尹祐根
人物情報 | |
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生誕 |
1972年1月13日(52歳)![]() |
居住 |
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国籍 |
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出身校 |
兵庫県立加古川西高等学校[1] 九州大学(学部・修士) 東北大学(博士課程中途退学) |
学問 | |
研究分野 | ロボット工学 |
研究機関 |
東北大学 クイーンズ大学ベルファスト[1] 産業技術総合研究所 ライフロボティクス |
博士課程指導教員 | 内山勝[3] |
指導教員 | 妻木勇一[4] |
学位 | 東北大学博士(工学)[3] |
主な業績 | 改良型DELTA機構を用いたハプティックインターフェース、ライフロボティクスの創業 |
主要な作品 | RAPUDA、CORO |
影響を受けた人物 |
末廣尚士、北垣高成 川渕一郎、稲葉善治 |
影響を与えた人物 | 清水昌幸、山野辺夏樹 |
学会 | 日本ロボット学会[5] |
主な受賞歴 | ファナックFAロボット財団論文賞[6]、日本の起業家ランキング2017第9位[7] |
公式サイト | |
尹 祐根(ゆん うぐん, Woo-Keun YOON) |
尹 祐根(ゆん うぐん[5]、Yoon Woo-Keun、1972年(昭和47年) 1月13日[4] - )はロボット研究者、東北大学博士(工学)[3]。東北大学助手、産業技術総合研究所研究員を経てライフロボティクスを創業。同社で肘のない伸縮式ロボットアームを開発・販売するも、ファナックによる子会社化に伴い、2018年度より産総研に情報・人間工学領域 主任研究員として復帰[8][9]。ETS-VII搭載ロボットアームの遠隔操作実験、ハプティックインターフェース、RTミドルウェアやスキルトランスファー技術でも実績がある。在日韓国技術者協会では理事を務める[2]。
来歴・人物
幼少期から修士課程まで
1972年1月、在日コリアン3世として兵庫県に生まれる[1]。小学生時代はボーイスカウトに参加し、スイミングの選手でもあった。プラモデルやラジコンも好きで、プラモデルやアニメの影響でガンダムなどロボットにも興味を持つ。中学・高校では陸上競技に励み、中学では三段跳びで地域記録を出し、高校では棒高跳びの県強化選手にも選ばれた[10]。
尹はロボットをやりたいと九州大学工学部動力機械工学科[4]へ進学[11]。しかし学部では熱力学の研究室に配属され、大学院修士課程でもロボット系の研究室に入れず、材料系の研究に取り組む[12][10]。しかし尹はロボットの研究をするため東北大学の博士課程を受験し、合格。修士課程の研究と並行してロボット工学関係の授業を受け、将来に備えた[10]}。1998年3月、尹は九州大学大学院工学研究科を修了[4]。
ロボット研究へ
1998年4月、尹は東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻に進学し、内山勝 (ロボット研究者)の研究室に所属。翌年の1999年7月で中途退学し、同研究室の助手に就任する[4][1]。尹は宇宙開発事業団や東芝とも連携したETS-VII搭載ロボットアームの遠隔操作実験に参画。遠隔操作には制御対象から力がフィードバックされるハプティックインターフェースも用いた[13][14]。
2001年、誘われて産業技術総合研究所(以下、産総研)の研究員に着任[10](当初は5年間の任期付研究員[1])。内山研究室の指導も仰ぎつつ、末廣尚士のもとでハプティックインターフェースの研究に従事。DELTA機構(DELTA )の球面対偶を回転関節で置き換えた改良型DELTA機構を中心とした剛性解析や、それを元にした新型機の開発に取り組む[15][16]。この技術は特許出願され、後年産総研で特許化された[17]。2003年9月、論文博士として東北大学で博士(工学)の学位を取得する[3]。
学位取得後の2003年10月より1か月、尹はクイーンズ大学ベルファストで訪問研究員を務める[1]。その後は末廣尚士や北垣高成らのもとで、タスクスキル、スキルトランスファーの研究に従事。原子力委員会の評価のもとに文部科学省原子力試験研究費の援助を受けたプロジェクトで、オペレータがハプティックインターフェースで遠隔操作することにより、バルブの開け閉めなどのスキルをロボットに獲得させた[18]。尹は一連の研究で計測自動制御学会の部門若手奨励賞[19]や、FA財団[注釈 1]の論文賞[6]を受賞した。
ライフロボティクス創業後
2006年頃から、福祉関係のプロジェクトが始まる[20]。車椅子に介助用アームが付いたもので、リスクアセスメントの結果、アームの肘が問題となる。機構設計を担当していた川渕機械技術研究所の川渕一郎から肘をなくすことを提案され、産総研と川渕機械技術研究所の共同で肘のないロボットアーム「RAPUDA」を開発[5][21][22][注釈 2]。
