M1911
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正式名称 | Colt Model 1911 |
通称 | Colt Government Colt .45Auto G.I.Colt など |
全長 | 216mm |
重量 | 1100g |
口径 | .45ACP |
装弾数 | 7+1発 |
作動方式 | ショートリコイル(シングルアクション) |
速度(V0) | 264m/s |
銃身 | 106mm |
製造国 | アメリカ |
製造 | コルト社ほか多数 |
コルト・ガバメントは、アメリカの銃器デザイナーであるジョン・M・ブローニング(John Moses Browning)とコルト社によって開発された大型自動拳銃。
1911年にアメリカ軍に制式採用され、軍用拳銃としての制式名称「M1911」、のちに1926年に改良が加えられたものは「M1911A1」を与えられた。.45ACPという大口径を有するこのモデルはアメリカ兵たちの間で「ポケット砲兵」として親しまれ、その後1985年、ベレッタM92Fにその座を譲るまで、実に70年以上に渡ってアメリカ軍の制式拳銃であった。制式を外れた後も民間用の拳銃として人気が高く、コルト社以外でも類似品やコピー品が多く作られている。複列弾倉を採用したものはハイキャパシティ(ハイキャパ)と呼ばれる。
軍用のM1911及びM1911A1の口径は.45ACP、装弾数はシングル・ロー・マガジンによる7+1発であるが、その後の民間でのバリエーション展開によって数々の口径に対応したバージョンが発売された。
アメリカ以外では軍用として採用されることはほとんど無かったが、逆にアメリカでは最も有名な拳銃であり、コルト社のパテントが失効した現在では各社からガバメント、ガバメントベースのカスタムガン等が発売されている。また近年の小口径・多弾装化の波により一時人気が下がったが、アメリカが民間銃の装弾上限を10発に規制したため、再び人気が上がっている。(しかし失効し一部の州を除いて装弾数制限はなくなった。)
現代の自動拳銃に広く用いられるティルトバレル式ショートリコイル機構の始祖であり、その後の世界各国の自動拳銃開発に非常に大きな影響を与えた「自動拳銃のカタチを決定付けた銃」と言える。
歴史
コルト・ガバメントの原型は、ジョン・モーゼス・ブローニングの手で1898年頃に開発された「M1900」 である。これに目を付けたコルト社も設計に加わり改良を重ね、「1905」で初めて.45ACP版となった。しかしほこり等の侵入に弱いという欠点がわかり、その後も改良を重ねられ、1911年に「M1911」のモデル名で制式採用された。
コルト・ガバメントが制式採用される以前、アメリカ軍では38口径の回転式拳銃を多く使用していたが、1898年の米西戦争の際、フィリピンで起きた先住民モロ族との衝突で、興奮状態の先住民に対して38口径弾が十分な殺傷力を持たないことが判明した。アメリカ軍はそれ以来、対人殺傷能力の高い、高威力の弾を追い求め、.45ACPを使用するM1911を採用したと言われている。この頃から、アメリカは拳銃において、一発で相手を行動不能にするという「マン・ストッピング・パワー」の思想を持つようになる。
M1911は第一次大戦では供給が間に合わず全軍に配備はされていなかったが、大口径ゆえの威力の高さといかなる状況でも作動するという作動の信頼性からその評判は上々であった。また第一次世界大戦での教訓を元に、1927年からは改良型のM1911A1に生産が移行した。従来型のM1911とはグリップフレームのトリガー後方の抉りとグリップ後端の膨らみの有無で見分けられるが、未だ全軍に行き渡るには至らなかった。
第二次世界大戦中は、コルトの他、レミントンランド(銃器会社ではなく、タイプライターなどで知られる印刷機器会社)、シンガー工業、イサカ・ライフル、ユニオン・スイッチ&シグナルなどの各社でも大量に生産された。なお、アメリカ軍はこれ以降新規に発注を行っておらず、以降は全て部品の入れ替え等により対応され、1985年にベレッタM92が新たに制式採用となるまでアメリカ軍の正式採用銃であり続けた。一部の部隊では現在もベレッタM92ではなく、ガバメントベースの.45口径銃を使っている。
民間では「ガバメント・モデル」(官給品)という名称で発売され、ここから「ガバメント」や「GM」等の愛称がついた。これらをベースとして現在様々なバージョンが発売されており、護身用銃・競技銃として活躍している。なお、日本のファンは「ガバ」という略称を使うことが多いが、英語圏では通じないので注意が必要である。
長年アメリカ軍の顔であったガバメントは、アメリカ人にとってもっとも馴染み深い拳銃であり、.45ACPは諸外国と比べても非常によく浸透している。そのためアメリカ市場を視野に入れた拳銃を開発する場合、「ガバメントに近い操作系統やグリップアングルにする」、「.45ACPを使用するバリエーションを作る」といった姿勢が重要だと考える銃器メーカーは多い。
