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いぬやしき

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いぬやしき
ジャンル 青年漫画SF
漫画
作者 奥浩哉
出版社 講談社
掲載誌 イブニング
レーベル イブニングKC
発表号 2014年4号 -
巻数 既刊6巻(2016年4月22日現在)
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いぬやしき』は、奥浩哉による日本漫画。2014年より講談社イブニング』にて連載中。2015年4月22日発売の『週刊少年マガジン』第21・22合併号には、作者初の少年誌掲載となる出張掲載もされている[1]

宇宙人の手によって機械の身体となった初老の男性と高校生の活躍や苦悩、救済される人々や殺害される人々を描く。

あらすじ

老人にも見える冴えないサラリーマン・犬屋敷壱郎は、会社や家庭からも疎外された生活を送っており、ようやく購入した一戸建てすらも、家族の歓心を得ることができなかった。不良に絡まれ虐げられる弱者を見て理不尽に怒りを燃やすも、結局何もできず、むしろ息子から「自分達は隠れて怯えてやり過ごすべきだ」と言われショックを受ける。さらに追い撃ちをかけるように胃ガンだと診断され、余命3カ月を宣告される。ガンのことを家族に打ち明けるタイミングが見つからず、打ち明けたとして家族が悲しんでくれるか思い悩む犬屋敷だったが、犬の散歩中に、獅子神皓と共に非常に小さな宇宙人による事故に巻き込まれ死亡する。事故を隠蔽したい宇宙人によって、生前の記憶や精神を持った機械の身体となって蘇ることとなる。

日常における肉体との相違から身体が機械となり本当の自分は死んだことを自覚した犬屋敷は、人でもなく犬屋敷壱郎でもない自分の存在意義を問い始める。そんな折、少年達からリンチされているホームレスを助けて感謝され、人として生きている実感を得て、人助けに存在意義を見出すようになる。さらに生物の命を助けることもできることに気付いた犬屋敷は、現代医療では助からない重病人の治癒も始め、ますますその力を他人のために使おうと考える。

一方、犬屋敷と同じく機械の身体となったことを自覚した獅子神は、イジメを受け引きこもりとなっていた幼馴染・安堂に自らの能力を見せ、再び登校するよう説得する。ところが、獅子神は自分の身内や近い者に惜しみなく能力を使う一方で、安堂をイジメていたクラスメイトを殺害したり民家に押し入って殺戮を繰り返すなど平然と凶悪な犯罪行為を繰り返していた。しかし、ついにその犯罪行為が世間に明るみにされ追われる身となり、追い詰められた獅子神は遂に自分に敵対する総ての人間を殲滅するため動き出す。

