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パラアイスホッケー

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試合風景
スレッジ

パラアイスホッケー(英語:Para ice hockey)、別名アイススレッジホッケーは、下半身に障害を持つ者がアイスホッケーを行なえるように改良された障害者スポーツで、スレッジと呼ばれる専用のに乗り、両手にスティックを持って競技する。アイスホッケー同様、氷上の格闘技と呼ばれる。

発祥の地はスウェーデン、1960年初頭にはじまり、その後北欧諸国に広まったとされる[1]

冬季パラリンピック競技の1つで、1994年リレハンメルパラリンピックで正式競技となった[1]1998年長野パラリンピックでは日本代表が初出場を果たし、2010年バンクーバーパラリンピックでは銀メダルを獲得している。その功績が高く評価されて、翌2011年にはIPC(国際パラリンピック委員会)が夏季、冬季両大会を対象に選ぶBest Team Awardに輝いた[2]

当初の競技名称は「アイススレッジホッケー」であったが、2018年より「パラアイスホッケー」に変更した[3]

ルール

アイスホッケー#主なルールも参照

基本的にアイスホッケーと同一だが、1ピリオドはアイスホッケーの正味20分に対し、パラアイスホッケーでは正味15分となっている。3ピリオドを行ない、決着がつかない場合は1ピリオド正味10分の延長戦を行なうか、ペナルティショットによって決着をつける。

ベンチ入りのメンバーはゴールキーパーを含めて15名までとなっている。男女混合種目であるが、実際に参加する選手のほとんどが男子であることから、パラリンピックでは、女子選手の参加を進めるため、通常の選手登録枠が17名のところ、女子選手を含む場合は18名まで登録可能とされる(ベンチ入りメンバーが15名である点は変わらない)。

防具は基本的にアイスホッケーと同じ物を用いる。靴の代わりに2枚のブレードを持つスレッジと呼ばれる専用の橇に足を伸ばして座る。ゴールキーパーは他の選手とは異なるスレッジを用い、あぐらをかくようにして座る。スレッジには真下にパックを通せる隙間がある。

スティックはアイスホッケーより短いものを2本持つが、この先端(ブレードとは反対側)にはアイスピックが取り付けられており、これを氷に引っ掛けて滑走する。ゴールキーパーはアイスホッケーのゴールキーパー用スティックをスケールダウンしたような形をした専用のスティックを1本持つ。

障害者スポーツであるため負傷を防ぐ性質はアイスホッケーより強い。例えばヘルメットは、アイスホッケーではゴールキーパー以外は顔面を防護しないものでもよいが、パラアイスホッケーではポジションに関係なく顔面を防護できるものに限られる。また、伸ばしている両足より幅の大きいパイプ状の椅子に囲まれているので、接触プレーがあってもそのパイプ同士がぶつかるだけで、足同士がぶつかることはない。

ホッケーリンクはアイスホッケーと共通だが、ベンチ及びペナルティボックスは選手からリンクが見えるように透明なフェンスを用い、出入りが容易となるためにリンクとの段差をなくし、床にはまたはアクリル等を敷くことが義務付けられている。

罰則

アイスホッケーと完全に共通するものは割愛。

インクリーズ
ゴールクリーズにパックがない時に攻撃側の選手がここへ入る、もしくはクリーズの中にいるGKを妨害する。偶発的に入ってしまった場合は即座に出れば反則は取られないが、入っている間は得点が無効になる。
フィリングオンザパック
故意に倒れ込むなどしてパックを隠す。GKだけは許される。

パラアイスホッケーのスティックにはアイスピックがあり、これによる負傷の危険があるため、スティックに関する反則はアイスホッケーより厳しい。

日本におけるパラアイスホッケー

日本のパラアイスホッケーは、1998年長野パラリンピックに向けた選手の強化・育成のため、1993年にノルウェーから講師を招いて講習会を実施したことにはじまる[4][1]。長野パラリンピックに日本代表は初出場を果たし、2010年バンクーバーパラリンピックでは優勝候補とされていたカナダに準決勝で勝利し、銀メタルを獲得した[5]

日本のパラアイスホッケーの課題は、競技人口の少なさと高齢化と指摘されている[6]。日本のパラアイスホッケーの競技人口は、2018年時点でおよそ70人[6]、国内のチームも長野サンダーバーズ、東京アイスバーンズ、北海道ベアーズなど5チームしかない[7][注釈 1]。また、競技人口の少なさから選手の高齢化が進んでおり、2018年平昌パラリンピックには20年前の長野パラリンピックに参加したメンバーも含まれる状況[8](平均年齢41.8歳、最高齢61歳[9])であり、若手の育成が急務となっている[10]

関連項目

外部リンク

脚注

注釈

  1. ^ パラアイスホッケーの強豪国とされるアメリカの場合、競技人口が約2,000人、国内のチーム数が88チーム(2017年当時)[5]

出典

  1. ^ a b c 羽田野哲也「特集 冬季パラスポーツ最前線 パラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)」『日本義肢装具学会誌』第34巻第1号、2018年、31-34頁、doi:10.11267/jspo.34.31 
  2. ^ Japan’s Ice Sledge Hockey Squad Wins IPC’s Best Team Award”. 国際パラリンピック委員会 (2011年12月14日). 2016年5月4日閲覧。
  3. ^ アイススレッジホッケー競技名称変更”. 一般社団法人日本パラアイスホッケー協会オフィシャルサイト. 2019年5月6日閲覧。
  4. ^ パラアイスホッケーとは”. 一般社団法人日本パラアイスホッケー協会オフィシャルサイト. 2019年5月6日閲覧。
  5. ^ a b スポーツとして扱われているパラアイスホッケー 〜パラスポーツ海外事情・アメリカ編〜”. TOKYO パラスポーツプロジェクト公式サイト (2017年12月5日). 2019年5月7日閲覧。
  6. ^ a b “パラアイスホッケー、日本の課題は少ない競技人口”. 日本経済新聞. (2018年3月14日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28064020T10C18A3000000/ 2019年5月6日閲覧。 
  7. ^ “兵庫)西日本初のパラアイスホッケーチーム 西宮拠点に”. 朝日新聞デジタル. (2018年10月2日). https://www.asahi.com/articles/ASL9Y52PHL9YPIHB00F.html 2019年5月6日閲覧。 
  8. ^ “世界一の「高齢化チーム」、いざ平昌へ アイスホッケー - 2018平昌パラリンピック(ピョンチャンパラリンピック)”. 朝日新聞デジタル. (2018年3月7日). https://www.asahi.com/articles/ASL2R46TZL2RPQIP00C.html 2019年5月6日閲覧。 
  9. ^ “大ピンチ! 超高齢のパラアイスホッケー日本代表 平昌で巻き返せるか : 平昌大会”. YOMIURI ONLINE. (2018年1月15日). https://www.yomiuri.co.jp/olympic/paralympic2018/feature/20180115-OYT8T50115.html 2019年5月6日閲覧。 
  10. ^ “西日本初パラアイスホッケーチーム 西宮拠点に発足”. 神戸新聞NEXT. (2018年10月20日). https://www.kobe-np.co.jp/news/sports/201810/0011747273.shtml 2019年5月6日閲覧。