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ダンジョン飯

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ダンジョン飯
ジャンル ハイファンタジーグルメ漫画
漫画
作者 九井諒子
出版社 KADOKAWA エンターブレイン
掲載誌 ハルタ
レーベル ビームコミックス
→ハルタコミックス
発表号 volume11 -
巻数 既刊8巻(2019年9月14日現在)
テンプレート - ノート

ダンジョン飯』(ダンジョンめし)は九井諒子による日本漫画作品。

概要

年10回刊漫画誌『ハルタ』volume11(KADOKAWA エンターブレインBC、2014年2月)より連載が開始された。著者初の長編連載作品[1]

登場人物が、古典的ファンタジー作品に登場する様々なモンスターを現実に存在する調理方法によって料理しながらダンジョンを踏破していくという、アドベンチャーとグルメを混交させた作風[1]の、グルメ・ファンタジー漫画[2][3]スライムマンドラゴラバジリスクゴーレムといった、ファンタジー作品では定番のモンスターの生態を改めて論理的に考察し、それに基づき「いかに調理すれば美味に食べられるか」を主眼に置いている。作中で作られた料理にはレシピが記載され、そのことによってファンタジーでありながらリアリティー、説得力を生じさせている[2][4][5]

2016年の8月には3巻の発売を記念し、1巻収録の第1話に登場する「大サソリと歩き茸の水炊き」の食品サンプルが、同年9月には2巻第10話の「天然おいしい宝虫のおやつ」と13話の「ミミックの塩茹で」の食品サンプルが制作され、東京・大阪・徳島のイベント会場にて展示された[6]

2019年9月5日に、8巻の発売を告知するアニメCM動画がYouTubeで公開された[7][8]。製作はTRIGGER。この動画にはスタッフクレジットが入っていなかったが、ファンからの要望を受け、スタッフクレジット追加版も同年9月14日に公開された[9]。なおCM動画公開時点でアニメ化についての情報はない。

賞歴

あらすじ

ある日、とある離島の墓地の壁から地下へと延びる巨大な空洞が出現した。そこから這い出てきた自身を王と称する朽ちかけた男が、一千年の昔に滅亡したはずの”黄金の国”の存在を明かし、王国は“狂乱の魔術師”によって地下に囚われ続けているため、元凶である魔術師を討伐した者には国の全てを与えると言い残し、塵芥となって消えた。その言葉に魅かれ、魔物が跋扈するダンジョンを踏破しようと多くの冒険者が乗り込む時代が幕を開けた。

6人パーティを組む冒険者ライオス一行は、ダンジョン深層にてレッドドラゴンに挑んだものの空腹が遠因となって壊滅状態となってしまう。ライオスの妹ファリンがドラゴンに食われながらも脱出魔法を使ったことで残りのメンバーは地上へと逃れることができた。ファリンの肉体がドラゴンに消化される前に救い出し、魔法によって蘇生させるため、すぐにでもファリン救出に向かいたいライオスだったが、全員が脱出魔法の副作用で身に着けていた装備以外の荷物を失っていたため金銭的余裕が無く、シュローナマリが離脱してしまった。パーティを解散し、単身でダンジョンに挑もうとするライオスを見かねたマルシルチルチャックが協力を申し出、あらためて3人のパーティが結成された。残る問題は探索費用の調達となったが、ライオスは食料の現地調達、つまりダンジョンに巣食うモンスターを食材とすると言う、とんでもないアイディアを披露する。

二人の激しい拒絶にも構わず、ライオスは手近な食材を集めて即席で料理を拵えようとするが、正しい調理法を知らず難儀する。その場に通りがかったセンシが手助けを申し出て、見事な手際で調理を行う。センシの魔物料理の美味さにライオスたちは驚く。魔物食に一家言を持つセンシは一行の目的を聞き、レッドドラゴンが料理できる可能性に惹かれ、新たな仲間となった。

かくしてライオス一行は、モンスターを食べながら、ダンジョンを踏破していくことになる。

様々な苦難を乗り越え、地下5階に辿りついた一行は、ファリンを取り戻すべく再度レッドドラゴンに挑戦、手酷い傷を負いながらも討伐に成功する。消化され骨だけになっていたファリンのため、マルシルは禁忌とされる古代魔術を執行し、レッドドラゴンの死体の血肉を元に、蘇生に成功する。

再会を喜び合った後、ライオスたちは傷ついた身体を癒すために休息をとるが、ファリンはレッドドラゴンを支配下に置いていた「狂乱の魔術師」に操られてライオスたちの前から姿を消す。さらには狂乱の魔術師がライオスたちを盗賊、簒奪者と罵り攻撃を加えてきた上に、ファリンと引き離される。態勢を立て直すため、いったんは地上に戻ることを決意する一行だったが、ダンジョンそのものがその姿を変化させるため、上層に戻ることに手間取っているうちに、別途ファリンを救うべく、故郷の者たちを呼び寄せたシュローの一行、シュローに救われたカブルー一行と合流する。そこへ、魔物に姿を変えられたファリンが襲いかかり、シュローとカブルーの一行から多数の死者が出るほどの被害を受ける。死者たちを蘇生したシュロー、カブルーは地上へ戻り、地上へ戻れなくなったライオスたちはファリンを再び救うべく、狂乱の魔術師の討伐を固く決意し、ダンジョンの探索を続けることになる。

登場人物

主要キャラクター(ライオス一行)

