2005年1月2日には、水樹奈々が声優として2人目のライブを行った。

逆に芸能界では日本武道館コンサートを成功させることは依然として難しく、声優業界に謙虚に学ぼうと言う人から、たかが声優と反発する人まで様々な意味で芸能界に衝撃を与えた。アイドル声優ブームの絶頂期は過ぎたものの、アイドル声優自体は、毎年新しい人物が登場し、むしろその影響力は拡大している。

芸能人のファンと、声優のファンの違い

芸能界では主に芸能人を「高嶺の存在」とすることでファンを得てきたが、声優は芸能人以上に狭い部分をターゲットとするので「身近な存在」とすることでファンを得てきた。しかし、それは熱烈なファンを大量に産むと言う手法として確立し、特にアイドル声優に直接関連する商品(直筆サイン等)は高騰した。またその熱烈なファンの結集が膨大なエネルギーとなり声優の成功へ導かせ、結果として芸能界でさえ難しいと言われた日本武道館コンサートで成功する声優を次々と生み出した。

つまり、声優以外の芸能人の人気は浅く広くであり、声優はその範囲の狭さを深さでカバーしていると考えればよい。前出のオタク声優、ネトゲ廃人声優などは、この親近感を与えるための存在であるといえる。

近時の声優の立場など

近年はメディア発達等により舞台公演等に行かなければ見ることが出来なかった素顔の声優たちも比較的一般的なメディアにおいて生の演技やトーク等を見ることが多くなりつつある。しかしアニメファンや吹き替え作品のファンにとっては、本来「影の存在」だった声優が表舞台に姿を見せるようになったことに対して、キャラクターや作品のイメージが壊れる(特にアニメの場合は絵と人間との比較となるため両者間のギャップが大きい場合がほとんど)と感じ、嫌悪感を持つファンも多い。また、声優(特にアイドル声優)の登用に際して演技力が軽視されるようになってきているのではないかと危惧する向きも多い。

声優自身が作品の登場人物に扮して、舞台で公演した例としては、『サクラ大戦』『HAPPY☆LESSON』『HUNTER×HUNTER』『スクールランブル(一部分)』『アニメ店長』が挙げられる。

現在では従来のように舞台俳優をホームベースとしながら声優も併せてこなす者に比べ、前述のようなアイドル化した声優や本当に声優活動に絞って仕事を行う者も増えてきている。しかし現況ではアニメファン・声優ファンという特定のファン層が確立しているため、若い声優たちはもっぱら彼らを対象とした活動が中心とする傾向にある。また声優は歌手・タレントに比べるとルックス、所属プロダクションの力で劣ることもあり、芸能界やマスメディアなどエンタテイメント業界には声優を見下す風潮が依然として残っている。

とりわけ「芸能界のドン」といわれるバーニングプロダクション社長・周防郁雄は声優そのものを嫌っており、声優をメジャーなメディアに出られないようにマスコミに圧力をかけていることは業界内では有名である。また、「宮崎駿が声優を『娼婦の声』といって嫌っている」という有名な話があるが、これは実際の所は単に話題づくりの為に有名人を起用しているだけの話と言われる。一方で押井守は、声で全ての演技を行う声優という職業を非常に尊敬し『イノセンス』で『攻殻機動隊』から続けて登場するキャラクターの配役交代の話を退けたと言われている(具体的には草薙素子役の田中敦子の事であるとされる)。

1970年代から1980年代を中心に民放各局で知名度の高い芸能人を映画の吹き替えに起用するケースが多発したが、特に日本テレビの『スター・ウォーズ』では出演者の演技力の低さから視聴者の不興を得て沈静化、現在ではフジテレビがたまに起用する程度ではあるが、劇場用のファミリーアニメにおいては、1990年代後半からは起用されることが増えて来ている。

また一般大衆側からも、声優という存在は、視覚的に認知しにくいこともあり、やや縁遠いものであり、声優がメジャーなタレント等と同等の芸能人として一般的に評価されるようになるのは事実上困難な現状にある。

しかし、最近では声優の歌ったCDが「オリコンランキング」上位の常連となることも少なくなくそれがランキング形式の音楽番組にて大衆の目に触れることも少なくない。COUNT DOWN TVは、その代表とも言える。

