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永遠の0

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永遠の0
著者 百田尚樹
発行日 2006年8月23日
発行元 太田出版
ジャンル 戦争小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判
ページ数 448
公式サイト 太田出版 永遠の0
コード ISBN 978-4-7783-1026-4
ISBN 978-4-06-276413-1A6判
ウィキポータル 文学
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永遠の0』(えいえんのゼロ)は、百田尚樹による日本小説、またそれを原作とした漫画映画

放送作家として『探偵!ナイトスクープ』などを手がける百田の作家デビュー作であり、執筆にあたっては第二次世界大戦で出征した著者の父親や親族が影響を与えている。当初原稿を持ち込んだ多くの出版社には認められず、縁あって2006年にサブカルチャー系の太田出版から書き下ろしで発表された。[1][2]

2009年に講談社文庫から文庫化。その後徐々に話題を呼び、2012年10月の『オリコン“本”ランキング文庫部門』で歴代13作目のミリオンヒット作となった[3]。2013年8月付けで、湊かなえ著『告白』(2010年・双葉社)の254.4万部を超えて文庫部門1位を記録し[4]、同年12月には文庫版の販売部数300万部を突破。歴代のタイトルで300万部超えは、オリコンの書籍全部門を通し、コミック部門の『ONE PIECE』(51巻から70巻までの計20作で獲得)に続いて史上2例目となる[5]

2010年から2012年にかけて須本壮一(本そういち)による作画で漫画版が刊行され、2013年12月に映画が公開された。2015年にはテレビドラマが放送された。2015年7月31日に映画版がノーカットで地上波初放送された。

ストーリー

大学生の佐伯健太郎と、出版社に勤める姉の慶子は、亡くなった祖母・松乃の四十九日から暫くした頃、祖父・賢一郎から彼が自分たちの実の祖父ではないことを知らされる。第二次世界大戦後、松乃は二人の母・清子を連れて賢一郎と再婚しており、実の祖父は終戦間際に特攻で戦死した海軍航空兵だと判明する。

それから6年後、司法浪人が長く続き人生の目標を見失っていた健太郎は、フリーライターとなった慶子から、新聞社主宰の終戦60周年記念プロジェクトのアシスタントを頼まれる。プロジェクトを進める高山は神風特攻隊のことをテロリストだと語るが、祖父の話もありその考えに釈然としない慶子は、このプロジェクトに際して特攻隊員だった実の祖父について調べようと決めた。姉弟はわずかな情報を元にその足取りを追い始める。

厚生労働省や方々の戦友会に連絡を取ったところ、実祖父の名が宮部久蔵であり、関係者9人が存命であることが知れた。その内の一人、戦闘機搭乗員としてラバウル航空隊で一緒だったという人物を訪ねるが、元海軍少尉の男性は久蔵について「海軍航空隊一の臆病者」「何よりも命を惜しむ男だった」と姉弟に蔑みの言葉をぶつけた。 健太郎は元戦友から聞く祖父の話に困惑し、次第に調査を続ける気を無くしていたが、母から健太郎と同じ26歳で亡くなった父・久蔵がどんな青年だったのか知りたいと改めて頼まれ、更に手がかりとなる海軍従軍者たちを訪ね歩く。だが、生前の久蔵を知る者たちの語ることはそれぞれに全く違っており、調べるほどにその人物像は謎に包まれていた。

戸惑いつつも二人は、国のために命を捧げるのが当然だったと言われる戦時下の日本と、そこに生きた人々の真実を知っていく。凄腕の零戦乗りで、卑怯者と誹られても「娘に会うまでは死なない」と松乃との約束を守り続けていた久蔵は、どのような生涯をおくり特攻を選んだのか。終戦から60年を経て、各々の壮絶な生き方と封じられていた事実を明らかにする。

