ホンダ・モンキー
モンキー(MONKEY)は、本田技研工業が製造販売するオートバイである。本項ではゴリラ(GORILLA)をはじめとする派生車種についても解説を行う。
概要
派生車種も含めて4MINIとも呼ばれる原動機付自転車である。
1961年(昭和36年)の第8回日本自動車ショウ[1]で発表されたレジャーバイクのZ100が母体であり、当初は本田技研工業が経営していた「多摩テック」の遊具として製造された[2]。1964年(昭和39年)にはモデルチェンジ版であるCZ100の日本国外への輸出を開始。好評だったことから日本国内向け公道走行仕様も開発が行われた。この時点で車名は付与されていなかったが、販売開始にあたってモンキーとした。なお姉妹車のゴリラも含めてサル目・類人猿のサルとゴリラが由来である。
- これは運転している人間の様がサルに似ているという一般的な説のほかに、遊具としてのZ100を所有していた多摩テックの近隣にある野猿街道(東京都道160号下柚木八王子線)でテスト走行も行ったから名付けられたという説もある。
販売歴はカブに次ぐロングセラーであり、過去のモデルなどで発売された車体色バリエーション[3]も日本のオートバイで最も多く、銀メッキ仕様(1979年ほか)・金メッキ仕様(1984年[4]・1996年[5])・CB1100Rイメージカラーモデル(2002年[6])・くまモンバージョン(2014年[7])など数多くの台数限定特別モデルも販売された。
モンキー・ゴリラともに非常にシンプルな構造で、整備士資格を持たない素人でも比較的簡単に分解と組み立てが出来る。また搭載されるエンジンは数多くの車種に採用された横型(水平シリンダー型)単気筒エンジンであり、基本的な構造は同じでも性能の異なる仕様が数多く存在する。これら要因が重なったため販売開始以降はショップだけでなく個人レベルでもエンジンのチューニングや改造が楽しまれ、国内外のメーカーから数多くのパーツが発売されているほか、日本国外の二輪メーカーによるコピーバイクも流通している。ドレスアップなどの外装パーツも多く、埼玉県警察や神奈川県警察などではイベント展示用に白バイ仕様を製作した。
モデル一覧
- ※本項ではモンキーならびに派生車種の日本国内向け仕様について解説を行う。
MONKEY
1967年(昭和42年)3月に日本国内向け最初のモデルとしてZ50M型を発売。
- CZ100の車体を流用し、リジッドフレーム(サスペンションなし)に5インチタイヤを装着。スーパーカブと同様の排気量49㏄空冷4ストローク単気筒エンジンに3速マニュアルトランスミッション・自動遠心クラッチを搭載するが、バルブ機構はカブと共にCZ100のOHVからSOHCに変更した。
- 乗用車などへの搭載を前提に燃料漏れ防止装置の付いたタンクキャップ・ドレンコック付キャブレター・ハンドル折り畳み機構を採用する。
1969年(昭和44年)7月18日発表、同月20日発売でZ50A型へモデルチェンジ[8]。
- 車体をやや大型化し、ハンドル折り畳み機構を廃止。8インチタイヤ・フロントテレスコピックサスペンションを装備。
1970年(昭和44年)4月10日発表発売でハンドル部分を分割可能にしたZ50Z型を追加[9]。
1974年(昭和49年)2月14日発表発売でZ50J型にフルモデルチェンジ[10]。
- リヤサスペンション・キャリアの装備ならびにブロックパターンタイヤを装着。
1978年(昭和53年)8月2日発表、同月3日発売で姉妹車種のゴリラを追加するとともにティアドロップ型燃料タンクと搭載したZ50J-I型へモデルチェンジ[11]。
1984年(昭和59年)9月17日発表、5,000台限定で首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)は同年10月1日、その他の地域は同年12月1日発売でゴールドメッキ特別仕様車を追加[4]。
- 型式名をA-Z50Jへ変更。
- 4速マニュアルトランスミッション]を搭載し、マニュアルクラッチへ変更するとともにエンジンスペックを最高出力3.1ps/7,500rpm・最大トルク0.32kg-m/6,000rpmへ強化。
