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カンデラ

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カンデラ
candela
記号 cd
国際単位系 (SI)
種類 基本単位
光度
定義 放射強度683分の1ワット毎ステラジアンで540テラヘルツの単色光を放射する光源のその放射の方向における光度
由来 蝋燭1本の光度(カンデラの元となったの由来)
語源 ラテン語 candela(獣脂蝋燭)
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カンデラ(英・仏:Candela, 記号:cd)は、国際単位系(SI)における光度単位であり、SI基本単位の一つである。カンデラはルクス×距離² で求めることが出来る。

光度とは、点状の光源から特定の方向へ放射される単位立体角あたりのの明るさである。光度は放射強度に似ているが、光源のスペクトル中の全ての波長の寄与を単純に合計するのではなく、それぞれの波長について標準的な比視感度(異なる波長に対する人間の目の感度のモデル)によって重みづけする[1][2]

一般的な蝋燭は、約1カンデラの光度で光を発する。

カンデラという言葉は、「獣脂蝋燭」という意味のラテン語に由来し、カンテラやキャンドル(蝋燭)と同一語源である。人名に由来するものではないので、単位記号の1文字目は大文字では書かない。

定義

カンデラの定義は操作的定義英語版による。つまり、1カンデラの光度を生じる物理的な手順の説明によって定義される。

1979年の第16回国際度量衡総会(CGPM)により、カンデラの定義は以下のように定められた[3]

周波数540×1012ヘルツ(Hz)の単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が1/683ワットステラジアンである光源の、その方向における光度

2019年5月20日に発効したSI基本単位の再定義の一環として、カンデラの定義についても表現が変更され下記のようになった(第26回国際度量衡総会の決定)。これは表現を変更しただけで、定義自体は変わっていない。なお日本の法令における定義[4]は改正されていない。

The candela, symbol cd, is the SI unit of luminous intensity in a given direction. It is defined by taking the fixed numerical value of the luminous efficacy of monochromatic radiation of frequency 540 ×1012 Hz, Kcd, to be 683 when expressed in the unit lm W−1, which is equal to cd sr W−1, or cd sr kg−1 m−2 s3 , where the kilogram, metre and second are defined in terms of h, c and ∆νCs.[5] 訳:カンデラ(cd)は光度の単位であり、その大きさは、単位s3·m−2·kg−1·cd·srまたはcd·sr·W−1(lm·W−1 に等しい)による表現で、周波数540×1012 Hzの単色光の発光効率の数値を683と定めることによって設定される。

説明

明所視(黒)と暗所視(緑)[6]比視感度。明所視の比視感度は、CIEによる1931年の標準(実線)[7]、Judd–Vosによる1978年の修正データ(破線)[8]、Sharpe, Stockman, Jagla & Jägleによる2005年のデータ(点線)[1]を含む。横軸の単位はナノメートル(nm)である。

定義で使用された540×1012 Hz(540テラヘルツ)という周波数は、緑色の近くの可視光で、波長は約555ナノメートルである。明るい環境に順応した場合(明所視)において、人間の目は、この周波数における視覚の感度が最も良い。人間の目の周波数応答によれば、それ以外の周波数で同じ光度であると感じるためには、より強い放射強度が必要になる。特定の波長λの光度は以下の式で与えられる。

ここで、Iv(λ)はカンデラ(cd)単位の光度、Ie(λ)はワット毎ステラジアン(W/sr)単位の放射強度、は明所視の標準比視感度(人間の視覚の感度(分光感度)と光の周波数との関係を関数化したもの)である。標準比視感度は国際照明委員会(CIE)の協定によるものが使用され、日本においてはそれを「経済産業省令(計量単位規則)で定める」としている。

通常は複数の波長の光が混在しているので、総光度を得るためには、全ての波長について合計または積分しなければならない。

一般的な蝋燭の光度は1カンデラである。25ワットの電球形蛍光灯光束は1700ルーメンであり、全方向に均一に光が放射されている場合、光度は135カンデラである。20度の角度に集中させた場合、光度は18000カンデラになる。

発光ダイオード(LED)の光度はカンデラの1000分の1のミリカンデラ(mcd)で計測される。一般的なLEDの光度は50ミリカンデラ程度である。高輝度タイプのLEDでは、光度15カンデラ以上のものもある。

自動車のヘッドライトなどの光度の規制は以下である。

  • 2灯式(走行用前照灯とすれ違い用前照灯が同時に点灯しないもの):走行用前照灯1灯につき15000カンデラ以上
  • 4灯式(走行用前照灯とすれ違い用前照灯が同時に点灯するもの):走行用前照灯1灯につき12000カンデラ以上
  • 最高光度の合計:430000カンデラを超えないこと
  • 車幅灯・尾灯・側方灯等:300カンデラ以下

灯台の明るさの単位としても用いられる。

歴史

1948年まで、各国で様々な光度の単位が使用されていた。これらの多くは、定義された成分による「標準蝋燭」の炎の明るさや、特定の設計による白熱電灯の明るさに基づいていた。これらの中でよく知られたものの一つが、イギリスの標準であった(candlepower)であった。1燭は、1時間に120グレーンの割合で燃焼する6分の1ポンドの純粋な鯨油蝋燭の光度と定義された。ドイツ、オーストリア、スカンジナビアでは、ヘフナー灯英語版の光度に基づくヘフナー燭ドイツ語版が使われた[9]

