西山朋佳
西山朋佳 女流三冠 (女王・女流王座・女流王将) | |
---|---|
![]() 2014年10月29日 | |
名前 | 西山朋佳 |
生年月日 | 1995年6月27日(29歳) |
棋士番号 | (奨励会員) |
出身地 | 大阪府大阪狭山市 |
師匠 | 伊藤博文七段 |
保持タイトル |
女流三冠 (女王・女流王座・女流王将) |
段位 | 三段 |
棋士DB | 奨励会員).html 西山朋佳 |
戦績 | |
タイトル獲得合計 |
7期 女王 3期 女流王座 2期 女流王将 2期 |
2020年12月14日現在 |
西山 朋佳(にしやま ともか、1995年6月27日 - )は、日本将棋連盟所属の奨励会員。伊藤博文七段門下[1]。大阪府大阪狭山市出身[1]。大阪学芸高等学校卒業、慶應義塾大学環境情報学部在学中。囲碁棋士(関西棋院所属[2])の西山静佳は姉[3]。キャッチフレーズは「豪腕」。
棋歴
父と姉(3学年上)の影響で将棋を始め[4]、5歳の時から将棋教室に通った[5]。子供の頃から、男性と将棋を指すことが多かったという[4]。中学2年の時に研修会の入会試験を受け、8連勝と好成績を挙げたことで奨励会入りを意識した[4]。
2009年、全国中学生選抜将棋選手権大会女子の部で優勝[6]。
2010年3月7日[7]、中学2年で関西奨励会に入会(6級)[1]。
2011年5月、里見香奈女流三冠(当時)の奨励会1級編入試験の対局相手となり、4級であった西山は香落ちの手合いで敗れた[8]。
2014年1月、現行制度では女性として2人目・最年少の18歳7か月で初段に昇段[9]。同年9月、女性として2人目・最年少の19歳2カ月で二段に昇段[7]。
2015年12月、女性として2人目・最年少の20歳5か月で三段に昇段[10]。三段リーグには第59回(2016年度前期)から参加している[10]。三段リーグで勝ち越し及び次点の成績を挙げたことのある、史上唯一の女性である(2020年3月現在)[11][12]。なお、三段リーグ参加の同期に藤井聡太がおり、藤井は最終局に勝利して1期抜けでプロ入りを決めたが、その最終局の相手が西山であった[13]。
奨励会で修業する一方で女流棋戦にも参加し[注釈 1]、2014年、第4期女流王座戦五番勝負[注釈 2]でタイトル戦に初登場したが、加藤桃子女王に3連敗して敗退[16][3]。2018年5月24日、第11期マイナビ女子オープン五番勝負第4局で加藤桃子女王に勝ち、3勝1敗でシリーズを制して初タイトル「女王」を獲得[17]。女流棋士ではない奨励会員の女流タイトル獲得は加藤に続き2人目となる[18]。
2019年5月22日、第12期マイナビ女子オープン五番勝負第4局で挑戦者の里見香奈女流四冠に勝ち、3勝1敗でシリーズを制して連覇[19]。同年11月1日、第41期女流王将戦三番勝負第3局で里見香奈女流王将に勝ち、2勝1敗でシリーズを制して女流王将を獲得し、女流二冠となった[20]。同年12月4日、第9期女流王座戦五番勝負第4局で里見香奈女流王座に勝ち、3勝1敗でシリーズを制して女流王座を獲得し、女流三冠となると同時に、女流棋士ではない女性奨励会員が獲得可能な3つの女流タイトル(女王・女流王座・女流王将)を独占した[21]。
2020年3月7日[22]、第66回[23]三段リーグ最終日を12勝4敗で迎え[24]、女性初の四段昇段の可能性を残していたが[24]、西山は最終日の2局を連勝して最終成績を14勝4敗とし[22]、谷合廣紀・服部慎一郎・西山の3名が14勝4敗で並び[22]、前期の成績によって決まる順位の差により谷合と服部の2名が四段に昇段し[22]、西山は次点となって[23]昇段を逸した[22]。
4月1日、第34期竜王戦で長谷部浩平に勝利し女性で初めて6組ランキング戦ベスト4に入った。
6月3日、第13期マイナビ女子オープン五番勝負第4局で挑戦者の加藤桃子に勝ち、3勝2敗でシリーズを制して3連覇[25]。
7月30日、第92期棋聖戦の1次予選決勝で北島忠雄に勝利し、棋戦で女性で初めて1次予選を突破した[26]。
9月26日、前期三段リーグ戦で次点を取ったことにより順位1位で臨んだ第67回奨励会三段リーグ戦だったが、終盤の8連敗が響き、7勝11敗に終わった[27]。
