燃焼
燃焼(ねんしょう)とは、可燃物(有機化合物やある種の元素など)が空気中または酸素中で光や熱の発生を伴いながら、比較的激しく酸素と反応する酸化反応のことである(ろうそくの燃焼、木炭の燃焼、マグネシウムの燃焼など)。
また、火薬類のように酸化剤(硝酸塩、過塩素酸塩など)から酸素が供給される場合は、空気が無くても燃焼は起こる。
広義には次のような反応も燃焼と呼ぶことがある。
特に気体の燃焼現象は炎または火炎と呼ばれる。火は燃焼現象(特に発光を伴う場合)を指す一般的な名称である。燃焼には炎を有する有炎燃焼と有しない無炎燃焼(燻焼)があり、線香の火やタバコの火は無炎燃焼の例である。
爆燃や爆轟は爆発を伴う燃焼のことであり、反応速度が音速以下の場合が爆燃、反応速度が音速を超え衝撃波を伴う場合が爆轟と定義される。TNTの爆轟波は約8,000 m/sである。爆発の際の爆轟波の衝撃に耐え切れずに建築物が破壊され、生物の肉体強度を遥かに上回るゆえに、事故が発生する。
燃焼の3要素
燃焼に必要な要素として、次の3要素が挙げられる[1]。
- 可燃性物質
- 酸素
- 引火点以上の温度
燃焼の3T
完全燃焼の要素として、次の3つの「T」が挙げられる[2]。
- 燃焼温度(Temperature)
- 滞留時間(Time)
- 空気との混合状態(Turbulance)
燃焼の種類
気体燃焼
液体燃焼
固体燃料
- 分解燃焼 - 物が加熱によって可燃性ガス、または酸素を発生し燃焼すること。
- 蒸発燃焼
- 表面燃焼
- イブリ燃焼 - 燻り燃焼。通気が悪い、酸素が薄いなどの原因があり、不完全燃焼する。酸素が供給されれば一気に燃え上がる(バックドラフト)。
- 触媒燃焼 - 白金(プラチナ)等を触媒とした燃焼。
燃焼機器
- バーナー - 気体・液体・粉体を空気などと混合して燃焼させる機器。
- 火格子燃焼 - 格子の上に固体の固定層を作り燃焼させる。
- ストーカー燃焼(移動火格子) - 固体を移動する火格子の上で燃焼させる。
- 流動床燃焼 - 空気などで流動させた高温のケイ砂などに固体を接触させ燃焼させる。
反応機構
燃焼の化学反応機構は100以上の素反応を経るためかなり複雑である。各素反応は、開始反応、連鎖分岐反応、置換反応、停止反応の4つに分類される。
水素ガスの場合
水素ガス(H2)の燃焼が最も単純なため(理由は、反応には水素と酸素の2種類の元素のみが関わるため)、まず水素の燃焼機構について記す。
- H2 + M → H + H + M (水素分子の開裂)
- O2 + M → O + O + M (酸素分子の開裂)
このうち、結合エネルギーから、水素分子の開裂のほうが起こりやすい。
- O2 + H → OH + O
- H2 + O → OH + H
- O2 + OH → HO2 + O
- 置換反応(ラジカルの個数は変わらず、種類が変わるもの)
- H2 + OH → H2O + H
- H2 + HO2 → H2O + OH
- 停止反応(ラジカルの数が減少するもの)
- H + OH + M → H2O + M
- H + H + M → H2 + M
- O + O + M → O2 + M
高等学校までの化学の授業では、水素ガスが燃焼する反応は、単に
- 2H2 + O2 → 2H2O
と習うのであるが、これは反応前と反応後の物質収支を述べたに過ぎず、実際には上記のように複雑な過程を経て最終的には停止反応により反応が終息する。
また、燃焼がいったん開始すると継続して行われ、悪条件により暴走すると爆発(爆燃または爆轟)に至るのは、ラジカルが急速(等比級数的に)に増加する連鎖分岐反応を経るからである。 [3]
脚注
- ^ 化学工学会SCE・Net、2011年『熱とエネルギーを科学する』東京電機大学、ISBN 9784501419004、47ページ目。
- ^ Miyoshi, Y.、2000年「Selection guide of incinerator on medical organizations」『臨床病理』2000年5月、補冊112、53~63ページ、PMID 10901046。
- ^ 燃焼の化学反応機構を研究する分野では、慣習上例えば水素ラジカル2個を表現する場合、"2H"とは書かず、"H + H"のように表記する。また、Mはここでは任意の化学種である(エネルギーだけを与えたり、持ち去ったりするもの。反応の前後で化学変化をしない)。
関連項目
外部リンク
- Combustion - Encyclopedia of Earth「燃焼」の項目。