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山小屋

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北アルプス・蝶ヶ岳の蝶ヶ岳ヒュッテ

山小屋(やまごや)とは、山(頂、稜線、麓など)にある小屋であり、小屋番のいる有人小屋と、無人の避難小屋に大別される。単に「山小屋」という場合、一般には有人小屋をさすことが多い。登山者が行程中に宿泊する便宜を図るもので、旅館ホテルと違い基本的には大部屋・相部屋での雑魚寝である。これは、有人で営業を行っていても、旅館等の宿泊施設とは異なり、基本的には山小屋が緊急避難場所の役割を担っているという事情による。基本的には宿泊希望者を拒めないために最混雑時は廊下に布団を敷いたり、他人と同じ布団で寝ることも起こりうる。

沢沿いの山小屋は別として、多くの山小屋では水の確保に大変苦労しており、登山者は“水は貴重品である”との認識で節水に心がけるようにしたい。主要な山小屋では、夏季に大学医学部の臨時診療所が併設されていることもある。当然のことながら、ごく一部の例外を除いて、山小屋に風呂やシャワーはない。(例外は尾瀬の大部分の山小屋と、赤岳鉱泉・本沢温泉・白馬槍など温泉や鉱泉の出る山小屋)

高山の有人小屋の場合、北アルプスなど多くの登山者が訪れる地域では、営業期間は、6月中旬から10月中旬というところが多いが、メインルートから外れている小屋では、登山者の多い夏季だけの営業のところもある。高山であっても、八ヶ岳のように、四季にわたって入山・宿泊者が見込める小屋では、通年営業をしている場合もある。

ところで、ドイツ語由来のヒュッテ(ひゅって、Hütte)という呼称があるが、これは高山や高原にある山小屋を指すことが多い。 ヒュッテという言葉は、オーストリア陸軍のレルヒ少佐が1910年、日本にスキーを伝えた際に、いっしょに導入された登山用語のひとつ。この時同時に導入された言葉に「リュックサック」などがある。

なお、山小屋の中にも、燕岳へ登る合戦尾根にある合戦小屋のように売店のみで宿泊できないところもあるので、よく調べて行動計画を立てることが肝要である。

設備

  • 有人小屋
    • 有人小屋では寝具が備え付けてあり、一部の例外を除き、朝夕食の2食付き宿泊が可能である。売店で缶詰などの食料品・スナックジュースタバコなどやバッジ・絵葉書・バンダナ等の記念品を売っているところもある。有人小屋では多くの場合素泊まりの宿泊客用の炊事場があり、また幕場(あるいは天場)といってテントを利用する登山者のために指定されたスペース、指定キャンプ地がある場合もある。国有林内に位置する山小屋近くのキャンプ地の場合は、最寄りの有人小屋が林野庁の森林管理署(旧営林署)からキャンプ地の管理を委託されている場合が多く、この場合は山小屋がキャンプ地を経営している訳ではない。臨時診療所等の施設の場合も同様である。昼は食堂で簡単な昼食(カレーラーメンうどん等が多く、インスタントラーメンしか無いところもある)を提供するところもある。トイレは排泄物の処理に苦労している山小屋が多く、宿泊者以外からは使用料を徴収することが多い。例外的であるが、期間を限って簡易郵便局を開設するところや、本格的なレストランを併設するところ、天然温泉が湧出しているところもある。
  • 避難小屋
    • 寝具はないことが多く、自分で食料、寝具(シュラフ)や炊事道具(コッヘル(クッカー、登山などで使う組み合わせ鍋。アルコールストーブなどの熱源が組み込まれている場合もある)、ストーブなど)を持参して宿泊する必要がある。設備が破損している場合もあるため、事前に管理者に確認したほうが良い。ただし、南アルプスなどにおいては、避難小屋の名称を名乗りながら夏期のみ管理人が入り、寝具や食事(レトルト食品のようなものが大半)の提供を行い、事実上有人小屋に近い営業を行っている例も増えてきた。この場合も管理人が入る期間は通常の有人小屋より短いことが多いので、事前に確認を行った方がよい。

宿泊料金

避難小屋は一般には無料で利用できるが、利用料金がかかるところ、あるいは寄付を受け付けているところもある。(利用料金がかかる避難小屋の場合、事前に山麓の管理人宅で鍵を受け取る必要のあるところもある。)有人小屋の宿泊料金は山域によって異なるものの、素泊まり相部屋(食事と寝具自弁の宿泊)では一泊3000~6000円程度、2食つき相部屋では5000~9000円程度である(一般には交通の便の悪い高山ほど高額になるが、山域によって宿泊料金を統一しているところも多く、その場合は稜線上であろうと登山口であろうと同じ宿泊料金になる)。個室を備えた山小屋もあるが、かなり高額の個室利用料が必要となる。休憩するだけの登山者に茶や茶請けを無料で提供するところもあるが、出来れば茶代を払うことが望ましい。