10月30日、第42期霧島酒造杯女流王将戦第3局で室谷由紀に勝利し、2勝1敗で防衛を果たした[28]。
12月14日、最終局までもつれ込んだ第10期リコー杯女流王座戦第5局で挑戦者の里見香奈女流四冠を破り、3勝2敗で防衛を果たした[29]。
棋風
振飛車党[30]。ゴキゲン中飛車と三間飛車が得意戦法で、軽いさばき、力強い攻めを特徴とする[31]。
序中盤で不利になっても、終盤力で逆転勝ちする「怪力」で知られる[32]。観戦記者の津野章二は、女性とはとても思えない豪快な将棋を指す、と評する[33]。
鈴木大介によると、「強かった頃の鈴木大介に似ている」と将棋界で評されている[32]。
女流棋戦では持ち時間をほとんど使わない傾向であったが、2017年度に行われた第11期マイナビ女子オープン本戦(西山は本戦シード)では、持ち時間をきっちり使う傾向に変化した[16]。また、主にネット将棋の実戦を重ねることで腕を磨いていた西山は、初タイトル「女王」を獲得する前年の2017年から男性棋士と研究会を行うようになり、練習対局の後の感想戦で男性棋士から様々な指摘を受けることで、将棋観が変わったという[34]。
棋士から称賛された妙手「△4五同桂」
初タイトル「女王」を獲得した第11期マイナビ女子オープン五番勝負の第2局(西山が勝利)で西山が指した、加藤桃子女王に飛車をタダで取らせると同時に馬を作らせる一手「△4五同桂」(36手目[35])は将棋界に衝撃を与えた[32]。田名後健吾(『将棋世界』編集長)は「誰もが考えもしない強手」と記した[36]。
大崎善生(元・『将棋世界』編集長)は「常識を覆す一手」と絶賛し、棋士たちの評を下記のように伝える[32]。
〔棋士が〕100人いて思いつくのは3人、実際に指せる人は1人でしょう。 — 某棋士。〔〕内は引用者が補完、[32]
人物
- 2014年、大阪学芸高等学校を卒業し[37]、慶應義塾大学環境情報学部に進学・上京したが[4][5]、同学2年生であった2015年(9月[10])から休学し[5]、2018年5月に至る[5]。
- 室谷由紀(西山より3学年上)は同じ大阪狭山市の出身であり[38]、子供の頃は同じ将棋教室に通っており[38]、それ以来の親しい仲[39]。室谷によると、二人が通っていた将棋教室の師範は、西山の棋才を高く評価していたとのこと[38]。
昇段履歴
主な成績
獲得タイトル
将棋の女流タイトル在位者一覧も参照。
登場回数8回、獲得7期。
将棋大賞
- 第47回(2019年度)女流名局賞(里見香奈と対局した第9期女流王座戦第4局)
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d “2018年5月24日 五番勝負第4局 加藤桃子女王 対 西山朋佳奨励会三段|第11期マイナビ女子オープン 2手目棋譜コメント”. マイナビ出版. 2018年5月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月24日閲覧。
- ^ “西山静佳|プロ棋士|一般財団法人関西棋院”. 関西棋院. 2019年11月9日閲覧。
- ^ a b “西山朋佳三段が新女王に 将棋・マイナビ女子オープン” (日本語). 朝日新聞. (2018年5月24日). オリジナルの2018年5月24日時点におけるアーカイブ。 2018年5月24日閲覧。
- ^ a b c d 「男女差なく勝負の道を プロ棋士目指す西山朋佳さん」『日本経済新聞』2014年2月23日。2018年5月25日閲覧。オリジナルの2018年5月25日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b c d “22歳のアナログ女王・西山朋佳三段、夢追う「初の女性棋士」への挑戦” (日本語). スポーツ報知. (2018年6月5日). オリジナルの2018年6月5日時点におけるアーカイブ。 2018年6月5日閲覧。
- ^ 平成30年版 将棋年鑑 p.630