代表的なバリエーション
COLT MK IV SERIES 70/SERIES80
コルト社の発売している民間用ガバメントで、現行モデルはMK-IV(マーク4)シリーズ80型である。(⇒画像) 戦後には安全対策などを目的に数回のモデルチェンジが行われており、1970年から1983年まではMK-IV(マーク4)シリーズ70、1983年からはMK-IV(マーク4)シリーズ80(⇒画像)が護身用・競技用それぞれのモデルで販売されている。
MK-IV(マーク4)シリーズ80には当時主流となっていたオートマチックファイアリングピンブロックと呼ばれるインターナルセフティが新機軸として組み込まれたが、トリガーのリリースに伴い作動する方式によりトリガーにかかるテンションが大きくなり、保守派の競技射手からは不評、中古となったシリーズ70の人気が高まりプレミアがつく事態となった(ただし、トリガーのリリースに伴い作動する機構自体はガバメントに限らずどの銃も同じである)。
また改良によって大型化したフロントサイトであるが、コルト製のものはステーキ・オンと呼ばれる取り付け方法が以前と変わっていないため、「射撃の際のキックバックでフロントサイトが吹っ飛ぶ」という現象はガバメントのお約束になりつつある。装弾数は8発に増えている。
コルト社製ガバメントの発展型としてダブルアクション型の「ダブルイーグル」もあるが、こちらは商業的に成功していない。
コルトM1991A1
名称からも分かる通りコルト社が1991年に発売したモデルで、黒のグリップが標準装着されている。⇒画像
フロント・サイトとリア・サイトが変更され、ハンマー(撃鉄)がスパー・ハンマーとなり、そしてファイアリングピン・ロックセフティが搭載されて暴発の危険性が極めて少なくなった。
また、「M1991A1コンパクト」という短縮型もある。
コルト社以外のガバメントモデル
1986年のパテント失効以来、各社がこぞってガバメントモデルを製作している。Smith&Wesson(スミス&ウェッソン)、Springfield Armoury(スプリングフィールドアーモリー)、Wilson(ウィルソン)、等が代表的なメーカーである。STIとSV、Para Ordnance(パラオーディナンス)は多弾装モデルで有名なメーカーで、Kimber(キンバー)はロサンゼルス市警SWATに採用されたことでも知られる。
- S&W M1911 ⇒画像
- スミス&ウェッソン社製のガバメントモデル。エキストラクターをスライドに付け、スライド内にファイアリングピン・ロックを備えることで暴発を防いでいる。また、そのファイアリングピン・ロックはグリップ・セフティから解除する方法を採用しており、トリガーの後退をブロックする役目も兼ねている。全長222mm、重量1106g、装弾数8発。
- S&W M945
- スミス&ウェッソン社のカスタム部門であるパフォーマンスセンター製のガバメントモデル。スライドには同社製M4506のスライドを改造したものを流用し、下半分はコルト社製ガバメントの基本設計をコピー、そしてS&Wテイストで製作されたカスタム・ガバメントがこのM945である。同モデルはM4506の倍以上の価格でありながら好調な売上を示したという。全長222mm、重量1176g、装弾数8発。
- M1911A1 MEU PISTOL ⇒画像
- 1945年以前に生産、納入されたアメリカ軍用M1911A1の中から状態の良いフレームを持つ物を選び、フレーム以外のほぼ全てのパーツを海兵隊の工廠で交換したモデル。市販はされていない官給品の改造モデルゆえさまざまな仕様があるが、多くはスプリングフィールド製スライドを使用しており、その為同社製であるという間違った記述がなされている事が多い。
- スプリングフィールドアーモリー・オメガ ⇒画像
- ウィルソンM1996A2 CQB ⇒画像
- STI EDGE 5.1 ⇒画像
- STI社製のガバメントモデル。グリップ一体式の多弾倉フレーム「2011」の開発により操作性が格段に向上し、ワンピース構造のタングステンガイドやスライドの前方までを完全に覆うロアガイドレールなどの革命的な技術とデザインを採用している。また、マガジン(弾倉)下部にバンパーを装着しているため、マガジンを交換する際に地面に落としてもマガジンの破損を防ぐことができる。全長221mm、重量980g、装弾数12発。
- パラオーディナンスP14 ⇒画像
- パラオーディナンス社製のガバメントモデル。ダブルカラム・マガジンを採用したハイキャパシティ・ガバメントの先駆モデルであり、その装弾数は実に14発という、コルト社製ガバメントモデル(装弾数7発)の2倍の大容量である。全長216mm、重量1134g、装弾数14発。
- パラオーディナンスP12 ⇒画像
