軽装甲機動車
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基礎データ | |
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全長 | 4.4m[1] |
全幅 | 2.04m[1] |
全高 | 1.85m[1] |
重量 | 4.5t[1] |
乗員数 | 4名[1](ターレットハッチを開け、後部座席間に機関銃手を座らせた場合は5名) |
乗員配置 | 前席2名、後席2名(+1名) |
装甲・武装 | |
装甲 | 圧延鋼板・防弾ガラス |
機動力 | |
速度 | 約100km/h[1] |
エンジン |
4ストローク水冷ディーゼル 160ps/rpm |
懸架・駆動 |
フロアシフトタイプ4速AT(運転席右端の操作パネル部分にはボタン式のATスイッチが装備されている)およびHi・Lo切替レバー装備、デフロックなど(高機動車と同様の装備) 前輪:ダブルウィッシュボーン 後輪:セミトレーリングアーム 登坂能力:tanθ60%[2] |
行動距離 | 約500km[1] |
軽装甲機動車(けいそうこうきどうしゃ)は、陸上自衛隊と航空自衛隊に配備されている装輪装甲車である。製造は小松製作所。
防衛省は、略称をLAV(Light Armoured Vehicle)、愛称を「ライトアーマー」としており[3]、保有する部隊内では略称をもとに「ラヴ」とも呼ばれている。
概要
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/74/25.4.8_%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%90%EF%BD%9E%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%A4%E9%96%93%E5%9F%BA%E5%B9%B9%E9%81%93%E8%B7%AF%E8%A3%9C%E4%BF%AE2_%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%B9%B3%E5%92%8C%E5%8D%94%E5%8A%9B%E6%B4%BB%E5%8B%95%E7%AD%89%EF%BC%88%E5%8F%8A%E3%81%B3%E9%98%B2%E8%A1%9B%E5%8D%94%E5%8A%9B%E7%AD%89%EF%BC%89_33.jpg/250px-25.4.8_%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%90%EF%BD%9E%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%A4%E9%96%93%E5%9F%BA%E5%B9%B9%E9%81%93%E8%B7%AF%E8%A3%9C%E4%BF%AE2_%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%B9%B3%E5%92%8C%E5%8D%94%E5%8A%9B%E6%B4%BB%E5%8B%95%E7%AD%89%EF%BC%88%E5%8F%8A%E3%81%B3%E9%98%B2%E8%A1%9B%E5%8D%94%E5%8A%9B%E7%AD%89%EF%BC%89_33.jpg)
普通科などの隊員の防御力と移動力を向上させるのが目的の装甲車であり、性能や想定する任務は、歩兵機動車(Infantry mobility vehicle, IMV)に類する。 固定武装は無いが、乗員が天井ハッチから身を乗り出して5.56mm機関銃MINIMIや01式軽対戦車誘導弾などの火器を使用できる設計になっている。車体は装甲化され、避弾経始も考慮されているが、具体的な防弾・防爆性能は公開されていない。小型かつ軽量であるためC-1 輸送機、C-130H 輸送機、CH-47J/JA 輸送ヘリコプターなどで空輸することが可能となっている[4]。
平成9年度から「小型装甲車」の名称で開発が開始され、平成12年度に部隊使用承認された。コスト低減を目的に、比較的短い周期でモデルチェンジされる民生部品が多用されたため制式化はされておらず、○○式という名称は付けられていない[5]。
形状が似ていることから、VBL装甲車(フランス)が同様の車両として挙げられるが、開発の経緯やコンセプトは異なる[6]。