- ^ a b c d 「西山朋佳奨励会初段が二段に昇段」『日本将棋連盟』2014年9月22日。2018年5月24日閲覧。オリジナルの2018年5月24日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「里見香奈女流名人・女流王将・倉敷藤花、奨励会1級編入試験に合格」『日本将棋連盟』2011年5月21日。2018年5月25日閲覧。オリジナルの2018年5月25日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b “【将棋】西山朋佳さん、最年少18歳で初段に 女性2人目” (日本語). 産経新聞. (2014年3月25日). オリジナルの2018年5月24日時点におけるアーカイブ。 2018年5月24日閲覧。
- ^ a b c d 「西山朋佳奨励会員、奨励会三段に」『日本将棋連盟』2015年12月7日。2018年5月24日閲覧。オリジナルの2018年5月24日時点におけるアーカイブ。
- ^ “【午後のつぶやき 大崎善生】将棋の三段リーグ、女性棋士も挑戦中(1/2ページ)”. 産経新聞 (2017年10月28日). 2018年5月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月24日閲覧。
- ^ “西山朋佳三段、女性初の四段昇段ならず…連勝も次点に終わり涙「また頑張ります」”. デイリースポーツ online. デイリースポーツ (2020年3月7日). 2020年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月7日閲覧。
- ^ 「絶対にやばい一番になる」14歳藤井聡太がプロになった対局、敗れた西山朋佳三段の本音とは 文春オンライン 2019年10月31日。
- ^ 「「奨励会と女流棋士の重籍に関する件」について」『日本将棋連盟』2011年5月27日。2018年5月25日閲覧。オリジナルの2018年2月25日時点におけるアーカイブ。
- ^ “将棋の里見女流王座、タイトル返上 年内の公式戦休場” (日本語). 日本経済新聞. (2014年8月29日). オリジナルの2018年5月24日時点におけるアーカイブ。 2018年5月24日閲覧。
- ^ a b “弾丸娘からの変貌!? 西山朋佳奨励会三段(第11期マイナビ女子オープン挑戦者)”. 将棋情報局. マイナビ出版. 2018年5月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月24日閲覧。
- ^ 「西山朋佳奨励会三段が加藤桃子女王を破り3勝1敗で初タイトルの女王獲得 第11期マイナビ女子オープン五番勝負第4局」『日本将棋連盟』2018年5月24日。2018年5月25日閲覧。オリジナルの2018年5月25日時点におけるアーカイブ。
- ^ “【将棋】奨励会の西山朋佳が初タイトル マイナビ女子”. 産経新聞 (2018年5月24日). 2018年5月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月24日閲覧。
- ^ “将棋マイナビ、西山女王が初防衛” (Japanese). 神戸新聞NEXT. 神戸新聞 (2019年5月22日). 2019年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月23日閲覧。
- ^ “里見が5冠に後退=将棋・女流王将戦”. 時事ドットコム. 時事通信社. 2019年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年11月1日閲覧。
- ^ “西山が里見を破って女流3冠に 参加資格棋戦を“全冠制覇””. スポーツ報知. スポーツ報知 (2019年12月4日). 2019年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年12月4日閲覧。
- ^ a b c d e “初の女性棋士、誕生ならず 将棋・奨励会の西山朋佳三段”. 朝日新聞 (2020年3月7日). 2020年3月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月7日閲覧。