ライオス・トーデン
種族・トールマン。本作の主人公。26歳。探索隊(作中ではパーティー、またはギルド)のリーダーであり、金属鎧を纏った長身の剣戦士。ファリンの実兄。
経験豊富で実力も高いが、重度の魔物マニア。子供のころから「迷宮グルメガイド」を熟読・携帯し、生態や能力だけでなく、常々魔物の味にも強い興味を抱いていた。仲間たちにはその願望を隠していたが、ファリン救出策で経費節約の必要に迫られたことを機に告白し、実行に移す。
普段は温厚で冷静沈着な性格であり、戦士として実力もあるなど、リーダーとしての素養は決して低くはない。しかし空気を読む能力や人を見る目は優れていると言えず、悪徳冒険者に騙されていたことやトシローから密かに嫌われていたことにも気づいていなかった。また状況や意味をあまり深く考えずに発言する癖があって、仲間から軽蔑の目を向けられてしまうこともよくあり、チルチャックからは社交術や人を見る目を養ってほしいと愚痴られている[11]。人の顔や姿を覚えるのも苦手で、途中で遭遇したカブルー一行も獣人であるコボルトのクロしか覚えていなかった。
魔物が会話に絡んだ途端、好奇心も露わに我を忘れて饒舌になる。金属や絵画などの無機物でも食材としての可能性を模索する、人食い植物の種を持ち帰り地上で栽培することを企てるなど、魔物食に関して偏執的とも言える情熱を注ぐ。ただし一方で魔物マニア故にその危険性についても充分理解しており、魔物に対する無根拠な信頼や、過度な感情移入には危険視して注意している。ただしケン助の使用に関しては「仕方ない状況だったとは言え軽率だった」と反省している。
武具は「動く鎧」の剣と大盾で、新人だった3年前の探索で手に入れたものだが、盾はレッドドラゴンからの脱出の際に紛失し、剣はファリン救出行で遭遇した「動く鎧」のボスに折られた。その後は「動く鎧」の幼体が潜んでいる「動く鎧」のボスの剣を使っているが、再会したナマリからは素性の怪しい剣と言われ、ドワーフ製の剣を買って使うように注意されている。
カーカブルードから海を渡ったさらに北方に位置する田舎ののどかな山村の出身で、少年時代は妹と一緒に野山を駆け回り、空想の魔物を描いたり、冒険を夢見る日々を送っていた。しかし魔法の才を見せたファリンを恐れる故郷の人々に嫌気が差し、妹を故郷に置いて10代で町の学校へ行き兵隊となる。周囲に馴染めなかったため軍は長続きせず、流浪の末カーカブルードの魔法学校にて妹と合流し、共に迷宮探索を稼業とする。父親は故郷の村長であるが、第42話の時点で10年以上会っていない。かつて妹を置いて故郷を出たことを彼なりに気にしており、ファリン救出への強い動機となっている。
宝探しを主目的とする利己的な他の冒険者とは「異質」な存在であり、「相当育ちが良い」と言われ「どこかの王子」や「黄金城の末裔」といった噂が立っていた。
レッドドラゴンを退治した後、迷宮を一時脱出する道中でマルシルから魔法を習い、基本的な回復魔法を唱えられるようになっている。
ケン助
「動く鎧」の一個体。剣を殻の代用に、本体は柄の部分に潜む軟体動物である。鍔の形状は翼を象る。「動く鎧」が一行の食事となった後、剣を失ったライオスにより拾われた。ライオスを仲間と認識しているのか、擬態していた宝虫に対して威嚇を行い、ライオスに危険を知らせるなどの働きをし、喜んだライオスに命名され可愛がられている。しかし危険を前に勝手に逃げ出したり、動こうとしないという困った行動もとることもある。たまにライオスから食事を分けてもらっている。
7巻時点で鈨(はばき)が獅子の顔に変化していたことが判明する。
マルシル
種族・エルフ。女性で魔法使い。海辺の街育ちで、宮廷魔術師の親を持つ。
強力な攻撃魔法を駆使し、また多少の回復術の他、防御、罠や鍵の解除まで様々な魔法を扱う。武器は輪状の杖頭の先端に、魔力で生育する双葉が芽吹く木の根を手編みした杖、”アンブロシア”と魔法書。金髪のロングヘアーは、魔法の媒介となるため、大がかりな術の前には特に念入りに手入れを行っており、編み込みを作る位置やまとめ方を変えるなど、作品中で頻繁に髪型を変えている。 2年前にスライムに窒息させられたのが、初めての死亡経験。
明るく、感情表現が豊かな人物。弱音を吐くことも多いが、仲間と口喧嘩をしたり、オークの族長の憎悪に反発して言い返すなど、気の強い一面もある。また安全な場面では迂闊さを覗かせ、時に墓穴を掘ることもある。常識的な性格と嗜好の持ち主であり、「魔物を食べて食費を浮かす」というライオスの計画には当初から強い拒絶を示し[注 1]、迷宮内の生物を食することに対しては絶対反対の立場であった。しかし空腹には抗えず、魔物食を口にするたび、その意外な美味に複雑な心境をのぞかせている。
元々は魔法素材の安全な栽培、収拾目的でダンジョニウムの研究をするためカーカブルードの魔法学校に入学。同じ学科を専攻していたファリンと出会い、友人となった。ファリンを救出するために、ライオスに同行を申し出る。父やペットの早逝から、親しい者の死に対して密かにトラウマを抱いており、ファリン救出への強い動機となっている。
魔術の知識は豊富で、学生時代は「学校はじまって以来の才女」と言われるほど勉学優秀だったが、ファリンとの出会い後に実地体験が乏しいことを自覚し、実践不足が露呈してしまった経験を持つ。また運動能力が低いためパーティの足を鈍らせてしまい、それをチルチャックに悪し様に言われたため、自分が旅の妨げになると落ち込んだこともあった。しかしライオスから、彼女の魔法を頼りにしていることや、深層まではその力を温存したいという方針を聞かされ、一応ながらチルチャックからも謝罪を受けて立ち直っている。
度々ダンジョニウム理論から迷宮を考察し、迷宮全体を構成・維持する仕組みや、魔力の膨大さに好奇心をのぞかせている。
ダンジョニウム研究の一環として古代魔術にも通じ、禁忌とされる魔術にも踏み込んでいる。本人は「魔術に善悪はない」とのスタンスだが、禁忌の魔術に対する一般的な偏見から、ファリン復活の経緯を知る者の一部からは「邪悪な黒魔術師」と誤解される羽目になる。
チルチャック
種族・ハーフフット。種族そのものが童顔で小柄なため、センシにはトールマンの子供だと思われていたが、ハーフフットとしては成人である29歳の男性で、妻子(娘)持ち[注 2]。種族特有の身軽さや器用さと鋭敏な感覚を駆使し、扉や宝箱の開錠、及び罠の解除をこなす。また、仕掛けられた装置を作動させての近道や危険の事前回避、安全優先に向けた誘導など、補助的な役割を主とする。戦闘は基本的に行わないが、一応弓矢を装備しており時には後方支援を務める。なおその役割上、過去に幾度も死亡を含む被害を蒙っているため、ミミックを心底嫌悪している。
