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コルト・パイソン

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コルト・パイソン(6インチモデル)のデータ
ファイル:Colt Python - PE.jpg
正式名称 Colt Python
全長 291mm (4インチモデルは241mm)
銃身長 152mm
重量 1150g (4インチモデルは1092g)
口径 .357マグナム/.38スペシャル
装弾数 6発
作動方式 ダブルアクション/シングルアクション
速度(V0) 400m/s
製造国 アメリカ
製造 コルト社

コルト・パイソンは、1956年コルト社が開発した.357口径の大型リボルバー。仕上げのよさから「リボルバーのロールスロイス」とも呼ばれる。コブラキングコブラダイアモンドバックアナコンダの「蛇シリーズ」最上級モデル。

開発

コルト・パイソンは、1955年コルト社のマグナム弾対応型高級リボルバーとして発表された。初めに6インチ、次に2.5インチと4インチが発売され、8インチのバレルを持つ「パイソンハンター」も作られた(余談ではあるが、パイソンハンターは日本での国松長官銃撃事件の犯人の使用銃であったとされている)。また、コンバットパイソンと呼ばれる3インチモデルも存在する。

当初からコストを重視しない設計であったため、最高級の仕上げと考えられる限りの装備を施したリボルバーの決定版として市場に出たが、その桁違いの高価さのため、通常勤務の警官等に買える値段ではなかった。

しかしその特徴から熱狂的なファンが付き、これに目を付けたコルト社はパイソンの他口径版を計画していたが、実際に発売されたのかどうかは不明である。

特徴

コルト・パイソンは、コルトロイヤルブルー仕上げ、銃身加熱による陽炎を防ぐベンチレイテッドリブ、マズルジャンプを抑制するエジェクターロッドハウジングなど、特徴的な機能と外観を持つ精度の高いリボルバーとして大きな反響を呼んだ。

弾薬は、当時のリボルバー界で絶賛されていた.357マグナムを使用する。また、威力は低いが扱いやすい.38スペシャルと、高威力の.357マグナムは薬莢の長さと火薬量が違うだけであり、.357マグナムが撃てるリボルバーでは必然的に.38スペシャルも撃てる。

初期の仕上げは「コルトロイヤルブルーフィニッシュ」と言われ、深みのある青をまとった黒であったといわれている。この仕上げはコルトの技術者が引退するにつれ質が落ち、現在のコルト・パイソンではすでに見ることができないといわれる。このため、初期の仕上げを保ったパイソンはコレクターの間でかなりの高値で取引されている。

また、外観だけではなく内部も値段に合った仕上げになっており、コルト社の他のリボルバーよりもトリガーフィーリングは良いとされている。ただし、コルト社の機構はS&W社の機構の足元にも及んでおらず、この機構の差は仕上げで覆せるものではなかった。そのため、S&W M19のフレームとパイソンのバレルを組み合わせた「スマイソン」というカスタムモデルも存在した。

銃身が簡単に取り外し交換でき、しかも替え銃身が4本もあったため、犯罪者が発射の証拠を隠すのに利用されるとして、製品化された際、司法機関はあまりいい顔をしなかったという逸話がある。

バリエーション

コルト・パイソンハンター

1980年に登場したパイソンの8インチモデルで、ウッドグリップを標準装着していた従来のモデルとは違い、ラバーグリップを標準装着して発売された。ロングバレルになった分、元々高かった命中精度が更に向上しており、スコープを装着して狩猟に使われることも多かった。名前の「ハンター」もそれに由来している。また、同モデルを.38スペシャル弾専用とした競技用モデルもある。

コルト・コンバットパイソン

1980年代後半に登場したパイソンの3インチモデル。S&W社やスターム・ルガー社などのライバル会社が生産している3インチリボルバーに対抗して発売された。また、カリフォルニア州のハイウェイパトロールが注文し、同モデルをベースにして生産された「パイソン・カリフォルニア・コンバット」というモデルも存在するとされているが詳細は不明。

コルト・ダイアモンドバック

1966年に登場したパイソンの廉価版にあたるモデルであるが、こちらは.38スペシャル弾専用であるため.357マグナム弾を使用することはできない。パイソンのようなロイヤルブルーフィニッシュではなく、普及品の仕上げとすることで生産コストを低くした。銃身長は2.5インチ、4インチ、6インチがあり、その他に.22LR弾を使用するモデルも存在する。

S&W M19・M586とコルト・パイソン

S&W M19とコルト・パイソンの両銃は同時期に市場を賑わせた銃であるが、パイソンに比べてM19ははるかに安価であり、現場に立つような「大方の拳銃使用者(庶民的使用者)」はM19やスターム・ルガー製品に流れた。しかし当時の熱処理技術では、.38スペシャル用として設計されたKフレームを完全に.357マグナム用として転用することは不可能であった。 これに対するS&W社の答えは、M586の開発であった。一回り大きいLフレームを使用するM586は最初から.357マグナムの使用が前提であるため、運用面(耐久性)でも問題がない。また、パイソンに採用されていたエジェクターロッドハウジングなども取り付けられ、見た目はまさにスマイソンといった佇まいであった。ただ、M586が発表された1980年当時は、すでにリボルバーは時代遅れと見なされていたこともあり、M586は日本ではM19ほど有名ではない。

なお、現在は熱処理技術が向上し、Kフレームでも十分に.357マグナムを撃てるようになった。これにより、実用部分で競合製品に唯一勝っていた耐久性の面でも大きな差をつけられなくなったパイソンは、1998年以降、量産モデルではなく受注生産品として「コルト・パイソンエリート」の名で発売されている。

コルト・パイソンが登場する作品

関連項目

外部リンク