登場人物

佐伯 健太郎
2004年現在26歳。弁護士を志していたが、4年続けて司法試験に落ち、自信もやる気も失せ仕事に就かずぶらぶらと生活を送っていた。ノンフィクションライターを目指す姉の慶子から、実の祖父・宮部久蔵の経歴を調べようという誘いを受け、バイト料を貰えることをきっかけに協力する。旧海軍関係者を調べ歩く内に彼らの壮絶な過去を知り、それまでの考え方を変えていく。
佐伯 慶子
健太郎の姉で、現在30歳。フリーライターとして新聞社の終戦記念プロジェクトに携わり、健太郎に戦死した実の祖父についての調査協力を頼む。母・清子も当時のことをよく知らされておらず、調べてあげたいと考えていたが、調査した内容を両親に打ち明けるべきか悩む。プロジェクトのリーダーである高山から好意を寄せられている。
宮部 久蔵
健太郎と慶子の実の祖父で、清子の父親。両親を亡くし15歳で海兵団に入団した。巧みな操縦技術を持つ航空兵であったが、妻子を案じ「必ず生きて帰る」と公言していた。命を重んじる思考から上官に意見することもあり、「臆病者」と称された。毎晩鍛錬に努め機体整備にも気を遣い、恐ろしく慎重な操縦で、実戦において無謀に撃墜することより撃墜されないことを説いた。下の者へも丁寧に話す様は馬鹿にされるほどであったが、教官としては非常に厳しく、暴力に訴えることは一切なかったが学生の反感を買った。優れた操縦による戦法は撃墜王と言われる岩本徹三の実話にも共通している。
空母赤城の戦闘機パイロットとして真珠湾攻撃に参加し、ミッドウェー海戦での赤城喪失後はラバウル海軍航空隊に配属され、一度内地へ帰還。筑波海軍航空隊で教官を務めた後、鹿屋海軍航空隊鹿屋飛行場から特別攻撃隊として出撃し、米空母タイコンデロガに突入して未帰還となる。享年26。
甲板に特攻したものの不発に終わり、はじめは米兵も久蔵の遺体を侮辱していたが、艦長が彼の遺体から妻子の写真を発見し、それを見た米兵も彼の心中を察し、海底へと丁重に葬られた。
大石 賢一郎
国鉄職員で、現在は弁護士。松乃の死後、健太郎と慶子に実の祖父の存在を語り、二人が久蔵について調べていることを知ってその全てを明かす。
長谷川 梅男
元海軍少尉。健太郎らが久蔵のことを知るため最初に訪ねる人物。米軍機グラマンに撃たれ左腕を失った。ラバウル航空隊での戦友だったが、生きることに執着していた久蔵を糾弾し、久蔵のことを「海軍一の臆病者」と語る。第二章に登場。
伊藤 寛次
元海軍中尉。第一航空戦隊赤城時代の戦友。久蔵の考え方を肯定はしないが、その空戦技術を高く評価している。ミッドウェー海戦で自分の機が離陸する前に急降下爆撃によって甲板が使用不能になり、駆逐艦のカッターボートで避難。この時、既に久蔵は上空に上がっていたためそこで離れ離れとなった。第三章で登場。
井崎 源次郎
元海軍飛行兵曹長。ラバウル航空隊時代の久蔵の部下。久蔵に二度助けられた時の教えを教訓に、ポートモレスビー作戦ガダルカナル島方面で戦う。空母に配置転換されそこで久蔵と別れ、翔鶴の搭乗員としてマリアナ沖海戦に参加。燃料タンクに被弾し一度は体当たりを決意するが、不時着しグアム島に泳ぎ着いて生き延びた。第四章、第五章に登場した後、第十一章で亡くなる。
永井 清孝
元海軍整備兵曹長。ラバウル航空隊整備兵として久蔵らの機体を整備していた。久蔵について臆病なところは嫌いだが、感謝を忘れない点など人間として好いていたと語る。
谷川 正夫
元海軍中尉。
岡部 昌男
元海軍少尉。
武田 貴則
元海軍中尉。
景浦 介山
元海軍上等飛行兵曹。
大西 保彦
元海軍一等兵曹。
藤木 秀一
健太郎と慶子の祖父大石賢一郎の事務所で学生時代からアルバイトをし、大学卒業後も司法試験を目指し働いていたが、実家の父親が病に倒れ家業を継ぐために帰郷した。かつて慶子が想いを寄せていた。慶子から「ある男性と結婚するかもしれない」という手紙を受け取ったことをきっかけに慶子にプロポーズをする。
高山 隆二
新聞記者。離婚歴あり。戦後60年を振り返る特集を企画しており、健太郎と慶子が特攻隊員だった祖父を調べていることを知り興味を持つ。健太郎と慶子の前で特攻隊員と自爆テロリストの共通点を挙げた。武田貴則との会談にも同席したが、持論を展開したため武田に激高され退席。慶子にプロポーズをする。