普段は落ち着いた性格で思慮深く、一行の中では最も世間擦れしており、マルシルには「一番大人」と言われている。一方、指示に従わない行動には激しい怒りを見せ、雰囲気を剣呑にさせることもある。しかしライオスによると、彼のこうした態度はパーティに対する責任感の強さゆえのことであり、また役目上ぶっきらぼうで直接的な発言をせざるを得ないことが原因である。その一方で、酒を見つけた際に目を輝かせすぐ飲もうとするなど、かなりの酒好きかつ酒豪の様子。迷宮の周辺ではハーフフットの顔役として知られる。
報酬を前払いで受け取っていたことを理由に、ファリン救出行への同行を了承した。しかしこの決断が、かえって仲間をさらなる命の危険に晒したのではという一抹の悔いを吐露している。「死ぬのはまっぴら」と言いつつ、本心は仲間を死なせたくないという想いが強い。その他にも(主に恋愛を発端とする)人間関係のトラブルを嫌っており、その遠因となる私生活や本心を隠していたが、却ってトラブルの元になることもあり、マルシルに他人の心の機微を学ぶよう諭されている。
魔物食に対してはマルシルよりは柔軟な思考を有しており、食中毒などの心配からモンスターを食べることには抵抗があるものの、人間に近い形態をしている魔物以外で、ある程度の安全が確保されてさえいれば割り合い肯定的である。
雑誌掲載分では「ハーフリング」の「ヌルチャック」と表記されていたこともあるが、単行本では「ハーフフット」の「チルチャック」に統一されている。
センシ
種族・ドワーフ。出身地はイズガンダ。恰幅の良い短躯と丸い大きな目、豊かな黒髪と髭を蓄えた、ドワーフ語で「探求者」を意味する名を持つ斧戦士。魔物食に初挑戦したライオスたちの素人振りを見かねてパーティーに加わり、レッドドラゴンの調理を目的として同行を申し出る。食事面でパーティをサポートし、戦闘ではライオスと共に前衛を務める。
先祖代々から伝わる(と自称する)家宝の盾を鍋と鍋蓋へと加工し、各種調理器具と調味料を常時携行、迷宮で10年以上(ちなみに迷宮が発見されたのは6年前である)魔物食の研究を続けて自給自足の生活を送る。普段はダンジョン内第三層を拠点として活動している。月に一度程度、地上に出て調味料などを買い揃えており、その際にライオスたちと出会うこととなった。
ゴーレムを無許可で起動させ畑の代用とし、ダンジョン各所にあるトイレの屎尿を回収して肥料にするなどしているが、これが結果的にダンジョン内の保守点検の役目を果たしている。単独で迷宮内で生活しているために冒険者としての技量は高く、魔物の身体の造りや習性などに関する知識が、戦闘時にも柔軟に応用されている。
魔法による簡便な手順の処理には、関心を示さないどころか露骨に嫌がり、旧来の技術を用いて労を取ることに自負と拘りを持つ。
ダンジョン内であっても食と健康の重要性を説き、偏った栄養の食事を摂ることを良しとせず、ときとして強迫観念じみていることもある[11]。一方、その他の物事には極めて大雑把で適当な性格で、かつては採鉱で職を得ていたものの、ドワーフでありながら鉱石の種類も見分けられず、鍛冶の技術と才能にも不足して同族仲間から驚かれていており、戦斧の手入れも粗雑。所持品の調理器具がドラゴンにも対抗しうる希少素材アダマントであることが判明してからも、ミスリル製包丁を片手に料理に勤しむ。
実は10数年前にダンジョンを掘り当てた山師めいたドワーフ鉱夫団の唯一の生き残りであり、その際に起こった惨劇の結果心に大きな傷を負い、故郷に帰ることも出来ずに迷宮付近や浅層部で生活を続けていた。彼の持つ兜や鍋は仲間の形見である。また見習いのまま糊口を凌いできたためか、本来ドワーフが備えているはずの知識にも疎い[12]。日記をつける習慣を持ち、『ハルタ』63号には彼の日記と言う設定の綴じ込み付録がついている。
ファリン・トーデン
ライオスの実妹で魔術師。柔和で温厚な性格で、仲間内の諍いを仲裁し宥める役回りをしていた。魔物を「食べたい」と発言するなど、好奇心や冒険心も兄と同じく旺盛。物理的な戦闘は好まず、回復を主とする補助魔法の他、高度な術法を用いた除霊を行う。会得しているのはノーム系の魔術[11]で、学んだ魔術を兄に手ほどきしたこともあるが、感覚派のため説明下手で、ライオスが魔術を習得するには至らなかった。
幼少期から兄を追って野山を駆けまわっていたが、ある日、村の墓地で彷徨う死霊を鎮めたことで、他の村民らから気味悪がられてしまう。しかし、兄からその素質を活かした職に就くよう勧められ、兄妹で異国を旅する空想を楽しんでいた。
兄が村を出た1年後、村を出てカーカブルードの魔法学校に入学するが当初は学校に馴染めず、授業を抜け出ては、校外の山で読書や兄に送る手紙を綴って過ごしていた。そのため友人も出来ず成績も上がらなかったが、ダンジョニウム課題発表の際、ファリンの質の高い実験結果に驚愕したマルシルに興味を持たれてから良き友人となり、以降、手紙の文面も学校生活も好転する。その後、兄が「島」へ渡る直前に会いに来た際、共に冒険すべく学校を抜け出し、以降は迷宮探索を稼業とすることになる。
物語冒頭で、ライオスを庇ってレッドドラゴンの牙に捕われながらも、帰還呪文を唱えてパーティを救ったが、自身は捕食されてしまう。後に兄たちのパーティがレッドドラゴンを倒すことに成功、体内から回収して組み立てた骨から、レッドドラゴンの血肉を使用したマルシルの秘術によって蘇生した[13]。しかし、迷宮から脱する前にレッドドラゴンの主人である「狂乱の魔術師」が現れ、ライオスたちから引き離され、レッドドラゴンと魂を混ぜ合わされた異形のキメラの姿に変えられ、支配下におかれてしまう[14][15]
イヅツミ
黒魔術によって獣の魂を混ぜられたため獣人となってしまった女性。通名はアセビ。食事の際のマナーや偏食などから、チルチャックからは「育ちが悪い」と評されている。元来はトールマンで[16]、混ざっている獣の種類は判然としないが、センシは「猫の娘」と呼んでおり、長い尻尾の猫科の動物である様子。
元はシュローの供として島に渡った忍者の一人で、第38話でシュローたちが帰還の術で地上に戻る際に「足抜け」して一行から離れ、第40話でマルシルを人質にしてライオスたちの前に現れ、自分にかけられている2種類の術をマルシルに解呪させることを要求した。マイヅルにかけられた首輪の術は解呪されたが、残りのひとつは黒魔術であり、ふたつの魂が混じり合っているという難解な状態のためにマルシルにも手出しはできなかった。しかし、「魂の分離」が「狂乱の魔術師」にキメラ化されたファリンの最終的な救出法に類する可能性から、ライオス一行と共に「狂乱の魔術師」打倒に向かうことになる。
猫系獣人かつ忍者であるため戦闘能力は一行の中でも高く、特に身軽さと素早さを活かした接近戦を得意とする。
飽きっぽく打算的で自己中心的な性格の持ち主。ライオス達に対しても仲間意識を抱く所までは行っておらず素っ気ない態度を取るが、当り前のように自分を協力者として扱い、食事を分け与えて来る彼らに対して、次第に警戒心を解きつつある様子。ライオスからファリンの過去を聞いたマルシルが泣き出した際には、戸惑いながらもマルシルを慰めるような態度を見せている。