協働ロボットに興味を示していてたものの製品化を請け負ってくれる会社がなかったため、2007年12月に産総研発ベンチャーとして「ライフロボティクス株式会社」を設立(翌年1月に産総研技術移転ベンチャーの称号を得る)[23]。尹は他の研究員とスキルトランスファーやRTミドルウェア、冗長性のあるロボットアームの逆運動学の研究も実施しつつ[24][25][26]、数年間は一人で、かつ無給でベンチャーの開発に取り組んだ[20][10]。
2013年12月にテレビ番組で尹が取り上げられ[27]、2014年頃から協働ロボットが注目を浴びたこともあり、資金集めが加速。スタッフも増え、生産現場用の肘のないロボットアーム「CORO」(コロ)を開発し、2015年秋の国際ロボット展で発表する[28][29][20][10]。吉野家や日本ハムファクトリー[30]といった食品メーカーや、化粧品メーカー[31]にも納入するようになり、一時は生産が追い付かないほどの売れ行きとなる[32]。
しかし2018年2月にファナックが全株式を取得し(買収[33])、ライフロボティクスはファナックの子会社となる[23]。また、「CORO」は摩耗する部分も多く信頼性・耐久性に難があったことから、顧客の要望に応じて一時的にファナックの協働ロボットに置き換えられ、数年間設計から見直されることになった[34][35][36][注釈 3]。尹はライフロボティクス代表取締役を任期とともに退任し[8]、2018年度より産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 主任研究員[9]。情報・人間工学領域研究戦略部、および人間情報研究部門に所属[37]
受賞歴
- 計測自動制御学会 - システムインテグレーション部門2006年度部門若手奨励賞[19][注釈 4]
- FA財団[注釈 1] - 平成21年度論文賞[6]
- Forbes Japan - 日本の起業家ランキング2017 第9位、特別賞(Cutting Edge)[7]
社会的活動
主な著作
学位論文
- 『モデルベースト遠隔操作に関する研究』東北大学〈博士学位論文(乙第8380号)〉、2003年9月10日。
原著論文
- 「バーチャルレーダによる障害物情報提示システム」、『日本ロボット学会誌』第19巻第4号、2001年、492-496頁。
- 「ETS-VII搭載マニピュレーターの遠隔操作時におけるマスタスレーブ方式と力ジョイスティック方式の比較」、『日本機械学会論文集C編』第67巻第662号、2001年、3219-3226頁。
- 「ハプティックインタフェースを用いた技術試験衛星VII型搭載ロボットアームの遠隔操作」、『日本ロボット学会誌』第19巻第4号、2001年、518-527頁。
- 「構造剛性解析に基づく改良型デルタ機構の設計」、『日本機械学会論文集C編』第69巻第681号、2003年、1358-1365頁。
- 「パラレル機構の構造剛性解析」、『日本機械学会論文集C編』第70巻第694号、2004年、1778-1786頁。
- 「バイラテラル遠隔操作を利用したタスクスキルトランスファー手法」、『日本ロボット学会誌』第25巻第1号、2007年、155-165頁。
- 「関節の可動範囲を考慮に入れた7自由度冗長マニピュレータの解析的逆運動学解法」、『日本ロボット学会誌』第25巻第4号、2007年、606-617頁。
- Shimizu et.al. (October 2008). Analytical Inverse Kinematic Computation for 7-DOF Redundant Manipulators With Joint Limits and Its Application to Redundancy Resolution. IEEE Transactions on Robotics. 24(5): 1131-1141.
- 「再利用性の高いロボット作業技能の構築法」、『日本機械学会論文集C編』第75巻第760号、2009年、3299-3306頁。
解説
- 「運動制御モジュールの遠隔操作システムへの応用」、『日本ロボット学会誌』第27巻第2号、2009年、158頁。
- 「上肢に障害のある人の生活を支援するロボットアームRAPUDAに関する産総研の人間工学実験」、『日本ロボット学会誌』第29巻第3号、2011年、255-256頁。
- 「ICFに基づく生活支援ロボット評価指標の開発」、『計測と制御』第51巻第6号、2012年、524-529頁。
- 「上肢に障害のある人の生活を支援するロボットアームRAPUDA(ラピューダ)による自立支援」、『バイオメカニズム学会誌』第37巻第2号、2013年、100-104頁。
著書(分担執筆)
- Uchiyama et.al. (March 2007). Design of a Compact 6-DOF Haptic Device to Use Parallel Mechanisms. Springer Tracts in Advanced Robotics: ROBOTICS RESEARCH (STAR 28). Springer-Verlag Berlin Heidelberg. pp.145-162. ISBN 978-3-540-48110-2.