書誌情報

単行本

  • 『永遠の0』太田出版、2006年8月23日、448頁。ISBN 4-7783-1026-8 

文庫本

漫画

双葉社『漫画アクション』誌上で2010年1月から2012年2月まで連載された。作画は須本壮一。アクションコミックスから全5巻が出版されている。

  1. 永遠の0』 第1巻、双葉社、2010年7月28日。ISBN 978-4-575-83796-4http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-83796-4.html 
  2. 永遠の0』 第2巻、双葉社、2010年11月27日。ISBN 978-4-575-83839-8http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-83839-8.html 
  3. 永遠の0』 第3巻、双葉社、2011年7月28日。ISBN 978-4-575-83934-0http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-83934-0.html 
  4. 永遠の0』 第4巻、双葉社、2011年11月28日。ISBN 978-4-575-83994-4http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-83994-4.html 
  5. 永遠の0』 第5巻、双葉社、2012年4月28日。ISBN 978-4-575-84065-0http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-84065-0.html 

映画

永遠の0
THE ETERNAL ZERO
監督 山崎貴
脚本 山崎貴、林民夫
原作 百田尚樹『永遠の0』(太田出版)
製作 遠藤学、筒井竜平
守屋圭一郎、柴崎幸三
出演者 岡田准一
三浦春馬
井上真央
音楽 佐藤直紀
主題歌 サザンオールスターズ
撮影 柴崎幸三
編集 宮島竜治
制作会社 ROBOT
製作会社 「永遠の0」製作委員会
配給 東宝
公開 2013年12月21日
上映時間 144分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 87.6億円[6][7]
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2013年12月21日から全国430スクリーンで公開され、初日2日間の観客動員数は約42万9000人、興行収入約5億4200万円[8]。その後興行成績で8週連続第1位となった[9]。幅広い客層を集めてロングランが続き、観客動員数は700万人、累計興行収入86億円を突破、歴代の邦画実写映画で6位にランクインする大ヒットを記録し[10]、文化通信社調べによる2014年邦画興行収入第1位を記録した[6]

原作はこれまでにも映画・ドラマ化の話が上がっていたものの、いずれも脚本上の問題等から実現には至らなかったが、山崎貴・林民夫による企画内容を受け著者である百田尚樹が快諾し、初の映像化となった[11]

2014年に第16回イタリア ウディネ・ファーイースト映画祭でグランプリを受賞。日本作品の受賞は2009年の『おくりびと』以来の快挙となった[10]

2015年7月31日には、日本テレビ系列の『金曜ロードSHOW!』で地上波初放送[12]された(19:56 - 22:54の2時間58分で放送。本編開始前に、主演の岡田准一のコメント映像などがあったため、本編は20:01からスタートとなった。文字多重放送 / データ放送)。