その頃、直径50km以上の巨大な小惑星が地球に接近しつつあることが報道番組で発表された。

登場人物

主人公

犬屋敷 壱郎(いぬやしき いちろう)
本編の主人公。妻と高校生の娘、中学生の息子がいる58歳だが、娘の友達に「おじいちゃん?」と聞かれるほど、白髪に皺だらけの老け顔の冴えないサラリーマン。正義感は強いが温厚かつ内向的な性格で、やや卑屈な面もある。社会から疎外されたような人生を歩み、最愛の家族からも疎まれ、やるせない日々を過ごす。理不尽な目に遭っている人を見ると怒りに燃えるが、それと同時に自分が無力という現実に耐えるしかない日常を送っていた。
それまで団地で暮らしていたが、ローンを嫌っていたため58歳にしてマイホームを購入し、犬のハナコを飼い始めたところ、健康診断で胃がんが見つかって余命宣告を受け、絶望する。その後、非常に小さな宇宙人の事故に巻き込まれて死亡し、兵器ユニットを搭載された機械の身体として蘇る。日常の中で異常を察し、機械の身体となったことを知ると自分の存在意義に悩むが、少年たちによるホームレス狩りの現場に出くわした際に、自分を危険にさらしてまで少年達を撃退したことをホームレスに感謝されたことで自分が生きている人間であることを実感し、人助けに自分の存在意義を見出す。
現代医療では助からない重病人や怪我人を完治させる能力に気付いてからはそれを活用して休日の病院に潜入しては重病人を治して周り、ネットで「謎の奇跡の人」として評判になり、それを偶然安堂が知ることで彼と知り合う切っ掛けとなり、安堂の友人となった。その後、安堂と共にある病院に潜入して重症の子供を完治させた際に見つかってしまうが、病院長に他言無用を条件に治療に協力してほしいと持ちかけられ、それ以降も存分に能力を振るっている。
機械としての自分の身体機能については、治癒能力以外は獅子神と比べてまだ知らない機能が多い。ホームレス狩りの少年やヤクザたちと戦闘した際には、途中で意識を失ってしまい、その後は兵器ユニットの自動モードのような形に入り、気付いた際には全てが終わっていたといった具合であるが、意識がなかったにも関わらず、相手は不殺で対処しながら相応の悪行の報いを受ける状態にしている。安堂と知り合ってからは彼から聞かされた獅子神の能力の情報をたよりに特訓中だが、現時点でも獅子神の行動を追尾捕捉することができないでいる。
獅子神 皓(ししがみ ひろ)
本編におけるもう1人の主人公。犬屋敷と同じく公園で非常に小さな宇宙人による謎の物体の墜落に巻き込まれ、機械の身体にされた高校生。家族や友人には気の優しい好青年だが、自分達に害を成す者はもちろん、無関係な他人ですら平然と殺せるという二面性を持つ。
機械の身体となったことを自覚すると、イジメられて引きこもりとなっていた親友・安堂を救うべく能力を利用する。だが、安堂に自分の能力を見せるために街に死傷者が出るような混乱を引き起こしたり、安堂をイジメていた同級生を全員射殺したり、家族や安堂に渡すためにATMの不正操作で大金を引き出すといった行動をとる。さらには、機械の身体になったことを自覚した直後に他人の自殺に遭遇した際に沸いた生きている実感を得るために無関係の一家を惨殺する連続事件を引き起こすなど、犬屋敷と対照的な人生の意味を見出す。母親が末期の膵臓がんと知らされると母を失いたくない一心で能力を発動させてがんを治し、それを期に殺人をやめようとしたが、連続殺人事件の犯人であることが発覚してしまい結果的に母親を自殺に追いやることになってしまう。
渡辺から告白され、返事こそしてないものの気を良くしていた。連続殺人事件の犯人として追われることになった際、渡辺の家に匿われることになるが、自分のことを真犯人だと思っていない渡辺に対して、真実を吐露し自分の機械の身体を晒し能力を見せつけながら自分に敵対する総ての人間を敵として滅ぼすことを告げる。しかし逆に渡辺に説得され、今まで殺してきた人数分人助けをしていくことを約束させられる。その後数ヶ月間約束に従いネットを通して重病人を募って治癒をおこない平穏な日々を過ごしていたが、渡辺の家にSATが投入され渡辺と渡辺の祖母が撃たれてしまう。重体の2人を治癒した後、2人のもとを去り、あらためて当初渡辺に宣言したとおり自分に敵対する総ての人間を敵として滅ぼすための戦いをはじめる。
機械としての自分の身体機能については犬屋敷に比べてかなり詳細に把握している。

