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和音

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高さが異なる複数の音がよく調和しているとき、これらを重なりのまとまりとして静的にとらえたものを和音(わおん、英 chord、独 Akkord)と呼ぶ。

ポピュラー音楽では複数の拍や小節のなかで理論上適切と定義された複数の音の組み合わせをさす(コード)。

西洋音楽の音楽理論では、三和音を基本として考える。(実際の音楽では2音だけが同時に鳴ることもあるが、これらはすべて三和音のいずれかの音が省略されたものと考える。)ポピュラー音楽では事実上四和音を基本とする場合が多い。


和音の種類

三和音

ある音(根音という)と、根音の3度上の音(第3音)と、根音の5度上の音(第5音)の3つの音から成る和音を三和音(英triad、独Dreiklang)という。三和音には、長三和音、短三和音、増三和音、減三和音がある。なお、不協和音程を内包しない和音を協和音と呼ぶが、これは、長三和音と短三和音だけである。それ以外のすべての和音は不協和音である。

上記の三和音の一覧は次の通りである。コードネームは C を根音とするときのものを表記する

名称 第3音の根音からの音程 第5音の根音からの音程 コードネーム 備考 サンプル
長三和音 長3度 完全5度 C、CM、Cmaj、C
サンプル
短三和音 短3度 完全5度 Cm、Cmin、C-
サンプル
減三和音 短3度 減5度 Cm-5、Cdim dimの表記は減七の和音とまぎらわしい サンプル
増三和音 長3度 増5度 Caug、C+、C+5
サンプル

譜例:三和音の種類

七の和音(四和音)

三和音に、根音の7度上の音(第7音という)を加えた和音を、四和音または(より一般的には)七の和音(英seventh chord、独Septimenakkord)と呼ぶ。

名称基準となる三和音第7音の根音からの音程コードネーム備考サンプル
属七の和音長三和音短7度C7
サンプル
長七の和音長三和音長7度CM7、Cmaj7
サンプル
短七の和音短三和音短7度Cm7サンプル
導七の和音(半減七の和音)減三和音短7度Cm7-5、CØポピュラー音楽ではハーフ・ディミニッシュというサンプル
減七の和音減三和音減7度Cdim、Cdim7、COdimの表記は減三和音とまぎらわしい。サンプル
増七の和音増三和音長7度Caug7、CM7+5
サンプル
短三長七の和音短三和音長7度CmM7ポピュラー音楽ではマイナー・メイジャー・セブンスというサンプル

譜例:七の和音の種類

九の和音(五和音)

四和音に、根音の9度上の音(第9音)を加えた和音を、九の和音(英ninth chord、独Nonenakkord)または五和音と呼ぶ。

名称基準となる七の和音第9音の根音からの音程コードネーム備考サンプル
属九の和音(長九の和音)属七の和音長9度C9、C7(9)
サンプル
属七短九の和音(短九の和音)属七の和音短9度C7(♭9)
サンプル


譜例:九の和音の種類

その他の和音

上記の他、次の和音などを独立した和音として扱うことがある。

  • 長三和音や属七の和音の第3音を完全4度の音にした和音。コードネームではそれぞれCsus4サンプル]、C7sus4サンプル]。
  • 長三和音や短三和音に長6度の音を加えた和音。コードネームではそれぞれ C6サンプル]、Cm6サンプル]。
  • 属七の和音などに増11度の音を加えた和音。コードネームでは C7(♯11)サンプル]。
  • 属七の和音の第5音を省いて長13度または短13度の音を加えた和音。コードネームではそれぞれ C7(13)サンプル]、C7(♭13)サンプル]。
  • 和音に根音から単音程の長2度の音を加えた和音。コードネームでは add2 を加える[Cadd2のサンプル]。
  • 第3音を省かずに完全4度の音を加えた和音。コードネームでは add4 を加える[Cadd4のサンプル]。
  • 長三和音や属七の和音の第5音を減5度とした和音。コードネームではそれぞれ C-5 または CM-5サンプル]、C7-5サンプル]。