世間一般で声優の地位が低い代表的な例として挙げられるのは、レコード店では声優が個人またはユニットで歌う音楽CDのほとんどが「アニメ関連コーナー」に置かれていることである。専業歌手でない芸能人が歌う音楽CDが専業歌手並みに扱われていることに比べると、低い扱いであると言わざるをえない。ただ最近では水樹奈々がフジテレビ系列のHEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMPに、南里侑香がFictionJunction YUUKA名義でNHKのポップジャムに出演するというケースが表れている。

最近では山寺宏一がTVドラマやバラエティ番組に幅広く出演しており、声優を見下す風潮に対して一石を投じているが、このように一般の芸能人俳優らと同様に仕事をこなせる声優は極めて稀であり、声優業界全体でみると俄然見下し風潮は続いている。

声優稼業の実態

過酷な環境

実際、声優は儲からず、それ以前に徒食に窮する事が多いとされている。声優には所属事務所からの基本給というものは事実上存在せず、各人の仕事実績によるギャランティ(報酬金)が収入となる。

かつては声優の多くが日本俳優連合日俳連)に所属しており、日俳連は音響制作会社の集合体である音声製作者連盟音製連)を相手に、待遇の改善を申し入れて来た。ときにはストライキや街頭デモ活動を行うなどして、1973年には報酬の314%アップ、1980年には再放送での利用料の認定、1991年には170%アップするなどの成果を勝ち取って来た。

この日俳連による規定で、仕事1作品あたりの報酬は作品のジャンルや放送時間帯、放送回数、ソフト化等による二次利用、そして経験実績等の条件によって受け取る額が算出される方法を取っており、音響制作会社の一方的な言い値で手取りを決定されるということはない(一概には言えないが、日俳連は基本的に土日祝日のゴールデンタイムに放送される番組に最も高いクラスの報酬を設定している)。

新人声優は1つのアフレコで約1万5千円のギャランティが日俳連規定による相場であり(ジュニア期間等と呼ばれる)、そこから税金や会社に手数料等を引かれるため1ヶ月働いても歩合は6万はもちろん5万にすら届かない。4つ、5つもレギュラーを持っている新人声優などおらず当然のことながら生きていく為にアルバイトによって徒食しなければならない。

多くの声優らは自らの技術向上や徒食のため舞台演劇に立つが、これに関して稽古期間や公演期間が当然発生する他、スキルを維持するために1日2時間程度の自主練習が必要である。さらには下記のようにオーディション合格を自分の足で稼がなくてはならず、声優の仕事は突然はいることも多く、その時は当然声優の仕事を優先させなければならない為、アルバイトを長持ちさせることができない。

そして声優の給金は仕事の2、3ヶ月後に出る。当然貯金などもほとんどできないし、運良く東京近辺出身ならば親には文句を言われ続ける程度で済むが、地方出身で上京しているならもっと過酷な生活を強いられる事は想像に難しくない。

このような普通に生活レベルさえ維持出来ない声優が多くおり、30代になってもアルバイトもして生計を立てている声優など珍しくなく、それに耐え切れずに廃業せざるを得なくなった者もいるほどである(白石文子のように業界関係者の評価は高かったものの、収入の低さから声優での生活を続ける事を断念して引退し、実家に戻った話は有名である)。

以上の事情はアニメと外画吹替における日俳連と音製連による協定に基づくものであり、日俳連に所属しなければこの規定に縛られることはない。例えば、石原裕次郎は映画『わが青春のアルカディア』の出演料が1000万円だったと言われている。この協定を嫌う製作者側もあり、日俳連に所属しない声優を起用するケースが近年では増えて来ており(ネルケプランニングがキャスティングを仕切っている作品で特に顕著である)、現在では日俳連の組織率は以前と比べると低下している。

人気声優の苦労話の数々

このようにアニメと吹替を専門として声優のキャリアをスタートさせようとし、声優一本で生計を立てるのには相当な覚悟が必要であり、これらの苦労話を人気声優としての地位を確立した後に語る者も少なくない。