犬屋敷の家族

犬屋敷の妻
名前は不明。外見は典型的な中年女性。スーパーでパートをしている。気だるく風情で、夫婦仲は冷めきっているため夫に対し非協力的かつ無関心である。しかし、凶悪犯として全国に手配された獅子神の話題が出た際、帰ってこない夫に対し、「殺されてるんじゃないの?」という不謹慎な発言をした息子をたしなめるくらいには気にかけている様子をみせている。
犬屋敷 麻里(いぬやしき まり)
犬屋敷の娘。容姿は両親に似ておらず美少女で友人も多く、典型的な今時の女子高生。獅子神と安堂のクラスメイトだが、特に接点はない。老けた外見で冴えない父を心底疎ましく思っており、友達に父を「おじいちゃん?」と尋ねられても否定はしなかった。団地から一戸建てに引っ越した際に新居を見ても隣の有名漫画家の豪邸と比べて「こんなもんか」と不満を漏らし、犬を飼う際にも「ポメラニアンがいい」と言い、希望と違うはな子を見て「かわいくない」と文句を言うなど、ワガママな面を見せる。
父のような平凡な人間には絶対になりたくないという思いと隣家の有名漫画家への敵愾心で漫画家を志望している。
ある日、父がクラスメイトの安堂と一緒にいるところを偶然目撃し尾行したことから父の秘密を知ることになる。
犬屋敷の息子
名前は不明。中学生。外見は父親似であり、父親以上に内向的で卑屈な性格をしている。学校に友人はいるが、不良グループから悪質なイジメを受けていて、そのことを誰にも言えずにいる。ある日、友人と下校途中に牛丼店で一人で食事をしている父を見かけた際に友人から「ああいう親父って何が楽しくて生きてるんだろう。家族とかいないのかな」と言われてショックを受ける。またある日、父と外出した際に、弱者が不良達に絡まれ虐げられている現場を目撃し、父は警察を呼ぼうとするが、「(自分達のような人間は)隠れて怯えてやり過ごすべき」と父に言って愕然とさせる。
はな子
犬屋敷が新居購入を機に動物愛護センターから譲り受けた柴犬系の犬。すでに成犬だが機械の身体になった犬屋敷にも懐いており、犬屋敷の唯一の心の支え。犬屋敷と獅子神と共に宇宙人の事故に巻き込まれそうになったが、事故直前に逃げたため事故に巻き込まれることはなく、宇宙人に「兵器ユニット」を搭載されることはなかった。

獅子神の近親者

安堂 直行(あんどう なおゆき)
獅子神の幼馴染。あだ名は名前を音読みした「ちょっこう」。同級生にイジメられて引きこもっていたところ、獅子神に助けられる。当初は獅子神の超常的な力を目の当たりにしても一定の信頼感を持っていたが、やがて彼の異常性に困惑、彼が自分をイジメていた同級生たちを射殺したのを見せられるにいたり、連続一家惨殺事件の犯人であることも察知し、絶交する。
ネットで静かな話題になっていた「病院に潜入しては重病人を救う謎の奇跡の人」の記事を見つけたことが切っ掛けで、獅子神と同じ能力を持つ犬屋敷の存在に気付き、嘘の助けを求める叫びで彼を呼び出すと獅子神を止めるよう依頼。涙脆い性格で犬屋敷が獅子神と正反対の理由で生きている意義を見出していることに感動し、また能力を使いこなせていないことを知ると、獅子神の能力から知りえた情報を頼りに犬屋敷のアシスタント役を買って出るようになり、犬屋敷の友人となった。
渡辺 しおん(わたなべ しおん)
獅子神のクラスメイトの女子。クセ毛の髪の特徴から獅子神を含む男子生徒から「チンゲ」とあだ名されている。内向的だが優しい性格。両親はガンで他界しており、祖母と二人暮らししている。
イジメにあっていた安堂を助けた獅子神の姿に惚れて彼に告白した。獅子神が連続一家惨殺事件の犯人として追われることになった際に彼を犯人であるとは思っていなかったため自宅に匿い、獅子神に真実を明かされ機械の身体と能力を見せつけられて激しく動揺するが、それ以上に彼がいなくなることに耐えられず傍にいてほしいと懇願、獅子神を説得して今まで殺してきた人数分人助けをしていくことを約束させる。
その後数ヶ月間は獅子神との平穏な日々を過ごすが、自宅にSATが獅子神を捕えるために投入された際に祖母共々撃たれて重体となる。その後、獅子神によって祖母共々安全な場所に連れ出されて治癒されたが、それがそのまま獅子神との別れとなった。
獅子神の母
名前は不明。夫とは離婚し、皓とアパートで二人暮ししている。一般的な道徳観を持っており、皓に「俺が犯人ならどうする」という質問に対し、「世間に顔向けできないから一緒に死ぬ」と答えた。その言動が皓の人格に多少の変化をもたらすこととなる。
末期の膵臓がんと診断されるが、皓の能力でがん細胞は消滅する。その後、束の間の幸せを手にするが、彼を追う警察が自宅に詰め寄せたことにより、自分の息子が連続一家惨殺事件の犯人であったことを知ってしまう。皓が逃亡した後は凶悪犯の母となってしまった良心の呵責に耐えきれず、前述の発言通り自ら命を絶った。結果として彼女の死はそのことを知った皓の更なる暴走のきっかけとなる。
渡辺の祖母
名前は不明。孫娘とふたりぐらししている。テレビをほとんど見ていないこともあり、獅子神がただの家出した少年だと思い、連続一家惨殺事件の犯人であったことを知らなかった。自宅にSATが獅子神を捕えるために投入された際に孫娘共々撃たれて重体となるが、獅子神によって孫娘共々安全な場所に連れ出されて治癒された。