国際的に明確に定義された光度の単位が必要になり、1937年国際照明委員会(CIE)は、ブージ・ヌーベル(bougie nouvelle)という新しい単位を採択し、1946年にCIPMによって公表された。ブージは、それまで使われていた光度の単位である(しょく、candle)のフランス語であり、ヌーベルは「新しい」の意味である。英語では"new candle"、日本語では「新燭」と訳された。ブージ・ヌーベルの定義は以下のものであった。

ブージ・ヌーベルの値は、白金の凝固点温度における完全放射体の輝度が1平方センチメートル当たり60ブージ・ヌーベルとなるような量

[10]

定義中にある「白金の凝固点温度」とは、2042ケルビン(=1769)である。この定義は、1909年にワイドナー(Waidner)らによって提案された1燭の標準である「ワイドナー・バーゲス標準」によるものである。1燭は約1.0067カンデラとなり、実用的には燭とカンデラはほぼ同じと考えて良い。

1948年の第9回国際度量衡総会(CGPM)でこの新しい光度の単位は承認され、同時に、カンデラ(candela)という名称を与えることも承認された。1967年の第13回国際度量衡総会で、「ブージ・ヌーベル」という名称を廃止することと、定義の文章に曖昧さがあることから、より厳密になるように以下のように定義を修正することが決議された。

カンデラは、101325ニュートン毎平方メートル(N/m2)の圧力の下で、白金の凝固点の温度における黒体の600000分の1平方メートルの表面の垂直方向の光度

[11]

101325 N/m2」というのは1気圧のことである。「N/m2」はパスカル(Pa)のことであるが、1948年当時まだこの名称はなかった。「600000分の1平方メートル」は、約0.16667×10−5 m2である。

1960年に、SI基本単位の一つとなった。

高い温度でのプランク放射によってカンデラを現示するのが難しく、また、光の放射エネルギーを測定する技術が進んで黒体を用いずに光度の標準が実現できるようになったことから、1979年の第16回CGPMにおいて現在の定義が採択された[12]。1/683という中途半端な数値は、古い定義に値を正確に合わせたためである。現行の定義では、カンデラの定義は(SI基本単位)とワット(SI組立単位)に依存しているが、カンデラはSI基本単位のままである[13]

2019年にSI基本単位の再定義が行われたが、カンデラ(cd)に関しては文言が変わった以外実質的な変更はない。

符号位置

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+33C5 -
カンデラ

Unicodeには、カンデラを表す上記の文字が収録されている。これはCJK互換用文字であり、既存の文字コードに対する後方互換性のために収録されているものであるので、使用は推奨されない[14][15]

出典

  1. ^ a b Sharpe, Stockman, Jagla & Jägle (2005) 2-deg V*(l) luminous efficiency function
  2. ^ Wyzecki, G.; Stiles, W.S. (1982). Color Science: Concepts and Methods, Quantitative Data and Formulae (2nd ed.). Wiley-Interscience. ISBN 0-471-02106-7 
  3. ^ Base unit definitions: Candela”. The NIST Reference on Constants, Units, and Uncertainty. 27 September 2010閲覧。
  4. ^ 計量単位令別表第一第7号「放射強度六百八十三分の一ワット毎ステラジアンで五百四十兆ヘルツの単色光を放射する光源のその放射の方向における光度(五百四十兆ヘルツの単色光と異なる光については、経済産業省令で定める。)」
  5. ^ A concise summary of the International System of Units, SI Table 1 The seven base units of the SI、第2ページ
  6. ^ CIE Scotopic luminosity curve (1951)
  7. ^ CIE (1931) 2-deg color matching functions
  8. ^ Judd–Vos modified CIE 2-deg photopic luminosity curve (1978)
  9. ^ Hefner unit, or Hefner candle”. Sizes.com (30 May 2007). 25 February 2009閲覧。
  10. ^ Barry N. Taylor (1992). The Metric System: The International System of Units (SI). U. S. Department of Commerce. p. 18. ISBN 0-941375-74-9. http://books.google.com/books?id=y2-BDaoBVnwC&pg=PA18&dq=%22value+of+the+new+candle+is+such+that+the+brightness+of+the+full+radiator%22&as_brr=3&ei=elatR_S1FofgswPvu430BQ&sig=yl2AU7A-R1O9e5ZuEzuLwekiM2E  (NIST Special Publication 330, 1991 ed.)
  11. ^ 13th CGPM Resolution 5, CR, 104 (1967), and Metrologia, 4, 43–44 (1968).
  12. ^ 16th CGPM Resolution 3, CR, 100 (1979), and Metrologia, 16, 56 (1980).
  13. ^ The photometric base unit – the candela” (pdf). SI Brochure. Bureau International des Poids et Mesures (7 September 2007). 2016年5月9日閲覧。
  14. ^ CJK Compatibility” (2015年). 2016年2月21日閲覧。
  15. ^ The Unicode Standard, Version 8.0.0”. Mountain View, CA: The Unicode Consortium (2015年). 2016年2月21日閲覧。
SIの光の単位

[編集]

測光量 SI単位 備考
名称 記号
光度エネルギー ルーメン lm⋅s 放射量における放射エネルギー
光束 ルーメン(またはカンデラステラジアン lm 放射量における放射束
光度 カンデラ cd 放射量における放射強度
輝度 カンデラ毎平方メートル cd/m2 放射量における放射輝度
照度 ルクス(またはルーメン毎平方メートル) lx 放射量における放射照度
光束発散度 ルクス(またはルーメン毎平方メートル) lx 放射量における放射発散度
視感効果度 ルーメン毎ワット lm/W
発光効率 ルーメン毎ワット lm/W ランプ効率とも呼ぶ