  • 真殿光昭の場合、銭湯にも行く金にも困るほどの窮乏生活が続き、ある日、事務所の社長専用のシャワー室を無断で使って、その事がバレた際に社長が「真殿なら仕方ないな」と言わしめたほど。
  • 檜山修之の場合、広島から上京した際に、隙間風に晒されるような劣悪な環境のアパートに入るしかないほどの貧乏振りで、時にはパン屋が捨てたパンの耳の袋を持ち帰って空腹を凌いでいたと語っている。
  • 浅野真澄の場合、大学の学費も奨学金とバイト代で賄っていたほどの貧乏生活で、デビュー間もない頃に主役としてレギュラーを持っていた時期でさえ食事代にも困窮して、カップラーメンの汁にご飯を入れておかゆ代わりにしたり、他にもパンの耳や納豆ご飯だけで飢えを凌ぎ、その前には料金滞納で電話を止められた事もあり、更に国民年金も払っていなかったとも語っていた(現在は不明)。
  • 最近では落合祐里香が自らのホームページでバイトをいきなりクビにされ、その為に金欠状態に陥って「うまい棒」で空腹をしのぐなどの苦しい生活や身の回りに次々と起こる不運続きの日々を告白し、ネット上などで話題を呼んでいる。

有名ベテラン声優の神谷明でさえ、近時においても新人声優らと一緒に様々な作品のオーディションを受け続けているという。配役を得ても、声優として稼働した場合の1本あたりの純ギャランティは現在8万程度である。出演本数等から換算した場合、神谷明の年齢から考えても純粋に声優として稼働した場合は同世代の平均的な年収に達していない。1988年には永井一郎が『オール讀物』(文藝春秋)において「磯野波平ただいま年収164万円」と題した記事でアフレコの報酬の安さを訴えていた。

18禁作品関連の場合

また、ゲームソフト会社は音製連に属していなかったため、この協定よりも遥かに高額な報酬を声優に支払っていた時期がある。しかしこれも、1998年に日俳連と社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)の間で協議が持たれ、アニメや外画に準ずる形になったという。ただし、CESAは家庭用ゲームソフトメーカーで組織されており、この協定は一般ゲームが対象になっている。

アダルトゲームなどでは、未だにアニメのアフレコ1本分の数倍の報酬が貰えるとされている。この場合、特に女性は事務所の方針などから源氏名を使って活動する事も多い。この方面で役を取るためにも地道な営業活動が必要であり、アトリエピーチなどアダルト関係を専門に扱う事務所に属する声優、各アダルトPCゲーム会社とのパイプが太いフリーで活動する声優と熾烈な競争に勝たねばならないという現実がある。

逆に男性の場合、ボーイズラブ(BL)の仕事が入り、上手く行けば女性人気を得る事も容易いとされている。櫻井孝宏はかつて自分のラジオ番組で「BLがあったから今の自分がある」との発言を残した。女性に比べ男性は性的メディアに出演する事への抵抗が無いことから、多くの男性有名声優がアダルトソフトやボーイズラブの仕事を受けている。むしろ、出ていない男性声優の方が少ないとの見方もある。ただし、多くの男性声優もアダルトについては源氏名を使い活動しており、一条和矢竹若拓磨のように表の名前で活動するケースは極めて珍しい。

声優の仕事の取り方

所属事務所を通して配役をあてがわれることは、特に新人やキャリアの浅い者には、極めて稀である(音響制作会社から声優のマネージメントを声優事務所に任されていると、端役等が事務所マネージャーに一任される場合はある。「協力:○○プロダクション」などとクレジットされているときはそう考えてよい)。

アイドル声優として売り出される者を例外として、通常は各作品の制作プロダクションから声優の事務所庶務に、洋画ビデオ吹替やテナント等のナレーション、アニメーション等各作品の「オーディションのお知らせ」が通達されるのみで、声優はこれらに事務所を通じて応募してオーディションを受験し、合格を取るといった「自らの足で稼いで仕事を取ってくる」ことがほとんどである。

全ての声優がオーディションに参加する機会を得られるとは限らない。声をかけられた事務所のマネージャーは、役柄にあうと判断した所属声優をピックアップしてオーディションに挑ませるのが通例である。オーディションの手間をかけず、事務所単位で制作されているボイスサンプルを収録したCDなどを参考にキャスティングを済ますこともある。

洋画の翻訳会社からビデオ化の際の吹替トラック作成時に指名を受けることもあるが、これは外国俳優の持ち役等を持っている声優などごく一部の例外と言ってよい。

従って如何に就労意欲があろうともオーディションで採用されなければ無収入のままであり、声優として稼業するということは、常にオーディションを受け続け、勝ち続けなければ食べることが出来ないという厳しい現実を繰り返すことなのである。

基本的な事情は以上だが、現実には映画での「○○組」と同じような現象がこの世界でもあり、各種原作者などの版権者や制作会社関係者、監督や音響監督との人間関係によってしばしば常連声優がいたり系列化されているのも事実である。