譜例:その他の和音

非和声音

ある和音が響いているときに、その和音の構成音以外の音が鳴らされるとき、これらの音を非和声音、和声外音などと呼ぶ。(実際には「和声の音でない音」ではなく「和音の音でない音」なので、これらの名称は不適当なのであるが、一般にそのように呼ばれている。)

和音にない音が鳴らされれば、当然音が「濁る」はずであるが、その一時的な濁りが耳に快く、また、旋律が和音の縛りから解放され、自由な動きが可能になる。逆に旋律に和音を付ける立場からすると、もし非和声音がなければ、旋律の一音一音に異なる和音を付けることになりかねず、和音進行が縛られるだけでなく非常に煩雑となってしまうが、いくつかの音を非和声音として扱うことによって、和音進行が柔軟になり、またゆったり動かすことができるようになる。

非和声音の分類法にはいくつかがあるが、一般には次のように分類する。

  1. 経過音 二つの離れた和音構成音 ij の間を音階的に音が動くときに生じる(ij に挟まれた)音。[サンプル
  2. 刺繍音 補助音ともいい、ある和音構成音 k から2度上または2度下の音 l に行き、またkに戻ったときの、l 音。[サンプル
  3. 繋留音 2つの和音 MN が続くときに、M の構成音のひとつ m が後続する和音Nの構成音でないにもかかわらず N が鳴っても引き延ばされ (m2)、2度下行または上行して N の構成音のひとつ n に進行したときの、m2 の音。[サンプル
  4. 倚音(いおん) ある和音が鳴り始めたときにいきなり鳴らされる非和声音で、繋留音同様、2度下行または上行して和音の構成音に移行するもの。[サンプル
  5. 先取音 2つの和音 PQ が続くときに、P が鳴っている間に、Q の構成音のひとつである音 qP の非和声音として先取りされ、Q において、q の同音が再び鳴らされる (q2) ときの q の音。(繋留音の逆のようであるが、繋留音がタイであるのに対し、先取音はタイで結ばれないのが普通。)[サンプル
  6. 逸音(いつおん) ある和音が鳴り終わるときに、和音の構成音から2度上行または下行して鳴らされる非和声音。[サンプル
  7. 保続音 楽曲の最後に近いところで、低音rが同じ音を鳴らし続け、その上で様々な和音がまるで r を無視するかのように進行するとき、この r を保続音、オルゲルプンクトと呼ぶ。理論書により、r の方を非和声音と見るものと、さまざまな和音の方を巨大な非和声音の集団と見るものとがある。[サンプル
  • 上の和音の一覧において、三和音以外の和音で、三和音に付け足された第7音、第9音、完全4度の音、長6度の音などをすべて非和声音の一種と捉える理論書もある。


譜例:非和声音の種類


和音の配置と転回

和音を構成する各音は、原則として任意のオクターブに置いたり、複数のオクターブに重ねて置いたりすることができる(第9音以上の音には制限がある)。たとえば、第5音を根音の5度上に置くこともできるし、[オクターブと5度上]に置くこともできるし、[2オクターブと5度上]に置くこともできるし、4度下に置くこともできるし、5度上及び[オクターブと5度上]に重ねて置くこともできる。これを和音の配置と呼ぶ。

このようにして和音の最低音(音楽理論ではバスと呼ぶ)に根音以外の和音構成音を置くことを和音の転回と呼ぶ。和音が転回すると多少和音の性格が変わる。転回した和音を和音の転回形、バスが根音である和音を基本形と呼ぶ。

  1. 第1転回形 バスが第3音である和音を第1転回形と呼ぶ。
  2. 第2転回形 バスが第5音である和音を第2転回形と呼ぶ。三和音の第2転回形は、不安定であるとされる。
  3. 第3転回形 バスが第7音である和音を第3転回形と呼ぶ。
  4. 第4転回形 バスが第9音である和音を第4転回形と呼ぶ。
三和音の転回形サンプル][7の和音の転回形サンプル][9の和音の転回形サンプル

