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ラファイエット級フリゲート

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ラファイエット級フリゲート
艦級概観
艦種 フリゲート
前級 フロレアル級フリゲート
次級 (最新)
性能諸元
排水量 基準:3,200 t
満載:3,600 t
全長 124.2 m
全幅 15.4 m
吃水 4.8 m
機関 CODAD方式
SEMT ピルスティク12 PA6 V280 STCディーゼルエンジン (5,250 bhp) 4基
スクリュープロペラ 2軸
速力 最大25ノット、巡航15ノット
航続距離 7,000海里/15ノット
9,000海里/12ノット
行動日数 50日
乗員 152名(さらに海兵隊員25名)
兵装 Mle.68 100mm単装砲 1基
F2 20mm単装機銃 2基
クロタル短SAM 8連装発射機 1基
エグゾセMM40 SSM 4連装発射機 2基
艦載機 AS565汎用ヘリコプター 1機
C4I SEAO/OPSMER指揮支援システム
海軍戦術情報システム
(SENIT-7リンク 11/14)
レーダー DRBV-15C 対空・対水上捜索用 1基
カストールIIJ 砲射撃指揮用 1基
CTM 短SAM射撃指揮用 1基
DRBN-34 航法用 2基
ソナー なし
電子戦
対抗手段
ARBR-21 電波探知装置
ARBB-33 電波妨害装置
ARBG-1A / ARBG-2 方向探知機
DAGAIE Mk.2 デコイ発射機 2基
AN/SLQ-25 対魚雷デコイ装置 1式

ラファイエット級フリゲートFrégate classe La Fayette)は、フランス海軍が運用するフリゲートの艦級。

設計

本級の特徴は、ステルス性にとくに留意して設計されたステルス艦であることにある。レーダー反射断面積(RCS)低減のため、上部構造物と船体には10度の傾斜が付されており、極力単純な平面で構成されている。また上部構造物の相当部分がバルサ材を芯材としたサンドイッチ構造のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製とされているほか、レーダー波反射源となる搭載艇などは船体内に収容するか、開閉式のシャッターによって覆われている。これらの配慮によって、RCSは500トン級の哨戒艇と同程度に抑えられている[1]。船型としては長船首楼型、船体形状はディープV型が採用されており、艦尾には2つのスケグが設けられている。またフィンスタビライザーも備えている。抗堪性確保のため、船体は11個の水密区画に区分されており、また弾薬庫と戦闘指揮所には弾片防御のため装甲が施されているほか、NBC防護にも配慮されている[2]

主機関としては、V型12気筒の高速ディーゼルエンジンであるSEMT ピルスティク12 PA6 V280 STCを4基搭載して、CODAD方式で2軸の可変ピッチ・プロペラを駆動している。ディーゼル主機関は振動・騒音が比較的大きいことから、水中放射雑音を低減するため、主機関は独立した防振台の上に架されている。またプレーリー・マスカー・システムも備えている[2]

装備

本級は、「フリゲート」と称されてはいるが、EU域内における危機対処、および海外領土の防衛警備を主任務としており、水測装備・対潜兵器は備えていない[2]

C4ISR

戦術情報処理装置としては、SENIT-7が搭載される。これはTAVITAC 2000のフランス海軍仕様である。電子計算機としてはMLX 32を2基用いるが、これらはMC68040マイクロプロセッサと4MBの主記憶装置、40MBのハードディスクを備えている。またコンソールとしてはVista RMを5基用いるが、これらはMC68020マイクロプロセッサとディスプレイ3面(うち2面は19インチ)を備えており、それぞれ対空戦統制、対水上戦闘、対潜戦闘、武器管制、戦術行動調整に使用される。またこのほかに、指揮官用の大型の水平型コンソールとしてプレシリアックE8000も備えている。これらは3軸の10メガビット・イーサネット・ケーブルによって連接されている[3]