- パラオーディナンス社製のガバメントモデル。同社のP14の短縮型であるが、小型になっても12発という装弾数を誇る。全長190mm、重量680g、装弾数12発。
- デトニクス.45 ⇒画像
- デトニクス社製のガバメントモデルで、コルト社のガバメントよりも小型である。しかしただ小型化されただけではなく、いくつかの改良が加えられている。隠し持つのに丁度良い大きさであるため私服警官などに使用された。また、そのデザインからコルト社製ガバメントの短縮型と勘違いされることがあり、「コルト・デトニクス」と呼んでいる人がいたらその人は間違えていることになる。「デトニクス」という名称は社名であり、商品名ではない。
- AMT ハードボーラー ⇒画像
- AMT社製のガバメントモデルで、競技用として開発された。全長216mm、重量1106g、装弾数7発。
- AMT ハードボーラー・ロングスライド ⇒画像
- AMT社製のガバメントモデルで、その名の通り同社のハードボーラーのロングスライド型である。映画「ターミネーター」でアーノルド・シュワルツェネッガー扮するT-800が使用したことで有名になった。全長267mm、重量1304g、装弾数7発。
- LAR グリズリー・ウィンマグ ⇒画像
- LAR社製のガバメントモデルであり、拡大されたガバメントと呼べる外観を持つ。強力な.45WinMag(.45ウィンチェスター・マグナム)弾を使用し、その反動を軽減するためにコンペンセイターが標準装着されている。全長267mm、重量1361g、装弾数7発。現在は生産されていないが、その理由は同モデルの性能に問題があったわけではなく、傷害が発生してアメリカにおける容赦ない生産物責任規定がらみの訴訟を起こされると小規模会社であるLAR社は倒産する恐れがあるということで事実上拳銃を生産することができないということのようであり、LAR社のサイトにも「sold out」と書かれている。しかし、何故か「グリズリー・ビッグボアー」という50口径のライフルは生産しているという。
その他のモデル
- コルト・ダブルイーグル ⇒画像
- 1991年に登場したガバメントのダブルアクションモデル。現代的なメカニズムを組み込んだ発展型として開発され、「ダブルイーグル・オフィサーズ」という短縮型も発売された。しかしFN ブローニング・ハイパワーのダブルアクションモデルであるハイパワーDAと同様、商業的には失敗してしまった。全長216mm、重量1102g、装弾数8発。
- コルト・デルタエリート
- 1987年に新口径として10mmAUTO口径の本モデルが発売されたが、弾丸規格が一般化せず、短期間で終わった。ラバーグリップを標準装備しデルタマークのメダリオンが付属しており、他の.45口径との差別化を図った。またスライドにリブが付属、ハンマーもリングハンマーに変わるなど時代に合わせた仕様に変わってきている。全長213mm、重量1093g、装弾数9発。
- コルト・コンバットコマンダー
- コルト・オフィサーズ/ディフェンダー/コンバットスタリオン
- コンバットコマンダーを更に短縮したモデルで、最初に発売されたモデルは3.5インチスライドを持つ「オフィサーズ」である。1996年からはスライドの長さが3.5インチから3インチに変更された「ディフェンダー」が発売された。これらのモデルの装弾数は6発である。その他に「コンバットスタリオン」というモデルも存在するが、詳細は不明。
この他にも数多くのモデルが存在するが、書ききれないので割愛する。
登場作品
- ルパン三世:銭形警部
- ゴルゴ13:デューク東郷
- 機動警察パトレイバー:香貫花・クランシー
- あぶない刑事
- U-571:タイラー大尉
- マイアミバイス(デトニクス製)
- ターミネーター:T-800(AMT ハードボーラー・ロングスライド)
- ターミネーター2:T-800(コルト・コンバットエリート)
- ラスト・マン・スタンディング:ジョン・スミス(二丁)
- タイタニック
- フルメタルジャケット
- プラトーン
- プライベート・ライアン
- ブラックホーク・ダウン:デルタフォース隊員
- メタルギアソリッド3:ネイキッド・スネーク
- ドールガン(漫画):鬼平
他多数。
ガバメントVS日本刀
フジテレビ「トリビアの泉」にて、ガバメントを日本刀に向け発砲し、「日本刀の刃が欠けたらガバメントの勝ち、欠けなかったら日本刀の勝ち」という実験が行われた。結果は「いくら撃ち込んでも日本刀の刃が欠けない」というもので大きな反響を呼んだ。 ただし、刃物雑誌等でも過去にこれと同様の実験がナイフ等で頻繁に行われており、ナイフでも同じ結果となっていることから、日本刀の刃が欠けないのは当然と言える。
なお、後に同番組で日本刀に向け今度は.50口径の巨大な重機関銃ブローニングM2を発射する実験が行われたが、これは日本刀が折れた。M2は一般的な軽装甲なら貫通してしまう、世界最強の威力を持つ機関銃であり、日本刀が折れたのはこれも当然といえる。