ラヂオの時間
ラヂオの時間 | |
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監督 | 三谷幸喜 |
脚本 | 三谷幸喜 |
原作 |
三谷幸喜 東京サンシャインボーイズ |
製作 |
村上光一 高井英幸 |
出演者 |
唐沢寿明 鈴木京香 西村雅彦 |
音楽 | 服部隆之 |
主題歌 | 布施明 |
撮影 | 高間賢治 |
編集 | 阿部浩英 |
配給 | 東宝 |
公開 | 1997年11月8日 |
上映時間 | 103分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 4億円[1] |
『ラヂオの時間』は、1993年に上演された、劇団東京サンシャインボーイズの演劇。監督・脚本は三谷幸喜。
1997年には三谷幸喜の初監督作品として映画化された。フジテレビ製作、配給は東宝。
なお、舞台版は「ラヂオの時間(Radio Time)」と記述し、映画版は「ラヂオの時間(Welcome Back Mr. McDonald)」と記述する。
概要
三谷が初めて手がけたフジテレビの連続ドラマ『振り返れば奴がいる』の脚本が、三谷の意図に反して制作スタッフにシリアス調に書き直されて放送された経験から生まれた作品で、1993年に三谷が主宰する劇団「東京サンシャインボーイズ」の作品として上演された。
映画化されると、ラジオという低予算な世界で想像と声だけで演じることから生まれる壮大なスケールのストーリー、テンポの良い展開、絶妙な笑いで人気を博し各賞を総嘗めにした。
あらすじ
ラジオ局「ラジオ弁天」で、普通の主婦である鈴木みやこがコンクールに応募した脚本作品が、ラジオドラマに採用されることになった。ドラマは生放送で、熱海を舞台にした平凡な主婦と漁師の恋の物語。
リハーサルも終わり、プロデューサー牛島龍彦の言葉にみやこは期待を寄せるが、主演女優である千本のっこのワガママから端を発し、放送直前で次々と脚本に変更が加えられていく。そして舞台はアメリカのシカゴ、登場人物は女弁護士とパイロットに変更となった。
SEも間に合わず、途中で辻褄が合わなくなってしまうが、生放送中なのでやり直しが効かない。急場を凌ぐ形で、様々な設定を変更して辻褄を合わせていった結果、メロドラマは大スペクタクル映画のように変貌を遂げてしまい、その辻褄を合わせる度に次々と様々な問題が浮上して来る。
さらにはエンディング内容まで変更されることになり、自分の作品を台無しにされたみやこは、ついに堪忍袋の緒が切れてスタジオに立てこもり、「これ以上ストーリーを変えるようならもう放送はさせない」と言い出す。しかし彼女の必死の説得も虚しく、番組は続行されてしまう。
ディレクターの工藤学は、せめてラストだけは彼女の思い描いた通りにするよう牛島に訴えるも、却下され、工藤は番組途中でディレクターを外されることになる。工藤はのっこを除く俳優陣にスタジオ外からこっそりと連絡を取り、彼らの協力を得て、なんとかみやこの思い描いていたエンディングを迎えることに成功。無事に放送が終わったことに、みやこも工藤も牛島も俳優陣も、胸をなでおろすのだった。
キャスト
俳優名は映画版/舞台版を表す
主要キャスト
- 工藤学
- ディレクター(唐沢寿明/甲本雅裕)
- 番組の進行を指揮するラジオ弁天のディレクター。たとえ低俗な内容であろうと番組を無事終わらせることを第一としているが、理不尽な台本の変更には疑問を持っている。現実主義的で、仕事に対して「与えられた仕事をこなすだけ」というドライな考え方の持ち主。リハーサル直後のみやこに台本をダメ出ししたり、「脚本家になるのは辞めた方がいい」と言うなど基本的に本音で会話している。様々な要因から生放送中にドラマの設定が変わってしまうが、牛島たちと意見を対立させながらも何とかドラマとして成り立たせるため奮闘する。舞台版では、気弱な性格。