製作

撮影にあたり、作中に登場する旧日本海軍零戦二一型の原寸大模型が制作されたほか、唯一現存するオリジナルエンジンで飛行可能な零戦からエンジン音が収録された[13]。制作された零戦は、撮影終了後ゆかりの地である大分県宇佐市によって買い取られ、構想中の市平和ミュージアムに展示される[14]。撮影には徹底した軍事訓練と零戦搭乗経験者による指導を要し[15]奄美大島鹿児島茨城などを中心に、膨大な空撮を含む3ヶ月に渡るロケが敢行された[16]

山崎貴監督作品としては、初めて民放テレビ局が製作に関与していない作品となっている。また、主人公・宮部の配役には監督が元共演者である堤真一を通してその求道的な姿勢を聞き及んでいたことがきっかけとなり、岡田准一の出演が決まった[17]。本作は2013年5月に逝去した俳優の夏八木勲の遺作でもあった。

キャスト

スタッフ

主題歌

作詞・作曲 - 桑田佳祐 / 編曲・歌 - サザンオールスターズビクタータイシタ/SPEEDSTAR RECORDS

Blu-ray / DVD

2014年7月23日発売[18]。2014年、TSUTAYAが発表したレンタルDVD/ブルーレイ年間ランキングで第3位を獲得[19]。  

永遠の0 Blu-ray / DVD 通常版

  • 1枚組 - 本編DISC(本編144分、予告・特報・テレビスポット集)

永遠の0 Blu-ray / DVD 豪華版

  • 2枚組 - 本編DISC、特典DISC 140分(製作メイキング集、劇場公開時特番、舞台挨拶集)
  • 封入特典:限定コンテンツ用ARカード
  • 初回生産限定特典:ブックレット 154ページ(撮影日誌、場面写真・メイキング写真集、美術設定集、インタビュー他)、特製アウターケース付きデジパック仕様

テレビドラマ

テレビ東京開局50周年特別企画
永遠の0
ジャンル テレビドラマ
原作 百田尚樹
脚本 櫻井武晴
監督 佐々木章光
出演者 向井理
製作
プロデューサー 岡部紳二(CP)、阿部真士、佐々木章光、森一弘、近見哲平、石田義一
制作 テレビ東京テレパック
放送
放送国・地域日本の旗 日本
公式サイト
第1夜
放送期間2015年2月11日
放送時間水曜20:54 - 23:18
放送分144分
回数1
第2夜
放送期間2015年2月14日
放送時間土曜20:58 - 23:14
放送分136分
回数1
第3夜
放送期間2015年2月15日
放送時間日曜20:54 - 23:24
放送分150分
回数1
テンプレートを表示

テレビ東京開局50周年特別企画として、2015年2月11日20:54 - 23:18、14日20:58 - 23:14、15日20:54 - 23:24の3夜に渡って放送された。視聴率は第1夜が9.0%、第2夜が7.5%、第3夜が9.9%(ビデオリサーチ、関東地区調べ)でいずれも2ケタには届かなかったものの、テレビ東京の高橋雄一社長は「非常によく作られていたし、こうした骨太のドラマをやりきったという点では評価している」と前向きなコメントを出した[20]

キャスト

スタッフ

放送局・放送時間

放送対象地域 放送局 系列 放送日・放送時間 (JST) 備考
関東広域圏 テレビ東京 テレビ東京系列 第1話:2015年2月11日 20:54 - 23:18
第2話:2015年2月14日 20:58 - 23:14
第3話:2015年2月15日 20:54 - 23:24
制作局
北海道 テレビ北海道 同時ネット
愛知県 テレビ愛知
大阪府 テレビ大阪
岡山県香川県 テレビせとうち
福岡県 TVQ九州放送
岐阜県 岐阜放送 独立放送局
滋賀県 びわ湖放送
奈良県 奈良テレビ
和歌山県 テレビ和歌山
  • 上記以外に、テレビ東京系列のない地域において、系列外番販遅れネットを実施するもしくは実施予定の局がある(一例としてテレビ長崎が2015年の8月1日、8日、15日の昼に放送した実績がある)。