ダンジョン冒険者・探求者

ナマリ
種族・ドワーフ。ファリン救出行以前のライオス達の元パーティーメンバー。短身ながらも勇猛な斧戦士で筋骨逞しい傭兵の女性で、61歳。父親は武器職人の顔役であったが横領が発覚して失踪したという。ナマリ自身も武具にこだわりを見せ、素材や手入れの程度など細かい目利きが効く。金銭面での問題を抱えているのか、レッドドラゴン征伐失敗後は、実入りの良い職を他に求めて離脱し、支払いの良いタンス夫妻の迷宮調査隊に採用された。
ダンジョン内でライオスと出会わせた折、出処も不明で制作した人種も判らない武器を振るうことを手厳しく注意し、真っ当な剣を購入するよう幾度も忠告している。タンスからは攻撃魔法の巻き添えをくらう、盾代わりに使われて死亡する、等、散々な扱いを受け不満を爆発させてもいるが、仲間でいたいと主張している。蘇生慣れすると死や危険に対する感覚が鈍ることもあるため、極力死亡を回避し安全の担保を確保するよう新しい仲間に説くなど、小言や不平が多く口うるさいものの、他人が抱える問題や窮地に配慮するなど、お節介で世話焼きな面を見せている。
自身の傭兵としての評判に関わるため、ライオス達とは敢えて距離を置こうとしているが、彼らのことを気にかけてもいた。再会した時は謗られる覚悟をしていたが、ライオス達が嬉々として魔物を調理してる姿を見て、逆にその現状に愕然とする。マルシルとは再会直後やや険悪だったが、再び別れる時には和解している。地上への帰還後も、蘇生所に寄りファリンの死体を探すなどしている。西方エルフ・カナリア隊の上陸後、島主の館の前でシュローおよびカブルーと合流。以後、彼らと行動を共にするが、ダンジョンにてカナリア隊の陽動によって現れたキメラを見たとき、(事情を知らなかったとは言え)ファリンの名を口にしてしまい、カナリア隊に目を付けられてしまう。
シュロー / トシロー
種族・トールマン。 ナマリと同じくファリン救出行以前のライオスたちの元パーティーメンバー。黒髪の総髪をした侍のような東洋風の服装で日本刀を武器とする男性。東方人であり本名は「半本俊朗(ナカモト トシロー)」だが、ライオスたちからはシュローと呼ばれている。忍術を使う頭領の家に生まれ、武者修行のため国を離れて島に渡りライオスたちのパーティーに加わっていた。
口数が少なく、生真面目な性格。ライオスはシュローの気持ちに全く気付いていなかったが、実はファリンに惚れていて求婚しており、返事待ちの状態だった。
ライオスたちと別れた後は「別のツテを使ってファリンを救おうとしているのではないか」とナマリが推測していたとおりに、故郷の者たちを呼び寄せてファリン救出に迷宮に潜っていた。その後、一度蘇生させたファリンを「狂乱の魔術師」に奪われたあとのライオスたちに出会い、ファリン蘇生に禁断の黒魔術を使用したことを知らされて激昂する。さらにキメラ化したファリンに襲撃されて取り巻きが壊滅状態になったため、ファリン救出を諦め取り巻きを蘇生させて迷宮を後にする。島にはもう戻らないとしながらも、ライオスたちが迷宮から生きて出られた際に、禁忌を犯した罪から東方に逃亡できるようにするための「鈴」を渡す。しかし地上に帰還直後、成り行きでカブルーを手伝うこととなり、彼や「島」を訪れたカナリア隊と行動を共にしている。
シュローの取り巻き
シュローと同郷で彼に仕える女性たち。リーダー格でシュローの養育係でもある魔術師マイヅル、オーガのイヌタデ、忍者のヒエンベニチドリ、顔を隠したアセビ(イヅツミ)。後にアセビは足抜けしライオス一行に加わる。
タンス夫妻一行
迷宮内に施された呪術の調査研究のためにダンジョンに潜っている学者一行。呪術師のタンス夫妻とその養子であるトールマンの戦士カカとキキ、そして元ライオス一行のドワーフ戦士ナマリで構成されている。
タンス夫妻
種族・ノーム。蘇生魔法を始めとした強力な魔法を使いこなす呪術師の夫妻。年齢は夫が210歳。妻が204歳。島主の相談役でもあり、迷宮の謎が明かされる前に西方エルフに迷宮が渡らぬように水面下で綱引きをしている。ライオスのパーティーを抜けたナマリの新たな雇い主。タンス氏はライオスらやナマリ人当たりの厳しい頑固者といった態度を取るがナマリの心情をおもんぱかる面も見せた。
カカとキキ
種族・トールマンの若い双子。護衛として探索に同行している。帯剣した男性の方がカカクロスボウの射手を務める女性がキキである。共に20歳で、島の地元民にみられる褐色の肌をしている。カカは不愛想で寡黙だが、キキは物腰柔らかな性格である。子供のころにタンス夫妻に引き取られた身内[17]であり、タンス夫妻の事を「じーちゃん」「ばーちゃん」と呼ぶ。
カブルー一行
若手の冒険家パーティ。リーダーのカブルー、魔法使いのリンシャ、ハーフフットのミックベル、コボルトのクロ、ドワーフのダイア、ノームのホルムのパーティ[18][19]
他の冒険者たちとは違い、リーダーのカブルーは稼業としてではなく、迷宮の解呪と魔物の根絶という理想と目的を持ってダンジョン探索を進めており、仲間もその理想に相応しい人物として支持している[18][19]。他の冒険者たちから一目置かれている面もあるが、経験値や実力は理想には見合っておらず、そのことを自覚はしているものの、見込み違いや油断が祟って度々全滅の憂き目にあっている。作中では、全滅しているところをライオス一行に発見され、死体回収屋に見つかりやすいよう2度にわたって措置をされているが、悪質な冒険者たちの差し金もあり、すれ違いが元でライオスたちを「宝石・食料泥棒」と誤解してしまっている。その後、偶然からシュロー一行に同行して下層へ潜りライオス一行を発見、彼らと共にキメラ化したファリンと戦うも歯が立たず、シュロー一行と共に地上へ戻った。しかし「島」を訪れたカナリア隊による、周囲の被害を一切考慮しないダンジョン攻略への危機感から、ライオス一行のダンジョン攻略を期待し時間稼ぎの策を講じる。