- 『社会まるごとスマートシステム』 産業技術総合研究所 編、カナリア書房、2013年、ISBN 978-4778202453。
- 「移乗・入浴・食事などの介助支援・ロボット技術」、産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門 編『福祉技術ハンドブック ―健康な暮らしを支えるために―』 朝倉書店、2013年、270-275頁、ISBN 978-4-254-20152-9。
インタビュー
- 「挑戦者 ライフロボティクス 代表取締役 CEO&CTO 尹祐根 人手不足という言葉を協働ロボでなくしたい」、『日経ものづくり』第754号、2017年7月、4-8頁。
- 「協働ロボットCOROを通じて「人手不足」という言葉をなくす」、『ロボット』第237号、2017年7月、25-27頁。
- 「Interview 尹祐根 ライフロボティクス社長 人手不足を技術で解決 人の隣で働く協働ロボット」、『Boss』第33巻第2号、2018年2月、28-30頁。
脚注
注釈
- ^ a b 一般財団法人FA財団はファナックの稲葉清右衛門により設立された財団。「高度自動化技術振興財団」、「ファナックFA財団」を経て現在の「FA財団」に改称[38]。
- ^ 肘のないアームのアイデアは、川渕による[21]。株式会社川渕機械技術研究所のホームページで、「直動伸縮機構を有するロボットアーム 特許論文用基礎資料, 2008_11_01 (pdf)」を閲覧できる。
- ^ 肘のないCOROがどうしても必要な顧客に対しては、ファナックが保守することで対応[35][36]。
- ^ 受賞講演 - 尹祐根、末廣尚士、音田弘、北垣高成「タスクスキルによる丸型ハンドルバルブ操作」システムインテグレーション部門講演会2005、2005年[19]。
出典
- ^ a b c d e f g “プロフィール”. 独立行政法人産業技術総合研究所 知能システム研究部門 尹祐根. 国立研究開発法人産業技術総合研究所. 2018年6月26日閲覧。
- ^ a b c “在日科学技術者の活動と関連機関のお知らせ”. 在日韓国科学技術協会. 2018年6月26日閲覧。
- ^ a b c d 博士論文 2003.
- ^ a b c d e 妻木ほか 2001.
- ^ a b c d 尹ほか 2013.
- ^ a b c “過去の「論文賞(含む特別賞)」一覧(平成14年から平成23年)”. 4頁. 2018年6月26日閲覧。
- ^ a b “【速報】Forbesが選ぶ「日本の起業家ランキング2017」TOP10に選ばれた起業家と会社をまとめてみた”. 転職相談ジョブクル (2016年11月25日) 2018年6月26日閲覧。
- ^ a b 進藤智則、長場景子 (2018年6月26日).“[特報]《日経Robo》ファナックが買収先の協働ロボを回収し自社製に交換、稲葉会長に真相を聞いた”. 日経xTECH. 5頁. 2018年6月27日閲覧。(『日経ロボティクス』2018年8月号掲載記事)
- ^ a b “KAKEN 研究者をさがす | 尹 祐根 (40312615)”. 科学研究費助成事業データベース. 2018年6月26日閲覧。
- ^ a b c d e f 藤岡清高 (2016年2月8日). “「ロボットが日本を救う」–“腕が好き”なロボットアーム研究者が起業へ踏み切ったワケ”. 2018年6月27日閲覧。
- ^ 藤岡清高 (2016年11月8日). “「ロボットが日本を救う」–“腕が好き”なロボットアーム研究者が起業へ踏み切ったワケ”. 2018年6月27日閲覧。
- ^ 尹祐根、井上哲也、野口博司、東田賢二「AFMによる高サイクル疲労でのき裂発生機構の微視的解明 ―第1報,多結晶bcc金属における粒界き裂―」、『日本機械学会論文集A編』、第64巻第622号、1998年6月、1435-1442頁。
- ^ a b c 尹ほか 2001a.
- ^ a b c 尹ほか 2001b.
- ^ a b 尹ほか 2003.