- ^ a b “西山朋佳三段初の女性棋士ならず「また頑張ります」”. 日刊スポーツ (2020年3月7日). 2020年3月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月7日閲覧。
- ^ a b “史上初女性プロへ勝負手 「女流」じゃない棋士西山三段挑む”. 中日新聞 (2020年3月6日). 2020年3月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月7日閲覧。
- ^ “西山朋佳女王が勝利し、3期目の女王獲得 第13期マイナビ女子オープン五番勝負第5局|将棋ニュース”. 日本将棋連盟 (2020年6月3日). 2020年6月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月3日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2020年7月30日). “西山女流三冠、棋戦で女性初の1次予選突破 第92期ヒューリック杯棋聖戦”. 産経ニュース. 2020年7月31日閲覧。
- ^ “第67回奨励会三段リーグ戦”. 日本将棋連盟. 2020年10月13日閲覧。
- ^ “西山朋佳女流王将VS室谷由紀女流三段 第42期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第3局 西山女流王将が勝利し女流王将を防衛”. 2020年10月30日閲覧。
- ^ “西山女流王座がタイトル防衛”. リコー杯女流王座戦中継ブログ. 2020年12月14日閲覧。
- ^ “前夜祭(8)(リコー杯女流王座戦中継ブログ 第4期五番勝負第1局)”. 日本将棋連盟. (2014年10月29日). オリジナルの2018年6月5日時点におけるアーカイブ。 2018年6月5日閲覧。
- ^ “2018年8月21日 本戦トーナメント 西山朋佳女王 対 伊藤沙恵女流二段 第8期リコー杯女流王座戦-11手目棋譜コメント”. リコー杯女流王座戦棋譜中継. 日本将棋連盟. 2018年8月26日閲覧。
- ^ a b c d e f “西山朋佳新女王 驚異の一手(大崎善生)” (日本語). 産経新聞. (2018年6月2日). オリジナルの2018年6月5日時点におけるアーカイブ。 2018年6月5日閲覧。
- ^ 津野 2017, pp. 86–88, 第4章-天才登場
- ^ “22歳のアナログ女王・西山朋佳三段、夢追う「初の女性棋士」への挑戦” (日本語). スポーツ報知. (2018年6月5日). オリジナルの2018年8月28日時点におけるアーカイブ。 2018年8月28日閲覧。
- ^ “西山挑戦者が驚きの順 | マイナビブックス”. マイナビ出版. 2018年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月5日閲覧。
- ^ 田名後健吾「第11期マイナビ女子オープン五番勝負第2局 鮮烈な踏み込み」、『将棋世界』(2018年7月号)、日本将棋連盟 pp. 126-129
- ^ “盤上の癒しはパフェ巡り 将棋・西山朋佳女王に聞く「オフの日は何してる?」 | 西山朋佳女王インタビュー #4”. 文春オンライン. 文藝春秋. 2019年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月31日閲覧。
- ^ a b c 室谷由紀「リレー自戦記 プロの思考 室谷由紀女流二段 第9期マイナビ女子オープン準決勝 VS 清水市代女流六段」、『将棋世界』(2016年5月号)、日本将棋連盟 pp. 124-129
- ^ “記者会見(第9期マイナビ女子オープン挑戦者決定)”. マイナビ出版 (2016年3月2日). 2018年6月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月8日閲覧。
参考文献
- 津江章二『藤井聡太 名人をこす少年』日本文芸社、2017年。
外部リンク
西山朋佳 (@TMK_0627) - X(旧Twitter)