カブルー
黒い癖毛に褐色の肌をした青年。容姿端麗で、プレイボーイらしき描写も見られる。一見人当たりの良い好青年だが、人間観察を好み、常に相手を値踏みしている。以前から知っていたライオスとファリン兄妹の、自らの損得を考えない行動を、人間に興味に持たない故の偽善であると考えており、いつか化けの皮を剥がしてやろうと目論んでいた[19]。対人戦に長けている一方、魔物退治は苦手としている。また、本心では魔物を「触りたくも見たくもない」ため、魔物を料理するライオスたちの行動を不快に思っている。ライオスとの対話の際に、彼から魔物料理を勧められて已む無く食したことから更にトラウマに近い感情を抱き、嫌悪感に近いものが出がちとなってしまっている。[20]
迷宮で栄えた東方の町ウタヤの出身であったが、15年ほど前に突如迷宮から魔物が溢れ死者が続出。魔物化した死者と西方エルフ族カナリア隊との戦いの巻き添えで唯一の肉親であった母を故郷もろとも喪い、当時のカナリア隊副長に引き取られて数年後、冒険者となる[21]。後に念願のライオス一行と対面し、ライオスを対話した結果、ある程度の実力を認めたものの、同時に「迷宮を手に入れても素直に封じないのではないか」とも考えている。
カナリア隊
西方エルフが迷宮の調査及び制圧のため各地に派遣しているエルフの精鋭部隊。正式名称は不明だが、専用船の船首に付けられた小鳥像から一般に「カナリア」と呼ばれている。その半数は古代魔術に関わる犯罪者で構成されており、並の冒険者では対処できないレベルの魔物を制圧できるだけの知識と実力と経験を備えている。
今回「島」に上陸した部隊員は6名で、隊長のミスルン、褐色肌の女性シスヒス、前髪を切りそろえた女性パッタドル、短髪で小柄なオッタ、名前不明だが長髪で上半身裸の男性と癖毛の女性。なお彼ら以外の部隊員が専用船に待機しているらしき発言もある。

ダンジョンの住人

レッドドラゴン
「炎竜」とも称される、深層に棲む巨大なドラゴンで、赤い鱗が特徴のモンスター。オークによると「狂乱の魔術師」に使役されている魔物。ライオス達を全滅させファリンを捕食し、今回の旅の始まりのきっかけを作った因縁のモンスターである。センシによると1ヵ月に一度しか目覚めず、普段は眠って過ごしているため消化も遅いと推察されている。本来はかなり下層のモンスターの筈だが、何故か地下5階オークの集落近くに出没している。
ライオス一行に倒され、未消化物の中からファリンの骨を取り出されたのち、亡骸の血肉をファリン再生に使われる[13]
シスル /「狂乱の魔術師」
ダンジョンを創造した魔術師。タンス夫妻の調査からエルフであることが推察されている。
外見は、褐色の肌に銀髪の小柄なエルフで性別は明確に描写されていないが、ヤアドやカブルーは「彼」と呼んでいる。「動く絵画」の中で食べ物にありつけてうろついていたライオスと出会い、激しく敵意を向けて攻撃する。レッドドラゴン討伐後にもライオスと出会った「動く絵画」での記憶を保持している。
後に、レッドドラゴン討伐とファリン再生後に現れる。ライオスたちを「盗賊」・「簒奪者」と罵り、ファリンを奪い古代魔術を使用してライオス一行を退けた[14]。オークのゾン族長の妹はそのエルフこそが「狂乱の魔術師」だと指摘している[22]
ダンジョンを、自身が強い忠誠心を示している「黄金の国」のデルガル国王のものとしているため、探索する冒険者たちには強い敵意を抱いている。作中では魔物を使役して、デルガルを探している。使役しているいくつかの魔物を殺すと現れ、怒りを買って攻撃を受ける羽目になるとオークは語っている。
デルガルの父王に道化として雇われ、デルガルとは兄弟のように育ち、王位に就いたデルガルの薦めで魔術を学び始めたところ才能を発揮しはじめ黒魔術に傾倒したあげく、王国に「不死の呪い」を施した。「狂乱の魔術師」と称されるだけのことはあって、自分の理屈や感情でのみ行動し他者とは正常なコミュニケーションがとれなくなっているとされる。
黄金郷の住人
デルガル王の孫ヤアドを始めとした王国の住人。「狂乱の魔術師」シスルの呪いによって不老不死となっている。
食事すらも必要としないが、千年の時を生きる間に正気を保つために酪農や酒造といった普通の人としての営みを行っているとセンシは推測している。
黄金郷から離れると肉体が朽ち、亡霊となって彷徨うことになってしまう。ライオスたちがダンジョン内で出会った亡霊も元は黄金郷の住人である。
王国に伝えられた「翼持つ剣を携えた者、狂乱の魔術師を打倒し、この国の新しい王となるであろう」という予言を信じ、翼持つ剣(ケン助)を持つライオスが黄金郷を救うと期待している。
有翼の獅子
黄金の国の守護獣。未来を予言する能力を持ち、「狂乱の魔術師を打ち倒す者」の出現も予言した。現在は狂乱の魔術師によって迷宮の最深部に囚われているが、夢を介して今なお黄金郷の住人たちを導く。