受賞歴

小説

  • 大和ネクスト銀行が調査したシニア層(50歳から79歳)が選ぶ、2014年読んでよかった小説ランキング 第1位[22]

映画

本作に対する反響

出版当時の読者層はわずかな60代以上の男性が占めていたが、口コミで次第に広がり2013年以降は特に10代・20代の読者も増加した[2]。累計販売部数は2013年12月時点で約480万部に及ぶ[27]。映画のヒットや作品の普及につれ少なからず反響が起こり、読者として安倍晋三を始め政界、芸能界、法曹界、スポーツ界の著名人が取り上げられるとともに、その賛否も話題となった。批判としては「特攻を美化している」「戦争賛美」といったものであり、これについて著者である百田尚樹は自身のTwitter等で、「私は『永遠の0』で特攻を断固否定した」「戦争を肯定したことは一度もない」と述べ、テーマは「生きるということ」と「戦争を風化させないこと」と語っている。[28]「『永遠の0』はつくづく可哀想な作品と思う。文学好きからはラノベとバカにされ、軍事オタクからはパクリと言われ、右翼からは軍の上層部批判を怒られ、左翼からは戦争賛美と非難され、宮崎駿監督からは捏造となじられ、自虐思想の人たちからは、作者がネトウヨ認定される。まさに全方向から集中砲火」とコメントした[29]

また、映画化以降特に第二次世界大戦に関連した作品が重なったこともあり、戦争の歴史に対する関心が高まった。2013年6月に宇佐海軍航空隊のあった大分県宇佐市に平和資料館が暫定オープンした他[30]、同年12月に作中に登場する茨城県旧筑波海軍航空隊史跡が記念館としてオープンし、4ヵ月で全国から2万6000人が訪れた[31]。福岡県筑前町立大刀洗平和記念館など、特攻隊ゆかりの地や資料館の訪問者も比較的若い世代を中心に大きく増加し[32]、日本海軍の軍人・軍属の人事記録を管理する厚生労働省には、孫など親族から軍人履歴原表の開示を求める申請が増えている[33]

肯定的評価

  • 読者である元零戦搭乗員の笠井智一は、映画化に際しても試写を観賞して感動を伝えた[34]。『産経新聞』の取材に対しては、零戦や操縦士の監修レベルの高さを称賛し、架空の人物を描いてはいるものの、「宮部のような人物が確かにいた」と話し、「戦争で若者が死ぬのは悲しいことです。二度と戦争を起こしてはなりません。ただ、あの時代、若いパイロットたちは皆、日本を、日本人を守りたいという一心だけで命懸けで戦っていたのです。その思いだけは語り伝えたいのです。」と語っている[35]
  • 自身も特攻を拒否した経験のある原田要は、小説を読んだことをきっかけに著者百田と面会し、「この主人公は彼のことではないか」と様々な戦友の顔がよぎったと賛辞を述べた[36]
  • 主題歌を担当したサザンオールスターズ桑田佳祐は、オファーを受けた際に製作途中の映画を観賞したことを、自身のラジオ番組で作品名をある程度伏せつつ述べ、曰く「手ぬぐいがビショビショになるほど」涙を流し、周囲に「今年No.1の映画になるのではないか」と話した[37]。インタビューにおいて「『家族のために必ず生きて帰る。それこそが愛ではないか。』そう信じ、『待っている人がいる』ことそのものが生きる力となり、生きる原動力となっている。現代を生きる私たちにも通ずる、そんな主人公・宮部久蔵の姿に非常に大きな感動をいただきました」と述べた[38]
  • 映画版について原作者の百田尚樹は「10年に1本出るかどうかの傑作」と評した[39]
  • 全国の書店員が選ぶ『2009年度 最高に面白い本大賞』において、文庫・文芸部門第1位となった[40]
  • マガジン9』の寺川薫は、「国家のために個人が命を捨てさせられる非情さもしっかりと描かれており、国家のための個人の犠牲を「正当化」した作品とは断定できない」とし、本作品への批判の声は百田の思想信条が許せない層によるものであり、百田という人物のことはいったん脇に置いて、作品そのものを純粋に読めば「戦争賛美」という感想は出てこないと評している。また、後述の石田衣良の批判に対し、「センチメントだけで読んでいる」と捉えることは可能だが、それが「右傾化」にどうつながるのか意味不明な評論と批判した。[29]

