コンテンツにスキップ

さかしま

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Maeterlinck azur (会話 | 投稿記録) による 2018年3月11日 (日) 02:57個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

さかしま』(À rebours)は、フランスの作家ジョリス=カルル・ユイスマンスによる小説1884年に刊行され、象徴主義デカダンスの作品として、モーリス・メーテルリンクポール・ヴァレリーオスカー・ワイルドなどに影響を与えた。「さかしま」は「逆さま」「道理にそむくこと」といった意味(英訳では"Against the Grain"または"Against Nature")。「デカダンスの聖書」とも評される。

あらすじ

登場人物は(回想シーンなどを除き)ほとんど主人公フロレッサス・デゼッサント(Floressas des Esseintes)1人のみである。

主人公は貴族の末裔で、学校を卒業後、文学者との交際や女性との放蕩などで遺産を食い潰す。やがてそうした生活に飽き、性欲も失い、隠遁生活を送る決意をする。祖先の遺した城館を売り払い、使用人とともに郊外の一軒家にこもって趣味的な生活を送る。

デゼッサントは俗悪なブルジョワ的生活を嫌い、修道院の隠棲生活に憧れを持つが、カトリックの信仰には懐疑的である。自分の部屋にラテン語の文献、好みの書物(ボードレールマラルメなど)を集め、幻想的なモローの絵、ゴヤの版画で飾り、美と廃頽の「人工楽園」を築いてゆく。

次第に神経症が悪化し、不眠、食欲不振などに悩まされる。ある日、ディケンズの小説を読み、ロンドンで暮らそうと考えて家を出るが、結局汽車に乗らずに帰ってきてしまう。医師から、現在のままでは神経症はよくならないので、パリで普通の人間に交わって生活するよう命じられる。パリへ向かうべく、デゼッサントは住居を引払う。

日本語訳書誌

澁澤龍彦-訳者としての澁澤自身の代表作。

  • 桃源社、1962年-背革装の豪華本。副題に「美と頽廢の人工楽園」
  • 桃源社「世界異端の文学 4巻」、1966年-シリーズでの普及版。
  • 桃源社「澁澤龍彦集成 6巻 翻訳篇」、1970年-2段組で他に数作品を収む。
  • 桃源社、1973年-新装改訂版(箱入り)。
  • 光風社出版、1984年-瀟洒な装丁版、挿画・箱入り、改訳し新版あとがきを付す。
  • 河出書房新社、「澁澤龍彦翻訳全集 7」、1997年-他に数作品を収む。
  • 河出文庫、2002年-「全集」版に基づく。

外部リンク

  • フランス語版テキスト[1]
  • 英訳(プロジェクト・グーテンベルク)[2]