作中世界

種族

典型的なファンタジー作品として、作中には様々な亜人種が登場している。作中世界で「ヒト」とされている種族は、「トールマン(人間)」・「エルフ」・「ドワーフ」・「ハーフフット」・「ノーム」・「オーク」・「コボルト(犬人)」・「オーガ」。作中では「共通語」という言語でコミュニケーションが取られているが、それぞれ種族固有の言語や文字も持っている。文字としてはかな文字・エルフ文字・ノーム文字が描写されており、言葉としてはチルチャックがライオスを罵倒した言葉と、マルシルや狂乱の魔術師の使う黒魔術の詠唱などが確認されている。

トールマン(人間)
該当者:ライオス、ファリン、シュロー、カブルー、島主
現実の人間とほぼ同じ種族。その名の通り他種族と比べると比較的長身の者が多い。そのため、オークからは「足長」と言う俗称で呼ばれる。
身体能力、魔力共にそれなりにあるが、それぞれのトップであるドワーフやエルフには及ばない。現実同様多数の人種[注 3]に分かれている描写があり、ライオス・ファリンらは「北方人」、シュロー、リンは「東方人」と作中で呼ばれており、またカブルーやキキ&カカの様な褐色肌の人種も存在する。
なお作中における伝説上の種族「トロール」は、ハーフフットから見たトールマンの特徴を、子供を叱るためのブギーマンとして誇張気味に伝えたモノに由来するとされる(元々「トロール」と言う単語自体が、ハーフフットの言葉で「トールマン」を意味する)。
この世界における平均寿命はおおよそ60歳ほど。
エルフ
該当者:マルシル、フィオニル、シスル、カナリア隊員
長命で魔法の扱いに長けた種族。特に寿命に関してはトールマンの約五倍と非常に長く、最長で500歳まで生きることがあるとされている。また(トールマン基準で)種族全体として美形が多い。反面、身体は華奢で身体能力は低い。特徴的な長い耳であるエルフ耳を持っており、「耳長」と言う俗称もある。
この世界においては「西のエルフの王国」は他種族に対して高圧的に接していることが伺える描写がされている。
ドワーフ
該当者:センシ、ナマリ、ダイア
長命で頑強な身体を持った種族。寿命はトールマンのおよそ2.5倍ほど。身体的にはやや背が低く、体格は良い。魔法への適性がヒトの中では最も低い。また腕力に優れ瞬発力は高いものの、スタミナが低く持久戦が苦手。戦士や炭鉱夫、鍛冶師などに向いている。オークからは「地底人」と呼ばれている。
作中のダンジョンもドワーフの遺構をベースにしている部分もあると推測されている。
ハーフフット
該当者:チルチャック、ミックベル
人間の子供の様な体格をした種族。平均寿命は50歳とトールマンよりやや短い。ハーフフットを知らない者からは、成人であっても「トールマンまたはドワーフの子供」と勘違いされることが多い。そのため他種族からは「小人」「子供」等とも呼ばれる。聴覚・視覚などの各種感覚器官および身のこなしに優れており、鍵師や盗賊などに向いている。その一方で腕力は低く、魔法も不得手。
その種族的気質や職業柄社会的な差別や偏見を受けており[17]。イヅツミは「窃盗罪で片足を落とされる者が多かったことが種族名の由来と聞いた」と43話でチルチャックを嘲笑っている。
ノーム
該当者:タンス夫妻、ホルム
長命でエルフに次いで魔法に長けた種族。体格は小柄で、耳がやや上の方についており、手袋をつけたような大きな手が特徴。
魔法に優れると言う点ではエルフと同様だが、特に霊魂や精霊の使役と言った方面の魔術に長けるとされる。なお、ヒトとしての種族とは別に、原義に近い土の精霊としてのノームも存在する。
オーク
該当者:ゾン族長、ゾン族長の妹
他種族に対する略奪行為を生業しているとみられている種族。大柄で体格がよく、体毛が豊か。犬歯が牙のようになっており、男性の牙は上向いて唇から出ている。鼻は低めで上向き。耳輪の上部分が厚く折れている。かつて人類やエルフたちとの抗争に敗れ、ダンジョンに逃れた歴史があるため、人間やエルフを憎悪しており、今も討伐対象にされている。 作中の島のダンジョンの先住者を自認しており、ダンジョン内で集落を築き、元々は地下5階層に集落を構えていたが、より深い階層にいるはずのレッドドラゴンが現れるようになったため3階層へと避難している。
センシがゴーレムで栽培した野菜を買ってくれるお得意様であり、オークの頭のゾン族長とセンシとは顔なじみである。人間やエルフとは美醜の感覚が違い、特にエルフのことは「野蛮な顔」「不細工」と評している。ゾン族長は多妻持ち。
避難先での糧を得るために襲撃した地下3階の取引所でライオス一行と出会い、彼らの持つ野菜も奪おうとしたが、センシの持ちかけた交渉によって引き換えに一晩の宿を提供し、取引所を襲撃した際に奪ったパン種小麦粉強力粉を元にしたパン作りや食事、頭の幼い息子との交流などを通じて打ち解け、ライオスらと和解している。
ファリンとの再別後の第30話ではゾン族長の妹の一団が登場。ライオスたちは侵入者と見做され危うく殺されかけたが、一行にセンシがいたことで難を逃れている。兄との因縁を知ったことと、ライオスたちがレッドドラゴンを倒したことから、ライオス一行を手助けしている[22]
コボルト
該当者:クロ
犬を二足歩行にしたような外見の種族。嗅覚・聴覚に優れるほか、毒に対する耐性も強い。勇猛で忠誠心が強い一方、知力に関しては他種族にやや劣るような描写もある。
オーガ
該当者:イヌタデ
額に二本の角を生やした鬼人のような種族。女性でもトールマンの男性を優に超える身長と筋肉隆々とした体格を誇り、怪力を武器に戦う。