否定的評価

  • 作家の石田衣良は、山田宗樹著『百年法』などと共に愛国心を強める作品として「右傾エンタメ」という造語を用いて批判し、「かわいそうというセンチメントだけで読まれている」「読者の心のあり方がゆったりと右傾化しているのでは」と主張した[41]
  • 文芸評論家富岡幸一郎は「小説を読んでみたが、戦争の描写はまあまあ書けている。しかし、ベストセラーには往々にしてあることだが小説ともいえない物だ。残念ながら、文学としての価値は極めて低いと言わざるを得ない。」と述べた[42]
  • 2013年に公開された『風立ちぬ』で話題を呼んでいた映画監督宮崎駿は、インタビューにおいて日本の航空戦史や元零戦パイロットの証言に反対を唱え、「ある零戦の映画企画」を引き合いに出し次のように批判した。「今、零戦の映画企画があるらしいですけど、それは嘘八百を書いた架空戦記を基にして、零戦の物語をつくろうとしてるんです。神話の捏造をまだ続けようとしている。『零戦で誇りを持とう』とかね。それが僕は頭にきてたんです。子供の頃からずーっと!」「相変わらずバカがいっぱい出てきて、零戦がどうのこうのって幻影を撒き散らしたりね。戦艦大和もそうです。負けた戦争なのに」[43]。これは作品を見ての発言ではないものの、時期などから言及された映画は明らかに『永遠の0』のことであると予測され報じられた[44][45]
  • 映画監督の井筒和幸は、自身のラジオ番組で「見たことを記憶から消したくなる映画」と述べ、主人公の人物像についても「そんなわけない」と主張した。ストーリーや登場人物が実在しないのに、有り得ない内容で特攻隊を美化していると非難している[46]
  • アメリカ海軍の関連団体アメリカ海軍協会英語版は、2014年4月14日付の記事「Through Japanese Eyes: World War II in Japanese Cinema(日本人の目に映る『映画の中の第二次世界大戦』)[47]」の中で本作の好評を危険視し、最近の日本の戦争映画について「戦争の起因を説明せず、日本を侵略者ではなく被害者として描写する」「修正主義であり、戦争犯罪によって処刑される日本のリーダーを、キリストのような殉教者だと主張している」と批判した[48][49]
  • 雑誌『映画秘宝』主催の映画のワーストランキング『HIHOはくさいアワード』では、他2作品とともに2013年度の10位となった[50]

