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NSM (ミサイル)

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Naval Strike Missile
種類 対艦巡航ミサイル
原開発国  ノルウェー
運用史
配備期間 2012年~[1]
配備先 ノルウェー
ポーランド
開発史
製造業者 コングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース
諸元
重量 412kg (ブースター込)
344kg (飛翔体のみ)
全長 3.95m

射程 100+ nm[2]
弾頭 125kg HE 爆風破片効果弾頭
信管 事前にプログラム可能な信管を使用

エンジン 固体燃料ロケットブースター
+ TRI-40英語版ターボジェット・サステナー
最大高度 シースキミング
誘導方式 中途航程:INSGPSTERCOM
終末航程:赤外線画像(IIR)
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ナーヴァル・ストライク・ミサイル英語: Naval Strike Missile, NSM)とは、ノルウェーコングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社が開発した対艦巡航ミサイルである。

元々のノルウェー軍による名称はNytt sjømålsmissil(新型海上目標ミサイルの意。ペンギンの後継であると示されていた)であり、英語の商用名称である「Naval Strike Missile」は後に採用されたものである。

開発

LCS-4コロラドから発射されたNSM

NFT社(現在のコングスベルグ社)による開発は、1988年より着手された。これは2基の外装型ブースターと複合材、新しい電子計算機を導入しており、当初はペンギンMk.4となるものと考えられていた。1991年にはコンセプト開発契約が締結されており、作業は1992年より着手された。1994年秋には開発計画がノルウェー議会に認可され、1997年には実物より小さなモックアップが製作された。また2000年からは、空軍のNF-5戦闘機を用いてASM型の試験が開始され、同年には実射試験も開始された[3]

最初の量産契約は2007年6月に署名された[4]。これはフリチョフ・ナンセン級フリゲートおよびシェル級ミサイル艇への搭載のため、ノルウェー海軍により選定されたものである。2008年12月、ポーランド海軍はNSMを選定し、2008年と2011年からの協定の下、対地型ベースのミサイルを総計で50基(試験用2基を含む)発注した。これは2013年から2016年の配備が予定されていた[5][6][7]

最終行程は2011年6月、カリフォルニア州のポイント・マグー海軍航空基地で行われた試験により完了した[8]。2011年4月12日、ノルウェー国防省は開発の第二段階を発表した[9]

2012年10月10日水曜日、ノルウェー海軍はNSM対艦ミサイルを初めて射撃し、記録に残した。使用艦艇はショル級ミサイル艇「HNoMS Glimt」である[10]

2013年6月5日水曜日、ノルウェー海軍は実弾頭で標的艦を攻撃する試験を初めて行った。退役したオスロ級フリゲート「HNoMS Trondheim」に命中し、この兵器は企図したように機能を果たした[11][12]

2013年6月、ポーランドは12基のNSM、23両のイェルチ社製シャーシの車輌により、沿岸ミサイル師団の最初の配備を完了した(発射機6両、TRS-15Cレーダー2両、射撃統制車6両、指揮車3両を含む)[13]。最終的に、沿岸ミサイル師団にはミサイル48基と発射機6両が配備される予定である。近い将来、ポーランドは第二のミサイル師団を編成するだろうことが推測されている。

2014年7月後半、アメリカ海軍はNSMをコロナド (LCS-4)英語版沿海域戦闘艦に搭載しテストを実施した。このクラスのタイプの艦船にミサイルのための要件はないが、LCSの対艦攻撃としての役割を拡大することができるかどうかを確認するために、このテストは実施された。テストは、2014年9月24日に実施され正常に終了した[14]

RIMPAC 2014の間、フリチョフ・ナンセン級フリゲート標的艦に対し試射を行い、成功した。ミサイルの衝撃と爆発は設計通りであった[15]

2015年に開催されたランカウイ国際海事及び航空宇宙展英語版において、マレーシアはナーヴァルストライクミサイルはマレーシア海軍の第2世代巡視船の対艦ミサイルの要件を満たすために契約を獲得したと発表した[16]

設計と装備

NSM
ポーランド海軍のNSM沿岸防衛システム発射機、およびTRS-15M オドラ3次元レーダー

発射筒のキャニスターは、4×0.81×0.8m大であり、ミサイルを収容した際の重量は710kgである。ミサイルは3年間は検査なしで艦上配置可能であり、また5~10年おきにオーバーホールを行うことで30年間は就役できる[3]

弾頭には、TDW英語版が開発した近代的な軽量設計に沿ったチタン合金弾頭ケージングと非感受性の高性能爆薬LLを組み合わせた徹甲爆風/断片化弾頭を備えている。弾頭の作動は、ボイドセンシングプログラマブルインテリジェントマルチパーパス信管によってハードターゲットに対して効果を最適化するように設計されている[17]。また、艦船目標の場合、命中直前、水線付近で影響を与えるため弾頭部分を分離する。