ドワーフ、エルフ、トールマンと様々なその時代の所有者にあらゆる名で呼ばれてきたが、作中の時代には呼び名は風化して「島」とだけ呼ばれる。かつてはメリニ村という集落があるのみだったが、ダンジョンが発見されて以降旅人が多く集う賑やかな場所に変わった。作中における島主は人間だが、エルフ王が所有権を主張し返還を求めてきている。

ダンジョン

作品の舞台となるダンジョン(迷宮)は、人間やエルフやドワーフたちの間で所有権が転々としてきた「島」にある、地下空洞内の城とその城壁に囲まれた城下町である。この城は、一千年前に「狂乱の魔術師」によって、地下深くに囚われ滅んだ「黄金の国」の王城とされている。村の地下墓地となっていた場所から黄金の国の王デルガルを名乗る者が現れ「魔術師を倒した者には我が国のすべてを与えよう」と言いのこし塵となって消えたときに発見され、噂を聞いた冒険者が各地から集い、宝探しやダンジョン制覇や魔術師打倒を目指している。冒険者以外では、タンス一行のようにダンジョンの調査を依頼された者なども出入りしているほか、オークたちや犯罪者のような地上に居場所のないはぐれ者の棲家にもなっている。また物語進行中の時期にはモンスターの動きが活発化したり、迷宮の形が変わると言った異変が報告されている。タンスによると魂を肉体に縛り付ける強力な不死の術が迷宮全体にかけられており、「人」であれば内部で死亡しても、肉体の損傷さえ魔術や魔法で回復させれば蘇生できるとされ、作中ではトールマン・エルフ・ドワーフ・ハーフフット・コボルト(獣人)が蘇生している。しかし、損傷具合によって蘇生の難易度が違ってくるため、損傷の激しい者はそれだけの魔術や魔力に長けた術士でないと蘇生させられないことになっている。また喪失した損傷部位や血液などを補うため、遺体の損傷の度合いに応じた新鮮な血肉が必要とされ、通常はヤギや豚などの動物を使用する。また蘇生直後は空腹であるらしい描写も見られる。

なお、作中における一般名詞としてのダンジョンは「囲われた空間で魔物が生息し、魔力が循環する場所全般」を指しており、天然・人工の区別はつけられていない。「黄金の国」の他には、マルシルとファリンが通っていた魔術学校の近くにある天然のダンジョンが描写されている。また人工の迷宮作りには魔術や生物を初めとした広範な知識と技術が要求され、特に「黄金の国」レベルの巨大ダンジョンの作成には途方もない計算が必要となるため「もし狂乱の魔術師が実在するなら、間違いなくまともな存在ではない」とマルシルは評している。 人工ダンジョンには「建築様式」と言える区分があり、作中ではドワーフ式、ノーム式、混合式が確認できる[23]。舞台となっている「島」のダンジョンは混合式。

ダンジョンは人の欲望を食って成長するとされ、財宝や魔物を生んでその心を捉え離さず、ダンジョンに「求める」気持ちが強いほど敵対的な反応を見せる。またダンジョン内に人が集まるほどダンジョンの成長を促すことになるため、冒険者パーティーは6名以内が推奨人数とされている。ダンジョンが成長するほど財宝が増え魔物も強くなるため、財宝が“枯れた”浅層で再び財宝が発見されるようになる(成長Lv4)のは、魔物がダンジョン外へ溢れる(成長Lv5)前触れとされる。魔物がダンジョン外へ溢れると一般市民へ被害が及び、また魔物自体も強力で並の冒険者では敵わず、西方から派遣されたエルフの精鋭部隊・カナリア隊によって制圧・管理されることとなる。