ベテラン声優の稼ぎ柱

ベテランになり日俳連のランクが高くなると、予算の関係からアニメや吹替の仕事が少なくなってくる。

それを補うのが、CMやナレーションの仕事である。こちらの方面は日俳連の協定によるランクの縛りがなく、クライアントとの交渉で報酬が決定し、アニメや吹替よりも遥かに高額とされる。キャリアを積んで一定の評価を得たベテランとなると、こちらの依頼が増えるようになって、CMやナレーションに仕事の比重が移っていく。特に番組ナレーションに強いとされる青二プロダクション所属の中堅やベテランクラスの者にその傾向が強く見られる。他にも企業向けビデオのナレーションの仕事はファンへの露出は少なく目立たない仕事ではあるが、声優にとっては貴重な収入源となっている。

中には若くしてナレーションの仕事が多い者も存在し、その一人である諏訪部順一は外車を数台保有する事でも知られている(『テニスの王子様』跡部景吾役で女性ファンの大人気を集めた事も相まっている)。

ベテラン声優の中には本業の傍ら、副業を行なう者もいる。音響監督には、故・千葉耕市千葉繁三ツ矢雄二塩屋翼カシワクラツトムなどが、声優事務所の主宰には、内海賢二難波圭一堀内賢雄井上和彦(音響監督業もこなす)、マネージャー業としては吉田理保子らが挙げられる。また、養成所や専門学校の講師を行なう者も多い。

神谷明は青二プロダクションから独立して個人事務所冴羽商事を経営する傍ら、編集業務等を行なうコアミックスに出資して役員を務めている。これら一部の声優が行なっている副業を単に本業では食べていけないからやむなく始めたビジネスと見るか、声優業でこれまでに培った経験を活かして業界に貢献したいからと見るかは見方の分かれるところであろう。

全体を見れば非常に厳しい世界であるが、アフレコにとどまらず、CMやナレーション等で高額の年収を得ている者もおり、実力と運が必要な世界である。

雑誌『アニメージュ』は毎年大きな人気投票を行うため、アニメに出演した声優をリストアップするが(本業は歌手やテレビ等をメインにする俳優なども混ざる)そこで示される声優の総数はおよそ1500人弱にのぼる。

声優のメリット

厳しい実態がある声優業界だが、メリットもある。

まず、儲からないと言われる声優だが舞台俳優よりは儲かると言う点。これは舞台という物の需要が(アニメ等の声優家業に比べ)少ない為、どうしても儲かる人物が一部の中のさらに一部の人間になってしまうところにある。

次に、私生活においても自由に行動しやすいところがある。テレビ画面に出る芸能人は顔も覚えられるため、人通りの多い場所や人気の場所に行けばあっという間に取り囲まれて身動きが取れなくなってしまう(特にジャニーズ所属のタレントになると外出自体困難らしい)。声優もまたその大部分が舞台演劇に立ち、いわゆる「顔出し」の仕事をしているものの、テレビ等に頻繁に登場する芸能人と比べると、世間一般に対する露出頻度が非常に低いため、アニメファンなど一部の層以外には視覚的に認知されにくい。そのため街頭で取り囲まれるようなことはほとんど無く、自由に行動しやすいメリットがある(ただし、秋葉原などのアニメファンが集中する場所は例外)。

写真週刊誌やワイドショーなどにほとんど取りあげられないというメリットも大きい。芸能人の場合は交際、不倫などスキャンダルによってイメージダウンやマスコミの攻勢によって仕事面でも精神面でも打撃を受けることが多い。これに対して声優の場合はこのように取りあげられることはほとんど無い。実際、過去にスキャンダルとして報道された例は極めて少なく、マスコミに取り囲まれてしつこくプライベートの質問をされることも無いので、その分、精神的には非常に楽と言える。スキャンダルの例としては、当時名前が売れ始めていた石原絵里子が、所属事務所に無断で別名でAVに出演していた事が発覚した際、東京スポーツで紙面の4分の1を占めるほどの記事となり、それが原因で事務所を解雇されて声優業界から姿を消した一件があるが、ごく希である。

声優の移籍や独立に関して(その他の芸能人との違いも含めて)