部隊にはジープ(1/2tトラック)に代わって配備されているが、使用部隊からは「車体が大きくて重い」、「防弾性向上のためにフロントガラスが2分割され、中央にピラーが走っているために視界(特に左方の)が悪い」、「エンジンの騒音とタイヤの振動が大きく、椅子の悪さも相俟って、長距離移動時の疲労がジープより更に大きい」といったジープと比較されての不満が出ているが、これは装甲車両であることの普遍的な特徴でもある。また、重心が高く横転しやすいとの指摘もあるが、これも装輪装甲車両全般の傾向である。一方で、エアコンの効きはジープより良好であると言われている。[7]。
自衛隊の海外活動では頻繁に使用されており、現在までにイラク派遣、ハイチPKO、南スーダンPKO、ソマリア沖海賊の対策部隊派遣などに参加している。
軽装甲機動車 ![]() |
LMV ![]() |
VBL ![]() |
イーグル ![]() |
エノク ![]() |
コブラ ![]() |
GAZ-2330 ![]() | |
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画像 | ![]() |
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全長 | 4.4m | 5.50m | 3.87m | 5.37m | 4.82m | 5.23m | 5.70m |
全幅 | 2.04m | 2.05m | 2.02m | 2.16m | 1.90m | 2.22m | 2.30m |
全高 | 1.85m | 1.95m | 1.70m | 2.0m | 1.90m | 2.1m | 2.3m |
重量 | 約4.5t | 約6.5t | 約3.59t | 約8.5t | 約5.4t | 約6.2t | 約7.6t |
最高速度 | 100km/h | 130km/h | 95km/h | 110km/h | 96km/h | 115km/h | 160km/h |
乗員数 | 1+3-4名 | 1+3-6名 | 2-3名 | 1+4名 | 2-6名 | 1+8名 | 2+10名 |
武装
固有の武装は備えていないが、一部の車両には車体上面ハッチに全周旋回可能なターレットと防楯付き銃架が取り付けられており、5.56mm機関銃MINIMIや89式5.56mm小銃を据え付けて射撃することができる。ターレットの下にはブランコのような形をしたベルトが取り付けられており、射手はここに座って射撃を行う。ただし、機銃に空薬莢受けを付けないと、排出されたベルトリンクがターレットのガイドレールに詰まり動かなくなるという問題も指摘されている[8]。
上面ハッチからは01式軽対戦車誘導弾(軽MAT)を発射する事も可能。各駐屯地で行われる創立記念行事での訓練展示では、過去に87式対戦車誘導弾の発射機や84mm無反動砲を上面ハッチ上から構える隊員が確認された事もある[9]。しかし、ハッチのサイズが充分ではないため、カールグスタフなどを取り出すのは大変であるという現場の声もある[10]。
制式装備ではないが、2006年1月に行われた「平成18年度第1空挺団降下訓練始め」[11]や、2010年10月に行われた「中部方面隊創隊50周年記念行事」において、部隊で独自に改造(両者の改造方法は異なる)を行い、12.7mm重機関銃M2を搭載した軽装甲機動車が登場したことがある。これらの改造は車体に直接銃架が設置されているため、全周射撃は不可能である。
平成21年度(2009年度)から平成23年度(2011年度)まで、将来的に本車に搭載する可能性もあるリモートウェポンステーションの研究が行われた[12]。
調達状況
陸上自衛隊の車両とは異なり、オリーブドラブ一色で塗装されている(入間基地)
防衛庁(当時)の技術研究本部と小松製作所によって開発が行われ、小松製作所が生産している。
陸上自衛隊では、平成25年度(2013年)予算までに1,673両を調達しており、全国の普通科部隊と機甲科偵察部隊(偵察隊)への配備が進んでいる。調達ペースは数百両で生産を終了した60式装甲車や73式装甲車と比べて非常に早い。
航空自衛隊も基地警備隊向けに導入を行っており、平成25年度(2013年)予算までに118両を調達している。車体は陸上自衛隊のものと異なりオリーブドラブ一色で塗装されている。現在生産されているタイプは陸上自衛隊イラク派遣で使用されたもの(後述)と同型のワイヤーカッターと予備タイヤ用ラックが追加されている。
調達価格は平成13年度約3,500万円[13]、平成17年度約3,100万円[14]、平成22年度約3,000万円[15]。開発段階において、車両の構成品をユニット化したことによる部品点数と工数の削減および民生部品の活用により、1両当たり約630万円の調達価格の低減を実現している[4]。