第1階層(地下墓地)
ダンジョンが存在するメリニ村の共同墓地。ここの底が抜けて地下のダンジョンが姿を現した。かつては静かな聖域であったが、迷宮が出現してから村一番のにぎやかな場所となっており、もはや墓地としては機能していない。浅階のためダンジョンの魔力が希薄で、それを糧に生きるモンスターは最弱クラスのものしかあらわれない。しかし初心者はそれなりに手こずるし不意を突かれるとベテランでも命の危険がある。
第2階層(尖塔の森)
黄金城の尖塔部分。巨大な木々が生い茂っており、その間に橋が架けられている。外壁はかつて金で覆われていたが、冒険者によって現在は剥ぎ尽くされた。モンスターは森林系のものが多く、作中に登場したものの他大ネズミや森ゴブリンといったものが生息していることが語られている。
第3階層(黄金城)
黄金城の尖塔部分の内部。センシが拠点としてキャンプを張っているほか、地上に戻れぬ所以を持つ者達が店を開いていたりする。また回廊や今では使われていない城の食堂や厨房も確認できる。生息するモンスターはスケルトンやグール、レイスなどと言ったアンデッド系と、宝虫やミミックのような擬態系がメイン。
第4階層(地底湖)
岩盤から流れ出た地下水が黄金城の一角に溜まって形成された巨大な湖の湖面。湖水は魔力を含んでほのかに発光し、湖底には水没した城下町が見られる。上階からの階段も途中で水没しており、下の階層へ行くには湖面を渡り対岸側の城内階段を利用する必要がある。湖面の足場として丸太で組んだいかだの描写もあるが、湖面を渡る際は通常、モンスターの襲撃に備えメンバーの術師による水上歩行の魔法を利用する。モンスターは水棲系及び湿地系がメイン。
第5階層(城下町)
黄金城の城下町。魔力によって街並みは膨れ歪んでいるものの、賑やかであったころの雰囲気も残している。水道や風呂などのインフラは機能しており、上位の冒険者の休憩所となっている他、オークは本来この辺りに居住地を構えている。またここに現れる亡霊は比較的正気を保っており、用がなければ向こうから現れることは殆どない。
第6階層(地下水路)
城下町の下に位置する地下水路。古代ドワーフ製の貯水庫に繋がっているが、広大な貯水庫は空で、第4階層の地下水がこの層へ流れ込んでいる。本来は蒸し暑いが、作中で主人公一行が潜った際には雪が吹いて寒気に満ちている。この階層は、生き物の思考を読み身近な者に化けて入れ代わって食らうシェイプシフターや夢魔など、精神攻撃を主体とする魔物が多い。またレッドドラゴンは元々この階層にいたモンスターとされる。
ダンジョンの出現以来、長らく最下層だと思われていたが、レッドドラゴンの住処となっていた広間で前人未到の扉が物語開始直前に発見されており、更なる下層の存在が示唆されている。
第7階層(ドワーフの城塞)
上述の扉を抜けた先に存在する、古代ドワーフが築いたと考えられる遺構。各所に伸びる配管や近代的な機械など、それまでの迷宮とはまったく異なる趣の場所である。
階層不明(黄金郷)
黄金城の「城外」に位置する「地下深くに囚われた黄金の国」そのもの。狂乱の魔術師によって幾重もの結界が張り巡らされ、地下にありながら上空には青空が広がり、地上に在った頃の黄金城の外観を眺めることができる。この黄金城の内部はダンジョンと化した現在の黄金城と繋がっている。住民は全て不老不死の呪縛を掛けられた一千年前の「黄金の国」の民で、農作業や牧畜などかつて地上に在った頃の生活を現在も続けており、狂乱の魔術師の命令によって大人しくなった魔物を農作物や家畜代わりに飼っている。作った野菜やエールなどをオークたちと取引しているらしき描写もあるが、住民自身は狂乱の魔術師に呪縛されており、彼の意に沿わない行動をとると処刑されることもある様子。ダンジョンに出没する霊たちも元は黄金郷の住民である。

書誌情報

  • 九井諒子 『ダンジョン飯』 KADOKAWAビームコミックス→ハルタコミックス〉、既刊8巻(2019年9月14日現在)
    1. 2015年1月27日発行(1月15日発売)、ISBN 978-4-04-730153-5
    2. 2015年8月24日発行(8月12日発売)、ISBN 978-4-04-730676-9
    3. 2016年8月23日発行(8月12日発売)、ISBN 978-4-04-734243-9
    4. 2017年2月15日発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-734417-4
    5. 2017年8月10日発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-734631-4
    6. 2018年4月13日発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-735131-8
    7. 2019年4月12日発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-735639-9
    8. 2019年9月14日発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-735626-9

脚注

注釈

  1. ^ その食事法で食中毒で死んだ人間がいた実例があるなどが根拠であり、マルシルの考えは一概に馬鹿にしたものとはいえない。
  2. ^ ただし諸事情によりもう何年も会っていない(7巻173ページ)
  3. ^ 作中で「人種」という場合、トールマンやエルフといった区分を指す。

出典

  1. ^ a b 九井諒子の初長編連載は冒険×グルメ!「ダンジョン飯」”. コミックナタリー. 2015年3月4日閲覧。
  2. ^ a b 九井諒子のグルメファンタジー「ダンジョン飯」1巻、モンスターを美味しく料理”. コミックナタリー. 2015年3月4日閲覧。
  3. ^ a b 「このマンガがすごい!」1位は、ダンジョン飯&ヲタクに恋は難しい”. コミックナタリー (2015年12月10日). 2015年12月10日閲覧。
  4. ^ 『ダンジョン飯』(九井諒子)ロングレビュー!”. このマンガがすごい!web. 宝島社. 2017年3月11日閲覧。
  5. ^ 九井諒子「ダンジョン飯」特集”. コミックナタリー. 株式会社ナターシャ. 2017年3月11日閲覧。
  6. ^ 「ダンジョン飯」食品サンプル第2弾はミミックと宝虫!東京と大阪で展示”. コミックナタリー. 株式会社ナターシャ (2016年9月15日). 2017年3月11日閲覧。
  7. ^ https://twitter.com/hartamanga/status/1169610250091028480
  8. ^ https://natalie.mu/comic/news/346429
  9. ^ https://twitter.com/hartamanga/status/1172782148756967425
  10. ^ 編集者が選ぶコミックナタリー大賞、今年度の1位は九井諒子「ダンジョン飯」”. コミックナタリー (2015年10月1日). 2015年10月1日閲覧。
  11. ^ a b c 『ダンジョン飯』 第33話。
  12. ^ 『ダンジョン飯』 第49話。
  13. ^ a b 『ダンジョン飯』 第28話。
  14. ^ a b 『ダンジョン飯』 第29話。
  15. ^ 『ダンジョン飯』 第37話。
  16. ^ 『ダンジョン飯』第8巻第51話扉絵。他の4名は元来の種族で背景が水玉模様となっており、イヅツミはトールマン時の背景が水玉模様であるため。
  17. ^ a b 『ハルタ』〈42号〉付録「デイドリームアワー 九井諒子のラクガキ本 2」エンターブレイン、2017年02月15日。
  18. ^ a b 『ダンジョン飯』 第31話。
  19. ^ a b c 『ダンジョン飯』 第32話。
  20. ^ 『ダンジョン飯』 第38話
  21. ^ 『ダンジョン飯』 第45話。
  22. ^ a b 『ダンジョン飯』 第30話。
  23. ^ 『ダンジョン飯』第7巻第48話扉絵。

外部リンク

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