発射用のブースターとしては固体ロケットモーターが、巡航用のサステナーとしてはチュルボメカ社製TRI-40ターボジェットエンジンが用いられる。ミサイル発射後、固体ロケットモーターは投棄される。ミサイルの誘導方式としては、中途航程では慣性航法(INS)およびGPSによる誘導を基本とするが、陸上での匍匐飛行や沿岸の錯雑した地形での運用も想定して、地形照合(TERCOM)にも対応する。また200個の経由点を登録することで、高度な航法を行うことができる[3]

その後の終末航程では、IRCCM性(赤外線妨害技術への抗堪性)に優れた、2波長式の赤外線画像(IIR)誘導が用いられる。邀撃される公算を低減するため、複合材料の使用などステルス性を配慮した設計が行われており、また敵の対空砲火を避けるために乱数機動が行われる[3]。なおペンギンが旋回するためにヨー操作を行ったのに対し、NSMはバンク角を取っての飛行が基本である。

統合攻撃ミサイル

F-35ウェポンベイに搭載できるようをNSMをベースに開発中の派生型。

運用国

現在の運用国

 ノルウェー
ポーランドの旗 ポーランド
  • 沿岸ミサイル師団

将来の運用国

マレーシアの旗 マレーシア
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
米海軍のLCS・新型フリゲート向けの次世代OTH(水平線越え)対艦ミサイル選定においてLRASMおよびハープーン ブロックIIプラスERと競合していたが、2017年5月2日にボーイングが離脱し[18]、同月23日にはロッキードマーチンがミサイルの要求が低く、LRASMの利点が活かされないとの理由から離脱したことでNSMが残った。同年6月23日にコングスベルグと連携したレイセオンはNSMを要求に応じて提案した[19]
2018年5月31日、アメリカ海軍は水平線越え対艦ミサイルにノルウェーのコングスベルク社とアメリカのレイセオン社共同提案のNSMを選定したことを発表。レイセオンには4億8400万ドルの契約が授与された。この契約により12ダース程度のミサイルを購入予定。すべての契約オプションが行使された場合、価格は8億4760万ドルに増加する可能性があるという[20]
ドイツの旗 ドイツ
2017年2月に、ノルウェー政府は、ドイツ海軍が100億ノルウェークローネ以上と評価されるNSMを"相当量"取得すると発表した[21]

参考文献

  1. ^ NAVAL STRIKE MISSILE - Dette er Norges nye storselger – Teknisk Ukeblad, 11 June 2012
  2. ^ Kongsberg Naval and Joint Strike Missiles Update Precision Strike Annual Review (PSAR-14)
  3. ^ a b c d Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. pp. 529-530. ISBN 9781557502629. http://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC 
  4. ^ Contract for serial production of the new Naval Strike Missile – KDA press release, 29 June 2007
  5. ^ Altair.pl article, 28 December 2011 - (ポーランド語)
  6. ^ Gazeta Wyborcza article, 23 December 2008 - (ポーランド語)
  7. ^ Jane's: Poland order NSM missile (January 2009)
  8. ^ Kongsberg’s NSM Naval Strike Missile Completes Final Milestone
  9. ^ "Development stage two, Joint Strike Missile." Regjeringen.no, 4 December 2011. Retrieved: 3 April 2012.
  10. ^ Royal Norwegian Navy fires NSM missiles from Skjold class corvette and Nansen class Frigate
  11. ^ Her sprenger Forsvaret sitt eget skip
  12. ^ Natt til 5. juni avfyrte Forsvaret for første gang en Naval Strike Missile (NSM) med skarpt stridshode fra et marinefartøy. Missilet ble avfyrt mot den utfasede fregatten KNM «Trondheim» i rakettskytefeltet utenfor Andøya.
  13. ^ Ukompletowanie NDR. altair.com.pl (ポーランド語)
  14. ^ Updated: Norwegian Missile Test On Littoral Combat Ship Successful
  15. ^ Missiles Sink Two Retired Navy Ships
  16. ^ Boustead Confirms NSM for the Future Gowind class LCS of the Royal Malaysian Navy
  17. ^ Precision and lethality [ID14D2
  18. ^ Boeing pulls Harpoon from US Navy missile competition
  19. ^ Raytheon, Kongsberg to offer Naval Strike Missile for US Navy over-the-horizon requirement
  20. ^ Raytheon Awarded LCS Over-the-Horizon Anti-Surface Weapon Contract; Deal Could be Worth $848M
  21. ^ Missilsamarbeid med Tyskland gir norsk sal for 10 milliardar

外部リンク

関連項目