芸能人(ここで言う芸能人に声優は含まれない)は、一般的に所属事務所を通した活動を行い、そのギャランティからの仲介料がまた事務所の収入となっているのであるが故に、存在その物が商品である為、特に独立に対しては、これを安易に容認すれば大手プロダクションの経営基盤に影響を及ぼす可能性がある事を警戒している為か、事務所移籍には莫大な違約金を科すなどの厳しい制約項目を所属芸能人との契約書に明記させる例が多い。

例として吉本興業所属の芸人や、爆笑問題鈴木亜美のように独立或いは事務所と軋轢を深めることによって、それまでの「大手事務所経由による仕事の契約」というルートが寸断されてしまい、その後の活動に影響が顕著に現れた芸能人も少なくない(特に吉本関係では一度は辞めた人間が、容赦ないまでの干されように耐えかねて、後に吉本側に対して土下座してまで復縁して、やっと表舞台に復帰出来た例が多い事で有名である)。

しかし、声優業界は「オーディションを受けて仕事を得る」という芸能界本来のシステムが未だ主流であり(もっとも声優に限らず、現在もオーディションによる配役決定という姿勢で作品制作が行われている例も根強いが)、さらにアニメなどでは長年声優をやっているから、などと言う理由では採用されず、作品世界に適合した声や演技力を持つ人物が採用される傾向が強く、大物声優でも選考オーディションを普通に受けるのが、芸能界とは違うところである。

※ただし、視聴率を取りやすい人気声優、特にアイドル声優は比較的集中的にキャスティングされる事もあり(特に人気アイドル声優を多く抱える大手レコード会社が制作する作品で顕著であり、その場合は更にその会社側が重宝する者を多く起用する例も少なくない)、これによって作品の多さの割に代わり映えのないキャスティングと言う結果になる事も少なくない。

ともあれ、以上に挙げられる理由などから、声優業界においては、独立や移籍に関しては比較的寛容である。

その過程においては、元の事務所を退社してから一ヶ月ほどして新しい事務所に移籍するパターンが目立つ(元の事務所から戦力構想外と見なされた者に対し、別の事務所が引き取り手として名乗りを挙げて、両事務所の協議の結果、円満移籍が実現する例も多い)。

しかし実際の所は完全に寛容と言う訳でもなく、事務所との軋轢などが原因で辞めた人間が、その後めっきり仕事量が減ってしまった例もある(岩永哲哉小西寛子などの例は有名。)。また、井上喜久子のようにデビュー当初から在籍していた事務所を辞めてフリーになった途端に、その事務所が得意とする吹き替えの仕事が急減した例もある(幸い、他の業界関係者からは既に引く手あまただった為、仕事に困る事態には至らなかったが)。

実際に林原めぐみ横山智佐難波圭一堀内賢雄などの人気声優が独立して活動しているが(先述の井上喜久子のように、実姉と共同経営の個人事務所を構えながら、ナレーション関連のマネジメントをベルベットオフィスに委託している例もある。また、一度はフリーになり、そんな中でも安定した仕事量があった人気声優の中にも、マメジメント業務の煩雑さなどから、再び事務所所属になる例も少なくない)、一般的な芸能人に比較して単体での営業活動基盤が細い声優業界においては、彼らのような状況はほんのごく一部の成功者のみ許される選択肢でもある。

専門学校・養成所について

声優を目指すという場合、代々木アニメーション学院のようなアニメーションやマルチメディア関係の専門学校に声優学科を併設する専門学校が数多く存在し、専門学校出身の声優も多い。また、声優プロダクション直営の声優養成所と呼ばれる組織があり、アーツビジョンの養成組織である日本ナレーション演技研究所青二プロダクションの養成組織である青二塾などが有名である。声優養成所では、プロの声優が講師となり演技の指導を行う。このような講師の仕事も声優の仕事の一部である。また、勝田久が勝田声優学院を経営するなど、プロダクションとは別に指導する者もいる。

養成所や専門学校での養成期間は概ね2年から3年であるが、ここで習うのは声優としての訓練ではなく通常の俳優としての演技である。すなわち一般的な俳優と何ら変わらない訓練を積むのである。これはどのプロダクションにも一貫している見解であるが、「素の演技が出来ない者は声の演技などまして出来ない」ということである。訓練生はまず、一本立ち出来る演劇俳優として徹底的に鍛え上げられるのである。