- 鈴木みやこ
- 原作者(鈴木京香/宮地雅子)
- ラジオドラマの主人公と同じ平凡な主婦。本作の舞台となるラジオ局のシナリオコンクールに応募し優勝した[2]。自身の環境を投影させた自由奔放に愛に生きる女の物語「運命の女」が採用される。執筆活動時にいつも赤いバンダナを頭に巻いている。生放送ドラマの現場に立ち会うが、次々と変更される設定に戸惑いを見せる。
- 牛島龍彦
- プロデューサー(西村雅彦/西村雅彦)
- 生放送責任者。出演者などそれぞれに気を使い気苦労が絶えず妥協を許してしまう。しかし、テレビにはない良さを持つラジオドラマ[3]にかけるひそかな夢を持っている。工藤からは「番組が無事終了することしか考えていない」とも言われており、みやこに台本の書き換えを頼みながらこっそりバッキーさんにも書き換えを依頼する[4]。
芸能人
- 千本のっこ
- 律子→メアリー・ジェーン(戸田恵子/斎藤清子)
- 旬は過ぎているが元スターで、牛島たちからは格別に配慮されている。ドラマでは主演を務めるが、後輩に譲られた仕事であるため内心は不機嫌で、“りつこ”という役名が個人的に嫌な思い出があるため変更を求めるなど次々と我侭を言い出す。周りの人の手を焼かせており、今年に入って付き人が7人も辞めている。その一方で、出演者に椅子や飲み物を勧める細やかな気遣いも見せている。ちなみにドラマが生放送になったのは、のっこが「収録だと長くなるから嫌」と言ったとの理由から。炭酸飲料が嫌い。
- 浜村錠
- 寅造→マイケル・ピーター→ドナルド・マクドナルド(細川俊之/小林隆)
- 往年の二枚目俳優で、ドラマではのっこの相手役を務める。演技に対してプライドを持っているため、ドラマの設定にいちいち難癖をつける千本のっこを“あの女”呼ばわりし始め、張り合うようになる。また、のっこの難癖にいちいち応える牛島を疎ましく思っている。気難しい性格で室温が26度に保っていないとスタッフに文句を言ったり、他人の迷惑を考えず思いつきで行動することがありドラマの役名を開始直前と生放送中に2度も変更する。
- 広瀬光俊
- ハインリッヒ(井上順/伊藤俊人)
- 深夜のパーソナリティを10年務めたベテラン。気さくな人柄で周りが揉めたり空気が悪くなると率先して仲裁に入ったり流れを変えようとするムードメーカー。牛島がテキトーに考えた名前「ハインリッヒ」のせいで急遽設定が変更になったドイツ人青年(中古車のセールスマンをする若者)役をアドリブを交えてコミカルに演じる。ダジャレ好き。牛島から生放送中にハインリッヒとして時間を繋ぐよう頼まれ、数分間を一人で乗り切ろうとする。
- 野田勉
- 丸山神父→マルチン神父(小野武彦/阿南健治)
- 演技にこだわりがあるものの、あまり相手にされない。ドラマのセリフを言う時は、工藤たちが耳を塞ぐほど無駄に声がでかいのが特徴。ドラマ開始早々バッキーさんのアドリブシーンのせいで放送時間が押すなど、生放送中の辻褄合わせの過程で登場回数が極端に減らされていく。牛島やバッキーさんたちの手によってドラマが大幅に設定変更され、他のスタッフも仕方なく従う中みやこに味方する。
スタッフ
- 堀ノ内修司
- 編成部長(布施明)
- 八方美人で周りに流されやすい性格なため、都度俳優やスポンサーの意見を取り入れ、最終的に千本のっこのわがままを許してしまう。工藤から「仕事の掛け持ちが多すぎて、一つ一つの番組に愛情を持っていない」と評される。ドラマ開始前にスタジオに顔を見せた後社内の別室で過ごすが、飛行機墜落を匂わせる展開になった直後番組スポンサーの航空会社からのクレームを受けたため、再び様子を見に戻ってくる。
- 風貌のモデルは、当時フジテレビの編成部長だった亀山千広(後に社長)。布施は堀ノ内として映画版のエンディングテーマ「no problem」を歌っている。