- ^ a b 尹ほか 2004.
- ^ 特許第3928041号 (2007年3月16日登録). “機器操作用パラレル機構及びその設計方法”特許権者 - 国立研究開発法人産業技術総合研究所、発明者 - 尹祐根(2002年8月6日出願)。
- ^ 尹ほか 2007.
- ^ a b c “2006年度部門賞”. 計測自動制御学会システムインテグレーション部門. 2018年6月26日閲覧。
- ^ a b c 大澤裕司 (2017年7月15日). “ライフロボティクスの協働ロボット「CORO」がトヨタや吉野家で導入される理由”. ビジネス+IT. 2018年6月27日閲覧。
- ^ a b 川渕一郎「研究用ロボット開発で起業」、『日本機械学会誌』第113巻第1096号、2010年、154-155頁。(<メカライフ特集>機械屋になって10年)
- ^ 特許第5317362号 (2013年7月19日登録). “直動伸縮機構及び当該直動伸縮機構を備えたロボットアーム”. 特許権者 - 株式会社川渕機械技術研究所、国立研究開発法人産業技術総合研究所、発明者 - 川渕一郎、尹祐根、神徳徹雄(2008年12月19日出願)。
- ^ a b “沿革”. 会社情報. ライフロボティクス. 2018年6月27日閲覧。
- ^ 清水ほか 2007.
- ^ 清水ほか 2009.
- ^ 加藤央昌、石原裕平、清水優、橋本学「ロボットモーションプランニングの自動化に向けてのロボットモーション実行基盤の開発」、『精密工学会誌』第80巻第1号、2014年、99-106頁。
- ^ “2013年12月8日放送「壁を乗り越えられないのは ベストを尽くしていないから」”. 過去の放送. 夢の扉+. 2018年6月26日閲覧。
- ^ 日野稚子 (2015年11月30日).“ライフロボティクス、産業用ロボットアーム開発 簡単な操作で人間と安全に協働 (2/2ページ)”. 2018年6月26日閲覧。
- ^ 齊藤想聖 (2016年6月20日).“研究者が世界に仕掛ける協働ロボット 尹 祐根”. 研究応援プロジェクト リサーチア. 2018年6月26日閲覧。
- ^ 経済産業省、日本ロボット工業会 (2018年).“ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018”. 2018年6月26日閲覧。
- ^ 長場景子 (2018年2月10日). “Case Study《日経Robo》化粧品製造でライフロボティクスの協働ロボを採用 2台のロボでチューブ入り製品のRカット作業を実現”. 2018年6月26日閲覧。
- ^ 土肥義則 (2016年8月24日). ““手先が伸びて縮むだけ”のロボットが、「在庫ゼロ」になるほど売れている理由 (1/7)”. ITmedia. 2018年6月27日閲覧。
- ^ 進藤智則、長場景子 (2018年6月26日).“[特報]《日経Robo》ファナックが買収先の協働ロボを回収し自社製に交換、稲葉会長に真相を聞いた”. 日経xTECH. 1頁. 2018年6月27日閲覧。(『日経ロボティクス』2018年8月号掲載記事)
- ^ 進藤智則、長場景子 (2018年6月26日).“[特報]《日経Robo》ファナックが買収先の協働ロボを回収し自社製に交換、稲葉会長に真相を聞いた”. 日経xTECH. 1頁. 2018年6月27日閲覧。(『日経ロボティクス』2018年8月号掲載記事)
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- ^ a b 進藤智則、長場景子 (2018年6月26日).“[特報]《日経Robo》ファナックが買収先の協働ロボを回収し自社製に交換、稲葉会長に真相を聞いた”. 日経xTECH. 1頁. 2018年6月27日閲覧。(『日経ロボティクス』2018年8月号掲載記事)
- ^ “産総研リポジトリ 研究者データベース”. 産業技術総合研究所. で検索。2018年6月27日閲覧。
- ^ “財団の役割”. 一般財団法人FA財団. 2018年6月27日閲覧。
外部リンク
- 尹 祐根(ゆん うぐん, Woo-Keun YOON) - 産業技術総合研究所内の個人サイト(2013年までの更新、2018年6月27日閲覧。)
- 尹 祐根(ゆん うぐん) (@wookeunyoon) - X(旧Twitter)
- ライフロボティクス - 尹が代表取締役を務めた産総研ベンチャー
- yumetobiplus (2015年10月23日). TBS「夢の扉+」12月8日OA 主人公の未放送映像 - YouTube
(研究者情報)