演技の勉強をしてきた後、プロダクション主催のオーディションに合格するとプロダクションに所属できる。この時点では各所属において「新人」「ジュニア」と呼ばれる見習い期間となる(このジュニア期間については前章「声優稼業の厳しい実態」参照)。そして見習い期間にどれだけオーディションに勝ち残れるかが、正所属や本所属といわれる段階に進めるか否かの分岐路であり、これが順調に進められた者は大手の声優プロダクションに移籍することもある。

逆に言えばこの新人期間にオーディションで仕事を取れない者はこの後遅咲きで伸びるということはほとんどなく、夢を断念して去るか、再び養成所に入所し直して演技力を高めるしかない。

毎年2000人以上いると言われる声優の訓練生だが、実際に生き残ってプロデビューを果たせる者はほんの僅かであり、プロの声優となるには長い期間の下積みが必要な、非常に狭き門といえる。

実際の状況として多くの訓練生の中には、特段可愛い声、特徴ある声、声のバリエーション幅が広く幾つもの年齢層を演じ分けられる人、或いはアイドル声優として売れそうな容姿の女性声優の卵などはかなりの数がおり大して珍しい存在ではなく、これらの能力・技能があるからといって成功に直結したという例はほとんどないのが実態である。ここから頭角を現して生き残れる条件は結局、芝居力・演技力が他の者より優れているか否かである。すなわち養成所時代にどれだけ総合的な演技力が身につけられたかが勝敗を決めることになるのである。そして勝ち残った僅かな者も、前章のようなオーディションを戦い続けなければならない、厳しい人生を歩んでゆくことになる。

特殊な例

中には事務所や養成所の宣伝および実績づくりのために、経験不足の状態で主役に抜擢された者もいる。

鈴木真仁三ツ矢雄二の口利きで「赤ずきんチャチャ」の主役に抜擢されたが、その当時の演技は不安定なものだった。もっとも経験を積み上げた結果、相応の演技力を身に付けるに至り、今なお声優業界において健在である。なお、この作品にはSMAP香取慎吾も出演しているが、本人は声優をやったこと自体忘れたいらしい(更にその前作の姫ちゃんのリボンでは同じSMAP草薙剛が出演していたが、香取以上に演技力を酷評されていた)。

上記の例とは意味が異なるが、日高のり子がアイドルから転身して声優デビューを果たしてまもなく、『タッチ』のヒロイン・浅倉南役に抜擢されたが、これには当時のオーディションでの日高を見て、「下手だけど、この子に賭けてみよう」と言うスタッフの狙いがあったと、日高本人が後年出したエッセイ本で語っている。そのスタッフの期待に応えるように、日高はデビュー当初は酷評され続けて来た演技力を、アフレコ現場での厳しい演技指導に耐えて格段に向上させ、それを基礎に後々の作品で一気に役の幅を広げる事に成功し、確固たる地盤を構築した例もある。

長い目で見れば、それなりの、或いは予想以上の成功を収めるに至った例もある事から、上記の傾向が一概に悪いとも言えないのも事実である。

山田康雄・栗田貫一方式

山田康雄・栗田貫一方式やまだやすお・くりたかんいちほうしき)は、声優業界用語。

アニメのキャラクターや吹き替えなどで現在声を演じている人が先代の声色を真似て演じること。意味の成り立ちはアニメ『ルパン三世』の声を演じていた故山田康雄の後を継いだ栗田貫一が山田の声色をつかって演じていることから。 一般的にはほとんど聞かないが、声優界では有名な隠語。(栗田貫一はものまね師で、山田演じるルパン三世のものまねをやっており、生前の山田からも認められていた。そこでプロデューサーや作者などが注目し、起用したことに始まる。)

演じるキャラクターの解釈、演技、声色等を前任者から踏襲して、視聴者に違和感を感じさせないための措置。単純に役を引き継いだだけの場合は、該当しないことに注意。

この方式で現在声を演じている人

その他

その他の活躍

声優は、映像作品のアテレコやラジオといった仕事がメインではあるが、その他の仕事もこなす。企業内の教育ビデオのナレーション、イベント司会、番号案内の録音されたメッセージ、デパートでの録音案内、路線バスの案内放送などナレーション関係に関しては思いのほか多岐にわたっている。

駅の自動放送

のアナウンス(自動放送)にはアナウンサーの声がよく使われるが、最近は声優が使われることも多くなってきた。なお、その場合声優の名前は非公表になっている場合もあるし、公表されていることもある。

関連項目

外部リンク

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映画等の吹替

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