1985年(昭和60年)4月25日発表、同年5月10日発売で一般モデルも前年に発売されたゴールドメッキ特別仕様車と同一のA-Z50J型へマイナーチェンジ[12]。
- 本モデルよりライトスイッチ類をハンドル左側に集中化を実施。
1992年(平成4年)4月10日発表、同月20日発売で電装を12V化するマイナーチェンジを実施[13]。
1999年(平成11年)9月2日発表、同月3日発売で新たな平成10年排出ガス規制に対応させたマイナーチェンジを実施[14]。
- キャブレターセッティング変更・ブローバイガス還元装置を搭載し、型式名をBA-AB27に変更。
2002年(平成14年)1月21日発表、同月22日発売で以下のマイナーチェンジを実施[6]。
- 3,000台限定でCB1100Rイメージカラーモデルを追加。
- 一般モデルを含め盗難抑止システムとして別売のアラームキットが装着できるプレワイヤリングを新たに装備。
2003年(平成15年)12月3日発表、同月13日発売で盗難抑止効果向上のためリヤキャリアをU字ロックホルダー付に変更[15]。
2007年(平成19年)9月には平成19年排出ガス規制に適合できず一旦生産終了[16]。
2009年(平成21年)1月19日発表。平成19年排出ガス規制に適合させるため以下の設計変更を実施し、受注期間を同日から同年2月8日までに限定したリミテッドを同月30日に、一般モデルを同年2月6日に発売[17]。
- 型式名をJBH-AB27へ変更。
- 燃料供給を電子制御式燃料噴射装置(PGM-FI)へ変更。
- エキゾーストマニホールドに三元触媒を内蔵。
- バッテリー搭載位置をサイドカバー部からシート下へ移動。
- シート形状を変更。
- 燃料タンクを1978年以前のモデルに近い形状へ変更。
2017年3月24日、東京モーターサイクルショー2017で限定車の「モンキー・50周年アニバーサリー」「モンキー・50周年スペシャル」をもって生産終了予定であることが発表された[18]。
- これは2016年7月1日に施行された欧州Euro4とWMTCを参考とした規制値および区分[19]の平成28年排出ガス規制[20]をクリアすることが難しいことが理由とされており、平成24年規制に基く継続生産車である本モデルは同年8月31日が生産終了期限となる。
GORILLA
1978年(昭和53年)8月2日発表、同月3日発売でモンキーのZ50J-I型へモデルチェンジと同時に追加された姉妹車である[11]。
基本的なパーツはほぼモンキーと共通であるが、以下の相違点がある。
- ハンドル折り畳み機構は未搭載。
- 燃料タンク容量をモンキーの2倍程度となる9Lまで拡大。
- 4速マニュアルトランスミッション・手動クラッチを搭載。
- フロント/リヤにキャリアを標準装備。
- シート長を延長。
これらは自動車に積んで目的地で展開することを前提としたモンキーとは異なり、ツーリングで目的地まで移動することを前提として設計されたためである。
派生車種の多様化などにより1988年(昭和63年)に一旦生産終了となった[21]。しかしユーザーからの再発売を熱望する声が長い間続いていたことから、1998年(平成11年)1月22日発表、同年2月10日発売で販売復活となった[21]。
- 外観はフロントキャリアが廃止された以外は以前とほぼ同一の仕様とされた。
2007年(平成19年)9月に平成19年排出ガス規制に適合できず再び生産終了。
MONKEY R / RT
1987年(昭和62年)3月17日発表、同月18日発売[22]。モンキーをベースに当時流行していたレーサーレプリカからカウル類を外したネイキッド風にアレンジした派生車種である。一見するとアルミ製ツインチューブに見えるスチールフレームはモンキーと同様のバックボーン式であるが、まったくの別物であるため型式名はA-AB22となる。このほかモンキーとは以下の相違点がある。
- シート一体型カウル・スワローハンドル・バックステップを装備。
- 前後輪を10インチコムキャストホイール化、タイヤもチューブレス化。
- 前輪ブレーキをシングルディスクへ変更。