レーダーとしては、SバンドDRBV-15を対空・対水上捜索用として後檣上に搭載する。これはトムソン-CSF(現在のタレス・ネーデルラント)社のTRS-3001 シー・タイガーMk.2のフランス海軍仕様で、RCS 2㎡の目標を110 km (59 nmi)で探知することができた[3]。また将来の近代化改装の際には、艦対空ミサイルの射撃指揮用も兼ねて、Xバンドの多機能レーダーであるアラベル (レーダー)を艦橋上に装備する計画もある。なお上記の通り、ソナーは備えていない[2]

武器システム

主砲としては、艦首甲板に100mm単装速射砲1基を搭載する。これはMle.68 CADAMをもとにステルス化砲塔を採用したものであり、Mle.100TRとされることもある。砲射撃指揮装置(GFCS)としては、艦橋上のカストールIIJが用いられる[2]

ミサイル兵器としては、個艦防空用にクロタルCN2システムの8連装発射機をハンガー上に、また対水上用にエグゾセMM40艦対艦ミサイルを4連装発射機2基に収容して、後檣直前の中部甲板両舷に搭載している。なお上記の通り、対潜兵器は備えていない[2]

搭載機・搭載艇

艦尾甲板にはヘリコプター甲板が設定されており、長さ30メートル×幅15メートルを確保した。ヘリコプター甲板には、着艦拘束装置として直径1.8メートルのグリッド板が、また機体移送装置としてSAMAHEが備えられている。このグリッド板はハープーン・グリッド・システムの一部であり、ヘリコプターの側が備えているハープーンをここに差し込むことで機体を固定する仕組みである。これらの設備により、10トンまでのヘリコプターを、シーステート5ないし6の海象状況まで運用可能とされている[2]

上部構造物中部両舷のレセス内に艦の搭載艇が1隻ずつ搭載されているほか、乗艦している特殊部隊用として、艦尾ドアから5メートル級複合艇を揚降することもできる[2]

配備

同型艦一覧
# 艦名 起工 就役
F-710 ラファイエット
(La Fayette)
1990年12月 1996年3月
F-711 シュルクーフ
(Surcouf)
1992年7月 1997年2月
F-712 クールベ
(Courbet)
1993年9月 1997年4月
F-713 アコニト
(Aconit
1996年8月 1999年6月
F-714 ゲプラット
(Guépratte)
1998年10月 2001年10月

輸出型

派生型の輸出も積極的で、台湾海軍サウジアラビア海軍シンガポール海軍に採用、輸出されている。これらはいずれも艦本体にソナー魚雷発射管を装備し対潜戦能力を付与すると共に主砲の76mm単装速射砲への換装を行っているほか、下記のような特徴がある。

 台湾海軍 - 康定級(6隻)
1996年就役開始。近接目標に対処するため機関砲を増設しているが、主砲も含めて非ステルス化シールドを採用しているため、RCSは原型艦より増大していると考えられている。艦対艦ミサイルは同国海軍で標準のハープーンに変更された。なお艦対空ミサイルとしては、比較的性能が低いシーチャパラルを搭載しているが、これは今後国産の新型ミサイルに換装される計画がある。
 サウジアラビア海軍 - アル・リヤド級(3隻)
2003年就役開始。アラベル多機能レーダーとアスター15艦対空ミサイルにより防空火力を強化している。また本級より、76mm単装速射砲にステルス化シールドが導入された。
 シンガポール海軍 - フォーミダブル級(6隻)
2007年就役開始。ヘラクレス多機能レーダーとアスター30艦対空ミサイルにより防空火力を強化している。艦対艦ミサイルは同国海軍で標準のハープーンに変更されており、また主機関もMTUフリードリヒスハーフェン社製のものに変更されている。

参考文献

  1. ^ 小滝國雄「ステルス艦はペイするか (ステルス艦の現況)」『世界の艦船』第497号、海人社、1995年6月、82-85頁。 
  2. ^ a b c d e f g h Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. pp. 205-206. ISBN 978-1591149545 
  3. ^ a b Norman Friedman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. ISBN 9781557502681. http://books.google.co.jp/books?id=l-DzknmTgDUC 

外部リンク