ゲストキャラクター

井上 ふみの(いのうえ ふみの)
弁当屋で働く美女。背が低いことを気にしている。鮫島に気に入られたことで拉致されてしまい、覚醒剤を注射された上に強姦されそうになるが、日本刀で鮫島の手を斬りつけ逃走。悟の待つ自宅に帰るが再び鮫島に拉致されてしまう。鮫島含め暴力団を壊滅させた犬屋敷に助けられ、無事に悟の元へ帰る。
悟(さとる)
ふみのの彼氏。美人のふみのとは対照的に冴えない見かけだが、誠実な性格。ふみのにプロポーズした後、ふみのを拉致されそうになった際には非力ながらも逃げずに何とか活路を見出そうとするが、苛立った鮫島に首を絞められ心臓が止まる目に遭う。しかし、犬屋敷に蘇生され、助けられたふみのを迎え入れる。
鮫島(さめじま)
指定危険暴力団「講談組」幹部。残忍非道な性格で、自らの欲求を満たすためなら手段を選ばない。目をつけた女性を拉致し薬漬けにし強姦、死亡したら遺棄を繰り返していた悪党。ふみのに日本刀で事故で手首を斬られ大量出血を起こしても問題なく活動が可能なほど屈強な肉体を持つ。
一度逃げられたふみのに執着して再度浚い、悟を殺害した上、犬屋敷を銃で撃ち停止させる。その後、復帰し暴力団の会合に乗り込んでた犬屋敷を迎え撃つが、今度は銃でも刃が立たず、殴られて倒れる。その直後、犬屋敷によって他の幹部組員全構成員278人共々殺されずに眼球と脊髄を破壊されて、自由のきかない身体のまま生きていくしか無い状態にさせられ、今までの非道を生きて悔いるよう宣告される。しかしそのような状態でもなぜ犬屋敷に自分が闘って負けたかを理解できず、自分のした悪事を反省したそぶりは一切ない。

書誌情報

脚注

  1. ^ 「GANTZ」の奥浩哉、少年誌に初登場!「いぬやしき」がマガジンに出張”. マイナビニュース (2015年4月22日). 2015年7月28日閲覧。
  2. ^ 『いぬやしき(1)』(奥浩哉):イブニングKC”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2016年5月8日閲覧。
  3. ^ 『いぬやしき(2)』(奥浩哉):イブニングKC”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2016年5月8日閲覧。
  4. ^ 『いぬやしき(3)』(奥浩哉):イブニングKC”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2016年5月8日閲覧。
  5. ^ 『いぬやしき(4)』(奥浩哉):イブニングKC”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2016年5月8日閲覧。
  6. ^ 『いぬやしき(5)』(奥浩哉):イブニングKC”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2016年5月8日閲覧。
  7. ^ 『いぬやしき(6)』(奥浩哉):イブニングKC”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2016年5月8日閲覧。

関連項目

  • GANTZ - 奥浩哉が連載していた漫画。登場人物の安堂直行が大ファンで、部屋にポスターを多数飾っている。

外部リンク