- 保坂卓
- アナウンサー(舞台版は保坂任三郎)(並樹史朗/相島一之)
- ラジオドラマの進行役(ナレーター)。真面目一筋のアナウンサーで仕事に誇りを持っているため、辻褄が合わないナレーションはしたくないとの考えを持つ。落ち着いた物腰だが信念を曲げない性格に加え職業柄言葉遣いに細かく、本番前にみやこに台本の言葉のミスを指摘する。役者たちや牛島たちによる変更に次ぐ変更で、いつまでも進行しない収録にいらだっている。また、舞台設定がシカゴになった後生放送のCM中に、「海岸を歩いていたメアリーが溺れてマイケルに出会う」という回想シーンの台本を見て、シカゴには海がないということに気づき工藤に伝える。
- バッキーさん
- 構成作家。及び裁判官、被告人、副操縦士役(モロ師岡/野仲イサオ)
- どんな無茶な要求にも必ず応えてくれる放送作家。牛島からこっそりみやこの脚本を渡されてメアリーの仕事などの設定を変えるよう頼まれるが、勝手に新たな登場人物を増やしバイオレンスがテーマの台本に書き換えてしまう。メディアに出たがりで、当初の裁判官役に加え生放送中にアドリブで被告人の役を演じたことで時間が押す原因を作ってしまう。その後もドラマの設定に様々な矛盾が生じるが、その都度何とか辻褄を合わせた展開を考えようとする。舞台版では、牛島と共にコーヒーが楽しめるそば屋「Cafe de 長寿庵」を作ろうとしている。
- 大田黒春五郎
- 効果マン(梶原善/梶原善)
- 寡黙ながらも、常に工藤を支える腕利きの音効。ドラマの生放送直前に効果音が揃わず保管室も閉まっていて音源がないと工藤に伝える。万作のアイディアを得て昔ながらの効果音でピンチを切り抜けようとする。放送中に帰ろうとスタジオを後にした浜村を連れ戻しに行く。
- 辰巳真
- ミキサー(田口浩正)
- 番組中の音楽やCMを流す仕事を担当。生放送中の度重なる設定変更に現場が混乱する中、工藤から時間稼ぎのためドラマのテーマ曲やCMを追加で流すようその都度指示される。ギャング映画に一家言あり、放送前にバッキーさんによりマシンガンを使う話に変更されるが、放送開始直後になって自身が「マシンガンと言えばシカゴだ」と工藤に言ったことから舞台設定がニューヨークからシカゴに変わってしまう。
- 永井スミ子(舞台版は城ノ内)
- アシスタントプロデューサー(奥貫薫/西田薫)
- 作中のラジオ局スタッフの紅一点。牛島や工藤たちスタッフから指示を受けて、夜食の買い出しやコピー取りなど細々した雑務をこなしている。映画版では牛島の愛人。牛島を陰で支えながらも、彼の暴走を心配している。時々ミスをすることもあるが素直な性格で、リハーサルでドラマを聞いて感動しそれ以降みやこの心に寄り添い味方となる。
- 古川清十郎
- 千本のっこのマネージャー(梅野泰靖)
- お気楽な性格で少々責任感がなく、度重なる脚本や設定変更に混乱するスタッフの話し合いに野次馬のように口を挟んでは、その場その場で、常に勢いのある方に付く。また、のっこの新曲の演歌CD「渡りに舟」をドラマで使ってもらえるよう売り込むなどちゃっかりした所もある。人づてに、以前駐車場で暗がりの中万作がカゴに小豆を入れて波の音を作っていたことを工藤たちに話す。
部外者
- 鈴木四郎
- みやこの夫、ジョージ(近藤芳正/近藤芳正)
- 自動車のセールスマン。ドラマのリハーサル後にみやこから電話で、仕事で使う赤いバンダナを持ってくるよう頼まれてラジオ局に駆けつける。妻の脚本が採用されたことに純粋に感動している。当初ドラマの冒頭だけ聞いて帰るつもりが、色々あって帰りそびれてそのままスタジオに残りドラマが無事終わるのかを見守る。生放送中に思いがけず端役のジョージとしてドラマに特別出演する。舞台版は押しの強い人物、映画版は気弱な人物に描かれている。
- 伊織万作
- 守衛(藤村俊二)