脚注

  1. ^ “第45回 本屋さんと私”. みんなのミシマガジン (ミシマ社). (2010年8月19日). http://www.mishimaga.com/hon-watashi/045.html 2013年7月12日閲覧。 
  2. ^ a b “「臆病な零戦操縦士」に込めた思い+百田尚樹さんに聞く映画「永遠の0」原作者”. 日本経済新聞 電子版 (日本経済新聞社). (2013年12月20日). http://www.nikkei.com/article/DGXBZO63257680Y3A121C1000000/ 2014年2月12日閲覧。 
  3. ^ “【オリコン】『永遠の0』、歴代13作目の文庫100万部超え”. オリコン. (2012年10月11日). http://www.oricon.co.jp/news/ranking/2017604/full/ 2013年12月7日閲覧。 
  4. ^ “【オリコン】百田尚樹氏『永遠の0』が257.3万部で文庫歴代1位を獲得 3年ぶりの記録更新”. オリコン. (2013年6月13日). http://www.oricon.co.jp/news/ranking/2027903/full/ 2013年8月27日閲覧。 
  5. ^ “【オリコン】『永遠の0』、史上初文庫300万部突破”. オリコン. (2013年12月5日). http://www.oricon.co.jp/news/2031621/full/ 2013年12月7日閲覧。 
  6. ^ a b “2014年邦画ベスト10、山崎貴監督2作品で171億円!”. 映画.com. (2014年12月16日). http://eiga.com/news/20141216/18/ 2014年12月17日閲覧。 
  7. ^ 2015年記者発表資料(2014年度統計)” (PDF). 日本映画製作者連盟 (2014年1月27日). 2014年1月27日閲覧。
  8. ^ 岡田准一『永遠の0』が初登場1位!7億円超えの大ヒット!【映画週末興行成績】”. シネマトゥデイ (2013年12月25日). 2014年1月7日閲覧。
  9. ^ 岡田准一『永遠の0』『風立ちぬ』に並ぶV8!興収70億円突破!【映画週末興行成績】”. シネマトゥデイ (2014年2月12日). 2014年2月12日閲覧。
  10. ^ a b 岡田准一・主演『永遠の0』、初の映画賞にして『おくりびと』以来の快挙達成!”. cinemacafe.net (2014年5月5日). 2014年7月24日閲覧。
  11. ^ 完成報告会見”. 映画『永遠の0』公式サイト. 2013年8月30日閲覧。
  12. ^ 『永遠の0』、ノーカットで地上波初放送 7・31『金曜ロードSHOW!』オリコンスタイル、2015年7月15日、2015年7月31日閲覧。
  13. ^ “所沢の零戦、映画で復活 設計者の生涯描く2作品が今年公開”. 埼玉新聞. (2013年2月7日). http://www.saitama-np.co.jp/news02/07/03.html 2013年7月12日閲覧。 [リンク切れ]
  14. ^ “原寸大の零戦模型、一般公開 大分・宇佐”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2013年6月30日). http://www.asahi.com/area/oita/articles/SEB201306290050.html 2013年7月12日閲覧。 
  15. ^ “V6岡田「永遠の0」で丸刈り姿初公開”. 日刊スポーツ新聞社. (2013年7月23日). http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp1-20130723-1161617.html 2013年12月21日閲覧。 
  16. ^ “岡田准一「永遠の0」で特攻隊員役 三浦春馬&井上真央と共演”. 映画.com. (2013年5月21日). http://eiga.com/news/20120521/1/ 2013年7月12日閲覧。 
  17. ^ 岡田准一主演『永遠の0』、ブルーレイ&DVD豪華版特典に山崎貴監督自ら大興奮!”. クランクイン! (2014年7月23日). 2014年7月24日閲覧。
  18. ^ 永遠の0 Blu-ray / DVD”. アミューズソフトエンタテインメント (2014年5月16日). 2014年7月24日閲覧。
  19. ^ “レンタル年間1位は『アナと雪の女王』!サントラ部門でもトップに!”. シネマトゥデイ. (2014年12月20日). http://www.cinematoday.jp/page/N0069261 2014年12月22日閲覧。 
  20. ^ “「永遠の0」3話とも視聴率低空飛行もテレ東社長評価”. SANSPO.COM. (2015年2月26日). http://www.sanspo.com/geino/news/20150226/oth15022615260022-n1.html 2015年2月28日閲覧。 
  21. ^ 映画版で同役を演じた山本學の実弟。
  22. ^ 今年読んでよかった書籍ランキング 1位「永遠の0」 2位「海賊とよばれた男」 3位は「1Q84」と「下町ロケット」”. 大和ネクスト銀行. 2014年12月9日閲覧。
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関連文献

関連項目

外部リンク