譜例:和音の転回

分散和音

和音の各音を同時に鳴らさずに、順次鳴らすものを分散和音と呼ぶ。これは、音の残像効果を利用したものであり、理論上、同時に鳴ったものとして取り扱われる。

和音記号

和音は、調の中で、様々な働きを担っている。音楽理論では、調の中での和音の働きを表すのに、和音記号を用いる。和音記号は主音に対する度数をローマ数字で表す。すなわち、i度音を根音とする三和音を I、ii 度音を根音とする三和音をIIのように書く。また、七の和音の場合には、ローマ数字の右下に7を添え、V7のように書く。転回音程の書き方には2通りあるが、現在日本で一般的な書き方は右上に転回指数を添えるもので、IV2 のように書く。

譜例:和音記号(和音の下) 和音の上はコードネームである。

コードネーム

和音を簡便に書き表す方法のひとつ。ポピュラー音楽や、ギターで和音を演奏するときに多用される。基本的に英語が使われる。コードネーム単体ではリズムを表すことができないので、旋律の楽譜の上に添えて書かれることが多い。

コードネームは、英語音名で根音(ルート)を表し、それに和音の種類を表す記号を添える。すなわち、上記のコードネームの例でCをルートの英語音名に書き換えればコードネームとなる。(長三和音の場合には、種類を表す記号は不要である) 例えば、変ホ(E♭)音上の短七の和音は Em7 と書き表される。

転回和音などで、コードのルート以外の音がバス(ベース)に来るときには、そのベース音を斜線(/)またはonのあとに加えて書くことができる(省略することも多い)。たとえば、コードがCでベースがE(第一転回形)の場合にはC/EまたはConEのように書く。斜線を横にしてCをEの上に置くこともあるが、それが特殊な和音を示すことがあるので避けるべきである。

コードネームの読み方は次のようである。

  1. ルートの部分は、英語で読む。♯はシャープ、♭はフラットである。
  2. 和音の種類の部分は次のように読む。
    • M、maj、△は、メイジャー。
    • m、min、(ルートの直後に置かれる、短三和音を表す)-は、マイナー。
    • aug、(ルートの直後に置かれる、増三和音を表す)+は、オギュメント。
    • dim、Oは、ディミニッシュ。
    • Øはハーフ・ディミニッシュ。
    • susは、サスペンデッド。
    • addは、アディショナル。
    • 数字は序数で読む。7はセブンスである。ただし、日本では基数で読むことも多い。
    • 数字の前の♯、+はシャープ。
    • 数字の前の♭、-はフラット。
    • ベースを表す斜線(/)、onは「オン」。
    • ()は読まない。(「カッコ」と言わない)

例えば、D7 -5(♭13)/Gは、「ディー・シャープ・セブンス・フラッティド・フィフス・フラッティド・サーティーンス・オン・ジー」と読む。

和音と周波数

しばしば、和音の起源を、低次倍音や、構成音の周波数比の単純さに求めることがあるが、実際の和音を見るとあまり説得力があるとは言えない。たしかに、純正律では長三和音の周波数比は、4:5:6になる。しかし、長三和音と同じく協和音とされる短三和音では12:15:20である。属七の和音を4:5:6:7と言うかもしれない。しかし、第7音が根音の7/4の周波数の音ではあまりに低すぎ、純正律ですらない(純正律ではこの音は16/9の周波数の音である)。他の和音では、周波数比はもっと複雑である。よって、和音を考えるときには、周波数比のことはあまり念頭に置かない方が現実的である。

ただし、音高をある程度以上自由に変えられる、ヴァイオリン属の楽器や管楽器、また声楽のアンサンブルでは、ゆっくりとした曲で長三和音をなるべく4:5:6の周波数比に近づけて演奏することは行われる。

関連項目

外部リンク

  • 音程計算ツール コードネームの音と鍵盤の関係を表したり音を聞いたりすることができる。