予算計上年度 | 陸上自衛隊 | 航空自衛隊 | 合計 |
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平成13年度(2001年) | 102両 | - | 102両 |
平成14年度(2002年) | 149両 | - | 149両 |
平成15年度(2003年) | 150両 | 4両 | 154両 |
平成16年度(2004年) | 157両 | 8両 | 165両 |
平成17年度(2005年) | 160両 | 8両 | 168両 |
平成18年度(2006年) | 180両 | 8両 | 188両 |
平成19年度(2007年) | 173両 | 8両 | 181両 |
平成20年度(2008年) | 180両 | 21両 | 201両 |
平成21年度(2009年) | 180両 | 23両 | 203両 |
平成22年度(2010年) | 93両 | 26両 | 119両 |
平成23年度(2011年) | 56両 | 9両 | 65両 |
平成24年度(2012年) | 49両 | 2両 | 51両 |
平成25年度(2013年) | 44両+33両 | 1両 | 78両 |
平成26年度(2014年) | 30両 | 1両 | 31両 |
合計 | 1,736両 | 119両 | 1,855両 |
仕様
いくつか納入時の仕様によって大別される
- 無線機搭載車 - アンテナを1-3本装備。中隊長など各種指揮官用として配備。アンテナの基台そのものは現在確認されているすべての車両が装備している。
- 発煙弾発射機搭載車 - 側面後部に4連装のタイプを2基装備している。偵察隊・普通科連隊情報小隊用として配備。
- 機関銃搭載車 - 機関銃用の防盾を装備した型。普通科連隊普通科小銃小隊(機関銃手)用に配備、他には偵察部隊(情報小隊)の威力偵察用。後部に装備積載用ラックを現場にて改修した車両も存在。
- 海外派遣仕様 - 部隊管理でなく補給処にて一括管理品。
- 航空自衛隊仕様 - 基地警備隊用。
- 警務隊仕様 - パトライトと拡声器を追加し、「MP」という表記がされたタイプ。イラク派遣時に使用されたと見られ各種報道で姿が散見されるが[17]、その後は確認されていない。
1/2tトラック | 1 1/2tトラック | 3 1/2tトラック | 高機動車 | 軽装甲機動車 | 96式装輪装甲車 | 輸送防護車 | |
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画像 | ![]() |
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全長 | 4.14 m | 5.49 m | 7.15 m | 4.91 m | 4.4 m | 6.84 m | 7.18 m |
全幅 | 1.76 m | 2.22 m | 2.48 m | 2.15 m | 2.04 m | 2.48 m | 2.48 m |
全高 | 1.97 m | 2.56 m | 3.08 m | 2.24 m | 1.85 m | 1.85 m | 2.65 m |
重量 | 約 1.94 t | 約 3.04 t | 約 8.57 t | 約 2.64 t | 約 4.5 t | 約 14.5 t | 約 14.5 t |
最高速度 | 135 km/h | 115 km/h | 105 km/h | 125 km/h | 100 km/h | 100 km/h | 100 km/h |
乗員数 | 6名 | 19名 | 22名 | 10名 | 4名 | 10名 | 10名 |
海外派遣仕様
イラク人道復興支援活動部隊で使用された車両には以下の改造が行われており、警備やパトロールの際の隊員の安全性が向上している[18]。
- 上面ハッチ全周をカバー可能な装甲板の追加。
- 機関銃手をワイヤートラップから保護するためのワイヤーカッターの追加。
- 防弾ガラスを7.62mm小銃弾(普通弾)に抗たん可能なものに変更
(側面と後方の防弾ガラスは厚さが増し、ボルト止めされているが、フロントガラスは外観の変化が無いため改造されているのかは不明) - 予備タイヤや燃料缶用のラックの追加。
- ラジエーターなどを砂塵から防護するための改修。
これらの改修作業は、設計から取り付けまで3ヶ月程度で行われた[19]。