- ラジオ弁天の守衛にして、伝説の音効。過去に試行錯誤しながら生きた効果音作りに勤しんでいたが、時代の流れにより効果音制作の仕事がなくなり何年も前に守衛に配置転換になった。自身が過ごす守衛室には過去の効果音作りで使った道具を保管している。最近の決まりきった味気ない既製の効果音に嘆いている。急遽効果音が必要になった工藤から協力を頼まれる。勤務中の暇な時にゲームボーイらしきゲーム機で遊んでいる。
その他
- 一之瀬弥生
- 七代目弁天ガール(遠藤久美子)(局内に貼られているポスター)
- のっこと同じ事務所に所属する今勢いのある若いタレント。ちなみに工藤の推測では、「のっこがラジオドラマのヒロインになったのは、弥生のバーター出演で事務所スタッフがゴリ押ししたため」とされる。
特別出演
- 山崎ルミ子
- 清掃係(宮本信子)[6]
- 廊下で空き缶が入ったゴミ袋を片付けていた所、保坂とみやこの台本の話し合いに付きそう牛島から大きな音を立てないよう注意される。理由は不明だがヘッドフォンをしながら仕事をしている。
- 大貫雷太
- トラックの運転手(渡辺謙)
- 深夜にトラック(タンクローリー)を走らせる。ラジオで歌番組を聞いていた所、チャンネルを変えてたまたま作中のドラマを聴き始める。一見すると屈強な男っぽいが、実は純愛ドラマが好き。
スタッフ
- 原作:三谷幸喜と東京サンシャインボーイズ
- 脚本と監督:三谷幸喜
- 音楽:服部隆之
- 製作者:村上光一・高井英幸
- 企画:久板順一朗・島谷能成
- エグゼクティブプロデューサー:松下千秋・増田久雄
- プロデューサー:石原隆・佐倉寛二郎
- アソシエイトプロデューサー:空閑由美子・重岡由美子
- 撮影監督:高間賢治
- キャメラオペレーター:戸澤潤一
- 照明:上保正道
- 録音:瀬川徹夫
- 美術:小川富美夫
- 装飾:小池直実
- 編集:阿部浩英
- スクリプター:杉山昌子
- 助監督:川原圭敬
- 音響効果:倉橋静男
- 選曲:浅梨なおこ
- 製作担当:山口賢二
- 監修:木村哲生
- 協力:白石美和子
- 協力プロデューサー:小牧次郎
- テーマ曲:「no problem」歌:堀ノ内修司(布施明)、作詞:三谷幸喜、作曲・編曲:服部隆之
- 製作協力:ブルミエ・インターナショナル
- 製作:フジテレビ・東宝
三谷幸喜作品とのリンク
- 桃井かおり演ずるDJ中浦たか子は『古畑任三郎』に犯人として登場している。また、副音声では「赤い洗面器の男」の小話を披露するも、例によってオチは語られない。
- 布施明演ずる堀ノ内修司は、三谷監督作品の次作『みんなのいえ』で、テレビ弁天のスタッフとして登場している。これは堀之内がラジオ局から系列のテレビ局に異動になったという設定。
- 戸田恵子演ずる千本のっこと、梅野泰靖演ずる古川清十郎は『みんなのいえ』でバーの客として登場している。
- 千本のっこ演ずるメアリー・ジェーンの裁判シーンの台詞は、三谷がかつて原作・脚本を手掛けた『12人の優しい日本人』で、陪審員2号が言う台詞とほぼ同じものである。
脚注
- ^ 「1997年邦画作品配給収入」『キネマ旬報』1998年(平成10年)2月下旬号、キネマ旬報社、1998年、168頁。
- ^ ただし工藤によるとこのコンクールの応募者はみやこ一人だけだったらしい。
- ^ テレビで宇宙を舞台にした作品を作るとCGなどで費用がかさむが、ラジオだとナレーターが一言「ここは宇宙」と言うだけで、リスナーの想像力により宇宙が出来上がる等。
- ^ みやこが素人同然の脚本家なため、万が一手直しが放送中に間に合わないことを考慮して。
- ^ 作中では視聴者には演者の顔が分からない状態で登場しており、エンドロールで演者が判明する。
- ^ 作中では視聴者には演者の顔が分からない状態で登場しており、エンドロールで演者が判明する。