- エンジンスペックを当時のカブと同一仕様とし最高出力を4.5psへ向上。
- エアープレーンタイプタンクキャップを採用した7L燃料タンクを搭載。
1988年(昭和63年)3月10日発売、同月15日発売でデュアルパーパスを意識した以下の仕様変更を施したRTを追加[23]。
- ハンドルをアップタイプへ変更。
- ステップ位置を前寄りに移設。
- フロントフェンダーをアップタイプ(固定式)へ変更。
- タイヤパターンをオフロードに対応したブロックパターンへ変更。
- リヤキャリアを標準装備化。
本モデルは後述するMONKEY BAJAへモデルチェンジする形で生産終了となった。
MONKEY BAJA
1991年(平成3年)1月18日発表、同年2月1日発売[24]。
当時発売されていたデュアルパーパスモデルのXLR BAJAやエンデューロレーサーのXR600Rをモチーフにデュアルヘッドランプ・ナックルガード・サイドカバーなどを装備するオフロード風モデルである。また電装をバッテリーレスにするなどエンデューロマシンテイストも加えられているが、上述したMONKEY R / RTとは異なりフレームやエンジンはベースのモンキーと共用するため型式名はA-Z50Jとなる。
2001年(平成13年)に生産終了。
Z50R
Z50J-I型をベースに保安部品を外した競技用車両であり、シートやハンドルなどの細部を変更するほかゼッケンプレートを装備する。1992年(平成4年)には上述したMONKEY BAJAをベースにした仕様に変更。
ベースがモンキーであることから大人が乗車しても充分に耐え得る構造であるが、子供向け車両という雰囲気が強く、後にXR50Rへ引き継がれる形で生産終了。
関連車種
以下はスーパーカブ系横型単気筒エンジンを搭載するモデル。
- 現行車種
- 生産終了車種
- ダックス (ST50 ST70)
- ハンターカブ (CT50 CT110)
- ポートカブ (C240)
- ベンリイCD90
- CL50
- ジャズ
- ソロ
- ジョルカブ
- シャリィ
- モトラ
- マグナ50
- ベンリイCD50
- Benly50S
- その他
- CKデザイン・仔猿 - Z50Mがモチーフとなっている。
関連項目
脚注
- ^ 東京モーターショーへの名称変更は1964年の第11回以降。
- ^ 【ホンダ モンキー】超小型バイクの偉大な歴史(男の浪漫伝説 Vol.72) ドリームメール
- ^ カラーオーダー車を除く。
- ^ a b 1984年9月17日プレスリリース
- ^ 1996年1月17日プレスリリース
- ^ a b 2002年1月21日プレスリリース
- ^ 2014年3月12日プレスリリース
- ^ 1969年7月18日プレスリリース
- ^ 1970年4月10日プレスリリース
- ^ 1970年4月10日プレスリリース
- ^ a b 1978年8月2日プレスリリース
- ^ 1985年4月25日プレスリリース
- ^ 1992年4月10日プレスリリース
- ^ 1999年9月2日プレスリリース
- ^ 2003年12月3日プレスリリース
- ^ 2007年の生産終了までほぼ同じ外観のままでドイツ・オーストラリア・フィンランドなどでも現地の法規に適合させた仕様で販売。
- ^ 2009年1月19日プレスリリース
- ^ 小松哲也 (2017年3月24日). “ホンダ、モンキーを8月末で生産終了…排ガス規制強化で50年の歴史に幕”. Response.(株式会社イード) 2017年3月24日閲覧。
- ^ 環境省・自動車排出ガス専門委員会(第54回)配付資料 54-2 二輪車の排出ガス規制に関する国際基準調和の動向等について (PDF) - 小排気量車の数値と区分が日本と欧州で異なる。
- ^ “ディーゼル重量車及び二輪車の排出ガス規制を強化します。”. 国土交通省自動車局環境政策課 (2015年7月1日). 2017年3月24日閲覧。
- ^ a b 1998年1月22日プレスリリース
- ^ 1987年3月17日プレスリリース
- ^ 1988年3月10日プレスリリース
- ^ 1991年1月18日プレスリリース