派遣部隊が戦闘や治安維持を目的としない人道復興支援活動部隊であることを強調し、武装勢力の攻撃対象とされるのを避けるため車体の随所に日章旗が描かれ、英語とアラビア語で「Japan」「اليابان」と表記された。塗装も他国軍のような砂漠迷彩ではなく、オリーブドラブ一色に塗り替えられていた。
現在、この改造(国籍表示などを除く)が施された車両は国際活動教育隊に配備されているが[20]、防弾ガラスや予備タイヤ用ラックなど一部の改造が施された車両は全国に配備されている。
2010年から行われている自衛隊ハイチPKO派遣においてもこの改造車が使用されているが、この任務で使用されている車両には国際連合を意味するUNの文字が車体に貼り付けられている[21][22]。
海賊対処のためジブチに派遣されている部隊に配備されている車両は、上面ハッチ周囲の装甲板に屋根を追加するなどの現地改造が施されている[23]。
模型
2004年(平成16年)にタミヤがイラク派遣仕様を1/35スケールでプラモデル化しており、後にタミヤ、京商がそれぞれラジコンを発売、タカラトミーから2006年にトミカ、2008年にはCAULとしても販売された。また、トミカハイパーシリーズ内には軽装甲機動車をベースとした架空車両として、救急車仕様の「山岳救急処置車」と、消防車仕様の「機動耐熱救助車」がラインナップされている。
画像
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側面
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ドアとハッチを開けた状態
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カバーのついた後部ハッチの鍵穴
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12.7mm重機関銃M2を装備した車両
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軽装甲機動車を盾にする普通科隊員
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イラク派遣時の様子
-
イラク派遣時の様子
登場作品
- 映画(アニメ映画含む)
- 国連軍およびNERV所属車両が登場。
- UNTI(ウンツィ)が装備・使用。
- 実写作品
- 国防軍の車両として、第50話に登場。
- 『戦国自衛隊・関ヶ原の戦い』
- 『空飛ぶ広報室』
- 航空自衛隊の車両が第5話に登場。
- アニメ
- 陸上自衛隊所属のものが、第1話に登場。
- 『絶園のテンペスト』
- 国防軍の車両として登場。
- 第31話に登場。
- 日本陸軍所属車両が第1話に登場。
- 小説
- 主人公たちが東海村の神社からの逃走に使用。
- ゲーム
- 『大戦略シリーズ』
- 主人公が所属するPMCが所有。
- 「ジープ」の名称で登場している。
脚注
- ^ a b c d e f g 防衛省 平成22年度 中間段階の事業評価 評価書一覧 軽装甲機動車 参考
- ^ 第1師団公式サイト 軽装甲機動車紹介ページ
- ^ 陸上自衛隊公式サイト軽装甲機動車紹介ページ
- ^ a b 防衛省 平成22年度 中間段階の事業評価 評価書一覧 軽装甲機動車 本文
- ^ 技術研究本部50年史 技術開発官(陸上担当)
- ^ 柘植 p 23
- ^ 軍事研究
- ^ 軍事研究
- ^ 87式対戦車誘導弾の発射機を上面ハッチ上から構えている様子
- ^ 軍事研究
- ^ コンバットマガジン2006年4月号に関連記事
- ^ 防衛省 平成24年度 事後の事業評価 評価書一覧 車両搭載用リモートウェポンステーションの研究
- ^ 平成13年度防衛白書 主要事業の経費
- ^ 平成17年度防衛白書 主要事業の経費
- ^ 平成22年度防衛白書 主要事業の経費
- ^ 防衛白書の検索
- ^ Armorama :: JGSDF in Iraq help.
- ^ 防衛生産・技術基盤 平成22年4月 防衛省
- ^ 平成22年度防衛白書(VOICE)日本の安全保障を支える防衛生産・技術基盤の一翼として
- ^ 国際活動教育隊 任務・編成
- ^ 軽装甲車の整備
- ^ ハイチ派遣国際救援隊
- ^ ソマリア沖・アデン湾海賊対処活動 派遣海賊対処行動航空隊(1)
参考資料
- 柘植優介「新世代を担う陸自の新顔 陸上自衛隊軽装甲機動車」『PANZER』467号、アルゴノート社、2010年6月27日。
- 「コラム自衛隊員に聞く「LAVどうでしょう」」、『軍事研究』2013年6月号別冊新兵器最前線シリーズ14、ジャパンミリタリーレビュー、ISSN 0533-6716